さして優れた部分はない
なのに、素敵な人たちが僕を好きになる
ましてや、神様まで
なんでなんだ......
楓「な、なんで......?」
磐長姫「......私を、可愛いと言ってくれたから。」
楓「え?」
その答えに、驚いてしまった
意外と、単純な理由と言うか
何も特別なことじゃないから
磐長姫「......この世に生まれてどのくらいになるか分からないけど、初めてだった。」
楓「そう、なの?」
磐長姫「父親に嫁に出されて、醜いって送り返されたくらいだからね。」
楓(え?)
いわさんは絶世の美女だ
それはもう、この世に存在しないだろうってレベルの
そんないわさんが、醜い......?
磐長姫「そんな私にとって、可愛いと褒めてくれて、神の器である楓は特別なの。だから......」
楓「......!」
磐長姫「悠久の時を私と生きよう。楓。」
顔を見たらわかる
いわさん、本気だ
今までの言葉全部、本心なんだ
楓「それ......は。」
それも、悪くないと思ってる
いわさんとは話が合うし
ずっと仲良くいられると思う
だけど......
織衣「迷ってる魂だね。楓。」
楓「っ!」
織衣「落ち着いて。」
織衣さんに背中を撫でられる
それで、少しだけ落ち着いた
楓(......僕は。)
冷静になった頭で考える
今、僕はどうしたいのか
生きたいのか、このままでいたいのか
楓「......っ」
そうしてると皆の顔が浮かんでくる
胸が締め付けられて、寂しいって思う
僕って、意外と素直なのかな
自分では全然そう思ってなかったんだけど
織衣「そんなに辛かった?生きてるの。」
楓「え......?」
織衣さんは優しく諭すような声でそう言ってきた
心安らぐような声だった
けど......僕には、とてつもなく、気分が悪くなった
楓「......」
織衣「楓?」
楓「......辛かった、ですよ。当たり前のように。」
織衣、磐長姫「!」
絞り出すようにそう言った
けど、一度口に出してしまえば少し楽になった
楓「いくら治療しても病気は治らなくて、ずっと楽しく遊んでる同年代の子たちを見てた。いつか、自分もこうなれると思ってたけど、結局最後まで、病気を克服できなかった......」
織衣「楓......」
僕は人生で一度も体育の授業を受けたことがない
運動会にも参加したことがない
走った距離だって、生涯で1㎞もないと思う
楓「僕はもっと、走り回りたかった。何も考えずに、楽しく......まぁ、今となっては身の丈にあってない夢だったんですけど。」
?「__いや!そうとは限らない!」
楓、織衣、磐長姫「!?」
その時、静かなこの場所に大きな声が響き渡った
けど、どこからしたのか分からない
スピーカーから流れてきた声みたいだった
?「君の願い、聞き入れた!」
楓(だ、誰......?)
織衣「あ、あなたは......!」
磐長姫「......げっ。」
そこから現れたは、金髪で長身の男の人
見たこともないアクセサリーをいくつも付けてて
チャラい......って言うのかな?
?「会えて嬉しいよ。愛しき我が子よ。」
磐長姫、織衣「......!?」
楓「え......?」
その言葉に、僕は首を傾げた
その横では2人が愕然とした表情を浮かべていた
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“瑠唯”
あれから、2週間が経った
彼は目を覚ますことなく、眠り続けてる
けれど、その時間にも終わりが近づいている
凪沙「__楓は、もうすぐ大規模な手術を受けることになる。」
ましろ、透子、七深、つくし、瑠唯「......」
衛宮君の担当医の話によると、もって1日2日
それ以降はもう、命は保証されない
つくし「衛宮君は、治るんですか......?」
凪沙「......」
ましろ「そんな......」
衛宮先生を見ればわかる
確率は限りなく0であると
この人でこれなら、他は......
凪沙「楓の担当の方はとても優秀だよ。だけど、彼女の力を持ってしても、厳しいだろうね。」
七深「......そうですか。」
大切なものを失ってしまう恐怖
もし、衛宮君がいなくなるような事態になったら
私たち5人への影響は計り知れない
瑠唯(本当に、私たちを置いて行ってしまうの......?)
今の状況を考えれば、その可能性が高いのは分かる
そうなった時、私はどうするのだろう
それを考えると、恐怖を感じる
七深「......私は、かえ君を1人にはしないよ。」
つくし「ななみ、ちゃん......?」
七深「私の人生は全部、かえ君にあげてるから。」
瑠唯「......!」
危うい
私たちの中で、彼女の彼への思いは頭一つ抜けてる
それこそ、命よりも大切に思ってるはず
そんな彼女だからこそ、彼の後を追う......何てことも考えられる
七深「かえ君は、私の全てだから。」
ましろ(ななみちゃん......)
透子(......なんかあったら、止めないとかも。衛宮の為にも。)
病室内の空気がさらに重くなる
彼の手術の結果で、大袈裟でもなんでもなく、私達の運命が変わる
今の広町さんの姿を見て、私はそう直感した