卒業旅行に来たら異世界に召喚されました   作:岸雨 三月

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1章:ココア先輩の優雅な異世界チュートリアル―③

ココアからチノに提示された「チュートリアル」第一段階の指示は、とても簡単なものだった。

 

「魔王討伐の旅の第一歩は、まずは仲間探しからだよ! ここから南にちょっと歩くと街区に戻れるから、町外れの『冒険者のカフェ』を目指してね! そこには志を同じくする仲間が二人いるはずだから、見つけた仲間と一緒にここに戻ってくること! それが出来たら次の指示を出します! 注意しないといけないのは、街区に戻るまでの間はモンスターが出現して危ないから、一人では戦わずに逃げるようにね!」

 

正直チノはほっとした。もしもいきなりモンスターと戦え、なんて指示が出されたらどうしようかと思っていたからだ。二人の仲間、というのがどんな人なのか分からないが、人間相手だったらモンスターとやらを相手にするよりはよっぽど楽だろう。

 

チノが目覚めた広場は森の中でも意外と浅いところにあったらしく、ほんの少し歩くと街道に戻ることができた。そこからはモンスターに気をつけながら道なりに歩いたが、実際にモンスターが出てくることはなく、あっさりと街区まで辿り着けてしまった。街は城壁で囲まれていて入り口の門には衛兵が立っていた。チノにとってはこちらの世界に来て(自称女神のココア以外に)初めて会う人間だったので、衛兵のことをまじまじと見てしまった。いかにも中世というテイストの、細長い槍と丈夫そうな鎧を装備した男の人だった。チノは門を通るとき止められるのではないかとビクビクしたが、衛兵はチノの顔を見ると無言で頷き、特に何も言われること無く通過することができた。

 

 

街に入るとココアの指示通り町外れにある「冒険者のカフェ」とやらを目指す。よくRPGでは仲間を探したりクエストを請け負ったりできる「冒険者の酒場」という施設が出てくるが、それのようなものだろうか。チノは街の地図を見たり、住人に道を聞いたりしながら「冒険者のカフェ」に辿り着いたが――、「冒険者のカフェ」の建物を見た時、思わずチノは口をぽかんとさせてしまった。

 

「ラ、ラビットハウス……?」

 

そう、「冒険者のカフェ」の外観は、元の世界のラビットハウスそのものだった。元々、ラビットハウスをはじめとした木組みの街の建物は意図的に中世ヨーロッパの街並み風に作られているだけあって、この世界の街並みにもすっかり馴染んでしまっている。だが、全く見知らぬ世界の片隅に突然自分の実家が出現するというのは、何とも変な気分だ。さて、この家は見かけこそラビットハウスそのものだが、果たして「中身」はどうだろうか――? ドキドキしながら、見慣れたドアを押し開けて家の中に入る。

 

「おーっす、遅いよチノー! 卒業試験に遅れちゃうー! 今日は大事な試験なんだから、あんまりのんびりしないでくれよなー」

「チノちゃんおかえりなさーい。どこまで行ってたのー?」

「お帰り、チノ」

 

中に入ると、聞き慣れた二人の少女の声と一人の男の声が出迎える。チノはちょっとほっとしたような気分になった。二人の方は、昨日ゲームセンターでも一緒に遊んだ二人――マヤとメグだ。一人の方は、チノの父親であるタカヒロだ。マヤとメグはテーブルに座っているからお客さんなのだろうが、タカヒロはカウンターの中にいるのを見ると、この世界でもこの店の主人であるらしい。

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