俺の黒歴史である自己紹介が終わり、体育館で入学式が始まる。
普通は入学式からだろと思いながら話を聞いていると、睡魔がいきなり俺を襲ってきて少々危なかった。
そんな入学式が終わって昼前になり、一通り敷地内の説明を受けた(俺はそれ以上に眠くて半分寝ていた)後、解散となった。
先生に聞きたいことがあったので職員室へ向かおうと思い、席を立とうとしたら、前の席のやつが話しかけてきた。
「あのー、すみません」
「何か用か?」
そう言って相手の方を見ると、華奢な体つきで髪が白色、目が水色の色白な男?がいた。
(うん?
こいつどっかで見たことあるような...)
「やはり、私の予想通りでしたね。お久しぶりです。黒瀬様。わたくしを覚えていますか?」
(うーん、1人称が「私」で俺のことを「様」っていう男の同級生なんて覚えてないぞ)
俺は必死に思い出そうとするが、全く出てこない。
「覚えてないのですね・・・・・・。改めて、自己紹介をさせていただきます。わたくしの名前は、
(本城 悠...。
あっ、思い出したぞ。
そういえば小学1年の時に、そんな名前のクラスメイトがいたな。
だが、なぜ丁寧な喋り方なのかさっぱり分からんが)
「間違ってたらすまんが、小学校一緒だったよな?」
「はい!そうです!・・・・・・はっ、取り乱してすみませんでした」
どうやら合っていたようで、それを聞いた本城は少しだけ取り乱すも、すぐに喋り方を元に戻す。
「あー、1つ聞きたいんだが、なんでそんな喋り方をするんだ?」
「もしかして、わたくしの喋り方で気分を害してしまったのでしょうか?」
「いや、そういうのは感じていないんだが・・・・・・」
本城に勘違いされてしまったが、同級生、それも暫定男に丁寧な口調で話されるのが単純に気になっただけである。
「はっ、わたくしの喋り方が気持ち悪くて喋りたくないと!わたくし、悲しくなってきました・・・・・・。シクシク(チラッ)、シクシク(チラッ)」
(なんか誤解されてしまった...。最近の高校生はこれだから...。って、誰目線やねん)
「そんなことは一切思ってないぞ。単に喋り方が気になっただけだ」
「こ、これはお恥ずかしいところ見せてしまいました。この喋り方は黒瀬様にしかしないので安心して下さい」
顔を少し赤く染める本城の言葉に少し引っかかる。
(ん?俺だけ?
それはどういうことだ?)
「俺だけに?俺はそんな言われ方をされるほど凄いやつじゃないぞ。至って普通の男子高校生だ」
「そ、そうですか・・・・・・。それでは、喋り方を普段の感じに戻します。よろしくね、黒瀬くん」
(なんだこの可愛い男子は?!
声も女子に近いし、そして何よりもこの笑顔...。
これだと、俺の精神が持たねえ...)
一瞬気を落としたかと思ったら、満面の笑みで挨拶をされてしまい、面を食らってしまう。
その反動で少し動揺しつつも、挨拶し返す。
「よ、よろしくな。本城」
「はい!あっ、そうだ!この後空いてる?良かったら、一緒にご飯でもどうかな?」
「あー、すまんが少し予定があってな。また、今度にしてくれないか?」
その言葉を聞いて、本城は明らかに落ち込む。
それを見た俺はものすごく申し訳ない気持ちになってしまった。
「そうなんだね・・・・・・。じゃあ、帰るね。あっ、連絡先交換してなかったから交換しよ!」
「あ、ああ。いいぞ」
「ありがとう!」
先ほどまでの落ち込み具合はどこに行ったのか、本城は嬉しそうな顔で自分の携帯をこちらに差し出し、俺は本城という流れに身を委ねて、連絡先を交換した。
(何か流れで交換してもうた)
「じゃあ、また明日ね!」
「おっ、おう。また明日な」
そう言って、本城は教室から去っていった。
(最近の若いのは、しれっと連絡先を交換できるのか...。
っていや、誰やねん。
本城と俺は同い年なのを忘れるな。
ていうか、話してた時だいぶ視線を感じたな)
そう思いながら、俺も教室から出ていった。
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(ここが職員室か。
とりあえず開けてみるか。
それにしてもさっき上から視線を感じたような...)
そう思い通ってきた廊下の方を見ると、監視カメラがあった。
(視線の正体はこれか。
そういえば教室にいた時も、人の視線とは違うようなのを感じたな。
そうなると、生徒の実力を測る時に使われるのか?はたまた、別の観点で...。
いや今は先生に用事があるんだった。
後で考えるか)
俺は考えることを後にまわし、職員室の扉を開けた。
「失礼します。1年Dクラスの黒瀬神威です。茶柱先生はいますか?」
俺が声を発すると、中にいた先生の注目を浴びてしまった。
「黒瀬か。何の用だ?」
そんな俺の声を聞いた茶柱先生がこちらに来る。
「先生に聞きたいことがありまして」
「分かった。立ち話もあれだ、生活指導室で話すとしよう」
茶柱先生はそう言い歩き出したので、俺は後ろからついて行った。
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「まあ適当に座ってくれ」
「失礼します」
俺はそう言い、先生の対面にある椅子に座った。
ここは生活指導室。どうやらここにはカメラはないようだ。
「それで話とは何だ?」
「ではまず、聞きたいことから。この学校の部活では賭け事が行われていますか?」
「ほう。そう思った理由は何だ?」
茶柱先生はそれを興味深そうに聞いてくる。
「それはポイントの譲渡が可能と聞いて、それを使ってポイントで賭け事があるのではないかと思いました。そして1番していておかしくないのが部活だと思ったので」
「そうだな・・・・・・。結論から言うと、部活で賭け事は行われている。私は賭け事をすることはおすすめしないが。他にはないか?」
どうやら、この学校では本当に賭け事が行われているようだ。
だが、先生の反応を見る限り、あまり好ましいことではないようだが。
(正規の方法で集めている生徒からしてみたらこれは嫌われるだろうし、単純に勝てないからやめておけという意味もありそうだな。
あと1つ何かの理由が隠されてそうな気がするが、それはそのうち探ろう)
「じゃあ、もう1つさせていただきます。過去にこの学校で行われた定期テストの問題用紙と解答をください」
「・・・・・・それは出来ないな。もう聞きたいことはないか?」
先ほどの質問と違い、今の回答には普通に分かるぐらいの間があった。
意図してこの質問をしたわけではないが、過去問が何かしらのことで役に立つが分かった。
「はい。これ以上は特にないですね」
「そうか。なら私からも聞いてもいいか?」
「いいですよ」
「お前は定期テストの過去問で何をする気なんだ?」
先生はやはりそのことについて聞いてくる。
「それは過去問から先生達がどのような問題を出すのか確認するためですかね。あとは、テスト勉強の時に自分で問題を作る時に使います」
これは中学生の時から行っていることで、大半の先生は渡してくれないが、貰った過去問で次のテストを予想し、それを対策する。
普通に試験を受けるよりも断然頭を使うので、良い脳トレとして活用していただけだ。
「そういうことだったのか。時間を取らせてしまってすまなかったな」
「いえ、こちらの方こそすみませんでした。では帰らせていただきます」
俺は腰を上げて扉に手をかけた時、茶柱先生に呼び止められる。
「少し待て。お前に
その問いに何か裏があると気付くが、誤魔化す気は全くないので素直に答える。
「なら逆に聞きます。入学そうそう職員室に来た人間にいると思いますか?」
「それもそうだな。悪かった。もう帰っていいぞ」
「それでは、失礼します」
そう言って軽く一礼をすると、俺は生活指導室から出た。
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(茶柱先生の目が過去問の話をした時に一瞬だけ見開いたり、普通に分かるぐらいの間があったから、過去問に何かあるんだろう。
賭け事は過去問を入手してからにして、とりあえずコンビニでも行くか)
そう思いコンビニまで足を運んでいると、その前で何やら揉め事が起こっていた。
(コンビニの前にいるのって、同じクラスの綾小路と赤髪のヤンキー。赤髪の方はまたキレてるし)
「だったらなんだってんだ!」
「聞いたか?Dクラスだってよ。やっぱりな!お里が知れてるってもんだよなぁ」
相手がDクラスということを知ったとたん、3人組は笑い始める。
「あ?そりゃどういう意味だよオイ」
「可哀想なお前ら
「逃げんのかオラ!」
「吠えてろ吠えてろ。どうせすぐ、お前らは
そんな不吉な言葉を残して、3人組は去っていった。
だが不吉な言葉には目をくれず、俺は他の言葉に苛立ちを覚えた。
(不良品...。
俺はここに来ても不良品なのか?
あんな過酷なことにも耐え、死ぬ気で生き抜いてきたのに...。
またあの時に戻るのか...。
────だがらどうした?
それを忘れるな)
そう思っていると赤髪の方はいつの間にか帰ったらしく、綾小路が散乱したカップラーメンの後片付けをしていた。
「おい、大丈夫か」
「ああ。・・・・・・お前は確か、黒瀬だったよな?」
こいつはしっかりと自己紹介を聞いていたようで、名前を聞いた時は内心嬉しくなりつつ、悲しくなる。
「合っているぞ。綾小路」
「俺の名前を知っているのか?てっきり聞かれてないのかと」
綾小路も自分の名前を知っていることに少し驚いているように見える。
(こいつの自己紹介が、あまりにも中学入った時の俺の自己紹介と似ていたからな)
「俺と同じように自己紹介で黒歴史を作りそうなやつだったからな」
「そうか・・・・・・。それにしても黒瀬は雰囲気と違った喋り方をするんだな」
「そうか?」
「少なくともオレは、だが」
話の切り出し方はあれだが、綾小路の言ったことについてはたまに思うことがある。
(と言っても、この喋り方を変えるつもりは一切ないからな。
一応、頭の片隅にでも置いておくか)
「あ、そうだ。ゴミの片付け、手伝おうか?」
「いいのか?」
「クラスメイトが困ってるんだからな。それに、1人でやるより2人でやった方が早く終わるだろ」
少なくとも綾小路が散らかしたわけではないのに、片付けをやっているのを見ていると、少々可哀想に思えてくる。
それに運が良ければ、綾小路と仲良くなるチャンスかもしれない。
それを無駄にする馬鹿はいないだろう。
「悪いな」
「こんなことお安い御用だ」
そう言って俺も後片付けを手伝った。
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綾小路と後片付けをした後、俺はコンビニに用があったのであそこで別れることになった。
別れる際、本城が帰る際にやられた時と同じように連絡先を交換したら、綾小路が喜んでるように見えた。
別れてからコンビニ、スーパーに行き(もちろん無料の商品を買った)、今は寮の中にいる。
寮の部屋は404で、ガス代、電気代、水道代が無料という料理をする俺にとっては嬉しいことだ。
(今日で分かったことを整理するか。
まず、この学校は実力で生徒を測る学校だ。
予想でしかないが、普段の生活態度、単純な成績などで実力を測るはずだ。
成績はそのままの意味だが、生活態度は校内だけじゃなくて、敷地内、プライベートの場所以外での全ての行動が影響するかもしれない。
大げさかもしれないが、そう思っていた方が後々楽になるかもしれないしな。
そういえばさっき、コンビニの前で赤髪と3人組が揉めていた時、Dクラスと知った奴らが「お前ら不良品」という表現をしていた。
この言葉は個人ではなく、複数人。
綾小路は特に何もしていなかったことを考えれば、「Dクラスは不良品」となり、Dクラスは不良品の集まる場所。
そうなると、Dがこの学校で何かしらの1番下に属してるのがわかる。
そして、掲示板で見たA、B、Cのアルファベットも加えて考えると、Aが1番上、Bが2番目、Cが3番目、Dが4番目、1番下になる。
あれ?
もしかして、クラスのアルファベットは、実力の高さを示しているのか?
この学校は実力で生徒を測る。
言い換えれば、実力が生徒の評価。
不良品のDクラスなら、Aクラスは良品。
ポンコツと完璧...。
ん?
まさか、個人個人の実力だけではなく、クラス全体の実力でも生徒が測られる?
...これに関しては情報が少なすぎる。
追々考えるとしよう。
次に毎月貰えるポイントだが、これは変化する可能性がある。
これに関しては、まず10万ポイントが毎月貰える訳がない。
今年の1年だけで160人、これだけで1600万。全学年人数が同じであると考える4800万。
これを毎月払っていたら、1年で総額5億7600万。
3年で総額17億2800万...。
うん。
絶対毎月10万ポイントは有り得ない。
そう考えると、毎月貰えるポイントは変化、それも減少する可能性が高い。
ポイントがもしなくても、最低限の生活をするための救済措置は存在し、コンビニやスーパー、自動販売機に無料のものがあること、そして家賃等が0であることも考慮すれば、有り得る話。
だがもしポイントが減少するなら、ここで1つの疑問が出てきてしまう。
さっき毎月貰えるポイントは減少するって思っていたが、減ってばかりだと部活出来なくなる。
なぜなら、部活用品揃えるだけでもだいぶかかるのに、そこにボロボロになれば交換するための費用、ポイントが必要になる。
例として、俺が部活に入ったとしよう。
その部活は、必要なものを揃えるだけで5万ポイントがかかってしまう。
この時点で、俺の手持ちは残り5万ポイントになる。
そして、ポイントが毎月1万ずつ減っていくと仮定し、部活には毎月1万ポイント、半月に1回4万使わなければならないとする。
そうすると、5月に9万ポイントが入って1万ポイント部活に使う。
プラス8万。ここで13万。
10月になると、4万ポイントが入って5万ポイントを使う。
マイナス1万で、手持ちは34万。
1月にはプラスマイナス0になり、2月には収入がなくなる。
来年の4月、手持ちが30万になっているが、もし俺が毎日300ポイントを食費として使ったら、手持ちは12月までに無くなるだろう。
そこに、友達と遊んだりすれば自然とポイントは無くなり、部活が続行できなくなる。
まあ、部活で必要なものが全て無料だったらこの疑問はなくなるが。
とりあえず、ポイントが増えなければ、部活をしている人には辛いだろう。
おそらく大会で実力を示せば、ポイントが貰えるかもしれないが。
ここからポイントは増えることもあると考えられる。
そうなると、毎月貰えるポイントは増えたり減ったりすることになる。
それがもし実力と関係があるなら、ポイントは個人だけでなくクラスも関係するかもしれない。
うーん、この学校は実力で全てが決まるのか、それとも違うのか。
その辺りのことがはっきりすれば、考えようはあるんだが...。
とりあえず今日はこの辺にして、明日に備えるか)
そう思い外を見ると、太陽の光は消え夜に変わっていた。
「ご飯でも作るか・・・・・・」