卒業旅行に来たら異世界に召喚されました   作:岸雨 三月

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3章:私が私を見つめてました―②

「ナツメ! そのたからばこはわたしがさいしょにみつけたんだよ! かってにとらないでよー!」

「ちがうよマヤ! わたしのほうがはやかったってば!」

「マヤさん! ナツメさん! ダンジョン内で喧嘩はやめてください!」

「うえーん! ころんでひざをすりむいちゃったー!」

「エルちゃんだいじょうぶ!? はやくこのやくそうをたべてよくなってね?」

「エルさん! 大丈夫ですか!? メグさん! その薬草は傷口に擦りこんで使うものなので食べさせないでください!」

(あわわわわ、いったい何がどうしてこんなことに……)

 

チノはマヤ・メグのほかにナツメ・エルを加えた五人パーティでダンジョンの門を叩いていた。世界樹はレベルの高いダンジョンであることから四人以上のパーティでないと入ることが出来ないので、一緒に入ってくれる仲間を探していたのだが、ちょうど「ラビットクロニクル」をプレイしていた時と同じように、黒いフルアーマーに身を包んだ騎士、ナツメとエルが誘ってくれたので、一緒にダンジョンに潜ることになったのだった。ナツメ・エルは、この世界ではマヤ・メグとの面識は無かったようだ(もちろんチノとも)が、世界樹に向かう道のりの中で徐々に打ち解け、特にナツメとマヤはお互い軽口を叩き合う仲にまでなっていた。

 

大事件が起こったのはダンジョンの中層に差し掛かった頃のことである。先人の残した地図によればこの周辺から、「魔力溜まり」と呼ばれる、ティッピーストリームから枝分かれしたティッピーが池のように偏在している場所への道があることが分かっていた。世界樹に封印されている貴重な魔術のほとんどは「魔力溜まり」に存在すると考えられていたため、チノ達にとってもそこに至る抜け道を探すのが最優先課題だった。だが、道を中々発見できずにいる最中、先頭を行くマヤがうっかりトラップを踏んでしまい、床の装置から怪しげなガスが吹き出てきたのだった。チノは一人でしんがりを務めていたので、すんでのところでガスを避けることが出来たが、マヤ・メグ・ナツメ・エルの四人は、まともにガスを食らってしまった。いったいどんな強力な毒性が!?とチノは慌てたが、ガスの白い煙が引いて視界を取り戻したとき、チノの目に入ったのは、何と、「子供の姿になったマヤ・メグ・ナツメ・エルの四人」だった。

 

いや、子供というのは正確ではないのかもしれない。四人は、背が低くて三頭身くらいになり、獣耳のようなものを生やした姿になっている。どちらかというとこれは、「ラビットクロニクル」でココア達年上組が作っていた小人族のアバターの姿だ。とてとてとて、と短い手足をばたつかせる歩き方も、ゲーム中のモーションにそっくりである。だが一つ、ゲームのアバターと違うところを挙げるとすれば――

 

「たからばこのなかみはぱんけーきだったよ! みんなでたべよう!」

「まってマヤ! じぶんのぶんだけおおきくきりわけてない!?」

「いや待ってください、宝箱の中に入っていたパンケーキとか一体何年ものですか!? 罠の可能性とか以前に普通にお腹壊すので食べないでください!」

「メグさん、やくそうありがとう……、おれいにこれをあげるからすきなすうじをかいて?」

「すうじ? なにかよくわからないけど、わあいエルちゃんありがとう!」

「エルさんそれは貴重な魔法の巻物です! いざという時に使えないと困るので書き込みNGです! そしてメグさんも普通に貰おうとしないでください!」

 

そう、四人は中身がまるで子供、それも幼稚園児くらいになってしまっているのだった。元の世界で小さくなった年上組のアバターを見て、「まるで幼稚園みたい」とチノは思ったが、これでは本当に幼稚園だ。さしづめチノは遠足の引率で苦労する新米の先生と言ったところか。

 

「ねーねー、ぱんけーきたべちゃだめなのー?」

「おなかがへったよー」

「わたしもー」

「おべんとにしようよー」

 

やれやれ、これでは本当に遠足みたいです、とチノは思った。どっちみちこの状態ではまともに探索など出来そうにない。チノはいったん休息を取ることにした。

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