卒業旅行に来たら異世界に召喚されました   作:岸雨 三月

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4章:魔王城攻略完了(みっしょんこんぷりーと)―②

ココアの説明をかいつまむとこういうことになる。

 

チノ達との卒業旅行中のある朝のこと、目覚めるとココアは見知らぬ異世界に転移しており、魔王になっていた。最初は混乱したが、持ち前の適応力の高さと、魔王としての基礎ステータスの高さを生かしてそれなりに異世界生活を楽しんでいた。ある日、自分の使える魔法のリストに召喚魔法があることに気付いたココアは、シャロ・リゼ・千夜の三人を元の世界から召喚することにした。三人はなぜか小人種族の姿になってしまいはしたものの、召喚自体は成功し、四人での異世界生活が始まった。ココアは魔王と言う立場ではあったが、悪事をはたらくことには興味がないので、人里離れたところに難易度の高いダンジョンを作って遊んでみたり、わざわざそのダンジョンまで遠征してくるハイレベル冒険者に時々力比べを挑んでみたりして、まるでゲームのようにこの世界をエンジョイしていた。

 

一方で、この状況を快く思わない者がいた。ココアがこの世界にやってきたことによって自分の体から追い出されてしまった「元からこの世界にいたココア」である。「もう一人のココア」は、霊体化してさまよいながらも、本来霊体では使えない召喚魔法を使う方法を発見した。そこで、ココアが次に召喚しそうな人物――チノを、先回りして召喚し、自分の味方につけることにしたのだった。そう、女神ココアの正体は、この「霊体化したもう一人のココア」だったのである。ココアを倒し、元の世界に帰すまでは自分の体に帰ることはできない――そう思った女神ココアは、「魔王を倒すまで」という条件付きでチノを召喚することにした。召喚自体は成功したが、依り代を木っ端微塵にされてしまい、女神ココアの存在は大気中の魔力へと雲散霧消してしまったのはチノもよく知っているとおりである。本来はマヤとメグもチノの次に召喚しようと女神ココアは企んでいたらしい。

 

「まあ、散り散りになった女神ココアの成分は99パーセントくらいは大気中から何とか回収して、今は私の体の中で眠っているんだけどね。いやー、本当に世話の焼ける私だよねー」

「えっココアさんがそれを言います?」

「とにかく、今日チノちゃんたちがここに来てくれたおかげで無事に私の妹たちが全員揃って、ココアお姉ちゃんは嬉しいのです! 今日は宴会だよ! チノちゃん達もせっかくだから私の仲間になって一緒に遊ぼうよ!」

「いや、遊ぼうって……私はココアさんを倒しに来たのですが」

「えー、せっかくの異世界だからチノちゃんとも一緒に遊びたいのに……、一緒に遊んでくれたら、今なら世界の全部をプレゼントだよ!」

「いやいや、そんな古典的な手には引っ掛からな……って全部!? 全部あげちゃうんですか!?」

「世界の全部? タダで貰えるなら貰っておこうかなー」

「凄く気前の良いお姉さんだねー」

 

マヤとメグまでもが話に割って入ってきてさらにややこしいことになる。普通そこは「世界の半分をやろう」と言うところではないだろうか。

 

「えー、だって世界とか持っててもあんまり使い道ないしなぁ……私は家族と、チノちゃん達と、いつものみんなと仲良く過ごせる日常があればそれでいいかな」

 

ココアさんにしては珍しく良いことを言う――と一瞬感心しかけたチノだったが、この世界でのココアさんは魔王。元の世界での「いつものみんなと仲良く過ごせる日常」に戻るためには、やっぱりココアさんを倒さなければならないのだ。

 

「ココアさん、もうこの世界で十分遊んだでしょう……元の世界に帰りますよ。私と戦ってください」

「ふむ……どうあっても戦いは避けられないんだね。分かったよ、この魔王ココア、受けて立ーつ!」

 

そう言ったココアの合図とともに、シャロ・リゼ・千夜の三人も戦闘体勢に入る。入ろうとするが――

 

「ぐ……ぐふっ! ここで私が倒れても、必ずや第二・第三の千夜が現れて勇者を苦しめるだろう……!」

「千夜! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」

「千夜! 回復魔法使ってあげたじゃない! なんでまた倒れそうになってるのよ!?」

「ち、千夜さん大丈夫ですか!? 瀕死どころか既に負けた後みたいな台詞を言ってますが……」

 

千夜は着地に失敗した時のダメージが抜けきっていないのか、いまだフラフラの状態だった。敵であるはずのチノにも思わず心配されてしまう。このまま戦い始めて良いものか、迷っているチノの耳元にマヤが囁きかける。

 

「チノ、あいつ弱そうなふりして油断させようとしてるけど、もしかしたら凄く厄介な能力を持っていたりするのかもしれない。惑わされずに一撃必殺で行った方が良いよ」

「いやあれはたぶん演技ではないと思いますが……」

「そうだとしても、だよ。今の私たちは三人、相手は魔王を入れて四人。数的に不利な状況で長期戦だといずれは追い詰められる。早く伝説の召喚魔法を使うんだ!」

 

伝説の召喚魔法を使うんだったら早いほうが良い、というマヤのアドバイスには一理あるかもしれない。チノは杖を握り締めた。千夜には悪いが、開幕で使わせてもらうことにする。

 

「では、魔王に特別な効果のある『存在』を召喚できるという魔法、使わせてもらいます……カフェラテ、カフェモカ、カプチーノ!!!」

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