第22話 初特別試験
「いい眺めだな」
「そうだね」
俺と本城は豪華客船のポートサイドから海を眺めている。
「この2週間の間に何かしらのことがありそうだな」
「確か1週間は無人島のペンションで過ごして、その後の1週間は船の中で過ごすんだっけ?」
「そうだな」
この学校に入って初めての夏休み。
俺たちDクラスは期末テストを乗り越え、現在は学校側が用意した2週間の豪華旅行である。
日程としては、最初の1週間は無人島のペンションで過ごし、その後の1週間はこの豪華客船で過ごすというもの。
この船の施設はかなり充実しており、一流の有名レストランから演劇を楽しめるシアター、高級スパなどがある。
そういった施設を無料で利用できるという規格外すぎる旅行なのが今回である。
(それにしても坂柳がこの旅行に参加できないのはあまりにもおかしい。
無人島のペンションと豪華客船で過ごすだけなら、足が不自由であっても来ることは可能なはずだ。なのに来ていない。
これは、無人島で何かしら体を動かす必要のある何かがあるのでは?)
そんなことを考えていたらアナウンスが船に流れる。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に
島が見えるとのことで少し船から身を乗り出し見てみると、無人島らしき小さな島が視認できた。
眼鏡のせいであまり見えないので、眼鏡を外してもう一度見てみる。
先ほどよりも島が見えようになったが、見えるものは木ばかり。
ペンションらしき建物は今のところ見当たらない。
「デッキに行ってみる?」
「いや、俺は大丈夫だ」
今ので大体の島の大きさは把握したつもりなので、わざわざ人の多くいそうなデッキに行かなくてもいいだろう。
眼鏡をかけ直し部屋へと踵を返す。そんな俺の後ろを本城はついてくる。
部屋に戻ると外村と沖谷がいた。
今回の船でのルームメイトはこの2人と本城である。
2人と仲がいいかと言われれば微妙だが、一応同じ部活仲間。
(困ったことが起こったら、2人と仲のいい本城に任せよう)
「おや、デッキに行かないでござるか?」
「準備をしに来たんだよ。そう言うお前も行ってないじゃないか」
「拙者は動きたくないので」
だから太るんだよと心の中でつっこみながら、自分の鞄を持って洗面所に行き、眼鏡からコンタクトレンズに変える。
(動くのなら、眼鏡よりコンタクトの方が動きやすいしな)
コンタクトに変え、今回不在の坂柳に電話をしてみる。
『どうかしましたか?』
「今回のバカンスに参加しないって聞いて。もし何かがあるとしたら、葛城がリーダーになるだろ?」
『そうですね。私の派閥でリーダーになりたそうな方はいないと思いますし』
「それで葛城についての情報が欲しいんだ。俺は葛城に1度も会ったことがないからどんなやつか分からないんで」
Aクラスと対決することがあるかもしれないバカンスで、相手のリーダーを理解しているかしていないかでは、全く違う結果になる。
ここで情報を聞き出せるか出せないかで、葛城派の勢力をどれだけ削れるかが分かれるだろう。
『そのことを忘れていました。彼の名前はいいとして、容姿はかなり分かりやすいです』
「・・・・・・それだけか?」
『それだけです』
坂柳がその程度の相手だと認識しているのか、それともこちらを試そうとしているのかは分からないが、葛城という人物はかなり分かりやすいそうだ。
「・・・・・・分かった。試験でどんな人物か確かめることにする。それじゃあ」
『健闘を祈っていますよ』
電話を切り、洗面所から出るとまたアナウンスが流れた。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒たちは30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいてください』
アナウンスに従ってジャージに着替え鞄を持ち、ルームメイトと一緒にデッキに行く。
しばらくすると全員が揃い次の指示が出る。
「ではこれより、Aクラスの生徒から順番に降りてもらう。それから島への携帯の持ち込みは禁止だ。担任の先生に各自提出し、下船するように」
降りるときに生徒の両脇を先生たちが固め、荷物の検査を行っているせいでかなり時間がかかった。
生徒全員が船から下船してから担任の先生が点呼を行う。
そして点呼が終わり、準備されていた白い壇上にAクラスの担任である
「今日、この場所に無地につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」
真嶋先生が無言で生徒たちを見つめる中、作業着を着た大人たちが、少し遠くにテントを設置しているのが見える。
生徒たちが困惑の色を浮かべはじめ、空気が変わることを待っていたかのように真嶋先生が口を開く。
「ではこれより────本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
(特別試験か。それも本年度最初ってことはこれからもあるのか)
「期間は今から1週間。8月7日の正午に終了とする。君たちはこれからの1週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお、この特別試験は実在する企業研修を参考にして作られた実践的、かつ現実的なものであることを最初に言っておく」
「無人島で生活って・・・・・・船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」
そんな疑問の言葉がBかCクラス辺りから出てくる。
「そうだ。試験中の乗船は正当な理由無く認められていない。この島での生活は眠る場所から食事の用事まで、その全てを君たち自身で考える必要がある。スタート時点で、クラス毎にテントを2つ。懐中電灯を2つ。マッチ1箱支給する。それから日焼け止めは制限なく、歯ブラシに関しては各自1つずつ配布することとする。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している。各自担任の先生に願い出るように。以上だ」
「はああ!?もしかしてガチの無人島サバイバルとか、そんな感じ!?そんな滅茶苦茶な話聞いたことないっすよ!アニメや漫画じゃないんすから!テント2つじゃ全員寝れないし!そもそも飯とかどうするんですか!有り得ないっす!」
そのことに対して池が大きな声で騒ぎ立てる。
「君は有り得ないと言ったが、それは短く浅い人生を送ってきたからに過ぎない。事実、無人島での研修を行っている企業は存在する。それも誰もが知っている大手企業が試みとして行っているものだ」
「う────そ、それは、その、特別なんじゃないですかね。・・・・・・無人島は飛躍しすぎっていうか。絶対ないっしょ!非現実っすよ!」
「これ以上はみっともないからやめろ。今真嶋先生が言ったものはほんの一部だ。世の中には様々な企業が存在する。変わった研修だけでなく、オフィスに椅子がない職場であったり、サイコロの出た目で給料を決める会社など。世の中はおまえが知るより広く深い」
茶柱先生は続けてこう言う。
「つまり現実と非現実の区別をつけられていないのは、おまえの方だということだ」
それを聞いても多くの生徒は納得がいかない様子だ。
「今君たちはこう思っているんだろう。こんな試験にどんな意味があるのか、と。あるいはまだ実在する研修なのかを疑っている者もいるかも知れない。
だが、その程度の考えで留まっている生徒は将来的にも見込みのない人間だ。この話のどこに君たちが『あり得ない』『馬鹿げている』と批判するだけの根拠があるというのだ?君たちはただの学生であり、まだ何者でもない。言ってしまえば無価値に等しい。
そんな人間が一流企業のやり方を批判する?おかしな話だ。君たちが一例として挙げた企業よりも格上の会社を経営する社長だったなら、それを否定する権利はあるのかも知れない。だが、そうでない人間に否定できるだけの根拠など存在しないはずだ」
「しかし先生。今は夏休みのはずです。そして我々は旅行という名目で連れて来られました。企業研修ではこのような騙し討ちのような真似はしないと思いますが」
(そうだそうだ)
Aクラス方面から聞こえた意見に心の中で賛同する。
「なるほど。その点に関しては間違った認識ではない。不平不満が出るのも納得だ」
「だが安心していい。これが過酷な生活を強いるものであったなら批判が出るのも無理のない話だが、特別試験と言ってもそれほど深く考える必要はない。今からの1週間、君たちは海で泳ぐのもバーベキューをするのもいいだろう。時にはキャンプファイヤーでもして友人同士語り合うのも悪くない。この特別試験のテーマは『自由』だ」
そこから真嶋先生による特別試験の説明が始まった。
それをまとめると、
・各クラスに試験専用のポイントを300支給
・マニュアルがあり、そこにはポイントで入手出来るモノのリストが全て載っている。マニュアルは各クラス1冊ずつ配布。再発行する場合、ポイントを消費
・この特別試験終了時、残っているポイントはクラスポイントに加算され、夏休み明けに反映
・体調不良などでリタイアした場合、-30ポイント
先生が話した内容はこんな感じだった。
これから1週間、どうなるのか楽しみだ。
今回、アニメ版のAクラスが占有したスポットの数A〜P(16)(最終話の葛城のノート?らしきものを参考)から考えてA〜Z(26)あると仮定して進めます(あんまり関係ないけど)
あとはアニメ版でAクラスのスポットの誤使用分のマイナスポイント、Bクラスのリーダーを当てたのか、単純に引かれてないのか。
私、気になります!