「いやあ、大うさぎは強敵でしたね……」
「攻撃パターンが読めなくて苦戦したけど、チノちゃんの補助魔法がうまく入ってくれたのが効いたね~」
「チノの幻覚魔法が解けないままボス戦に突入とか、いったいどうなるかと思ったけど、案外何とかなるもんだなー」
「だから私のこれは幻覚では……」
「チノちゃん、『あっちの世界ではモンスター狩りなんてしたことないから戦い方なんか分からないです』って言う割には、チームワーク抜群だったよね。もしかして『あっちの世界』でもどこかで一緒に戦ったことあった?」
二日後。割とあっさり三人は大うさぎを倒すことができ、チノの懸念は空振りに終わっていた。
魔法など使ったことの無いチノだが、マヤとメグから少し教えてもらうと、案外簡単に使えるようになった(マヤに言わせると「元々体で覚えていた魔法の使い方を思い出してるだけなんだから、簡単に使えるようになるのは当たり前」とのことだが)。
「ラビットクロニクル」で対モンスター戦のイメトレをしていたのも良かったのかもしれない。二日間の旅で、チノの戦闘スキルはみるみるうちに上達しており、マヤ・メグと一緒に戦うにもさほど支障ないレベルになっていた。
今はティーテーブルの山を下り、出発場所のテントに戻る途上である。マヤの持つずた袋の中には大うさぎ戦の戦利品である巨大ニンジンが入っている。このニンジンはなぜか野生で生えているのを目撃されたことがなく、大うさぎの巣穴にのみ存在が確認されているので、クエスト達成の証拠として試験官に提出することになっているのだった。あとはこれを無事持ち帰りさえすれば試験合格だ。マヤは袋を左右に揺らしながら弾むように森の中の小道を駆け下りていく。
「ねえねえ、学校を卒業したら何がしたい? これでクエストも自分達だけで受注できるようになるし、街同士を自由に移動することも出来るようになるし、クラスチェンジもしようと思えば出来るようになるし……、夢が広がるなー」
「私はペットモンスターを飼ってみたいかなぁ。学校卒業して一人前の冒険者になれば、魔物使い協会への登録も出来るようになるよね」
マヤとメグは楽しそうに将来の計画についてあれこれと話している。しかしその時、チノの耳はこの森の中にこだまするかすかな違和感を聞き取っていた。
「あ、あのえっと……マヤさんメグさん、お話中すみません。でも、何か今聞こえませんでしたか?」
「なんだチノどうした!? 今度は幻聴か?」
「幻聴じゃないです! 耳をすませてみてください、遠くから何か聞こえてきませんか?」