色の少年   作:火の車

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変化

 整備された様子のない、荒れた道

 

 そこを、いわさんと歩いてる

 

 こっちに歩いてれば大丈夫って言ってたけど

 

 本当に大丈夫なのか不安になる

 

楓「これ、大丈夫なのかな?」

磐長姫「大丈夫だよ。現世の気配、もう近いから。」

楓「いわさんがそう言うなら......」

 

 どうやら、もうすぐ着くらしい

 

 景色は一切変わってないけど

 

 神様が言うなら大丈夫だよね?

 

磐長姫「それで、現世につく前に聞いておきたいことがあるんだけど。」

楓「?」

磐長姫「楓が生きてるうちの伴侶について。」

楓「えぇ!?」

 

 いきなり何を言いだすんだ、いわさん!?

 

 驚いて変な声出ちゃったよ

 

 ......でも

 

楓(そっか、そうだよね。)

 

 気づいたんだ、無視なんてできない

 

 向こうに戻ったら、向き合わないといけないんだ

 

楓「......」

磐長姫「楓、顔真っ赤だよ?」

楓「え!?そ、そうかな!?」

磐長姫「うん。(気づいたらこうなるんだ。)」

 

 うん、まぁ、仕方ないよね

 

 僕の人生は恋愛とかとは無縁だと思ってたし

 

 しかも、全員、すごく美人で、優しくて

 

 こんな僕なんかとはとても釣り合わないくらいの人たちだし

 

楓「ど、どうすればいいんだろう?」

磐長姫「楓の好きなようにすればいいんじゃない?」

楓「う、うーん......」

 

 好きにしろが一番難しい......

 

 嫌いな人いないし、むしろ、みんな好き寄りだし......

 

楓「ど、どうすれば!?」

磐長姫「全員にすれば?」

楓「いわさん!?」

 

 さ、流石、神様(関係ない)

 

 いや、普通にダメなんだけどね?

 

 僕が住んでる世界、法律があるから

 

磐長姫「それは冗談にしても、楓の思ったようにすればいいんだよ。彼女たちも、きっと、選ばれたいと思っても選ばれるとは思ってない。」

楓「それは、いわさんも?」

磐長姫「私たちは人間で言う許嫁のようなもの。不安なんてない。」

 

 それはそれでいいんだけど

 

 いわさん、面白いし

 

楓「難しいんだね、恋って。」

磐長姫「あの5人の方がそう思ってるよ。」

楓「......ですよね。」

 

 今までの僕、かなりヤバいよね

 

 怒られても文句言えないよ

 

 と言うより、よく愛想尽かされなかったなぁ......

 

磐長姫「よく愛想尽かされなかったなぁ......とか思ってるでしょ?」

楓「なんでわかるの?」

磐長姫「顔に書いてる。」

 

 もはや、心を呼んだとかじゃないんだ

 

 顔を見ればわかるって......

 

磐長姫「あの5人が楓に愛想を尽かす、か......あんまり、考えられない。」

楓「?」

磐長姫「楓はそれだけ頑張ったんだよ。あの体で。」

楓「......」

 

 そんなに、特別なことをした気はないんだけど

 

 ただ、大切な人の為に出来ることをした

 

 手が届きそうなら、全力で伸ばした

 

 ただ、それだけ......

 

楓(じゃあ、なんで、全力を出せたんだろう......?)

 

 それは、お友達だから......大切だから

 

 それ以外の理由なんてない

 

 でも、大切って、それって......

 

楓「......」

 

 大切=好き、なんて、乱暴な理論だ

 

 でも、何となく、そう思う

 

 大切だから、好きだから、思い出したら胸が高鳴る

 

楓「......生き返ったらさ。」

磐長姫「?」

楓「僕、伝えてみるよ。今、顔が浮かんできた気がするから。」

磐長姫「そっか。」

 

 正直、好きっていう感情はまだよくわからない

 

 けど、こういうのは理屈を考えちゃいけないって

 

 広町さんに借りた漫画に書いてた

 

楓「......だ、大丈夫かな?」

磐長姫「ここでヘタレになるの、楓らしいね。」

楓「ヘタレ......」

 

 否定が出来ない

 

 まぁ、ヘタレですし......

 

磐長姫「大事な時にヘタレちゃダメだよ?」

楓「が、頑張ります......」

磐長姫「ほら、もう少しだから、急ぐよ。」

楓「は、はい。」

 

 僕はそう言われ、歩くスピードを上げた

 

 少し向こうに、白く光ってる物が見える

 

 あれがきっと、出口なのかな

___________________

 

 “透子”

 

 世界って、楽しい事とか面白いことでいっぱいだって思ってた

 

 実際に、この間まだは楽しかった

 

 仲間とバンドして、好きな男子がいて、青春してたと思う

 

 けど、それが今、壊れようとしてる

 

透子「......なぁ、ルイ?」

瑠唯「......どうかしたの?」

透子「シロが言ってたことだけどさ、どう思う?」

瑠唯「......本気でしょうね。」

透子「......」

 

 チラっと、横で寝てるシロを見る

 

 さっきはすごい目をしてたのに、今はふーすけと寄り添って寝てる

 

透子「ルイは、どう思ってる?」

瑠唯「私は......」

七深「私は賛成だよ。」

透子、瑠唯「!」

 

 突然の声にあたしとルイは驚いた

 

 完全に寝てると思ってたななみは

 

 目を見開いて、こっちを見てる

 

七深「私たちがバンドで成功すればするほど、かえ君のすごさを証明できる。かえ君の生きた証を残さないと。」

透子「ななみは、そうだよね。」

七深「むしろ、とーこちゃんは何を悩んでるの?」

透子「......っ。」

 

 何を悩んでるか......そんなの、主にお前らが原因だよ

 

 シロもななみも、本気すぎるから

 

 いつか、バンドも、2人も、壊れる気がするから......

 

瑠唯「......今のあなた達を見れば、衛宮君は悲しむでしょうね。」

七深「......は?」

 

 静かなルイの声が響く

 

 それに、ななみが反応した

 

 地の底から響くような、怒りを孕んだ声

 

 あたしはそれを聞いて、背筋が凍った

 

瑠唯「羽が凍り付いた蝶が、飛べると思っているの?」

七深「......どういうことかな。」

瑠唯「彼の見た、色の話よ。」

 

 ルイはななみの方を見てそう言った

 

 そういえば、衛宮、言ってたっけ

 

 あたし達の演奏してる時の色、青色の蝶に見えたって

 

瑠唯「彼の好きな私たちの演奏ができないなら、私は続ける意味を見出せない。」

透子「......!」

七深「.......っ」

瑠唯「それに、あなた達は一つの可能性をもう捨てるの?」

 

 ルイは静かな声でそういった

 

 あたしもななみも首をかしげる

 

 ど、どういうこと?

 

瑠唯「彼は、私たちの期待を超えてくれる。そして、まだ彼の死亡は確定していない。」

透子、七深「......!」

 

 ルイの目に光がある

 

 諦めてない

 

 こいつ、こんな状況なのに

 

瑠唯「彼は目を覚ます。そして、また、あの笑顔を見せてくれる。」

透子「ルイ.......!」

七深(......かえ君なら。)

 

 ルイらしくない

 

 あたし達すら現実見て、諦めてたのに

 

 今はただ1人、諦めてなかった

 

 あの、リアリストのルイが

 

 この変化も、衛宮が与えたもの、なのかな

 

 

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