色の少年   作:火の車

77 / 86
納得

 あれから、どれくらい時間が経ったのだろう

 

 病院に来たときはまだ朝だったのに、今は日が傾いてる

 

 なんだか、時間が一瞬で時間が経った気がする

 

瑠唯「......」

 

 あれから、色んな人が来ていた

 

 衛宮君のご両親は泣いていた

 

 警察官の人は衛宮君に何があったのかを説明し

 

 衛宮君に助けられた女の子とその家族は頭を下げていた

 

瑠唯(......どうして。)

 

 衛宮君はかけがえのない命を救った

 

 それは立派な行いだし、誇ってもいい

 

 そう頭では理解してる、でも到底納得は出来ない

 

 なぜ、体が弱ってた彼の前に現れたの?

 

 なぜ、彼は助けようとしたの?

 

 なぜ......私たちを選んでくれなかったの......?

 

瑠唯「......なんでなの......衛宮君......っ?」

 

 ポタポタと水滴が床に落ちていく

 

 胸が締め付けられて、苦しくて、死にたくなる

 

 その原因は彼があんな状態になってしまったことだけじゃない

 

 私達より、見ず知らずの少女が選ばれた悔しさ

 

 それが私の心を締め上げてくる

 

透子「__ルイ。」

瑠唯「っ......!桐ケ谷さん......」

透子「泣いてんの?」

 

 顔を上げると、そこには桐ケ谷さんが立っていた

 

 いつもとは雰囲気が少しだけ違う

 

 きっと、今の衛宮君を見たのね

 

瑠唯「......」

透子「隠さなくていいよ。分かってるから。」

瑠唯「......他の、3人は。」

透子「泣いてる。」

瑠唯「......そう。」

 

 容易に想像がつく

 

 特に広町さんの彼への思いは群を抜いていたもの

 

 けど、おかしい

 

瑠唯「......あなたは、平気そうね。」

 

 桐ケ谷さんが妙に落ち着いてる

 

 いつもより少し暗いけれど

 

 絶望してる様子はない

 

透子「全然、平気じゃない。正直、悲しいし、辛い。」

瑠唯「っ!」

 

 平気なわけ......ないわよね

 

 よく見れば、体が震えてる

 

 きっと、必死に耐えてるんだわ

 

透子「でも、あたしは衛宮の病気のこと知ってたし。何より、衛宮が自分で選んで、納得してるなら、あたしはそれでいい。」

瑠唯「......えっ?」

 

 私は耳を疑った

 

 なぜ、そんなことが言えるの?

 

 あなたも彼に好意を持ってたのに

 

 なぜ、そんな言葉が出てくるの?

 

瑠唯「ふざけないで......っ!あなた、衛宮君が死んでしまっていいというの......!?」

透子「......そんなんじゃない。」

瑠唯「なら、なぜ......っ!!」

透子「!!」

 

 私は桐ケ谷さんの胸倉をつかんだ

 

 けれど、桐ケ谷さんは少し驚いただけで

 

 すぐに冷静な表情に戻った

 

透子「......好きっていう感情はさ、そんなに一方的なものなわけ?」

瑠唯「っ!」

 

 その言葉を聞いて、私は力が抜けた

 

 それで、桐ケ谷さんから手が離れた

 

透子「あいつは、生まれた時から病気や周りからの風当たりに苦しんできた。天才の兄と比べられて、親戚からは心無い言葉だって吐かれたと思う。でも、あいつは人間に失望しなかった。それどころか、自分に優しくしてくれた数少ない人間と同じように、誰かの役に立とうと必死だった。」

 

 ......何も言えない

 

 私の知りえなかった彼の過去を彼女は知ってる

 

 彼にとって、頼れる存在だったはずなのに

 

 なんで......っ

 

透子「もう、いいじゃん......解放されても。」

瑠唯「......!」

 

 桐ケ谷さんからポタポタと涙が落ちた

 

 そして、話を続けた

 

透子「あいつが満足して、悔いなく人生を終えられるなら、あたしはそれでいい。これ以上、無理に生きて苦しむ姿は見たくない。」

瑠唯「......!」

透子「ルイは、そう思わないわけ......?」

瑠唯「......」

 

 ......何も言えない

 

 私は今まで、大きな病気になったことがない

 

 そんな私に、彼に生を強要する資格はない

 

透子「勘違いしないで欲しいけど、あたしは別に衛宮に死んでほしいわけじゃない。けど、もしそうなったら、あたしはあいつを悲しい顔で見送ることだけは絶対にしたくない。」

瑠唯「......」

透子「......あたしは衛宮の大切にしてたもの、守るから。」

瑠唯「っ!」

 

 桐ケ谷さんはそう言って

 

 こちらに背中を向けた

 

透子「......ルイ。辛いかもしれないけどさ、一緒に衛宮を見送ろ。衛宮の友達として......あいつを好きになった仲間として。」

瑠唯「......」

 

 そう言って、彼女は部屋を出て行った

 

 その後も、私はその場に立ち尽くした

 

瑠唯(......私は。)

 

 どうするのが正解なのか、分からない

 

 彼女の話に納得した部分はあった

 

 彼を悲しまないように見送るのは、確かに正しい

 

 ......でも、全てに納得できるかと言えば、そうではない

 

瑠唯「......私は、どうすれば......」

 

 今の私には分からない

 

 けど、早く答えを出さないといけない

 

 彼の命が明日明後日と続いてる保証はないし

 

 ......彼を悲しませて、後悔したくないから

___________________

 

 “楓”

 

楓「......んっ......?」

 

 目を覚ますと、そこは薄暗い石で出来た道だった

 

 見た感じ結構凸凹してる場所で寝転んでたのに、痛みを感じない

 

 なんだか不思議な感覚だ

 

楓「ここは......あっ。」

 

 ここはどこだろう、なんて疑問はすぐに吹き飛んだ

 

 だって、分かったから

 

 ていうか、これしかないよね

 

楓「死んだんだ、僕。」

 

 特に驚きはしなかった

 

 あんなに無理をしたし、当たり前だ

 

 むしろ、生きてる方が自分を疑いたくなる

 

楓「......そっか。」

 

 後悔はない

 

 僕は最後に最善を尽くした

 

 そして、僕よりずっと長く生きていく命を救えた

 

楓「よかった......」

 

 僕は使命を果たせたのだろうか

 

 たくさんの人に支えてもらった分、頑張れたのかな

 

楓「さぁ、行こう......どこに行くか分からないけど。」

 

 ていうか、自我って残るものなのかな?

 

 よく分からないけど

 

 まぁ、なるようになるだろうし、いいかな

 

?「__やっと、来てくれた。」

楓「!?」

 

 僕が歩き出そうとした瞬間

 

 後ろから、女の人の声が聞こえた

 

 あれ、さっきまでいなかったのに......

 

 いつの間に......?それに......

 

楓(この人、色がない。いわさんみたいだ。)

?「あなたが、私の呪いを受け継いだ子供なんだね。」

楓「え?」

 

 その人は僕を見ながらそう言った

 

 私の呪い?......って、あれ?

 

 この人、どこかで......

 

織衣「私は、衛宮織衣。あなたの先祖だよ。」

楓「やっぱり。」

 

 いわさんに見せてもらった通りだ

 

 姿は最期の時のままなのか、体は若いままのに髪は白い

 

 この人が、僕のご先祖様なのか

 

織衣「少し、お話しない?」

楓「?」

 

 織衣さんはそう言い、自分の隣をポンポンと叩いた

 

 僕はそれを見て少し首を傾げたけど、特にすることもなかったので、僕は言われた通りそこに腰を下ろした

 

 その間、織衣さんは僕を見ながらずっと穏やかに笑っていた

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。