色の少年   作:火の車

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宣戦布告

 なんだかんだで入院3日目に突入した

 

 一応、今日の夜に退院することになってるから

 

 明日から学校に行ける

 

(コンコン)

楓「ん?はーい。」

?「失礼するよ。楓君。」

楓「あ、先生!」

 

 この人は藤朱音先生

 

 小さい頃からお世話になってる人で

 

 忙しいのに、僕のことをずっと気にかけてくれてる

 

 すごく優しい人だ

 

楓「どうしたんですか?」

朱音「少し話しておきたいことがあってね。座るよ?」

楓「はい、どうぞ?」

 

 どうしたんだろ?

 

 いつもの健康調査はもう終わったし

 

 何の話かな?

 

朱音「さて、楓君。私の言いたいことがわかるかな?」

楓「???」

朱音「......君は相変わらず、流石だね。」

 

 先生は大きな溜息をついた

 

 え、僕、何かしちゃったの?

 

朱音「楓君。君は無理をし過ぎだ。」

楓「え?そうですか?」

朱音「そうだよ。本来なら、君にはずっとベッドの上にいて欲しい位なんだから。」

楓「あ、そ、それはー......」

 

 今まで何回も言われた

 

 けど、僕はもう元気になったし

 

 健康診断でも、少し問題はあるにしても、小さい時ほど酷くはないし

 

朱音「君だって少しでも長生きしたいだろう?なら、大人しくしていた方が__。」

楓「いえ、別に長生きに興味はありません。」

朱音「......!」

 

 僕がそういうと、先生は目を見開いた

 

 本気で驚いてるみたいだ

 

 こんな先生、初めて見たかも

 

楓「きっと、ベッドの上で大人しくしていれば、長く生きられるかもしれません。けど。」

朱音「分かるよ。それじゃあ意味がない、だろ?」

楓「はい。」

 

 僕は深く頷いた

 

 先生は家族の次によく一緒にいた人だ

 

 だから、僕のこともよく理解してくれてる

 

楓「ベッドの上で大人しくして1年生きるより、誰かのために頑張って1日生きる方が、価値があると思うんです。」

朱音「全く、君の思考は正義のヒーローのそれだな......」

楓「そうですか?そんなにかっこいいものじゃないと思いますけど。」

朱音「かっこいいよ、君は。」

 

 先生はそう言って、フッと笑った

 

 ちょっと照れるなぁ

 

 かっこいいって全然言われないし

 

朱音「私は君の担当医であると同時に、ファンなんだ。ここまで自分の意志を貫こうとする人間は初めて見たからね。」

楓「あはは、そんなことはないと思いますけど。」

朱音「君は究極の頑固者だよ。普通の人間なら今頃、ずっとベッドの上にいるか、命を落としてる。」

楓「頑固者ですかね?僕?」

 

 結構素直な方だと思ってたんだけど......

 

 先生から見れば頑固者なんだ

 

 いや、いい意味でってことにしておこう、うん

 

朱音「でもね、楓君。これだけはハッキリ言っておくよ。」

楓「?」

 

 先生の色が暗くなった

 

 目も、さっきよりも鋭くなってる

 

 それを見て、僕は息をのんだ

 

朱音「私にもはっきりとは分からないが......君はもう、長くない。」

楓「っ......!」

朱音「1年かもしれないし、2年かもしれない。もしかしたら、半年かもしれない。けれど、これだけは確信を持って言える。君の命は、もう......」

楓「......そうですか。」

 

 特段、驚くこともなかった

 

 小さい時から言われてたことだし

 

 昔から当たり前にあるものとして受け入れてる

 

 言ってしまえば、今更、かな?

 

楓「なら、もっと頑張らないといけないですね!」

朱音「......ん?」

楓「僕には今、素敵なお友達がいるんです!その子たちのバンドのために、今は全力を尽くそうと思います!」

朱音「全く君は......」

 

 「脳にも何かあるんじゃないか?」

 

 そう言って、大笑いする先生

 

 バカが病気なのかは微妙な所だけど......

 

朱音「君の愚直さはもはや尊敬の域だよ。」

 

 先生はそう言って立ち上がった

 

 今日はよく笑うなぁ

 

 こんな日は十数年間で初めてかも

 

朱音「そろそろ失礼するよ。」

楓「あ、はい!さようなら!」

朱音「あぁ。また、何かあったら呼んでくれ。」

 

 先生は手を振りながら病室から出て行った

 

 僕はそれを見送って

 

 特にやることもないので、まだ読んでない本を読むことにした

_____________________

 

 “瑠唯”

 

 彼が入院し始めて3日目

 

 明日から、登校してくることになっている

 

 何度かお見舞いに行ったけれど、元気そうで良かった

 

透子「ルイー!練習行くよ!」

瑠唯「えぇ。」

七深「るいるい~、今日はどこから練習する~?」

瑠唯「そうね。昨日の時点でまだ粗い部分があったから、そこからね。」

つくし「き、厳しいね。」

ましろ「で、でも、衛宮君が戻ってくるまで、頑張ろう......!」

 

 彼がいないまま練習していると、彼の存在の大きさを感じる

 

 練習の効率が明らかに下がるし

 

 何より、モチベーションに天と地ほどの差がある

 

?「あらあら、これはこれは。」

瑠唯「?」

 

 5人集まって廊下を歩いていると

 

 前から長い金髪の女子生徒が歩いてきた

 

 彼女は、確か......

 

瑠唯(......白鳥穂希さん?)

 

 確か、そうだったはず

 

 名家である白鳥家の長女で

 

 1年ながら時期生徒会長候補に名前が挙がってる

 

 けど、珍しいわね

 

 彼女が話しかけてくるなんて

 

穂希「最近、学外で話題になっている月ノ森で結成されたバンドらしいですわね。」

透子「まぁね~!あたしが作ったんだから!」

つくし「もうっ、すぐに調子乗るんだから......」

透子「いいじゃん!」

穂希「そうですよ?結果を残したんでるから、少しくらい喜んでもいいと思います。」

透子「だよね~!」

 

 桐ケ谷さんは目に見えて調子に乗ってる

 

 あとで締めておかないといけないわね

 

穂希「ですが......」

ましろ「?」

瑠唯(倉田さん?)

 

 白鳥さんは倉田さんの方をちらっと見て

 

 口角を少しだけあげ

 

 ゆっくり、口を開いた

 

穂希「ボーカルのあなた、少し微妙すぎではありませんこと?」

ましろ「え......?」

透子、七深、つくし、瑠唯「!」

穂希「歌唱力は並以下、ビジュアルも地味。正直、八潮さんに救われている部分も多いのではなくて?」

 

 あからさまに倉田さんを見下している

 

 それが態度でよくわかる

 

七深「......何が言いたいの~?勿体ぶらずに本題言えば~?」

 

 広町さんが敵意むき出しで白鳥さんに詰め寄った

 

 その声を聴いて、背筋が寒くなった

 

 怒ってる、あの温和な彼女が

 

穂希「単刀直入に言いますと、彼女を脱退させて、私をボーカルにしてほしいのです。」

透子「......は?」

穂希「私は学外のコーラスコンクールで結果も残していますし、ビジュアルも見ての通り。月ノ森ブランドを守るには、十分な人材だと思います。それに比べて彼女は、すべてが三流。私が劣っている部分なんて、微塵たりともありませんわ。」

瑠唯「......」

 

 彼女の狙いは大体わかった

 

 学外で話題になった私たちのバンドに入り

 

 地位と名声の向上を狙う

 

 そんな欲望が透けて見える

 

穂希「彼女は所詮は外部生。月ノ森ブランドには相応しくありません。まぁ?雑用としてなら残っても構いませんが。」

ましろ「うぅ......っ。」

透子「お前、ふざけ__」

穂希「リーダーは二葉さんの様ですわね?どうですか?新ボーカルに私は?」

つくし「え、えっと......」

 

 二葉さんは白鳥さんの雰囲気に押されてる

 

 まるで、蛇に睨まれた蛙のようだわ

 

 怒りを感じていても、口には出せない

 

 そんな風に見える

 

 このままでは、倉田さんの立場は......

 

瑠唯「......」

 

 少し、考える

 

 倉田さんは確かに、地味な生徒といえる

 

 けれど、彼女は誰よりも練習に熱心に取り組んでいた

 

 悩んで、試行錯誤して、やっとの思いで形になった

 

 今のバンドの色というのは、彼女がいてこそだと

 

 私は勝手に解釈している

 

 そんな彼女がいなくなれば、バンドのバランスが崩れる

 

 そして、なにより......彼の居場所を奪うわけにはいかない

 

瑠唯「あなたは何もわかっていないわね。」

穂希「?」

瑠唯「私たちには、今のレベルまで来れた要因である人物がいるのよ。その彼を差し置いてメンバーを変えるなんて失礼、私には考えられないわ。」

透子、七深、つくし「!!」

ましろ「る、瑠唯さん......」

 

 私が口を開くと、全員の視線が集まった

 

 この状況を打開するための方法

 

 それはまず、時間稼ぎをすること

 

 そのために、この場は乗り切らないといけない

 

瑠唯「彼はこのバンドの副リーダー。どちらにしろ、彼の承認は必要不可欠よ。」

穂希「そうなのですね?その方は一体どなたで?」

瑠唯「衛宮楓君。彼こそ、私たちのレベルを飛躍的に上げた敏腕マネージャーよ。」

穂希「衛宮楓......まさか、あの衛宮先生の弟さんですか。」

 

 彼女はそう呟くとバッと後ろを振り返り

 

 私たちに背中を向けた

 

穂希「流石に、相手が相手ですわね。仕方がありません。後日、衛宮さんにご挨拶いたしましょう。」

 

 そう言って白鳥さんは歩き出した

 

 その刹那、彼女は口が小さく動いた

 

穂希「......衛宮さんも分かってくれるでしょう。私の方がボーカルにふさわしいと。」

 

 そんな捨て台詞を残し

 

 彼女は去って行った

 

 それと同時に4人の緊張が解かれた

 

透子「ルイがシロを守るって、珍しいじゃん。」

瑠唯「......彼のためよ。退院してきたらメンバーが変わってるなんて、彼に顔向けできないもの。」

ましろ「る、るいさん、ありがとう......!」

瑠唯「お礼を言ってる暇はないわ。このことを彼に報告するわよ。」

七深「うん、そうだね~!」

つくし「じゃあ、病院に行こ?お手伝いも必要かもしれないし!」

 

 この後、私たちは彼のいる病院に向かった

 

 正直、この先の展開は予想ができない

 

 けれど、私にできることはしていこうと思う

 

 彼の居場所を守るためにも

 

 

 

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