色の少年   作:火の車

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開戦

 “ましろ”

 

 あれから一週間がたった

 

 今日は生徒会選挙の日

 

 今日で、次の生徒会長とバンドの存続が決まる

 

 そんな、運命の日......

 

ましろ(え、衛宮君は......)

楓「__おはようございます!」

「おはよう!今日も元気だね!」

「応援してるよ!」

 

 本番はもうすぐなのに、元気に挨拶をしてる

 

 緊張、してないのかな......?

 

 いや、してるに決まってる

 

 してるけど、頑張ってるんだ

 

 私のために......

 

ましろ(それに比べて、私は......)

 

 何もできなかった......

 

 衛宮君の力になれなかった

 

 透子ちゃんみたいに他の人に声をかけられなかった

 

 つくしちゃんやななみちゃんみたいに励ませなかった

 

 るいさんみたいに応援演説も出来ない

 

楓「__あっ!倉田さん!おはよう!」

ましろ「あ、え、衛宮君......」

楓「どうしたの?」

 

 首をかしげて、私を心配そうに見てる

 

 だ、ダメだ、こういう時に周りが不安そうにしちゃ

 

 笑って、衛宮君を安心させないと

 

 笑って......

 

ましろ「......ご、ごめんねっ。」

楓「え?」

ましろ「私のせいでっ、衛宮君に迷惑かけて、ごめんね......っ!」

楓「っ!!」

 

 笑わないといけなかった

 

 なのに、私は反対に涙を流して

 

 その場にうずくまってしまった

 

ましろ「私のせいなのに、何もできなかった......っ!私なんて、私なんて......っ!」

楓「......」

ましろ「ごめんねっ、ごめんね......」

楓「......大丈夫。」

ましろ「......!」

 

 ふわっと秋の香りがした

 

 私の目の前には、男子用の制服がいっぱいに広がっていて

 

 数秒して、衛宮君に抱きしめられてるって理解した

 

楓「僕が倉田さんの歌を聞きたいから、こうしたんだ。」

ましろ「衛宮、くん......」

楓「あのライブの日、みたんだ。」

 

 衛宮君の抱きしめる力が強くなる

 

 けど、そこまで強くない

 

 ただただ、安心する

 

楓「倉田さんが皆と、もっと大きなステージに立つ風景が。」

ましろ「......っ!」

楓「だから、こんなところで終わらせはしない。死んでも勝つよ。」

 

 そう言って、ゆっくりと離れて行った

 

 その時には自然に涙が止まってて

 

 体の震えも、治まっていた

 

楓「任せて。絶対に大丈夫だから。」

ましろ(あっ......///)

 

 衛宮君は優しい笑みを浮かべ

 

 私に手を差し伸べてくれた

 

 そうだ、この感じだ

 

 衛宮君を意識した時と同じ感覚だ

 

楓「じゃあ、僕はそろそろ行かないといけないから、またね!」

ましろ「う、うん///......頑張ってね、衛宮君......///」

楓「......任せて。」

 

 そう言って、衛宮君は校舎の方に歩いて行った

 

 その時に一瞬だけ

 

 衛宮君の表情が変わった気がした

 

 気のせい......かな

_____________________

 

 “楓”

 

 覚悟は決まった

 

 準備はもう、全部整った

 

 後は、本番だけだ

 

穂希「__あらあら、衛宮さん。」

楓「......白鳥さん。」

穂希「毎日毎日、挨拶運動ご苦労様です。あんなことをしないといけないなんて、大変ですわね。」

 

 白鳥さんはあざ笑うようにそう言ってきた

 

 そういえば、彼女は一回も来てなかったっけ

 

 気にしてなかったから、今思い出した

 

楓「白鳥さんは、自信があるみたいですね。」

穂希「もちろん!あなたとは積み重ねてきた結果が違いますもの!」

楓「そうですか。」

穂希「兄が優れているだけのあなたとは格が違いますの!楽しみですわ!あなたが悔しそうな顔をするのが!」

楓「そうですか。」

 

 この人に何を言われても気にならない

 

 こんな汚い色をした人の言葉なんて

 

 僕じゃなくても、誰の心にも届きはしない

 

楓「自信の上にはいつも傲りがあります。」

穂希「は?」

楓「今の白鳥さんは、本当に白鳥さんですか?」

穂希「......どういう意味ですの?」

楓「そのままです。」

 

 僕はそう言い、ふぅと息をついた

 

 今の彼女にはどんな言葉も届かないだろう

 

 だから、何も言わない

 

楓「それでは、また後ほど。」

穂希「......後悔させてあげますわ。」

 

 僕は何も言わず、その場から立ち去った

 

 僕ごときが何を言っても無駄だ

 

 自分がやるべきことをしよう

_____________________

 

 “瑠唯”

 

 朝の朝礼と1時間目のロングホームルーム

 

 その時間を使って、演説と投票を行う

 

 それで今は講堂も舞台袖に待機している

 

穂希『私が生徒会長になった暁には、月ノ森の伝統を守り、学内の風紀をよりよくすることを確約いたします。具体的な取り組みとしましては__』

 

 舞台ではもう、白鳥さんが演説を始めている

 

 流石に人前で話すことに慣れてるわね

 

 それに、言ってることは全部もっともらしく聞こえる

 

楓「あの、八潮さん。」

瑠唯「どうしたの?」

 

 その途中に、彼が話しかけてきた

 

 緊張でもしてるのかしら?

 

楓「こんなことに付き合わせてしまってすみません。」

瑠唯「別に構わないわ。あなたの力になれるなら。」

楓「あはは、そうですか。」

瑠唯「......?」

 

 少し、違和感があった

 

 何か隠してるような雰囲気がある

 

 いつもと違う

 

瑠唯「今日はハッキリしないわね。緊張しているの?」

楓「え?......あー、そういうことではないんですが。」

瑠唯「?」

楓「その、生徒会役員って、指名制じゃないですか?」

瑠唯「そうね?」

 

 私もそれで選ばれたし、もちろん知ってる

 

 それがどうしたのかしら?

 

楓「あのですね、もし、僕が生徒会長になれたら、副会長になってほしいんです。」

瑠唯「私が?」

楓「はい。」

瑠唯「それは別に構わないけれど、私でいいの?」

楓「八潮さんじゃないとダメなんです。」

瑠唯「っ!///」

 

 その言葉に少しドキっとする

 

 彼は、簡単にこういうことを言うんだもの

 

 こちらの身にもなってほしいわね......

 

楓「僕にできることなんて限られてるので、助けていただければ。」

瑠唯「......わかったわ///」

楓「お願いします。」

 

 彼は深く頭を下げた

 

 本当に、彼には困る

 

 あんな告白紛いな言動をしておいて

 

 本人はいたって真剣なんだもの

 

瑠唯「けれど、勝てるの?」

楓「分かりません。勝負は終わってみるまでは分かりませんから。」

瑠唯「それもそうね。」

楓「......でも。」

瑠唯「!」

 

 彼は少し低い声をだして

 

 それに驚いて、少し私の肩が跳ねた

 

 彼のこんな声、滅多なことでは聞けないわね

 

楓「ちゃんと、準備はしました。」

瑠唯「準備......?」

楓「はい。そんなに大層なものではありませんが、僕なりの準備はきっちり。」

 

 ......どういう意味かしら?

 

 彼の自信のある口調と表情

 

 これらがハッタリとは思えない

 

穂希「__あらあら、仲良くお話ですか?」

楓「白鳥さん。」

穂希「見ての通り、私の演説は完璧ですわ!これで、勝利は確実なものとなりました!」

楓「......それはどうでしょうか?」

穂希「は?」

瑠唯「!」

 

 彼はそう言い、ゆっくりと立ち上がり

 

 白鳥さんの方をじっと見た

 

 その表情はいつもと違い、能面のように無表情になってる

 

楓「さっきも八潮さん言いましたが、勝負は終わってみるまで分かりません。」

穂希「そんなもの、ただの根性論でしょう?」

楓「根性論......確かにそうかもしれませんね。」

穂希「そんなもの、何の意味もありませんわ。一番大切なのは実力です。」

楓「けど、知ってますか?根性がない人は何も出来ないんですよ?」

 

 彼は無表情のままそう言うと

 

 白鳥さんの眉がぴくっとした

 

 これは......

 

瑠唯(色を見て、彼女が嫌がる言葉を選んでいるのね......彼女に、これ以上ない敗北を味合わせるために。)

穂希「け、結果を残さなければ、所詮は戯言。ゴミ同然ですわよ!」

楓「ははっ、そうかもですね。なら、結果を残せるように頑張ります。」

穂希「......!!」

 

 色が見れる能力

 

 やはり、侮りがたいわね

 

 心理戦において、こんなに強力なんて

 

楓「それでは、行きましょう、八潮さん。」

瑠唯「......えぇ。」

 

 彼にそう言われ、私も席を立った

 

 さて、私は私の仕事をこなしましょうか

 

 彼の役に立てるように

 

 

 

 

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