ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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今回は佐倉とストーカーまで





第20話 もう1人の最高傑作

 審議当日。

 昨日のことで堀北の近くにいる人との仲が悪くなったが、綾小路だけはお昼にいつも通り接してきたので、普段とあまり変わらないだろう。

 今回の件で俺のやることは一切ないが、監視カメラを一応バックの中に入れてきている。

 あいつらが気付けば、俺を頼ってくるだろうと思ったからだ。

 

(堀北が昨日「あなたに頼らない」って言ってるから無駄になるかもしれないが)

 

 そして放課後になり、審議に参加する須藤、堀北、綾小路、佐倉が教室を出て行くのを確認してから、例の仕事の件について橋本に電話をかける。

 

「あの件についてだがうまくいってるか?」

 

『ああ。昨日の朝と夜、今日の朝にポストを確認したがしっかり入ってたぜ』

 

「予想通りの動きをしてるな」

 

『相手がポストの主が男だって知ったら、どうなるんだろうな?』

 

「俺はそんなことしたことないし、まわりにそんなやつがいないから分からないな」

 

 今の時代でポストの中に大量の手紙なんて少し考えにくいことだし、そんなことをする人間は滅多にいない。

 有り得たとしてもストーカーか愛が重たい人ぐらいだろう。

 

『それはそうだろうな。あー、早くどうなるのか知りたいな』

 

「俺の予想では明後日には知れると思うぞ。もしお前が生で見たいって言うなら、当日連絡するが」

 

『おお、それはぜひ頼みたいな』

 

「分かった。それじゃあ頑張ってくれ」

 

『りょーかい』

 

 電話を終え、前で帰る準備をしている本城に声を掛ける。

 

「本城、手紙の処分を頼んでもいいか?」

 

「ん?もしかしてもう手紙が溜まっているの?今日の朝に回収したのに」

 

 そう言った本城は鞄に入っている手紙を取り出す。

 数こそあまりないが、中身を見なくてもこの手紙がおぞましいものであることが一瞬で分かってしまう。

 

「いや、橋本が朝に手紙が入ってたと言っていたから声を掛けただけだ。しかし、そんな物を押し付けてすまないな。本当なら俺がやるべきだが」

 

 それに対して本城は首を横に振る。

 

「それなら平気だよ。だってゴミ箱にポイするだけだし」

 

「そうか」

 

「じゃあ僕は帰るね。また明日」

 

「また明日」

 

 本城は申し訳なさそうにこちらを見つめていた沖谷と帰って行った。

 それを見つめながら教室を後にし、特別棟で1番近いベンチにくつろぐことにした。

 ぼんやりしてるいると、右から龍園、左から坂柳がこちらに来るのを感知した。

 

「よお、坂柳。今日は1人ぼっちか?」

 

「ええ。そこのベンチに座っている彼に使われてるので。そう言うあなたも1人では?」

 

 両者の顔がはっきりと見えていないが、笑みを浮かべているのが容易に想像できる。

 

「こいつに会うだけなら別に1人で大丈夫だからな」

 

「そうですか。それでは私はこれで失礼しますね・・・・・・あ、そうでした。黒瀬くん、今回のことは許しますが、次回からはこちらにも連絡をくださいね。では」

 

 杖をつく音が左耳から聞こえていたのが右耳に変わる。

 どうやら、ここから去っていったようだ。

 意識を戻し、目の前にいる龍園に視線を向ける。

 

「てっきりお前が参加するのかと思ってたが参加してないとはな。クク、これでCクラスが勝ったも同然だな」

 

「俺は元からそこまでする気が無かったからな。まあ、俺の予想が当たれば他のやつが抜け道を使って、ダメージなしになると思うがな」

 

 それを聞いた龍園の目が絶好の獲物を見つけた肉食動物のように変わる。

 

「それはそれでおもしれえ。そのDクラスのやつで遊んでから、次にお前、最後に坂柳だ」

 

「そいつは俺と同等、もしくはそれ以上だと思うがな。遊びがいはあると思うぞ」

 

「クク、そいつは楽しみだな」

 

「油断して勝てる相手じゃないと思うが」

 

「たとえ負けたとしても、最後に俺が勝っていたらそれでいいんだよ」

 

 目を見れば分かるが、かなり本気で言っているようだ。

 龍園が何度も立ち上がり、最終的には勝利してきたやつであることが感覚的に分かる。

 

「面白いやつだな。まあ、頑張ってれ」

 

「そんな余裕の面構えされるとムカつくぜ」

 

「今は余裕なだけだ。そのうち、この余裕もなくなってくるだろうな」

 

 俺の前にDクラスの誰かが龍園の餌食になるためそれまでは余裕があるが、ターゲットが俺に変わればそんな余裕は無くなってしまうだろう。

 俺と龍園の視線が交差している中、普段鳴るはずのない携帯から着信音が鳴った。

 かけてきた相手を確認すると『綾小路』と書いてある。

 

「話をしてたらなんとやら。Dクラスのやつからだ。結果を楽しみにしとけよ、龍園」

 

「楽しみにしといてやるよ」

 

 俺は龍園から離れて電話に出る。

 

「何か用か?」

 

『お前の力を貸してほしい』

 

(堀北かと思ったがまさか綾小路とは)

 

「貸してやるが何をすればいい?」

 

『特別棟に監視カメラを設置してほしい』

 

「分かった。いつまでに設置すればいい?」

 

『明日の放課後までにだ』

 

「なら明日の昼休みに設置する。それで審議はどうなったんだ?」

 

『今日のでは決まらず、明日に再審が行われることになった』

 

 堀北と綾小路は何とか審議を乗り越えたようだ。

 監視カメラのことも気付いたとなると、こちらの勝ちは確定したと言える。

 

「頑張ったんだな」

 

『堀北がな』

 

(あの堀北がな...)

 

「そうか」

 

『切ってもいいか?』

 

「ああ」

 

『分かった』

 

「また明日な、『ホワイトルーム』の最高傑作さん」

 

『?それはどうい────』

 

 綾小路が何か言おうとしていたが、こちらから電話を切る。

 

(もう少し聞くのを待ってても良かったが、少し興が乗ってしまった。

おそらく、あのまま綾小路の言葉を聞いてたとしても、白を切るつもりだったかもしれないが、俺という存在を注視ぐらいはするだろうな)

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 再審が行われる日へと変わり、教室に入るといつもと違う点が1つだけあった。

 それはいつもこの時間帯にいないはずの佐倉がいたからだ。

 俺はクラスの中でもそこそこ早い時間帯に学校へ来ているが、その時に一度も佐倉の姿を見たことがない。

 おそらく昨日の審議で何か心変わりでも起こり、早めに学校へ来たのだろう。

 そんなことを考えながら授業を受け、昼休みに突入したので特別棟へと向かう。

 

 昨日の依頼通り監視カメラを設置しそれを終えると、背後から男子生徒と女子生徒がこちらに来るのを感じ取った。

 こんな時間に、それもこんな場所に来るやつはだいたいやばいやつというのがお決まりである。

 溜め息を内心でつきながらそちらを見ると、そこには堀北兄と前に生徒会室にいったときにいた3年の人だった。

 

「お久しぶりです生徒会長、と言っても1週間前ほどに会いましたが。そちらの先輩は?」

 

「生徒会書記の(たちばな)だ」

 

(橘先輩か)

 

 堀北兄に紹介された橘先輩が丁寧に会釈をこちらにしてくる。

 こちらもそれに応えるように会釈をし返す。

 

「こんなところに何か用でも?」

 

「事件現場を見に来ただけだ。お前こそ何をしている?」

 

「見れば分かると思いますが」

 

「そうだな。昨日の審議、俺はお前が参加すると思っていたが」

 

 堀北兄も俺が審議に出ると踏んでいたらしい。

 俺に対しての評価が高いのか、それともこういったことに首を突っ込むやつだと思われているのか分からない。

 ただ生徒会長である堀北兄にそう思わせさせたことが出来たのは嬉しい限りだ。

 

「参加する気のない人が参加すれば、勝てる戦いも負けてしまいますよ」

 

「俺にはお前がそれに当てはまるとは思わないが」

 

「そうですか。それよりあなたの妹さん、どうにかしないと退学になるかもしれませんよ」

 

「お前がやろうとしてるのか?」

 

 その瞬間、堀北兄の目がこちらを睨めつけるように変わる。

 あまり妹に関心がないと思っていたが、それは表面上でしっかり兄としての心は持っているようだ。

 

「俺は()()思ってませんよ。やりそうなのは、同じのクラスにいると思いますが」

 

(堀北に何かしらを抱いている櫛田。櫛田のあれを聞いて思っただけだからな。

 堀北タイプの人間なんてこの学校にいると思うし、櫛田だってそういう人間と関わってきたはずだ。そう考えると、堀北と昔何かあったってぐらいになる。

 まあ俺はまだ退学させようと思っていないだけだ。これからの態度次第ではあいつを退学させるが)

 

「そうか」

 

 それを聞いた堀北兄の目は安心したのか先ほどの状態に戻る。

 

(内心では妹思い?意外な一面だな)

 

「会長、そろそろ戻ろないと時間が」

 

「そうだな。黒瀬、お前に忠告しておく。今はお前の思い通りに全て動いているかもしれないが、この学校でそれが長く続くと思わない方がいい」

 

「何となくですが分かってますよ。俺だって今の状況があまりにも自分の思い通りに動いていて、怖いと思うぐらいですから」

 

「それならいい。行くぞ橘」

 

「はい」

 

 2人の3年生の背中を見ながら俺は教室に戻る準備をした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 放課後になり、神室に特別棟に行って様子を録音してもらうために連絡をしてから、興味本位で心変わりをした佐倉を見失うか見失わない程度の距離からついて行くことにした。

 

(実は雫という人物の正体が佐倉だってことを知ってしまったんだよな。

 おっさんの言ってた雫っていうので、ちょっと検索をかけたらグラビアアイドルのブログが出てきたから覗いてみたら佐倉だった。

 朝はそのことを除外していて心変わりの意味がいまいち分からなかったが、考えていくうちにおっさんとの関係性があるかもと思い尾行している。ストーキングじゃないぞ)

 

 佐倉は学校からそのままケヤキモールに入り、家電量販店のおっさんがいるところに向かう。

 その後ろから俺も店に入り仕事を任せている橋本と合流する。

 

「仕事を放棄せずにしっかりとやっているみたいだな」

 

「まあな。それよりあの女子生徒ってDクラスか?」

 

「そうだ。店員と関係がありそうでこっそりつけてきたが、本当だったとは」

 

 佐倉と店員の方に目を向けていると、どこかへ向かうようなので橋本と一緒にあの2人の後ろをつけていく。

 そして、家電量販店の搬入口のある場所で2人が止まったので、俺たちは退路がしっかり確保された場所に身を隠す。

 そしたら橋本が小声で聞いてくる。

 

「どうなるんだろな」

 

「さあな。救世主が現れるのかどうか、だいぶ気になるところだな」

 

(今日の佐倉を見て誰が助けに来るか)

 

 2人の様子を伺っていると先に口を開いたのはおっさんだった。

 それに合わせて俺は向こうには見えないよう携帯で録画と、常にポケットに入っている録音機で録音を始める。

 

「どうしたんだい?いきなり僕を呼んで」

 

「もう、私に連絡してくるのはやめてください・・・・・・!」

 

「どうしてそんなことを言うんだい?僕は君のことが本当に大切なんだ・・・・・・。雑誌で君を初めて見た時から好きだった。ここで再会した時は運命だと感じたよ。好きなんだ・・・・・・君を想う気持ちは止められない!」

 

「やめて・・・・・・やめてください!」

 

 佐倉は叫ぶと、鞄から何かの束を取り出す。

 それは手紙だ。それもかなりの量の。

 

(このおっさんまじでやばいな。知ってたけど)

 

「どうして私の部屋知ってるんですか!どうしてこんなもの、送ってくるんですか!」

 

「・・・・・・決まってるじゃないか。僕たちは心で繋がってるからなんだよ」

 

「もうやめてください・・・・・・迷惑なんです!」

 

 そう言って、持っていた手紙の束を地面へと叩きつけた佐倉。

 

(いいぞ。もっとだ)

 

「どうして・・・・・・どうしてこんなことするんだよ・・・・・・!君を思って書いたのに!」

 

「こ、来ないで・・・・・・!」

 

 おっさんは佐倉との距離を詰めて、腕を掴み倉庫のシャッターに叩きつけるように押し付けた。

 

「今から僕の本当の愛を教えてあげるよ・・・・・・そうすれば佐倉も、わかってくれる」

 

「いや、離してください!」

 

 もう救世主が来ないと思って諦めていたその頃、俺たちとは反対側の場所から一之瀬と綾小路が出てきた。

 それもパシャパシャと写真を撮りながら。

 

「あー見ちゃったッスよ~。なんか偉いことしてんなあオッサン」

 

 綾小路のヤンキー口調を聞いて、声には出してないが笑ってしまう俺。

 

「へっ!?」

 

 綾小路のことを知っている佐倉も唖然としている。

 

「大人が女子高生に乱暴。明日はテレビで大々的にニュースっすね~」

 

「ちょ、ち、違う。これは違うっ!」

 

「全然違わなくな~い?って感じぃ?みたいなあ?」

 

 一之瀬の方も綾小路に合わせているのか、同じ口調でおっさんを問い詰めていく。

 それに橋本も声が出ないよう口に手を当てて笑い始めた。

 追い詰められていくおっさんは慌てて佐倉から手を離す。

 

「違う?違わないと思うっスけど。うわー何この手紙、キモ。ストーカー?」

 

 綾小路は臭い靴下を摘み上げるように、鼻を摘みながら手紙の角を挟み持ち上げる。

 

「違うんだ。ただ、そう。この子がデジカメの使い方を教えて欲しいっていうから、個別に教えてたって言うか。それだけなんだよ~」

 

「ふぅ~ん」

 

 綾小路がおっさんとの距離を詰めて、圧だけでシャッターへと押し付ける。

 

「俺と彼女、ばっちり現場みたんで。ついでに写真も撮ったし。次にその子の前に現れたり嫌がらせの手紙送りつけたりしたら、ソッコーでバラしちゃうよ?」

 

「は、ははは。何のことかな。ほんと。僕全然知らないんで・・・・・・」

 

 おっさんはそれで逃げられると思ってとぼけ続けるが、綾小路にそれは通用しなかった。

 

「知らないだ?抜かしてんじゃねえぞオッサン。アイドルに鼻の下伸ばすだけならともかく、手まで伸ばしたらお終いだろ。ぶっ殺すぞ?」

 

「ひっ!!さ、さよなら!もう二度としません!」

 

 綾小路が逃げられるように空間を作っていたので、そこからおっさんは逃げ出していった。

 逃げ出した方がこちらで、見つからないように息を殺しながら録画と録音を止める。

 おっさんが見えなくなってから、俺も橋本に合図をしてここから逃げ出すことにした。

 素早く店の外に出て他の人の目がないところに行くと、橋本が声を出して笑い始める。

 

「ハハハ!まじで一之瀬のヤンキー口調面白すぎだろ!」

 

「そうだな」

 

「もう片方は知らないがだいぶ酷かった!」

 

「普段やらないことをやっているのを見ると、本当に面白かった」

 

 救世主は来ると思っていたが、あんな小物相手に芸の1つを打つなんて思ってもいなかった。それもとびきり面白いのを。

 溜め込んでいた笑いが収まってきた橋本が今後について聞いてくる。

 

「・・・・・・それにしても、この後はどうするんだ?」

 

「あのおっさんが動くとしたら今すぐだが・・・・・・って言ってたらメールが」

 

 良いタイミングで店員ことおっさんからメールが届く。

 

『話が違うじゃないか!今すぐ会いに来い!』

 

 あの場で綾小路たちに阻まれたため、かなり怒っているようだ。

 

(あんなことをしておいてキレるとは。流石と言ったところか)

 

『今は用事でそちらに行けないので夜にここへ来てください』

 

 その文と共に事前に用意しておいた場所を示した地図を送り、電源を落とす。

 

「とりあえず、夜まで待ってもらう」

 

「お前が何を考えてるのか分からないが、夜を楽しみにしとくぜ」

 

「面白いのが見れるか分からないがな」

 

(計画もいよいよ終盤。おっさんがどうするのか、楽しみにしておくか)

 




アニメ版だとストーカーに追いかけられて裏路地に入ってでしたが、小説版だと家電量販店の搬入口だったので、ストーカーに佐倉が会いに行くようにしました。
そうじゃないと、家電量販店の搬入口には行かないかなーと思ったので。
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