色の少年   作:火の車

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もう一つの家族

 目の前に現れた、チャラいと呼ばれる類の人(?)

 

 この人が来て、空気がガラッと変わった

 

 いわさんはどこか嫌そうな顔をして、織衣さんは目を見開いて驚いてる

 

 この人は一体?それに、息子って......?

 

大国主神「君は楓......だったね。」

楓「は、はい。」

大国主神「ふむ。」

 

 な、なんだか、すごく見られてる

 

 この人は神様、なのかな?

 

 それにしては人間らしい外見だ

 

磐長姫「......大国主神。なぜここに。」

大国主神「なぜ、そう聞かれると難しいね。でも、間違いなく言えるのは。」

楓「わっ!」

 

 大国主神さん?は僕に抱き着いて来た

 

 すごく体が大きい

 

 一回り位違うんじゃないかな

 

大国主神「我が力を引き継いだ息子に会いに来た、と言うわけだよ。」

磐長姫「それだよ。息子って、なに?」

大国主神「それは、そっちの子に聞いた方がいいんじゃないかな?」

 

 大国主神さんはそう言いながら、ある方向を指さした

 

 僕といわさんはそっちに目を向けた

 

織衣「!」

大国主神「久しぶりだね。」

楓「織衣さん......?」

 

 大国主神さんは織衣さんを指さしていた

 

 2人は面識があるのかな?

 

 そんな雰囲気があるけど

 

織衣「......はい。」

楓(まさか!)

大国主神「100年前、偶然彼女を見つけてね。彼女の純潔の見返りとして力を与えたのは他でもない、この僕だよ。」

磐長姫「!?」

楓(この人が......)

 

 なんだか、変な感じはした

 

 神様なのに、妙に軽い感じ

 

 それに何となく、異質さを感じたけど

 

 まさか本人なんて......

 

大国主神「だが、まさかだった。我が力の因子が遥か遠い世代にまで引き継がれるとは......興味深い。」

 

 神様にとっても予想外だったんだ

 

 なんか、変な感じだ

 

 小さい頃から当たり前にあったものが、そんなにすごいものだったなんて

 

磐長姫「......いいの?楓?」

楓「え?」

 

 僕は首を傾げた

 

 何のことを言ってるんだろう?

 

磐長姫「今、目の前には楓に過酷な運命を強いる原因になった存在がいる。憎いとは思わない?」

楓「え、全然?」

磐長姫「!?」

楓「?」

 

 僕の答えに、いわさんは驚いた表情をした

 

 なんでそんなに驚くんだろう?

 

楓「僕が色を見れたからこそ、救えた人たちがいるから。憎いなんて、ありえないよ。」

磐長姫「......楓らしいね。(だから、愛してるんだけど。)」

大国主神「......なっ。」

楓、磐長姫、織衣「?」

大国主神「なんていい子なんだっ!!!」

 

 大国主神さんがいきなりそう叫んだ

 

 すごい声だ

 

 一瞬、この空間が揺れたかと思った

 

大国主神「もうこのまま出雲に連れて帰りたいよ!折角の可愛い可愛い我が子だし!」

磐長姫「目的を見失ってどうするの?」

大国主神「あ、そうだった。」

 

 大国主神さんはそう言ってから咳ばらいをした

 

 少しだけ真面目な表情になる

 

 一気に場の雰囲気が変わった

 

大国主神「まぁ、今すぐにでも出雲に連れて帰りたいところだけど、今回の目的はそれではない。」

楓「どういうことですか?」

大国主神「楓はまだ、生きていかなければいけない、と言うことだよ。」

楓「え?」

 

 大国主神さんは落ち着いた声でそう言った

 

 僕はそれに首を傾げた

 

 ど、どういうことだろう

 

大国主神「これは誰の意志でもない、運命なんだ。そして、その運命を手繰り寄せるのは......」

楓「......?」

大国主神「......いいや、これは言うまでもないかな。」

楓「!」

 

 僕の頭に大きな手が乗せられた

 

 なんだろう、この感じ

 

 妙に安心するけど、少し恥ずかしい

 

 父さんに撫でられた時に似てる

 

楓「僕は、生きていていいんですか......?」

磐長姫「楓?」

楓「これ以上生きても、僕には......」

 

 これ以上生きて、僕に何が出来るんだろう

 

 生きても、また病気に侵されて、繰り返しになるだけじゃないの?

 

 そう思うと、小さく体が震えてくる

 

織衣「大丈夫だよ、楓。」

楓「織衣、さん......?」

大国主神「織衣の言う通りだよ。」

 

 2人に、優しく抱きしめられる

 

 温かい

 

 体温がどうとかじゃなくて、心が

 

大国主神「運命は動き出してる。そして、その運命を決めるのは今の楓だ。」

楓「今の、僕......?」

大国主神「この道は本来、一方通行なんだ。だが、楓のみ、逆行することができる。」

 

 そう言えば、僕以外の人たちは皆、同じ方向へ歩いてる

 

 ここは、そう言う場所なんだ

 

織衣「私の我が儘になるけど、楓には生きていて欲しい。」

楓「それは、なんでですか......?」

織衣「私が神様と交わったことがきっかけで、楓に能力が継承されて、申し訳ないとは思ったの。でも、それ以上に、我が子のように愛おしく思った。」

楓「......!」

大国主神「......まぁ、あながち間違いでもないからね。」

 

 織衣さんの抱きしめる力が強くなる

 

 少しだけ苦しい、けど、嫌ではない

 

織衣「だから、生きて。それで、幸せな最期を迎えて欲しい。」

楓「僕、幸せになれますか......?」

織衣「なれる。きっと。」

大国主神「あぁ。」

 

 僕の問いに、2人は頷いた

 

 正直、僕は僕の人生に満足して、後悔はなかった

 

 けど、まだまだだったのかな

 

 この先の僕にも、可能性はあるのかな

 

大国主神「楓が神として僕や織衣と会うのは、もう100年は先でいい。」

織衣「!」

楓「え?」

大国主神「言ってなかった?僕がここに来た理由は、可愛い可愛い楓に会うのともう一つ、織衣を迎えに来たんだ。」

 

 大国主神さんはそう言って、織衣さんの方に手を差し伸べた

 

 そして、こういった

 

大国主神「君を、僕のお付きとして迎えることにした。」

磐長姫「珍しい。」

大国主神「そろそろ、1人ぐらい付けてもいいかと思ってね。何より、愛しい我が子の成長を見守りたいからね。」

織衣「......はい。ありがとうございます。」

 

 ポタっと、綺麗な雫が地面に滴り落ちた

 

 泣いてる、のかな

 

 それにしては、嬉しそうに見えるけど

 

大国主神「じゃあ、僕達はお暇しよう。磐長姫、楓のことをよろしく頼むよ。」

磐長姫「言われるまでもない。」

大国主神「そして、楓。また、100年後に会おう。」

楓「は、はい。」

 

 大国主神さんはそう言って、こっちに背を向け

 

 そのまま歩き出した

 

織衣「楓。」

楓「織衣さん。」

織衣「もうしばらく会えなくなるけど、私はずっと、楓の幸せを願ってるよ。」

楓「はい。織衣さんも、幸せになってくださいね。」

織衣「ふふっ、なるよ。きっと。」

 

 そう言うと、織衣さんも歩いて行った

 

 なんだか、少し寂しいな

 

磐長姫「私はずっと一緒にいるよ。100年でも、何年でも。」

楓「うん。」

磐長姫「現世に戻ろう。楓が生きる分の命は、私があげるから。」

楓「そうだね......行こうか。」

 

 僕は、多くの魂とは逆の方向を向いた

 

 きっと、こっちなんだろうね

 

 生きるっていう運命に続く道は

 

 これが正解なのかどうかは分からないけど、一回、運命に従ってみよう

 

 そんなことを思いながら、僕はゆっくり歩き出した

 

 

 

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