色の少年   作:火の車

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カウントダウン

 体育祭の朝、僕は少し早めに家を出た

 

 今日はいつもより集合時間は遅いけど

 

 家にいても落ち着かなかったのと、今は倉田さんと会うのが気まずいのがある

 

楓「はぁ......(どうしよう......)」

 

 あの色、結構前から出てた

 

 つまり、僕はかなりの間みんなに好意を持たれてたってことだ

 

楓(......なんで、僕なんかを......)

 

 勿論、嬉しい気持ちもある

 

 何の取り柄もない僕に好意を持ってくれてるんだ

 

 嬉しくないなんて、口が裂けても言えない

 

 けど、それでも思う

 

 ......出来る事なら、気づきたくなかった

 

楓「......っ」

 

 ギュっと、服の胸元を掴んだ

 

 最近、虚勢を張って来たけど、分かる

 

 先生の言ってた通り、僕はもう長くはない

 

 この心臓の鼓動一つ一つも、最近の体の好調も

 

 全部が、終わりへのカウントダウン

 

楓(......心のどこかでは気づいてたんだ。僕に、来年や再来年がないことくらい。)

 

 高校生になってからのこの数か月は誰かからのお情けだって、何となく感じてた

 

 こんなに体の調子がいいこと、約16年生きてなかったもん

 

 今までの僕ならきっと、オリエンテーションの時点で命はなかった

 

楓(あと、どのくらい力は残ってるのかな。)

 

 もうすぐそこに限界の気配を感じる

 

 きっと、もう何回か全力で動いたら......なんて、そんな予感がする

 

 あと1回が__

 

楓「......いいや。」

 

 考えないことにしよう

 

 まだ分からない

 

 1%......いや、0.1%だけでも可能性があるなら

 

 気持ちで体は動かせる

 

楓「行ける......まだ。」

「__そこの君。」

楓「はい?」

 

 しばらく足を止めてると、声をかけられた

 

 後ろを向くと、そこには警察の人と不安そうな色を身に纏ってる女性と男性と男の子が立っていた

 

 この色、ただ事じゃない

 

 どうしたんだろう_

 

楓「どうしましたか?すごく困ってるようですけど。」

「す、すみません!うちの、うちの娘を見ませんでしたか!?」

楓「え?」

 

 後ろの女性が悲鳴のような声でそう言った

 

 これ、本当にただ事じゃないみたい

 

警官「お母さん、落ち着いてください。申し訳ない。だが、急を要することなんです。」

楓「いえ、大丈夫です。それより、何があったんですか?」

警官「実は、昨日の夕方頃この方たちの娘さんが誘拐されたと通報が入ったんです。」

楓「えっ!?」

 

 思わずそんな声が出た

 

 この辺りでそんなことが起きたの初めて見た

 

 大変どころの話じゃない

 

警官「一晩捜査をしたんですが、未だに手掛かりはなく。今は聞き取り中なんです。」

楓「そ、そうなんですか。それは......」

警官「それでなんですが、この女の子に見覚えはないでしょうか?些細な情報でもいいんです。」

 

 そう言って、一枚の写真を見せられた

 

 活発そうな、髪の短い女の子だ

 

楓「......すみません、見てないですね。」

「そ、そんな......」

「お、落ち着いて。他の警察の方も動いてくれてるから、諦めず探そう。」

「うぅ......どこにいるの......?」

楓「......っ!」

 

 後ろのご両親2人の恐怖、後悔、悲しみの色が濃い

 

 それはそうだ

 

 だって、家族が誘拐されたんだから

 

 怖いに決まってるんだ......

 

「......お、俺のせいだ......」

楓「!」

 

 そんな涙声が少し下から聞こえた

 

 声のした方に視線を移すと

 

 そこには、大粒の涙を流して、小刻みに震えてる男の子の姿があった

 

「俺が、トイレに行っちゃったから......ずっと、一緒にいれば......」

警官「君のせいじゃない。大丈夫だ、落ち着いて。」

楓「......っ!」

 

 泣いてる男の子を警察の人が慰めてる

 

 この男の子、誰よりも後悔の色が濃い

 

 いや、あまりにも濃すぎる

 

 もし、誘拐された女の子に何かあったら......

 

楓「......あの、すみません。」

警官「どうかしましたか?何か、思い当たることでも?」

楓「いえ、思い当たることはないんですけど。その捜査、僕にも協力させてください。」

 

 僕は警察の人に向けてそう言った

 

 多分だけど、もし女の子に何かあったら、この男の子はダメになる

 

 思いつめて、もしかしたら、死んでしまうかもしれない

 

 そんな色をしてる

 

警官「気持ちは嬉しいが、流石に__」

楓「僕なら、その子を必ず見つけられます。」

警官「......なんだって?」

 

 警官の人は目を丸くした

 

 あまりにも自信があるように見えたからかな

 

警官「......それは、本当ですか?」

楓「はい。絶対に見つけます。何か、その女の子の私物とかありませんか?」

「そ、それなら......」

 

 男の子はそう言ってランドセルを開け

 

 その中から、ピンクの花柄のハンカチを取り出した

 

 恐らく、女の子のものだ

 

「トイレから出た時、これだけ落ちてた......」

楓「ありがとう。これなら、見つけられる。」

 

 僕はハンカチを凝視し

 

 そして、集中して過去の色を見た

 

 この色が見られれば、見つけられ__

 

楓「__うぐっ......!!!」

警官「!?」

 

 その時だった

 

 目の奥と心臓が焼けるように熱くなり

 

 それと同時に激しい激痛に襲われた

 

警官「だ、大丈夫か!?」

楓「だ、大丈夫、です。」

 

 ......なるほど

 

 これって、そう言うことだったんだ

 

楓(......いわさん言ってたっけ。人間には過ぎた力だって。)

 

 それはそうだよね

 

 神様が使うものだって聞いてるもん

 

 人間、ましてや僕なんかがノーリスクで使えてるわけないよね

 

楓(......ここで、か。)

警官「ほ、本当に大丈夫か?」

楓「......大丈夫ですよ。」

 

 僕はノソっと立ち上がった

 

 心臓が信じられないくらい動いてる

 

 まるで、カウントダウンのスピードが上がったみたいに

 

楓(......ごめんなさい、皆。)

 

 きっと、僕の人生の正解は皆と少しでも長く一緒にいることだと思う

 

 最後に良い思い出をくれた皆に恩返しをする

 

 それが、僕にとって正しいんだと思う

 

 けど......

 

楓(僕に、正しいだけの判断なんて出来ないんです。)

 

 思い切り歯を食いしばった

 

 ここでこの人たちを見捨てたら、きっと僕は後悔する

 

 こんな我が儘で、本当に皆に申し訳ない

 

 けど、これが僕だから

 

 この短い人生で悔いなんて残したくはない

 

 だから、死んでもこの人たちを助けるんだ

 

 

 

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