卒業旅行に来たら異世界に召喚されました   作:岸雨 三月

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4章:魔王城攻略完了(みっしょんこんぷりーと)―④

揺れがおさまった直後の魔王の部屋で、マヤとメグは立ち尽くしていた。

 

「魔王を……倒せた、のかな?」

 

マヤとメグからすると、この部屋に入ってからのことは意味が分からないことばかりだった。「ココア」とか名乗った魔王とはチノは知り合いだったように見えた。魔王が配下を召喚したが、その配下ともチノは知り合いだったように見えた。その後しばらく、魔王とチノの間で意味の分からない会話が繰り広げられ、結局魔王とチノ達とは戦うことになったようだった。戦闘では開幕で召喚魔法を使い凄い揺れが起こったが、召喚されてきたのは、ちょっと見慣れない服を着てはいるがどう見ても普通のお姉さんという感じの人だった。だが、そのお姉さんと魔王とが会話をしている時、また物凄い揺れが起こり、今度はチノと魔王、魔王の配下達がみなバタバタと倒れてしまったのだ(召喚されたお姉さんはいつの間にかどこかに消えてしまっていた)。

 

「そうだ! チノ! 大丈夫か! いきなり意識を失ったように見えたけど……」

「チノちゃん、頭とか打ってない!?」

 

「う、うーん……私の意識が目覚めた、ということは……『もう一人の私』は、無事魔王を倒すことに成功したということですね。いや正確には、『あっちの世界』の魔王に対応する存在を送り返し、自らも『あっちの世界』に帰った、というところでしょうか」

「チ、チノ、本当に大丈夫!?」

 

目覚めたかと思うとチノがいきなりぶつぶつと意味不明な独り言のようなものを言うので、また幻覚魔法にでもかかってしまったのではないかと心配になる。

 

「大丈夫ですよ、私は。マヤさんとメグさんがよく知っている、いつものチノです」

 

そう言って微笑みかけるチノの笑顔、よく見ないと笑ってることにすら気付かない程度の微かな笑顔は、冒険者学校時代に見慣れたチノの笑顔と全く同じものだったので、ようやくマヤとメグはほっとすることが出来た。

 

「そうすると問題なのは、こっちの世界の魔王ですか。人里離れたところで暮らしてくれている限りは、共存可能な存在だとは思いますが……」

 

そう言いながらチノは倒れている魔王の方へ近づいていくので、マヤとメグは慌てた。魔王は見た目は非力な少女のようだが、死んだという訳ではなさそうだし、何か危害を加えてくることがないとは言い切れない。チノが襲われそうになったらすぐ反応できるよう、マヤは銃を、メグは斧を構える。その時、魔王が伸びをするような動きをして目覚めた。魔王の配下達も、徐々に目覚めつつあるようだ。

 

「う、うーん……ここはどこかな? あっここは私の部屋……ってことはもう一人の私、無事に元の世界に帰れたんだ! 良かった~。ということは、あなたはこの世界のチノちゃん……改めまして、初めまして、になるのかな?」

 

そう言いながら魔王がチノの方にふらふらと近づいてくるので、マヤ(メグ)は銃(斧)をすぐ放てる(振れる)ように握り直す。いったい何をするつもりなのか。チノを含め三人とも警戒度を上げるが、魔王はそれに全く気付かないかのようにのんきな口調で話し続ける。

 

「うーん、もう一人の私から色々話を聞いてはいたけど、こうやって改めて見ると本当にチノちゃんって可愛いんだね! もう一人の私が、『あっちの世界では可愛い妹がいて~』とか凄くのろけてくるから、ちょっと悔しくなって先回りして召喚しちゃったりもしたんだけど……。でもこんな妹がいたらのろけたくなる気持ちは分かるかなー。これからよろしくね! チノちゃん。で、お近づきの印と言ったら何だけど……ちょっと『もふもふ』させてもらっても良いかな? もう一人の私が、チノちゃんもふもふなんだよ!って言ってたから、気になっちゃって……」

 

三人ともぽかんとする。初対面なのに何ていきなり距離感の近い魔王だろう――魔王らしい威厳もへったくれもない。チノは思わず、心の中でこう呟いてしまった。

 

(何だ、この魔王……)

 

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