色の少年   作:火の車

67 / 86
演説

 “ましろ”

 

 すごかった

 

 るいさんも注目されてるって言ってただけあって

 

 白鳥さんの演説はしっかりしてた

 

 あんなの、勝てるのかな......

 

ましろ「......!」

 

 そう思ってると、舞台袖から衛宮君が出てきた

 

 いつも以上にキッチリ着られた制服

 

 キリッ引き締まった表情

 

 この衛宮君もいい

 

『生徒会長候補、衛宮楓さんの応援演説です。』

瑠唯「はい。」

 

 まずはるいさんだ

 

 全然、動じてる様子がない

 

 流石すぎる......

 

瑠唯『衛宮君の応援演説を担当いたします。1年生Ⅽ組、八潮瑠唯です。』

 

 凛とした落ち着いた声

 

 やっぱり、ちゃんと落ち着いてる

 

 これなら安心だ

 

瑠唯『私が彼を生徒会長に推薦する理由は、その人柄にあります。彼は、誰よりも強い正義感を持っています。この中にも、彼の行いを知っている方がいるのではないでしょうか。』

 

 周りの人たちが少し頷いてるのを感じる

 

 これは、あの裏サイトの効果だ

 

 こんなに多くの人が知ってるんだ

 

瑠唯『私も、彼に救われた人間の1人です。だからこそ、彼の素質は分かります。彼ならば、月ノ森をさらに先に進めることができると。』

 

「おぉ......!!」

 

 会場中がどよめく

 

 るいさんの言葉に力強さもだけど

 

 内容の方で驚いてる人が多いと思う

 

瑠唯『彼は100年の月ノ森の歴史を変える人物になるでしょう。そんな予感を感じさせてくれます。』 

 

 るいさんは読み終えたのか原稿を置き

 

 少し顔を上げて、全校生徒の方を見渡した

 

 すごい、あんなに堂々として......

 

瑠唯『以上で、私の応援演説を終わります。ご清聴、ありがとうございました。』

 

ましろ、つくし「!」

 

 るいさんがそう言って頭を下げると

 

 後ろから拍手の音が聞こえてきた

 

 あれ、さっきよりも音が大きいような......

 

 気のせい、かな......?

 

ましろ「ど、どう、かな......?」

つくし「い、良い感じだと思う。」

 

 そう、思った以上にいい感じだから、驚いてる

 

 るいさんは不利って言ってたのに

 

 裏サイトがあるにしても、ちょっとおかしい

 

 どうゆうこと......?

 

 “楓”

 

 流石は八潮さんだ

 

 ちゃんと、良い演説をしてくれた

 

 実際の僕はあんなに大層な人間じゃないんだけど

 

 でも、今日のところはいいかな

 

 ......後々プレッシャーになるけど

 

『次に、衛宮楓さんの演説です。』

楓「はい。」

 

 僕は返事をして、ゆっくり前へ歩く

 

 ここだ、ここしかない

 

 色も、雰囲気も、八潮さんのお陰で申し分ない

 

楓『この度、生徒会長に立候補しました、衛宮楓です。これから、演説をしたいと思います。ですが......』

瑠唯「......?」

 

ましろ(え......?)

 

 僕は演説を始める前に、原稿用紙を折り

 

 それをそのまま、演説台に叩きつけた

 

 ここまでが、僕の作戦だ

 

 後やることは、ありったけをぶつけるだけだ

 

楓『僕には、前もって作った原稿なんて必要ない。この場で、僕自身の言葉を聞いてください!』

瑠唯「!!」

 

透子(はぁ!?)

七深(まさか、ここで~!?)

つくし(お、思い切りすぎだよ!!)

ましろ(そ、そんな......!)

穂希(馬鹿な......!?)

 

 会場中が驚きの色で染まる

 

 いいタイミングだった

 

 後は、やりきるだけだ!

 

楓『皆さんは、頑張ってる人についてどう思いますか?』

 

ましろ「......!」

 

 僕はそう言って周りを見渡した

 

 結構、考え込んでる人が多いな

 

 流石は月ノ森生

 

楓『何かを頑張ってる人は例外なく、色が綺麗になるんです。僕の中で、頑張ってる人というのは、こういう意味です。』

 

 だから僕は、5人の色が好きだ

 

 見ていると、胸の奥が温かくなって

 

 活力がもらえるから

 

楓『月ノ森はそういう人が多いです。誰もが一流と呼ばれ、そこに行きつくまでに努力をしている。それは決して当たり前ではなく、その頑張りはすごく尊いものです。』

 

 月ノ森は毎日、部活動がある

 

 そこで頑張ってる人たちのことは見たことがある

 

 その光景も僕は好きだ

 

楓『......けど、そうじゃない人だって、こんなに生徒がいればいます。』

 

 色が変わった

 

 今度は緊張の色だ

 

楓『また質問します。一流とはなんですか?』

 

 一流とは、何か

 

 その質問の答えはこの学校なら三者三様だ

 

 一流の解釈なんて、一定じゃないんだから

 

楓『凡人の僕が夢見る一流は、己に厳しく他に優しい。能力はもちろんのこと、頑張ってる人がいれば認められる人です。』

 

 所詮は夢、幻想

 

 そうなれない人間は現実を語れない

 

 けど、僕は見たんだ

 

 そういう、一流を

 

楓『......そんな理想を持つ僕だからこそ、頑張ってる人を認めることはあっても、貶すことなんて、許せないんですよ......』

 

ましろ「......っ!」

全校生徒「!?」

 

 自然と拳に力が入る

 

 あの人を顔を思い出すと、怒りが湧いてくる

 

 こんな気持ち、初めてだ

 

楓『頑張ってる人を馬鹿にするなんて、どんな人にも許されない!!!それで泣いてる人がいるなら、僕は断固として戦うっ!!!それが大切な人のためなら、なおさらだっ!!!』

 

 “ましろ”

 

ましろ「!__あっ。」

 

 衛宮君の言葉を聞いて、涙が流れた

 

 こんなに、怒ってくれてたんだ

 

 私のために......

 

楓『この間まで、僕は別に生徒会長の立場になんて興味はなかった......けど、ある出来事から、変えたいと思ったんです......今、夢中になってバンドを頑張ってる、大切な人のために。』

 

ましろ「......!///」

 

 衛宮君はそう言って、私を見た

 

 大切な人......そう言われて、嬉しい

 

 私がそう思ってるのをよそに

 

 衛宮君は大きく空気を吸い込んで

 

 おいてあるマイクをつかんだ

 

楓『だから!僕はこの学校を変える!!!良くできるかは分かりません......けど、誰かを不幸にするつもりも毛頭ありませんっ!!!』

 

 衛宮君は言い切ったのかマイクを置き

 

 演説台の横に立って

 

 深く頭を下げた

 

楓「お願いします!!!頼りないかもしれませんが、僕に力を貸してくださいっ!!!絶対に後悔はさせませんっ!!!」

 

ましろ、透子、七深、つくし、瑠唯「!!」

 

 会場がシンと静まり返る

 

 私たちも、動けない

 

ましろ(ど、どうなるの......?)

透子(なんだ、この空気。)

七深(せ、成功?失敗?)

つくし(お願い......っ!)

瑠唯(......これは。)

 

 その時、パチパチと拍手の音が聞こえてきた

 

 この空間の中でそれはあまりにも目立って

 

 皆、その方向に目を向けた

 

凪沙「あははっ!いいじゃないか、楓!」

楓「!」

凪沙「いいねぇ!さすが僕の弟だ!」

 

 衛宮先生が後ろから舞台の方に歩いていく

 

 その姿に皆が注目して

 

 誰も、喋ろうとも動こうともしない

 

 周りにいる、先生たちまでも

 

凪沙「立派になったね、楓。」

楓「お兄、ちゃん......」

 

ましろ「!」

 

 衛宮先生が舞台に着いて、笑顔でそう言った瞬間

 

 周りから一斉に拍手が起きた

 

ましろ「!(や、やった......!)」

透子「いいぞー!衛宮ー!」

七深「かえ君~!かっこいいよ~!」

つくし「すごい!すごいよ!衛宮君!」

 

 鼓膜が破れちゃいそうなくらい大きな音がしてる

 

 これ全部が衛宮君に向けられてるんだ

 

 す、すごい......!

 

「素晴らしい、素晴らしい演説だった!」

「気持ちが伝わってきたよ!」

「私は衛宮君の味方です!」

「彼こそ、生徒会長に相応しい!」

「大切な人のために戦うなんて......私、感動しましたわ!」

 

 そんな声も出始め

 

 全員が席から立ち上がった

 

 スタンディングオベーションだ

 

 まるで、ライブみたい

 

『これから、投票を行います。手元にある用紙に生徒会長に相応しいと思った候補者の欄に丸を付け、担任の先生に提出してください。』

 

 盛り上がりも冷めない中、投票開始のアナウンスがされ

 

 全員が一度席に座り、用紙に記入を始めた

 

 私も、もちろん衛宮君の欄に丸をつけて

 

 心の中で祈りつつ、先生に用紙を提出した

 

 “楓”

 

楓「はぁ、はぁ......」

 

 声を出しすぎて、疲れた

 

 頭がフラフラする

 

 血が上っちゃったのかな......

 

瑠唯「お疲れ様、衛宮君。」

楓「は、はい......八潮さんも、ありがとうございました。」

瑠唯「いいえ、気にしないで。いい演説だったわ。」

 

 八潮さんは笑みを浮かべながら、そう言ってくれた

 

 よかった......

 

 正直、一か八かというか

 

 下手をすれば失敗するかもしれなかったから

 

瑠唯「これから、投票用紙の回収と開票作業があるわ。それまでは待機よ。」

楓「は、はい。」

 

 取り合えず、下がった方がいいのかな

 

 そう思って、僕は舞台袖の方に行こうとした

 

 その時......

 

穂希「__こ、こんなの、み、認めませんわっ!!!」

 

 舞台袖から白鳥さんが出て来て

 

 僕の方に向かってそう叫んだ

 

 まだ、終わりじゃないみたいだ

 

 そう思い、僕は狂った色をした白鳥さんと向き合った

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。