目の前には恐ろしい色をした白鳥さんがいる
色が見えなくても怒ってるのが分かるだろうから
色が見える分、足がすくみそうなほど怖い
穂希「なぜ!あなたごときがあのような称賛を浴びるんですの!?」
楓「......僕ごとき、だからですよ。」
穂希「は?」
僕は体の震えを抑え
白鳥さんに向けてそう言った
そう、今回の作戦はここから始まったんだ
楓「僕ごときだから、慢心しなかったんです。」
瑠唯「!」
穂希「それは、どういうことですの!?」
そんなに難しい話じゃない
僕がしたのはただ1つのことだけだ
楓「僕は白鳥さんの行動を見て、全く逆の行動をとったんです。」
穂希「!?」
楓「代表例はあの挨拶です。その他には白鳥さんがゴミを拾わなければ拾ったりだとか、人に辛く当たれば僕は優しく接したんです。」
瑠唯(それは、いつもの事じゃないかしら?)
これが僕が考えた作戦
ただ、白鳥さんと逆の行動をするだけ
例えそれが良いことでも悪いことでも
まぁ、悪いことをする必要はなかったんだけど
穂希「それだけで、私が負けるわけが......」
楓「......まだ、勝負はついてませんよ。」
穂希「っ......!」
楓「でも、一つ、言えることがあります。」
僕はそう言い、白鳥さんをジッと見た
普通なら、僕が言えることなんてない
けど、今なら、ある
楓「白鳥さんは、捨ててはいけないものを捨てたんです。」
穂希「捨ててはいけない、もの......?」
楓「それは......」
輝きを失った人が失ってるものは色々ある
けど、色の種類によってある程度は絞れる
今の白鳥さんの場合は......
楓「心です。」
穂希「!!」
白鳥さんの顔と色が歪んだ
思い当たる節がある......わけじゃない
まだ、本人の意識の外だ
楓「僕は白鳥さんをよく知りません。けど、今のあなたが心を失ってることは分かります。」
穂希「......色、ですか。」
楓「はい。」
穂希「......」
僕にはわかる
実際、この人はそんなに悪い人じゃない
ただ、歪んでいってるだけなんだ
楓「きっと、生徒会長候補と言われ始めた時のあなたは、こんな風じゃなかったはずです。」
穂希「っ......!」
楓「何か、苦しいことがあったんだと思います。あなたの色、泣いてますから。」
穂希「......っ」
瑠唯(泣いてる......?)
僕がそう言うと、白鳥さんはペタリとへたり込んだ
もう、色は落ち着いてる
怒りは収まったみたいだ
穂希「......なぜっ。」
楓「?」
穂希「なぜっ、敵である私を責めないのですか......あんなに、怒っていたというのに......」
白鳥さんは震えた声でそう聞いて来た
それに僕は少しだけ笑みを浮かべて
ゆっくり口を開いた
楓「敵であろうと何であろうと、泣いてる人がいたら助けませんか?それとこれとは話が別ですし。」
穂希「......」
楓「?」
どうしたんだろ?
白鳥さん、固まっちゃった
えっと、まだ何かあるのかな?
穂希「......はぁ。」
楓「白鳥さん。」
穂希「本来、立候補者に投票義務はありませんが......」
ブツブツと何か言いながら
白鳥さんは渡されてた投票用紙に記入し始め
それを開票作業をしてる人たちに渡した
穂希「仕方ありませんわね......」
『__開票結果を発表します。』
楓「!」
アナウンスの人が話し始めた
結果、出たんだ
『今回、生徒会長に就任する立候補者は......』
穂希(......完敗、ですわね。)
『月ノ森で史上初の生徒票、教師票ともに満票を獲得した、衛宮楓さんとなります!』
全校生徒『おぉぉぉぉ!!』
ましろ「や、やった......!」
つくし「す、すごい!満票だよ!?」
透子「ま、マジ!?」
七深「かえ君が、生徒会長だ~!」
ほ、本当に勝っちゃった......
ていうか、月ノ森史上初って聞こえたんだけど
気のせい、じゃないよね......?
穂希「負けましたわ。選挙でも、人としても。」
楓「白鳥さん......」
穂希「何を沈んだ顔をされてるんですか?私は別に、そこまで落ち込んでませんの。」
白鳥さんはそう言い
晴れやかな笑顔を浮かべた
色が変わってる
まだ完全じゃないけど、綺麗な色になってる
穂希「これは転機です。自分自身と人生を振り返り、さらなるステップへ歩を進めるための。」
楓「!」
穂希「胸を張りなさい。今日からあなたは生徒会長......そして、私のライバルですわ。」
そう言って、白鳥さんは舞台袖の方に歩いて行った
その姿は堂々としていて
勝者のような風格すらあった
楓(僕、あんな人によく勝てたなぁ......)
瑠唯「お疲れ様、衛宮君。」
楓「八潮さん?」
白鳥さんが去っていくと
今度は八潮さんが話しかけてきた
少しだけ、困ったような色をしてる
どうしたんだろう?
瑠唯「待ってるわよ、彼女が。」
楓「あー......」
八潮さんはそう言って、ある方向を指さし
そこを見ると、目から大粒の涙を流す1人の女の子がいた
楓「い、行ってきます。」
瑠唯「えぇ、行ってあげなさい。きっと喜ぶわ。」
僕は少し苦笑いを浮かべて、その子の方に歩いた
瑠唯(今日だけは譲ってあげるわ。)
“ましろ”
衛宮君が、勝った......
本当に、生徒会長になっちゃった
楓「倉田さん。」
ましろ「え、衛宮君......」
衛宮君が舞台の方から歩いて来た
え、なんで?
舞台から降りてもいいの......?
楓「今日はよく泣くね?」
困ったような口調でそう言う衛宮君
だって、仕方ないよ
色んなことがあったんだもん......
ましろ「だって、だってぇ......!」
楓「あはは、ハンカチ使う?」
ましろ「......うん。」
そう頷くと、衛宮君はハンカチを貸してくれた
秋の香りがする......
朝と、同じだ
楓「ねぇ、倉田さん?」
ましろ「......?」
楓「ねっ?大丈夫だったでしょ?」
ましろ「......っ!!」
笑顔でそう言われ
私の目から、また涙が流れてきた
よかったっ
バンド、やめることにならなくてよかったっ
そんな思いで、胸がいっぱいになって
安心して、涙が止まらなくなる
楓「えぇ!?ど、どうしたの!?」
ましろ「だいじょうぶっ、嬉し涙だから......!」
楓「そ、そう?」
衛宮君は心配そうに私を見てる
本当に、優しい
私のためにここまでしてくれて
全力で、大きな相手に立ち向かって
本当に、私を助けてくれた
ましろ「ありがとうっ、衛宮君っ!///」
思いが溢れる
胸の高鳴りが治まらない
私を助けてくれた、ヒーローのような男の子への
私が恋する男の子への思いが止まらない
ましろ「大好きだよ、衛宮君っ!///」
つくし、透子、七深、瑠唯「!?(なっ!?)」
気づけば、そんな言葉が出ていた
周りの目なんてどうでもよかった
ただただ、この思いを伝えたかった
いつも優しくて、私を助けてくれる
そんな衛宮君が、私は大好きだって
今まで以上に、そう思えたから
_____________________
翌日、私は学校に来た
大きな問題も解決して
私の平和な日常が......
ましろ(あああああ~!!!////)
帰ってきたと思ったら、新しい問題が発生しました
完全に自業自得なんだけど
昨日のあれがあったから、衛宮君と顔を合わせるのが恥ずかしい
どうしよう......
透子「__よー、公開告白したシロー。」
ましろ「!?///」
七深「情熱的な告白だったね~。」
つくし「ここぞとばかりにねー。」
瑠唯「......あなたに羞恥心はないのかしら。」
ましろ「ご、ごめんなさい......///」
皆はそれはもう怒ってます
だって、完全に抜け駆けしちゃったし
仕方いよね、これは......
透子「まっ、いーけどね。」
ましろ「え?」
透子「これで、シロが最初に脱落する可能性も出てきたわけだし!」
ましろ「あっ......」
透子ちゃんの一言で血の気が引いた
そうだ、これでフラれたら、初恋が終わるんだ......
どうしよう、怖い......
七深「も~、意地悪いっちゃだめだよ~?」
透子「あはは!ごめんごめん!」
つくし「もう......ましろちゃん、泣きそうになってるよ?」
ましろ「うぅぅ......」
楓「__あれ?皆、こんなところで何してるんですか?」
ましろ、透子、つくし、七深、瑠唯「!!」
え、衛宮君来ちゃった!?
わざわざ空き教室借りたのに__
......って、衛宮君には意味ないよ!(今更)
楓「バンドの会議ですか?」
透子(......ん?)
七深(あれ~?)
つくし(え?)
瑠唯(......?)
......あれ?
衛宮君、いつも通りだ
照れてる様子も気まずそうな様子もない
いつも通り、可愛い衛宮君だ
楓「どうかしましたか?」
七深「い、いや~......」
透子「えっと、し、シロ?」
え、ここで振るの?
いや、こういう事は自分で聞かないとだめだよね
ましろ「衛宮君、その......昨日のことだけど......///」
楓「昨日?」
ましろ「あの、私、大好きって......///」
楓「あー、あれのこと?」
よ、良かった、忘れてたわけじゃないみたい
忘れられてたら心折れてたよ
ましろ「へ、返事とか、ないかなって///」
楓「僕も大好きだよ?」
ましろ「え......っ!?///」
透子、つくし、七深、瑠唯「......っ!?」
衛宮君はあっさりとそう答えた
え?これって両想い!?
まさか、お付き合いとか......!
楓「お友達として!」
ましろ「__え?」
透子、つくし、七深、瑠唯「えっ?」
楓「僕、演説中に大切な人とか言っちゃったから、倉田さんも困ってるかなって思ったんだけど......同じように思ってくれてて、嬉しかったよ!」
その場にいる全員が呆気にとられた
まさか、これって
衛宮君は友達として私を大切な人って言ってたから
私の大好きも友達に向けるものと思ってる?(大正解)
ましろ「......」
楓「えっと、どうしたの?」
透子(ま、マジか......)
七深(かえ君......)
つくし(さっきはちょっと怒ってるついでにいじってたけど......)
瑠唯(これは流石に不憫ね。)
あー、うん
何となく、こんなこともある気はしてたよ?
でも、今回は流石に大丈夫だと思ってた
あんなに最高のシチュエーションだったし
今度こそ、気持ち、伝わったと思ったのに......
ましろ「......衛宮君の......」
楓「?」
ましろ「衛宮君のバカー!!うわーん!!」
楓「えぇ!?」
私は恥ずかしさでまた泣いてしまった
衛宮君はそんな私を見てオロオロしてる
なんで、こんなに鈍感なの......?
気づいてくれてもいいよね?
私、頑張ったよね......?
透子、七深、つくし、瑠唯(......ご愁傷様。)
楓「ご、ごめんなさい!何か分からないけど、ごめんなさい!」
ましろ「わかってよーっ!ばかーっ!」
衛宮君はこうして、生徒会長になった
月ノ森で初めての、外部生からの生徒会長
本当にすごいと思う......けど
衛宮君は、どんな立場になっても衛宮君みたいです