何事もなく時間は過ぎていき、無人島生活も6日目となった。
5日目に、一之瀬にCクラスの生徒はスパイでBクラスのリーダーを当てられるということを言い、それを回避する方法を教えたら、一之瀬はすぐに了承してくれた。
多分だが、七詩が近くから凄い圧をかけていたおかげだろう。
俺は特にやることがなかったので、森に入って、人口物(野菜)を取りに行くことにした。
ゆっくり歩いていると、後ろから誰かが走ってくるのが分かった。
俺は立ち止まり、その走ってくる人物を待つことにした。
「どうしたんだ、本城」
「ハーッ、ハーッ・・・・・・。特にやることがなかったから黒瀬くんについていこうと思っただけだよ」
(確か無人島に来てからやることがあまりなかったって言っていたな。だがそれなら常に近くにいるはず。けれど実際はいなかった。
運動が苦手なのは知っているが今回だけついてきた。それには理由があるということか)
本城の言ったことが噓で実際は他の理由で俺についてきたのだろう。
俺はそのことについて問いかけてみる。
「嘘は良くないぞ」
「嘘なんて────」
「ならお前に聞く。俺に何か話すことがあるからついて来ただろ?」
少しの静寂が流れ、本城が口を開く。
「・・・・・・そうだよ。七詩さんのことで黒瀬くんに言いたいことがあるんだよ」
(七詩か。本城との関係なんてないと思っていたが)
「えーっとね、七詩さんが黒瀬くんのサポートをするってことを言いたかったんだ」
(ううん?何故そうなった?)
急な展開に頭が追いつかなくなる俺。
会った回数自体が片手で足りる七詩がいきなり俺をサポートするということを、接点がないとばかり思い込んでいた本城に告げられたのだ。
考えることを一度放棄し理由を尋ねる。
「何故そうなったんだ?」
「ここに来て2日目の時にね。七詩さんがDクラスのところに来て、その時に話したんだ。黒瀬くんと僕との関係を」
「それで七詩が俺をサポートをしてくれるようになったということか」
「うん」
(あの時の行動が何となく分かった気がする)
無人島2日目の時、七詩が一之瀬を頑張って説得した理由はこれだったようだ。
それでも不可解な点は多いが、それは追々明かしていく方がいいだろう。
(そういったのはデリケートな部分だろうし、土足で勝手に入り込んでいいものじゃない。そうなると、七詩ともっと仲良くなるべきなんだろうな。
それは今後の目標として、本城にはCクラスのことを話しといた方がいいな)
「教えてくれてありがとう。実は俺も隠していることがある。それはこの試験が終わったらCクラスに移動するかもしれないということだ」
「え?」
感謝の後に言ったことに驚いた表情を浮かべる本城。
俺はその時のことをかいつまんで説明することにした。
「今回の試験で龍園と話して2000万ポイントを渡すことにした。その時に言われたんだ」
「そ、そうなんだ・・・・・・」
「ほぼ確定しているようなものだが、俺がCクラスに移動したらどうする?」
(これはかなり大事なことだ。
もし今までと同じであれば、Dクラスは裏切り者を抱えることになるかもしれない。
そうなると、今の関係をやめるのが最善だ。さあどう出るんだ?本城)
すると、本城は俺に抱きついて来て胸にうずくまりながらこう言う。
「僕はこうして黒瀬くんを止める。僕の近くから離れてほしくないから」
「俺は移動した後のことを聞いているんだ。移動する前のことを言われてもな・・・・・・」
「それなら、今までと変わらない関係を続ける。僕は黒瀬くん以外には従わない。幸い、この関係を知っている人はいないから・・・」
泣きそうになりながらも答える本城の頭に手を置く。
「なら俺がCクラスに移動した場合、綾小路の駒となって動いてくれ。そして、俺との関係を卒業するまで友達にしてくれ。これならお前も従ってくれるだろう?」
それを聞いた本城は俺に抱きつくのをやめ、涙が流れる前に腕で拭い顔をこちらへ向ける。
「不本意だけどそれに従うよ。けどね、この試験が終わるまでは黒瀬くんに従って動くから。覚えておいてね」
「ああ」
「じゃあ、僕は戻るね」
そう言い去っていった本城の背は、いつにも増して脆く感じた。
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雨が降ってきたのでDクラスの拠点に戻ると、荷物や服を移動させているところだった。
「おい、黒瀬!どこ行ってたんだよ!」
集めてきた野菜を置くと須藤がこちらに来た。
(須藤と話すのはあの事件以来か)
「昨日見つけた人工物を取りに行ってたんだよ。戻ってくる途中で雨が降ってきたって感じだ。それで何かいつもと違う気がするんだが教えてくれないか?」
「知りたきゃ自分で調べろ」
(冷たい須藤。まあ、仕方がないか)
「分かったよ」
周りの手伝いをして、何故こんなことになっているのか調べようとしたら、綾小路が森の中に入るのが見えたので追いかけることにした。
懐中電灯と共に歩く綾小路を追うために駆け足で尾行する。
森の奥に入り数メートル進むと、綾小路は懐中電灯の光を消して身を潜めた。
どうやら、視界の先から懐中電灯の光が差し込んできたからだろう。
俺は一気に綾小路との距離を詰め肩を叩く。
綾小路は即座に戦闘態勢に入ったが、こちらを向く前に首筋に手刀を入れる。
(感触的にもって20分ってところか。
やはり綾小路は常人ではないな。もし気配に気づかれてたら顔を見られていただろう。
だが、
綾小路を木の傍まで運び、懐中電灯の光が1つ遠ざかった時にまだ残っている懐中電灯の光の元へと近づく。
「Dクラスのリーダー当てをするならやめとけよ、龍園」
「そんなことは分かってる。それでお前の作戦ではここからどうすればいい?」
そこにいたのは龍園と金田、そしてDクラスでスパイ活動をしていた伊吹。
Dクラスのキーカードを手に入れ、龍園とAクラスでも呼んだのだろう。
今後の動きについて尋ねてくる龍園に。俺が思い描いている作戦を告げる。
「龍園がリタイアして伊吹か金田のどっちかにリーダーを交代させろ。俺も同じ手段を使って、リーダーを変える。そこから明日まで待てば、0ポイントにならずに済む」
「そうか。行くぞお前ら」
「龍園!なんでこんな奴の作戦に乗るわけ!?」
俺の作戦を聞いて素直に従った龍園に、伊吹がこちらを指差して叫ぶ。
「お前は俺の命令に逆らうのか?伊吹」
それに対して龍園はドスの効いた声で問いかける。
「くっ、わ、分かったわよ」
去り際に伊吹がこちらを凄く睨んできたが、それよりもやるべきことをやることにした。
近くで倒れていた堀北に念のため手刀を入れておく。
(起きられたら困るからな)
それから綾小路のところへ行くと、既に目を覚ましていた。
「目覚めはどうだ?綾小路」
「俺は気を失っていたのか?」
「そうだな。お前を追っていたらいきなり倒れたからな。そこからお前を木の傍まで運んだってことだ」
「そうか。なら誰に肩を叩かれたんだ?」
「見えないやつにやられたとかかもな。まあ、お前が目覚めてくれて嬉しい。俺は今から堀北を運んでリタイアさせ、その時にリーダーを変える。お前は平田に連絡してくれ」
綾小路を気絶させたことは隠しつつ、俺が今から取る行動を伝える。
「分かった」
綾小路が頷いたのを確認し、再び堀北のところへ行き堀北を抱き起してそのまま抱える。
そして土を思いっ切り蹴り、全速力で浜辺を目指す。
途中で10m程の崖があったが俺にとっては障害ではない。
俺は跳躍して10mの崖を飛び降りる。
着地時、踵から降りることによって突き指を回避し、一気に駆け抜ける。
それから数分で浜辺に着き、桟橋にかけられたタラップを上り、船のデッキに辿り着く。
こちらに気付いた教員の1人が駆け寄ってくる。
「ここへの立ち入りは禁止だ。失格になるぞ」
「彼女が熱を出したので運んできました。今は意識を失っています。彼女をすぐに休ませてあげてください」
そう言うと、教師は指示を飛ばして担架を持ってこさせた。
そこへ堀北を寝かせる。
「彼女はリタイアということでいいんだな?」
「はい。それとキーカードをお返しします」
堀北が気を失っていたところにあったキーカードをポケットの中に入れていたので、それを取り出して教師に手渡す。
特にここに用はないので教師に戻ることを伝えて、Dクラスの拠点に向かう。
拠点に到着すると点呼の10分前だったので-5ポイントにされることはなかった。
綾小路の考え
オレはあのとき誰かが話しているのを身を潜めて聞いていた。その話している正体は大方予想がつく。
Aクラスの葛城とCクラスの伊吹、龍園。
そのままの状態でいると、不意に肩を叩かれた。
オレは即座に戦闘態勢を取り相手の方を向いたが、先に首へと手刀を入れられ相手の顔を見る前に気を失ってしまった。
それから数分して、目が覚めたら目が赤色に変わった黒瀬がいた。
オレはその時に確信する。
コイツはオレが戦闘態勢に入る前に手刀を入れた犯人だと。
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次で試験終わります。