あれから、どれくらい時間が経ったのだろう
病院に来たときはまだ朝だったのに、今は日が傾いてる
なんだか、時間が一瞬で時間が経った気がする
瑠唯「......」
あれから、色んな人が来ていた
衛宮君のご両親は泣いていた
警察官の人は衛宮君に何があったのかを説明し
衛宮君に助けられた女の子とその家族は頭を下げていた
瑠唯(......どうして。)
衛宮君はかけがえのない命を救った
それは立派な行いだし、誇ってもいい
そう頭では理解してる、でも到底納得は出来ない
なぜ、体が弱ってた彼の前に現れたの?
なぜ、彼は助けようとしたの?
なぜ......私たちを選んでくれなかったの......?
瑠唯「......なんでなの......衛宮君......っ?」
ポタポタと水滴が床に落ちていく
胸が締め付けられて、苦しくて、死にたくなる
その原因は彼があんな状態になってしまったことだけじゃない
私達より、見ず知らずの少女が選ばれた悔しさ
それが私の心を締め上げてくる
透子「__ルイ。」
瑠唯「っ......!桐ケ谷さん......」
透子「泣いてんの?」
顔を上げると、そこには桐ケ谷さんが立っていた
いつもとは雰囲気が少しだけ違う
きっと、今の衛宮君を見たのね
瑠唯「......」
透子「隠さなくていいよ。分かってるから。」
瑠唯「......他の、3人は。」
透子「泣いてる。」
瑠唯「......そう。」
容易に想像がつく
特に広町さんの彼への思いは群を抜いていたもの
けど、おかしい
瑠唯「......あなたは、平気そうね。」
桐ケ谷さんが妙に落ち着いてる
いつもより少し暗いけれど
絶望してる様子はない
透子「全然、平気じゃない。正直、悲しいし、辛い。」
瑠唯「っ!」
平気なわけ......ないわよね
よく見れば、体が震えてる
きっと、必死に耐えてるんだわ
透子「でも、あたしは衛宮の病気のこと知ってたし。何より、衛宮が自分で選んで、納得してるなら、あたしはそれでいい。」
瑠唯「......えっ?」
私は耳を疑った
なぜ、そんなことが言えるの?
あなたも彼に好意を持ってたのに
なぜ、そんな言葉が出てくるの?
瑠唯「ふざけないで......っ!あなた、衛宮君が死んでしまっていいというの......!?」
透子「......そんなんじゃない。」
瑠唯「なら、なぜ......っ!!」
透子「!!」
私は桐ケ谷さんの胸倉をつかんだ
けれど、桐ケ谷さんは少し驚いただけで
すぐに冷静な表情に戻った
透子「......好きっていう感情はさ、そんなに一方的なものなわけ?」
瑠唯「っ!」
その言葉を聞いて、私は力が抜けた
それで、桐ケ谷さんから手が離れた
透子「あいつは、生まれた時から病気や周りからの風当たりに苦しんできた。天才の兄と比べられて、親戚からは心無い言葉だって吐かれたと思う。でも、あいつは人間に失望しなかった。それどころか、自分に優しくしてくれた数少ない人間と同じように、誰かの役に立とうと必死だった。」
......何も言えない
私の知りえなかった彼の過去を彼女は知ってる
彼にとって、頼れる存在だったはずなのに
なんで......っ
透子「もう、いいじゃん......解放されても。」
瑠唯「......!」
桐ケ谷さんからポタポタと涙が落ちた
そして、話を続けた
透子「あいつが満足して、悔いなく人生を終えられるなら、あたしはそれでいい。これ以上、無理に生きて苦しむ姿は見たくない。」
瑠唯「......!」
透子「ルイは、そう思わないわけ......?」
瑠唯「......」
......何も言えない
私は今まで、大きな病気になったことがない
そんな私に、彼に生を強要する資格はない
透子「勘違いしないで欲しいけど、あたしは別に衛宮に死んでほしいわけじゃない。けど、もしそうなったら、あたしはあいつを悲しい顔で見送ることだけは絶対にしたくない。」
瑠唯「......」
透子「......あたしは衛宮の大切にしてたもの、守るから。」
瑠唯「っ!」
桐ケ谷さんはそう言って
こちらに背中を向けた
透子「......ルイ。辛いかもしれないけどさ、一緒に衛宮を見送ろ。衛宮の友達として......あいつを好きになった仲間として。」
瑠唯「......」
そう言って、彼女は部屋を出て行った
その後も、私はその場に立ち尽くした
瑠唯(......私は。)
どうするのが正解なのか、分からない
彼女の話に納得した部分はあった
彼を悲しまないように見送るのは、確かに正しい
......でも、全てに納得できるかと言えば、そうではない
瑠唯「......私は、どうすれば......」
今の私には分からない
けど、早く答えを出さないといけない
彼の命が明日明後日と続いてる保証はないし
......彼を悲しませて、後悔したくないから
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“楓”
楓「......んっ......?」
目を覚ますと、そこは薄暗い石で出来た道だった
見た感じ結構凸凹してる場所で寝転んでたのに、痛みを感じない
なんだか不思議な感覚だ
楓「ここは......あっ。」
ここはどこだろう、なんて疑問はすぐに吹き飛んだ
だって、分かったから
ていうか、これしかないよね
楓「死んだんだ、僕。」
特に驚きはしなかった
あんなに無理をしたし、当たり前だ
むしろ、生きてる方が自分を疑いたくなる
楓「......そっか。」
後悔はない
僕は最後に最善を尽くした
そして、僕よりずっと長く生きていく命を救えた
楓「よかった......」
僕は使命を果たせたのだろうか
たくさんの人に支えてもらった分、頑張れたのかな
楓「さぁ、行こう......どこに行くか分からないけど。」
ていうか、自我って残るものなのかな?
よく分からないけど
まぁ、なるようになるだろうし、いいかな
?「__やっと、来てくれた。」
楓「!?」
僕が歩き出そうとした瞬間
後ろから、女の人の声が聞こえた
あれ、さっきまでいなかったのに......
いつの間に......?それに......
楓(この人、色がない。いわさんみたいだ。)
?「あなたが、私の呪いを受け継いだ子供なんだね。」
楓「え?」
その人は僕を見ながらそう言った
私の呪い?......って、あれ?
この人、どこかで......
織衣「私は、衛宮織衣。あなたの先祖だよ。」
楓「やっぱり。」
いわさんに見せてもらった通りだ
姿は最期の時のままなのか、体は若いままのに髪は白い
この人が、僕のご先祖様なのか
織衣「少し、お話しない?」
楓「?」
織衣さんはそう言い、自分の隣をポンポンと叩いた
僕はそれを見て少し首を傾げたけど、特にすることもなかったので、僕は言われた通りそこに腰を下ろした
その間、織衣さんは僕を見ながらずっと穏やかに笑っていた