龍園を探すために森の中をさ迷っていると、知らない人の声が聞こえたので、茂みに隠れてその声の主に近づいた。
どうやら2人いるようだ。
「この先の崖の下にスポットがあった。早く葛城さんに知らせようぜ」
「葛城さんの言ったとおりだったな。これでスポットは4ヶ所目。それに、Cクラスとの契約。これで俺たちAクラスの勝ちは確実だな」
そう言って、Aクラスの2人組はここから去っていく。
俺は2人が言っていた崖の方に行き、周りに何かないかを確認していると、ハシゴがあるのに気付いた。
俺はそのハシゴを使い、崖の下へ行く。
下りてから程なくすると小屋を見つけた。小屋の入り口にはこの島に来て2回ほど見た装置があった。
(これがスポットの装置。
ということは、葛城はこの装置を4ヶ所も見つけたということか。
おそらく葛城がこれに目星をつけられたのは、船が島に近づきそれで観察ができたのだろう。
それに、船のアナウンスで流れた『非常に意義ある景色』という言葉。
この言葉から島を観察して、この場所にスポットがあると思ったのだろう。俺は遠くからしか見てないから全く分からないが。
それ以上にCクラスとの契約の方が大事だ。契約によってはAクラスを最下位にするどころか1位にしてしまう可能性がある。
そう考えると、神室と橋本のどちらかに接触しなきゃいけないな)
ここから去ろうとしたら、崖の上から足音が聞こえた。
(やばい、このままだと見つかってしまうな。どうすれば...)
辺りを素早く観察するも身を隠せそうなところが全くない。
窓があるのでそこで身を隠せそうだが、下に足場が無く海や岩場の可能性がある。
そうなると逃げ道を確保できず、見つかってしまえばそこで終わりとなってしまう。
(窓はダメだな。残された手段は天井に張り付...それはないな。
一度窓から出てそこから屋根の上へ行く。
設計上、小屋を崖ギリギリに建てるのはおそらくないから、どこかに足場となる部分があるはずだから、そこに身を隠す。最悪、屋根の上でもいいか)
先ほどの足音は次第に近づいてきており、もうハシゴを下りる音だけが聞こえる。
俺は音を極力出さずに急いで窓から屋根の縁に手をかける。
そして小屋の反対側、窓側とは違う崖の方に行き、少ししかない足場に身を隠す。
そして出来るだけ小屋の壁に耳を寄せ、少しすると中から人の声が聞こえてきた。
「葛城さん、スポットがありますよ!」
「騒ぐな、
足音的に2人。話していた名前から葛城と弥彦という男だろう。
「大丈夫ですよ、葛城さん。上には見張りがいますし、見た感じ人影はありませんから」
「何度言えば分かるんだ?俺にはリーダーとしての監督責任がある。些細なミスもしないように心がけろと」
「・・・・・・すいません。それじゃあ、やりますよ」
「弥彦」
「す、すいません」
弥彦がそう謝ると、1人がスポットのあるこちらに近づいてくる。
もう1人に比べて体重が軽いのか、足音がかなり軽く聞こえる。
そしてスポットの占有ができたのか、2人の足音が遠ざかっていく。
足音が聞こえなくなってから俺は小屋の入り口に戻り、スポットを確認する。
(スポットや会話からさっきのはAクラス。そうなると葛城はさっきのやつになるな。
会話を聞いた限りだと、スポット占有でポイントを稼ぐ感じか。
坂柳のやり方は分からないが、おそらく相性が合わないんだな。
まあ、さっきの会話を聞いた感じだと弥彦という男がリーダーか。葛城と弥彦については1度も会ったことがないから名前がよく分からん。
そうなると、やはり2人に会うのが龍園に会うより優先される)
そう思って時計で時間を確認する。
(だいたい15時ぐらいか。ここから近いところにAクラスの拠点があるとしても、いられるのは17時ぐらいまで。
そこからDクラスの拠点を見つけないといけないからな)
崖の上に戻り、Aクラスの拠点を探す。
Aクラスの拠点はさっきの場所から近くにありすぐに見つかったが、洞窟の入り口をビニールで覆い、中が見えないようになっていた。
あまりのガードに舌を巻きつつ、その入り口が見えるところで見張っていると、見知った顔がAクラスの拠点に近づくのが見えた。
一之瀬と神崎だ。2人はAクラスの偵察に来たようだ。
「これはすごいね」
「おそらく葛城がやったのだろう。今回の試験は坂柳が不在だからな」
「そうだね」
「何の用だ?一之瀬」
洞窟の中から2人の男が出てきた。
片方は筋肉のある体にスキンヘッド、もう片方はこれといって特徴がない。
ちなみに先ほどの声の主は筋肉質のスキンヘッドだ。
「Aクラスの様子を見に来たんだよ。それにしてもすごい守りだね」
「少しでもミスはしたくないからな」
「そうなんだね。それじゃあ私たちはこれで失礼するよ」
そう言って、2人はAクラスの拠点から離れる。
これ以上の成果がないと断定したのだろう。
それから17時まで粘ってみたが2人の姿が見えなかったので、ここを離れ煙が上がっている場所に行くことにした。
その場所に辿り着くと、Dクラスの拠点だったようで平田の姿が見えた。
だが、今は色んな人と話をしているようなので、近くにいた綾小路に話しかけてみることにした。
「綾小路、Dクラスの現状はどうだ?ずっと森の中にいたからぜんぜ────」
綾小路に近づくと、何故か知らない女子も一緒にそこにいた。
(あのボッチ系男子に女の影があったとは...)
「・・・・・・そいつは誰なんだ?Dクラスじゃないだろ?」
「Cクラスの伊吹だ。森の中に1人でいたから山内がここに連れてきたんだ」
「・・・・・・あ、あんたはあの時の!」
(あの時っていつだ?
Cクラスの生徒と会ったことある時...。
あっ、あのときか)
「カラオケ店のときにいたのか」
それがどうした?としか言いようがないのだが、これ以上言えば何かが飛んできそうな感じがする。
流石にここで暴力沙汰は勘弁してほしいので、綾小路にこの後話があると言い2人から離れた。
(Cクラスの伊吹がここにいるのは理由があってか。
とりあえず今のDクラスの状況を知りたいし、本城に聞いてみるか)
少し離れたところに1人でいる本城のところへ行き、俺がいない間に何があったのか聞いてみる。
「本城、俺がいない間Dクラスで何かあったか?」
「あ、黒瀬くん。どこかへ行ったから心配してたけど良かったー・・・・・・」
俺を見るなり胸をなでおろす本城。
途中でどこかへ行ったことを心配されたようだ。
「単独で動いた方が色々としやすくてな。それでどうなんだ?」
「えーっと、リーダーが堀北さんに決まって、ここのスポットを占有したよ。今は何を買うのか話し合ってるところかな」
離れていた時間はそこそこあったはずなのに、あまり事が進んでいないようだ。
「黒瀬くん。いきなり居なくなったからかなり焦ったんだけど、こうして戻って来てくれて良かったよ」
話し合いが終わったようで、俺の存在に気が付いた平田がこちらにやって来た。
「それは悪かった。俺が居ないことにはいつ気付いたんだ?」
「浜辺から離れるときに気付いたんだよ。他の人は気付いていないようだけど・・・・・・。この試験で単独行動はあまりしてほしくないけど、次からは僕に一言言ってから行動することを約束してくれないかな?」
その時、平田の瞳の奥に色んな感情があるのが見えた。
「分かった。次から平田に一言言ってから行動する」
「ありがとう」
平田はそう言って、他のクラスメイトのところ行った。
(あいつがなぜDクラスにいるのか謎だったが、今日で何となく分かった気がする。
あいつは過去に何かをやらかしてしまった。それも集団生活を行う学校で)
そのあと食事となり、各々が好きに食事を始める。
非常食をゆっくり食べていると平田があることに気付く。
「あれ、そう言えば高円寺くんは?」
「高円寺ならば、体調不良を訴え船に戻ったぞ。もちろん体調を崩したということで、既にお前たちは30ポイント差し引かれたことになる。これはルール上どうしようもない。高円寺はリタイアとなり1週間船内での治療と待機が義務付けられた」
「「「「えええええええ!?」」」」
茶柱先生の言葉を聞いたクラスメイトに衝撃が走る。
「ふざけるなよ高円寺のヤツ!何考えてるんだ!」
そう
「畜生!30ポイントも失った!最悪だ!」
高円寺がリタイアしたことで皆が怒っているのが、本人がいないからぶつけられない。
少しして点呼が終わり、綾小路を連れて森の中に入る。
「ここら辺でいいか。話についてだが、Aクラスの情報だ」
「俺もそのことについて話がある」
「まず俺からだが。Aクラスのリーダーがだいたい分かった。弥彦という男だ」
「俺もリーダーがそいつだと思っている」
綾小路もAクラスのリーダーが弥彦という男であることを知っていたようだ。
「それならAクラスのリーダーは弥彦で決まりだろう。それともう1つ、AクラスとCクラスが何かしらの契約を結んだようだ。内容についてはこれから調べるつもりだ」
「AクラスとCクラスか。伊吹と何か関係がありそうだな」
伊吹がここに来た目的は分からないが、AクラスとCクラスが繋がっている以上、それに関係することでここへやって来たと考えるのが普通だろう。
「その辺もこれから調べるつもりだ」
「分かった」
話が終わり2人で拠点に戻ると、綾小路は堀北に呼ばれた。
その堀北を見ると平然を装っているようだが、体調が優れないのがバレバレである。
(体調不良か。何かに使えるかもしれないし、覚えておくか)