がっこうぐらし!RTAをするつもりでした。予定変更して生存人数最大数更新を狙います。   作:鎖佐

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初稿投です。


さいしょのひ(中)

わたしの友達のくずはちゃんは凄い人だ。なんと、目が見えないのに見えるのだ!!

本人に聞いたら音の反響で物の場所が分かるらしい。つまり音で見てる!!

って言ったらそれは違うって言われた。目だって光の反射を見てるんだから、そんなに間違ってないと思うけどなぁ・・・

 

・・・3ヶ月前の事故でくずはちゃんは更に足が動かなくなった。このくらいなんでもないって笑ってるけど。目が赤かった。きっと泣いてたんだ。

うん。たとえ強がりでも、くずはちゃんが笑うならわたしも笑う!!暗い顔してたらきっともっと無理をする。くずはちゃんはそういう人だから。

 

「あ、くずはちゃんおはよー!!」

 

「あら、おはよう由紀ちゃん。今日も可愛いね」

 

「えへへー、くずはちゃん今日はテスト最終日だね!!自信の程は?」

 

「フフン、ボクの頭なら勉強で躓くことは無いね。そういう由紀ちゃんは?最後の悪あがきしないの?」

 

む。このナチュラルに頭いいアピールしてくるのは頭にくる。わたしだってやるときはやるんだ。

 

「わたし?ふふん、今回はちょっと自信あるよ!!」

 

「あーコレは今回も赤点ギリギリかなー。おかしいなー。普通に授業受けてたら80点は取れると思うんだけど」

 

「ごめん。今くずはちゃんの事嫌いになった」

 

ぜつゆる。これは断固としてゆるせない。そもそも普通に授業うけて80点なら皆ちゃんと受けて無いじゃん。平均点70くらいなんだから。

 

「まって許して、謝るから。ね?ほら、親友でしょボク達。親友の証」

 

そう言っておそろいのニットを指差すくずはちゃん。

アレ中身が入ってるんだよね。狐耳。ぴょこぴょこ動いて可愛いんだけど。隠すようになちゃった。・・・触らせてもらおうかな・・・

いや駄目!!今回こそ断固とした姿勢でわたしは怒っているということをアピールしなければ!!

 

「じゃあね。くずはちゃん」

 

「まって!!?まって由紀ちゃん!!?」

 

おお!!?凄い車椅子でドリフトした。縋りつかれては振りほどけない。

 

「ね!!?謝るから!!ごめん!!ごめんなさい!!言い方悪かったよね。許して!!ね?ほら一緒にお風呂に入った仲でしょ?将来結婚しようっていった仲でしょ?ね?」

 

・・・涙目上目遣いのくずはちゃんかわいい。ニットの中で狐耳がペッターンってなってるのも良き。

・・・ハッ、今の考えは良くないヨクナイよ。ブンブン。

あーしかたないなー、どーしても許してほしーなら。わたし優しいから許してあげなくもないけど?

 

「もう馬鹿にしない?」

 

「いやでも・・・由紀ちゃんはお馬鹿だし」

 

ぜつゆる。だんじてゆるさぬ。ぜっこうだ。

 

「でもでも由紀ちゃん魅力は嘘つけないとことか、表情に全部出るところとか、純粋な心が可愛いんだよ!!テストの点数なんておまけだよおまけ!!」

 

くずはちゃんがテストの点数をおまけって言ったら、ちょっとシュミ悪いと思う。それに、くずはちゃんに嘘付いたらばれるし・・・

 

「・・・またむつかしいこと言って誤魔化す気だ・・・」

 

「違うんだよ由紀ちゃん!!ほら!!ボクが入院してた時も3日に一度は来てくれたよね!!あれ本当に励みになったんだよ!!愛されてるんだなって、ね。・・・そ、それに赤点回避のために30時間も勉強を見てあげてるボクの努力も評価してほしいかな!!」

 

む、むう。必死だ。今ぽろっと赤面物の発言でたよ。まったく人前で恥ずかしいなぁ。

 

「っていうか。なんで赤点ギリギリなの?テストに出るところ。全部教えてたよね?ボク」

 

「ビクッ」

 

や、やばい・・・。確かに、確かにくずはちゃんに教えて貰うと、毎回テスト内容ドンピシャなんだけど・・・やっぱりむつかしい物はむつかしいって言うか・・・やっぱり分かってなかったって言うか・・・

 

「あ、あのねくずはちゃん。意地悪言ったのは謝るよ」

 

「・・・やっぱり、人の努力を無駄にするような人とは、ちょっと友達にはなれないかなぁ・・・!!」

 

「まって!!まってくずはちゃん。えっと、あのね。そ、そうだ!!テスト範囲で分からないところが」

 

「おーい由紀。朝礼始めるから席に着け」

 

「あわわわわ」

 

「ふふ。ほら、補修になったら付き合ってあげるから。さっさと座る!!」

 

「!!約束だからね!!」

 

「・・・うん。約束ね」

 

よーし、頼むぞ鉛筆フォーチュン号!!わたしの赤点回避は君に掛かってる!!

 

 

 

 

 

 

「え?補修?」

 

「そう。由紀ちゃんの提出したノート。内容の半分も書けてないもの。流石に認められません!!」

 

「そんな!!」

 

めぐねぇから告げられた最終宣告。今日はくずはちゃんと遊ぼうと思ってたのに・・・

 

「ふーん。じゃボクは図書館で本でも読んでるから」

 

「ま、まって!!補修手伝ってくれるって」

 

「ノート未提出の何を手伝えばいいのさ」

 

「あう」

 

む、胸が痛い。くずはちゃんが正論で虐めてくるよう・・・

 

「まったくもう、ほら、ボクの目を見て」

 

「あ、うん!!」

 

くずはちゃんに言われて目を合わせる。くずはちゃん目が見えないからわたしから合わせないといけない。

わたしが一方的に見つめること3秒。いつものように頭に違和感が出てきた。狐耳だ。

まあわたしのニットに隠れて見えないんだけどね。この状態になると遠くにいてもお話できるの!!テレパシーって奴!!

 

『分からないことがあったら教えてあげる。行ってらっしゃい』

 

「うん!!行ってきます!!さあめぐねぇ!!行こう!!」

 

「あなた達、仲いいのね・・・あ、あとめぐねぇじゃなくて佐倉先生!!」

 

なんだか顔の赤い先生を連れてわたしは補修に立ち向かうのだった。

 

 

 

 

 

『終わったぁ!!葛葉ちゃん補修終わったよ!!』

 

ながく・・・ながくくるしいたたかいだった・・・!!けれど、わたしは乗り越えたんだ!!

 

『おーおつかれー。今良い所だから、後でねー』

 

酷い。冷たいよくずはちゃん。読書の邪魔をすると凄く怒るから、今は話しかけられない。

・・・なら、屋上に遊びに行こっかな。

 

『わたしはりーさんところに遊びにいくね!!くずはちゃんはどうするの?』

 

まさかずっと読書ということはないよね。普通活字なんて1時間見てたら頭いたくなっちゃうよ。マンガは別だけど。

 

『行けたらね~』

 

『くずはちゃんがそう言うときって大体来るよね?ツンデレさんなの?』

 

『行かない。それに、りーさんもまだ負い目があるみたいだし、今は時間空けるよ』

 

りーさんは3ヶ月前の事故のとき、道路に飛び出したるーちゃんのお姉さんだ。別にりーさんが悪い訳じゃないし、るーちゃんもつい飛び出してしまっただけ。運転手さんもおかしな運転をしてたワケじゃない。だから、あの事件は、きっと間が悪かったんだ。

りーさんに負い目があるっていうのは、きっと間違いじゃないけど、でも、時間を空けるよりは一緒の時間を過ごしたほうがいいと思う。

 

『うーん、気にしなくてもいいと思うけど・・・でも分かった。図書室だよね?』

 

『そだよ~。あ、今の時間なら陸上部も部活中かな?くるみちゃんにがんばえ~って言っといて』

 

『あ、そうかも!!よし、行ってみる!!』

 

わたしはくるみちゃんの走ってる姿が結構好きだ。全力!!って感じが伝わってくる。コンマ数秒を縮めるために何時間も練習して、トレーニングして、そして大会に出る。いわゆる結果が全ての世界ってやつ、わたしには凄く厳しい世界だと思う。でも、くるみちゃんはそこで戦ってる。まあ、本命の理由は皆知ってるんだけどね?

 

あと、わたしは・・・くずはちゃんの読書をしてる姿が好きだ。目を閉じて、真っ白な本を指でなぞると、ほんの少しだけ表情が変わるの。その姿が、とっても綺麗なんだ。

・・・図書館行って見ようかな。でも、なんだろう。きっと、そこには居ない気がする。

 

やっぱり屋上に行こう。

 

 

 

「お邪魔しまーす。りーさん遊び、じゃなかった。手伝いに来たよ!!」

 

「あら由紀ちゃん。いらっしゃい」

 

額に汗して土を弄るりーさん。6月はまだ暑くはないけど屋上でお日様にあたり続けるのは結構熱い。

 

「あれ?りーさん一人?」

 

「ええ。畑のお手入れはもう殆ど終わり。今は私が個人的に育ててるシュガートマトのお世話をしてるの」

 

「シュガー?砂糖になるの?」

 

「そうじゃなくて、お砂糖を振ったトマトみたいに甘くなるの。結構難しくて、売り物みたいにはならないと思うけど・・・」

 

そう言ってりーさんはトマトの苗を見る。トマトといえば・・・

 

「くずはちゃんに?」

 

「ふふ。やっぱりお見通しね。そう。好物がトマトらしいから、思い切って育ててみようと思って」

 

そう言って笑うりーさんには、やっぱりくずはちゃんへの負い目は無いと思う。あるのは純粋な感謝の気持ち。だから、あとはくずはちゃんの気持ち次第なんだ。

 

「よかった。くずはちゃんがさ~りーさんはボクに負い目があるか~って言って会おうとしないの」

 

「うーん、負い目があるのは間違いじゃないけど、私達が葛葉さんに罪悪感を感じるのは違うと思うのよ。勝手な意見かも知れないけど、「助けさせてごめんなさい」なんて、失礼じゃない。だから、私は恩を返すの。私に出来る精一杯で」

 

「ヒューカッコイイー!!」

 

「ちょっ!!馬鹿にして!!」

 

プンスコと怒るりーさんだけど、友達の前であんなクサいセリフを言うのが悪いと思う。そんなのからかって下さいって言ってるようなものだ。

 

「ほら、りーさん!!わたしも手伝うことない!?」

 

「もう、じゃあバケツに水を汲んできてくれるかしら?」

 

「はーい」

 

それからしばらくりーさんのトマトのお世話を手伝った。凄いんだねーシュガートマトって、グラム単位で水やりするんだって。

 

『由紀ちゃん。今どこ?屋上?胡桃ちゃん走ってる?』

 

ひと段落したところで直接脳内に声が掛かる。読み終わったのかな?言われて屋上の手すりから下を覗く。

 

『あ、くずはちゃん。ううん今先輩が見本見せてるところ』

 

『あ~なるほどね~・・・早くくっ付けばいいのにね~』

 

『ね~早く付き合っちゃえばいいのに・・・』

 

あの二人が好き合ってることなんて、陸上部皆とりーさんやくずはちゃんだって知ってる。中学校から追いかけてもう大学まで一緒らしい。妬けちゃうよね、まったく。

 

「おーい、くるみちゃーん!!」 

 

「恥ずかしいからやめろー!!」 

 

「くるみちゃんだって人前でいちゃついてる癖に!!」

 

「は!?ば、お前!!」

 

慌てる二人をりーさんと一緒にあらあらと眺める。こうしているとなんだか大人になったような気がしてくる。

ただの出刃亀さんなんだけどね。

 

 

ふと、正門からフラフラと人がやってくるのが見えた。

急に、咳き込む人が現れ始めた。

 

嫌な、予感がする。

 

「いたいた。丈槍さん、お手伝いなら構いませんが、屋上は本来園芸部以外・・・」

 

『「くずはちゃん!!何かおかしい!!」』

 

 

先生が一人、喰われた。

日常が、終わった。

 




プロットを考えては消して、考えては消して
そうして作者は失踪する。

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