「マ、……マヤさん……。メ、メグさん……。こ、こんにちは……。あ、あの、卒業試験て……?」
チノは出迎えたマヤ・メグの格好に面食らって上ずった声で上の空な反応を返してしまった。自分が「ラビットクロニクル」のアバターと同じ姿で召喚されている時点で、マヤとメグもそうなのではないかと予想できたが、いざ実際に目にすると衝撃的だ。
まずマヤだが、頭には白い帽子に金のゴーグル、うさぎのぬいぐるみと一体化した巨大サイズの髪飾りをつけており、これだけでも物凄く目立ちそうだ。さらに凄いのは服装で、下はショートパンツだが上はベア・ミドリフと言うのだろうか。丈が胸までしかなく袖もない、マヤの健康的なおへそと腋が完全に露出するような、白と青を基調にした服を着ている。傍らに置かれているのは銃のようだが、元の世界でリゼが持っていたような黒色のものではなく、金色でスチームパンクにでも出てきそうな凝ったデザインの銃だ。
対するメグの格好も中々だ。頭からピンク色のうさ耳を生やしているが、メグの呼吸に合わせて揺れ動いているのを見るとカチューシャを付けているのではなく「自前」のようだ。服装も下はスカート、上はもこもこした毛皮が付いているが丈はマヤのものと同じくらい短いトップスで、お腹が完全に見えてしまっている。うさ耳と毛皮からはもこもこした印象を受けるが、一方で手足には金属製の硬そうなガントレットとレッグガードをつけており、さらには大の男でも扱いに困るような大きな斧を持っているので、全体のコーディネートとしては絶妙なアンバランスさを醸し出していた。
二人ともおへそ丸出しの格好で恥ずかしくないのでしょうか――そう思ってしまったが、冷静に考えるとミニスカートで太ももが大きく出ている自分の格好も中々に恥ずかしい。今思うとココアの格好をコスプレ等と言えたものではなかったように思う。一方タカヒロは素朴なチュニックのような目立たない服を着ていたので、自分の父親の前でコスプレを披露しているような気恥ずかしい気分になってしまったが、誰も気にする様子がないので気にしないよう努力することにした。
「どうしたのさチノ、そんなに私達の格好をまじまじ見て……。どこかおかしいか? 何もなければ早く出発しようよ」
「そうだねー、流石にちょっとは余裕持って試験会場に着いておきたいし」
そう言うと、今ラビットハウスに来たばかりだというのに、マヤとメグの二人はチノの背中を押すようにしてラビットハウスの外に出させようとする。「卒業試験」とやらの時間が迫っているらしく、有無を言わせない感じだ。
「って、ちょっちょっちょっ、待ってください、私この世界に来たばかりでまだ何も」
「はいはい、おしゃべりは会場に向かいながらでも出来るからさー」
「チノ、頑張っておいで。ここまで学んできたことを出し切れば、必ずクリアできるはずだよ」
最終的には父にまで言葉で背中を押され、訳が分からないままにラビットハウスを後にすることになってしまったのだった。