色の少年   作:火の車

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1人語り

 かえ君が生死を彷徨ってる

 

 その知らせが来たのは体育祭の真っ最中だった

 

 衛宮先生とご両親がいないことに気づいてからすぐだった

 

 正直、それからのことはあまり覚えてない

 

 辛うじて学校を飛び出したことだけが記憶にあった

 

七深「......」

 

 それで、次に正気に戻った時

 

 目の前には信じたくない光景が広がってた

 

 私は言葉を失った

 

七深「......っ。」

 

 足元がボロボロと崩れていくのを感じる

 

 自分がこの世の中に絶望していってるのが分かる

 

七深「な、ん、で......?」

 

 体、こんなに悪かったの?

 

 なんで、私に教えてくれなかったの?

 

 なんで、こんなに無理しちゃったの?

 

 なんで、私から離れるの?

 

 ......ずっと一緒って、思ってたのに

 

七深「......ねぇ、かえ君。」

 

 ベッドの上にいるかえ君に話しかける

 

 答えてくれないのなんて分かってる

 

 これは、ただの意思表示

 

七深「愛してるよ。」

 

 呟くようにそう言った

 

 私のことを救ってくれた、光のようなかえ君

 

 かえ君は、一番大切な人

 

 何者にも代えられはしない

 

 だから......

 

七深「......1人にはしないからね。」

 

 そう、絶対に1人にはしない

 

 かえ君がどこに行ったって、私はついていく

 

 それが私の幸せだから

 

 ......かえ君のいない世界なんて、意味ないもん

 

 そんな世界なら、いっそ......

___________________

 

 “つくし”

 

 体育祭の翌日は振替休暇になってる

 

 本当ならこの日は中間テストに備えて勉強しないといけない

 

 けど、私は今、ベッドの上にいる

 

つくし「......」

 

 まだ、衛宮君の現状を受け入れられない

 

 本当は夢なんじゃないかって

 

 そんな風に思ってしまう

 

つくし「......(衛宮君......)」

 

 病室に来てた家族

 

 あの女の子を衛宮君が助けたらしい

 

 病気なのに、無理して、あんな風になって......

 

つくし「......きっと、分かってたはずなのに。」

 

 自分の限界くらい、分かってたと思う

 

 だけど、それでも、誰かを助けるのを選んだ

 

 それを悲しいとは思う、けど、衛宮君らしくて嬉しくも思ってる

 

 私が好きになったのはそう言うところだから

 

つくし「私なら、出来たのかな......」

 

 自分なら、衛宮君みたいに出来たのかなって考える

 

 死ぬのが分かってて、体も苦しい中

 

 あんなになるまで、人を助けられたのかな......

 

つくし(......落ち着かない。)

 

 そう思って、ベッドから立ち上がる

 

 部屋にいても、気が滅入っちゃうだけ

 

 取り合えず、外に出よう

___________________

 

 外に出て、歩いて

 

 私は吸い寄せられるように病院に来た

 

 何か理由があったわけじゃない

 

 無意識に足がこっちに向かっていた

 

つくし「__おはよう、衛宮君。」

 

 病室に入ると、私はそう声をかけた

 

 けど、返事は帰ってこない

 

つくし「包帯、取れたんだね。」

 

 昨日は包帯でグルグル巻きだったけど

 

 今は血も止まって、包帯も取れてる

 

 見えてなかった顔が見えてる

 

つくし「こんなに近くで顔見るの、あの時以来だね。」

楓「......」

 

 改めて、白いなぁって思う

 

 白すぎて透明感すら感じる

 

 まるで、この世から消えて行ってるみたいに

 

つくし「あのね、聞いて?最近、お母さんと妹たちが衛宮君に会いたいって言ってるんだ。将来、息子にするんだって、お母さんが張り切っちゃって。」

楓「......」

つくし「妹たちもね、お兄ちゃんになってほしいって。」

 

 ......そんな未来、あったのかな

 

 衛宮君と結婚して、とか

 

つくし「あのね......私、衛宮君が好き。」

楓「......」

つくし「本当に、大好き......だから。」

 

 喉で言葉がつっかえる

 

 上手く、そこから出て来てくれない

 

 けど、なんとか、絞り出す

 

つくし「お願いだから......死なないで......」

 

 ポタポタと涙が布団に落ちる

 

 これが、私の本音だったんだ

 

 現実が見えて、出たのがこれだよ

 

 私がこんな風になるなんてね......

 

 これが、恋なんだね

 

つくし「もっと、一緒にいたいよ......まだまだ、楽しいことはいっぱいあるよ......?バンドだって、これからだよ......?」

 

 全部、これから

 

 これから、もっと仲良くなって

 

 バンドの皆と一緒に成長して

 

 私たちの5人の中の誰かと付き合って、とか

 

 まだまだ、これからなのに......

 

つくし「お願いだから、起きてよ......っ、私、なんでもするから......」

楓「......」

つくし「もっと、一緒にいたいよ......」

 

 衛宮君は特別なの

 

 お友達だけど、それ以上な

 

 言葉に出来ない、特別な存在なの

 

つくし「衛宮君......っ、んっ......」

 

 私は衛宮君にキスをした

 

 別に私が衛宮君にとってのお姫様になれるとは思ってない

 

 ただ、衛宮君を感じたいだけ

 

 しないで後悔することはしたくないから

 

つくし「......もう少し、お話しよ。あのね__」

 

 それから、私は衛宮君に話しかけ続けた

 

 この間に起きて欲しいって思ってた

 

 けど、衛宮君が目を覚ますことはなかった

 

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