この世界に戻ってきて、2週間が経った
向こうで歩いてたけど、実際の体は衰弱してたみたいで、歩行訓練が始まった
それでも、まだ上手く歩けない
今は一応家にいるけど、歩けないのと体の負担を考えて、車椅子生活だ
楓「__朝......?」
そんな僕は1階にある客間で目を覚ました
歩行訓練が終わるまで2階に行けないから1階にいるけど
カーテンの隙間から、太陽の光が差し込んでる
いい天気というのが、よくわかる
楓「って、あ、今日から学校いけるんだった。」
寝ぼけた頭が目覚めて、今日の予定が頭に浮かんでくる
久しぶりに学校って、ちょっと緊張する
毎日言ってるときは特に緊張もしなかったのに
楓「どうしよう......考えたら余計に緊張してきた......」
瑠唯『__衛宮君。起きてるかしら?』
楓「!?」
扉の向こうから、綺麗な、凛とした声が聞こえる
もちろん、これの主はわかってる
楓「は、はい!」
瑠唯「なら、入るわよ。」
八潮さんだ
今日も制服の着こなしも色も綺麗だ
ほぼ毎日見てるのに、つい見とれてしまう
瑠唯「おはよう、衛宮君。」
楓「おはようございます。」
瑠唯「体調はどうかしら?」
楓「調子はすごくいいです。ここ最近で一番。」
瑠唯「そう。よかったわ。」
楓「!」
あの日から、八潮さんは笑顔が柔らかくなった
それを毎回、可愛いと思って
鼓動が激しくなってしまう
楓「って、あれ?なんで八潮さんがここに?」
瑠唯「あなたを迎えに来たのよ。車椅子だし、心配で。それに......」
楓「?」
八潮さんの色がふやけてる
それに、顔も少しずつ赤くなってる気がする
瑠唯「......あなたと登校してみたかったから///」
楓「っ!?あ、あ、そ、そうですか!嬉しいです!」
瑠唯「///」
今までと見え方が違う
ここ最近、よく感じることだけど
八潮さんがかっこいいじゃなくて、可愛いになってる
これは、どういう変化なんだろう?
瑠唯「あ、朝ごはん、もう出来てるわよ///着替え......るまで待ってるわ///」
楓「は、はい。」
瑠唯「そ、それじゃあ///着替えたら呼んでちょうだい///」
そう言って、八潮さんは部屋を出て行った
僕はそれを見てから、久しぶりの制服を着て
八潮さんに少しだけ車椅子に乗るをの手伝ってもらって
一緒に朝ごはんを食べた
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“瑠唯”
衛宮君のお家で朝ご飯をごちそうになって
時間になったので、お家を出た
今は彼の乗ってる車椅子を押してる
もう11月で、もうかなり寒い
楓「__もう、こんなに寒いんですね。」
瑠唯「えぇ。体育祭から、もう1か月だもの。」
楓「時間が経つのって早いんですね。」
彼は空を見上げながらそう言う
本当に時間が一瞬で過ぎた気がする
彼が昏睡して、歩行訓練を初めて、しばらく
ほぼ毎日一緒にいたものだわ
瑠唯「そうね。本当に、早いものだわ。」
衛宮君とお付き合いを始めて2週間は怒涛の勢いだったわね
けれど、今まで以上に一緒にいるのが嬉しくて
時間が文字通り、駆け抜けていった
瑠唯「もう2週間だもの。」
楓「そうですねぇ......」
瑠唯「なんだか不思議ね。あれほど望んでいたあなたとのお付き合いなのに、あまり実感が湧かないわ。」
楓「あ、あはは、僕もです。まだ夢なんじゃないかって思うことがあります。」
夢......私もそう思うときがある
それくらい、幸せを感じているもの
だから......
瑠唯「......これが夢なら、泣いてしまうかもしれないわ。」
楓「え?」
瑠唯「だって、今、すごく幸せだもの。夢だなんて、嫌よ。」
楓「可愛い。(僕もです。)」
瑠唯「!?///」
楓「あっ。(つい本音の方が。)」
顔が熱くなる
今まで、あまり言われなかった言葉
それが、何の思惑もなく飛んでくる
これ以上に嬉しく、恥ずかしいことはない
楓「ご、ごめんなさい。」
瑠唯「も、問題ないわ///あなたに褒められるのは、嬉しいもの///」
楓「そ、そうですか。よかったです。」
幸せを感じる
彼が生きていて、一緒にいるのが幸せ
瑠唯「あれから、ほかの4人とは会ったかしら?」
楓「!......はい。」
瑠唯「そう。(この表情、ということは......)」
ちゃんと、伝えたのね
優しい彼のことだし、きっと辛かったと思う
泣いたりした子がいれば、特に
楓「正直、苦しかったです。それに、恋愛は難しいとも思いました。」
瑠唯「そうね。私も身に染みてるわ。」
この2週間、4人とも私のところにも来た
誰もが、私のことを祝っていた
けれど、その表情には悔しさが滲んでいて
私がもし、逆の立場だったら、あんな風に言えたのか
そう、考えさせられてばかりだった
楓「僕のせいです。長い間、気づかなかったから、あんな風に悲しませてしまいました......」
瑠唯「......そうね。」
否定は出来ない
私も、彼女たちの立場だったら、そうなっていたから
けれど、少し、誤解があるとするなら......
瑠唯「でも、悲しいだけではないはずよ。」
楓「!」
瑠唯「あなたと出会って、過ごしてきた時間は、楽しかったもの。だから、彼女たちはあなたから離れないわ。」
楓「そう、なんでしょうか。」
彼はずっと不安を感じていた
彼女たちも、彼にとっては大切な友人
離れて行っては、あまりにも悲しいもの
瑠唯「大丈夫よ。今はギクシャクしているけれど、きっと。」
楓「......はい。」
本当に彼は優しすぎる
今も、心は傷つき続けてる
こんな顔をしてるのは初めて見るかもしれない
楓「あの。一つ、言いたいことがあるんですが。」
瑠唯「どうしたの?」
楓「僕、八潮さんと一緒にいることを後悔してません。ちゃんと、好きですから。」
瑠唯「分かってるわよ。私もあなたから離れるつもりはないから。」
楓「!」
そういいながら、彼の頭に手を置いた
柔らかくて、フワフワしてる
それに、彼が安心しているのが分かる
楓「僕、きちんと今を受け止めます。そして、時が来たら、ちゃんと皆と向き合います。」
瑠唯「......それで改めて好きになられたらどうするの?」
楓「え!?そ、そんなことはありえない......とも、言えないんでしょうか。」
彼も学んでるらしい
何が切っ掛けでそうなるか分からない、と
今までもそうだったから
楓「......でも、僕に無視はできないと思います。」
瑠唯「えぇ、知ってるわ。ここで無視する人間なら、きっと好きになっていないもの。」
楓「!」
瑠唯「あなたは自分が正しいと思う道を進みなさい。私はそれについていくから。」
楓「......はい。」
彼はこの先も人を助け続けると思う
だから、私はパートナーとして、それについて行かないといけない
1人にしてはいけないもの
瑠唯「話過ぎたわね。少し急ぎましょうか。」
楓「はい。お願いします。」
そんな会話の後、私は少し車椅子を押すスピードを上げた
彼は早く歩けるようになりたいと思ってると思うけれど、私は今の状況も悪くないと思ってる
それくらい、今でも幸せだから
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“楓”
あれから、八潮さんに車椅子を押してもらい、学校まで来た
いつもより来るのが遅くなってるから、たくさんの色がある
こんなに色のある学校を見るのは久しぶりだ
瑠唯「__この辺りでいいのかしら。」
楓「?」
校門を通り抜けて少しすると、八潮さんが足を止めた
どうしたんだろう?
一樹、真樹「__衛宮会長ー!」
楓「!?」
月ノ森生『おかえりなさーい!』
な、なんだ!?
いきなり、色んな所からいろんな人が出てきたんだけど!?
え、なに、どうなってるの!?
楓「えっと、これは......?」
穂希「あなたのお出迎えですわ。」
楓「あ、白鳥さん。」
穂希「あなたが退院するという情報がなぜか流れまして。そこから、生徒会にこの手の意見が殺到しましてね。本当に、人望のある生徒会長には困ったものですわ。」
白鳥さんはため息をつきながらそう言った
顔も色も、見ただけで疲れてるのが分かる
本当に毎度毎度、すみません......
穂希「まぁ、今はおかえりなさいと言っておきましょう。」
楓「え?」
穂希「その顔は何ですの?私も、あなたには多少の敬意をもっていますのよ?」
楓「そうなんですか!?」
穂希「そんなに驚くことですの?」
ぜ、全然、そんな気配なかったのに
それに、白鳥さんはすごい人だ
それなのに、僕なんかに......?
穂希「まぁ、いいです。それよりも。」
楓「?」
穂希「本日の主役に縁の深い方々......ヒロインのご到着ですわ。脇役は下がることにします。」
楓「え?どういうことですk__!」
人込みに白鳥さんが消えていき
その後すぐに、見知った4つの色が現れた
それを見て、白鳥さんの言ってたことの意味が分かった
楓「みんな......」
ましろ、透子、七深、つくし「......」
みんなと会うのは、ほぼ2週間ぶりだ
ちょっとだけ、気まずい
なんて声を掛けたらいいか分からない
つくし「久しぶり、衛宮君。」
楓「う、うん。久しぶり。」
透子「元気そうで、よかった。」
みんな、不思議な色をしてる
恐怖とか、気まずさとかが濃いのに、どこか覚悟めいた色が見える
初めて見るから、なんて声をかければいいのか分からない
楓「あ、あのっ。」
気まずい、けど、僕は声を絞り出した
なんていうべきかなんて分からない
だから、聞きたいことを......
楓「みんなは......」
言葉が出てこない
聞きたいことを聞こうと思ったのに
それすらも、喉でつっかえる
だけど、聞かないと......怖いけど
楓「みんなは、僕を嫌いになりましたか......?」
ましろ、透子、七深、つくし「え......?」
女々しい
自分でもそう思う
けど、聞かずにはいられないし、聞かないといけない
もし、みんなに嫌われてたら、近寄っちゃいけないから
そうしたのは、他でもない自分自身だから
だから、ちゃんと受け止めないといけないんだ
ましろ「衛宮君を......?」
つくし「嫌い、かぁ......」
透子「そんなの......」
静寂が空間を支配する
周りの色も、静かだ
自分の血の気が引いていくのが分かる
怖いものは怖いんだ
友達に嫌われるのなんて、怖いに決まってる
七深「......そんなわけ、ない。」
楓「......!」
七深「大好きに、決まってるじゃんっ!!」
静寂を切り裂いたのは、広町さんの声だった
どこか泣いてるような、叫び声
それが、耳から胸をズキズキと痛めつけてくる
七深「ずっと、好きだったんだもん!!そんなすぐに、諦める......ましてや、嫌いになれるわけないよ!!」
楓「っ!!」
......バカな質問をした、と思った
だって、きっと、僕もそうだから
八潮さんに振られてたとしても、嫌いになれない
わかってたことだったはずなのに......
つくし「そうだよ!あんなに人のことタラシ込んどいて!」
ましろ「こんなになるまで好きにさせられたら、簡単に諦めつかないよ!」
楓「あの、タラシ込んでは__」
ましろ、つくし「衛宮君は天然タラシ!!」
楓「え、あ......ごめんなさい......」
す、すごく怒られてる
こんな風に言われるのは初めてだ
でも、なんだろ......この騒がしさが、すごく嬉しい
透子「と言うわけで、あたしら全員、衛宮のこと諦めてないから!」
瑠唯(......そう。それが、あなたたちの答えなのね。)
七深「まだ高校1年生だし、チャンスはゼロじゃないし!」
楓「そ、そうですか。」
瑠唯(悪くないわね。)
みんなの宣言に僕はおろか、周りの人達も唖然としてる
やっぱり、皆はあまりにも強すぎる
だって、色から恐怖とかのマイナス感情が消えて、今は決意の色一色になってるんだもん
本当に、すごいと思う
ましろ「......と、いう事なんだけど。」
透子「あたしたち、諦めないままでいい?」
楓「えっと......あの、僕は__」
瑠唯「受けて立つわ。」
楓「八潮さん!?」
僕が言うより先に、八潮さんが張り合ってしまった
というよりも珍しい
八潮さんが、笑ってるなんて
瑠唯「私は誰にも負けない。彼を手放しはしないわ。」
七深「言うじゃん~。」
つくし「わ、私も忘れないでよね!」
みんなの色は臨戦態勢と言わんばかりだ
八潮さんもだから、収拾がつかない
......どうしよう?
透子「と、まぁ、これで宣戦布告は終わりね。」
楓「!」
透子「じゃ、あたしらもちゃんと言っとこっか!」
七深「そうだね~。」
ましろ「うん......!」
つくし「衛宮君!」
楓「は、はい!」
二葉さんに呼ばれ、ピンと背筋が伸びた
つ、次は何だろう
ましろ、透子、七深、つくし「おかえり!」
楓「!」
身構えてた僕に向けられたのは、おかえりという言葉
そして、楽しく、優しい色だった
心が温かくなる、好きな色だ
楓(戻ってきたんだ。)
人生16年目で辿り着いた、僕の居場所
やっとそこに、帰って来れたんだ
そう思うと、嬉しくて、自然と口角が上がった
楓「うん!ただいま!」
世界は色で満ちている
それは、この世に存在する人々の生きる証
その輝きは出会い、混ざり合って、そして、新しい色になる
そうして、未来の色は世界のどこかで誕生し続けている
楓(まだまだ、楽しいよね。僕の人生。)
僕も未来を生きる
その隣にはきっと、友達がいる、大切な人がいる、恋人がいる
始まってたかが16年しか経っていない人生だ
まだまだ、楽しいことはたくさんある
これから先も末永く、みんなと一緒にいたいな