ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第33話 話し合い

 龍園たちを呼び寄せた後、特にやることがなかったので、グループディスカッションの会場になる部屋に先に行くことにした。

 

(暇だなー。そうだ、この時こそ1人将棋を────)

 

 と思っていると、携帯が鳴った。

 

「はい、もしもし」

 

『おはようございます。黒瀬くん』

 

「おはよう、坂柳」

 

 電話をかけて来たのは昨日と同様で坂柳だ。

 

「何か用でもあるのか?」

 

『はい。実は以前教えてもらったボードゲーム部に行ってきたのですが、私の相手にならなかったので』

 

「それで俺が相手をしろと?」

 

『理解が速くて助かります』

 

 俺としては1人でやるよりも、誰かと対戦した方が上手くなれる気がしたりするので、この申し出はかなり嬉しい。

 

(何より1人は少し飽きている半面もある)

 

「それはいいんだが、何をやるんだ?」

 

『チェスです』

 

「分かった。やってやる」

 

(ふ、この俺にチェスの勝負だと。笑わせてくれるわ。

 坂柳なんてギッタンギッタンに叩きのめしてやる!)

 

 

 

 1時間後・・・・・・。

 

「負けました・・・・・・」

 

(坂柳のやつ、強すぎる。今やっても、1回も勝てる気がしない)

 

『フフフ、これで5連勝です。私が先手の時は危なかったですが、そちらが先手の時はそこまで────』

 

「それ以上はやめてくれ・・・・・・」

 

 後手不利なチェスでかなり奮闘した気がするが、こちらが先手の時は全く歯が立たなかった。

 そんなあまりにも奇妙な試合をし、全敗した俺の心は疲弊していた。

 

『今回は対面してやることが出来なかったので、また今度お相手をお願いしますね』

 

「それまでには強くなっておく・・・・・・。それより、坂柳は何でチェスがそんなに強いんだ?頭脳派なのは知ってたが、チェス何てあまり触れる機会なんてないだろ?」

 

 俺は言ってから、聴く意味がなかったことに気付く。

 

(いや待てよ。頭脳派のやつは頭がいい。

 俺みたいに学校の勉強より先の部分を覚えるかもしれない。

 そして、新しいものを求めてしまう。

 その時にチェスに触れたんだろう。聞く意味なかったじゃん...)

 

『私がなぜチェスが強いかですか・・・・・・。それは()()()()を証明するためです』

 

 予想していたこととは違い、坂柳は何かを証明するためにチェスが強くなったという。

 

(けど、何を証明したいんだろうか?)

 

「あること?」

 

『おそらくこの話を他人に話すのは、黒瀬くんが始めてだと思います』

 

「聞かせてほしい。少しでもいいから坂柳のことを知っておきたいからな」

 

『分かりました・・・・・・。ですがそういったことを安直に女性へ言うのは控えたほうがいいですよ。誤解されますから』

 

「あ、はい」

 

 そんな間抜けた声を聞き、坂柳は少し笑いこう語る。

 

『私が証明したいのは天才とは教育で決まるのではなく、生まれた瞬間に決まっているということです』

 

(天才か...。

 その言葉にあまりいい思い出はない。

 坂柳が証明したいことも、俺の中では既に証明されているし。

 天才は生まれた瞬間に決まっていることを)

 

『そう考えると、黒瀬くんはもしかして────』

 

「もう来ていたのか。黒瀬」

 

 坂柳の声を遮るように、部屋に入ってきたのは神崎だった。

 

「もう少しで試験が始まる。電話を切るぞ」

 

『・・・・・・はい。試験、頑張ってくださいね』

 

 電話を切り、入り口で突っ立っている神崎の方を見る。

 

「突っ立ってないで椅子に座ったらどうだ?」

 

「そうさせてもらう」

 

 そう言った神崎は俺の右隣に座り、口を開く。

 

「お前に聞きたいことがある」

 

「何だ?」

 

「お前は無人島試験で何をした?」

 

(ざっくりしてますな)

 

 そんな大まかな問いに対し、こちらもありきたりな答えを送る。

 

「Dクラスを1位にするために動いただけだが」

 

「それならなぜお前はBクラスにAクラスのリーダー情報を流したり、リーダーをリタイアさせるように仕向けたんだ?」

 

「協力関係だったから教えただけだ」

 

「それは違うな。俺にはお前が別の目的で教えたとしか思えない」

 

 神崎は頭がキレる方らしく、それ以外に目的があると睨んでいるようだ。

 

「神崎の予想を聞かせてくれ」

 

「Aクラスの内情である葛城と坂柳の対立。お前は坂柳と裏で繋がっていて、今回の無人島試験で葛城を陥れるために動いたんじゃないか?」

 

「だとしたら?」

 

「だからと言って何かあるわけじゃない。仮に坂柳と繋がっていたとしても、俺たちBクラスはお前のおかげで試験で1位になることができ、Aクラスとの差を縮めることが出来たんだ。そのことでお前には感謝している」

 

 俺と坂柳が繋がっていたとしても、そのことで何か言うつもりはないようだ。

 事実、俺と坂柳は繋がっているが、Bクラスがそれに巻き込まれてポイントを失うということはない。

 それにAクラスが最下位になると考えれば、Aクラスを狙っているBクラスとしてはメリットでしかないのだ。

 

「それでもリーダーをリタイアさせた理由が俺には分からない。Aクラスに被害が出るわけでなく、Bクラスに被害が出たのだからな」

 

 普通に考えればリーダーをリタイアさせる意味はあまりない。

 他クラスにリーダーがバレていなければ、リタイア分のポイントを失っただけに過ぎないからだ。

 それに結果から見ても、本来Bクラスのリーダーを外し0ポイントで終わっているはずのCクラスはポイントを確保している。

 確かに表向きの情報だけでは意味を成さなかったと思われても仕方ないだろう。

 ここは1つ神崎に教えてみることにした。

 

「AクラスとCクラスが繋がっていた。これを聞いたら分かるんじゃないか?」

 

「AクラスとCクラスが繋がっていた?それはどういう意味だ?」

 

「そのままの意味だぜ、神崎」

 

 神崎の質問に返したのは、小田と園田を連れて部屋に入ってきた龍園だった。

 龍園は俺の左隣に座り、その隣に小田と園田が座る。

 

(なぜ俺を挟んで座るんだ?

 真面目にこの場所が凄く嫌になってくるんだが)

 

「・・・・・・ということはAクラスとCクラスは裏で繋がっていた。それが分かった黒瀬はAクラスを1位にさせないように、Aクラスの情報をBクラスに教えた。そして、0ポイントになったということか・・・・・・?」

 

「そう言うことだったのか・・・・・・。おまえはやはり侮れないやつだな」

 

「やっぱりあなたが裏で動いていたのね」

 

 部屋に入ってきたAクラスの生徒を連れた葛城と堀北が、俺に向かってそう言い放つ。

 そして葛城とAクラスの生徒は神崎から2席離れたところ、堀北は左右に1席空けて座っている。

 

(なぜ、こんなにタイミング良く入ってくるんだろうか?僕、凄く怖いです)

 

「何か勝手に結論を出されて納得されたけど、まあいいや」

 

「何か言った?」

 

 独り言を言ったら堀北に反応されたので、何でもないとだけ言っておく。

 それから少し待っていると、櫛田と平田とBクラスの残りの生徒が部屋に入ってくる。

 そして試験開始のアナウンスが流れる。

 

『ではこれより1回目のグループディスカッションを開始します』

 

 簡潔なアナウンスが流れ、1回目のグループディスカッションが始まった。

 少しの間、部屋に静寂が訪れたが、それを破ったのはDクラスの櫛田だった。

 

「一応学校から指示があったから自己紹介をしようと思うんだけど、いいかな?」

 

「僕は賛成だよ。自己紹介をしなくて、ペナルティを食らったら、嫌だからね」

 

「そうだな。この部屋を監視されているかもしれないから俺も賛成だ」

 

 櫛田の言葉に平田と神崎が賛成の意を示す。

 

(けど、この部屋に視線を感じない。

 多分だがカメラで見られてはいなさそうだな。

 そうなると、盗聴されている可能性ぐらいか。

 とりあえず、ここは賛成しておくか)

 

「俺も賛成だ」

 

「我々も同じ意見だ」

 

「じゃあ、私から自己紹介をするね」

 

 櫛田から自己紹介を始め、D→B→C→Aの順番でやっていく。

 

(俺はもちろん黒歴史を作らないように、名前だけを言った。これが安定でしょ)

 

 自己紹介が終わり、櫛田が何かを言う前に葛城が口を開く。

 

「俺たちAクラスは今回の試験で全員沈黙をさせてもらう」

 

「それは試験に参加しないと言っているのか?」

 

 その葛城の言葉に神崎が質問する。

 

「そう受け取ってくれて構わない。俺はこの試験を攻略するには、最初から最後まで話し合いを持たないということが1番だと思っている。そうすれば、全クラス平等にポイントが貰えるからな」

 

「そう思えるのはAクラスだからじゃないか?他のクラスは、少しでも上のクラスとの差を詰めたいと思っているはずだ。それに、AクラスとBクラスとの差は100ポイント程度になっている。そう悠長に出来ないんじゃないか?」

 

「確かにそうかもしれない。だが────」

 

「あんな結果で無人島試験を終えてしまった以上、可哀想にもAクラスはこうすることしかできないんだよ」

 

 言葉を遮り、俺は憐れみを込めて葛城を煽る。

 それを見て笑っている龍園を横目に俺は続けてこう言う。

 

「今回の試験で下手に動けば、自分の立場はなくなる。お前はそうならないように、今回の試験でクラスポイントが変動しないように動こうとしている。そうしたら、今の状態を保つことができる。けどな、それは誰も『優待者』について知らない場合にしか使えないことを分かっているかな?」

 

「何が言いたい?」

 

「Aクラスのリーダーであろうお方が、この問いの意味を理解できないとは。そんなんだからお前の頭は寂しいままなんだよ」

 

「Cクラスで随分と偉くなったものね、黒瀬くん」

 

 皮肉交じりな言葉を葛城に言っていると、堀北が割って入ってくる。

 

「偉くなったんじゃない。ただ自由になっただけだ」

 

「そうかしら?私にはDクラスにいた時から自由だった気がするけど」

 

「クク、鈴音にはそう見えたかもしれねえが、俺からすれば全然自由に見えなかったぜ」

 

 堀北の言葉に、龍園が物申す。

 

「気安く名前で言わないでくれないかしら」

 

「それは悪かったな、鈴音」

 

 全く反省の意を表さない龍園を堀北は睨み、当の本人はその状況を面白く笑う。

 始まって早々に、この部屋は異様な空気に包まれていた。

 

「とりあえずみんな落ち着こう」

 

「そうだよ、みんな落ち着かないと」

 

 そんな状況を良しとは思わなかった平田と櫛田が落ち着くを提案する。

 だが俺はそんなことを聞く気はない。

 

「落ち着く?よくそんな呑気なことが言えるな」

 

「僕はこの状況はおかしいと思う。もっとしっかり話し合いを────」

 

「それが素だとしても、俺は綺麗事なんて求めていない。話し合いをしようが、このグループ以外の全てのグループは結果3と4になるんだよ」

 

(上手くいけばだけど、今回はほぼ失敗しない)

 

「それはどういうことだ?」

 

「神崎、黒瀬が言ったことはデタラメに決まっている。それにこのグループとは関係がない。耳を傾けるだけ無駄だ」

 

「だが・・・・・・」

 

 葛城は俺の言葉をデタラメと思っているが、神崎は前回の試験のこともあり、さっきの言葉を気にしているようだ。

 

「私も葛城くんと同じ意見だけれども、彼は前回の試験でAクラスを0ポイントに落とした犯人でもある。それを加味すると、デタラメと決めつけるにはまだ早いんじゃないかしら」

 

「鈴音の言う通りかもしれねえぜ。葛城さんよぉ」

 

 龍園に名前で再び呼ばれただが、今回はスルーを決め込む。

 当の葛城だが、それを聞いてもなお意見を変えない。

 

「そんなことは関係ない。我々は試験が終わるまで話し合いをしなければいい話だ」

 

「クク、てめえは今回の試験でリーダーを下ろされる。それはもう決定事項だぜ」

 

「今回は前回のようにならない」

 

 葛城はそう言って龍園を睨みつけるが、龍園はそれを受け流す。

 それから事は進まず、グループディスカッションを終えるアナウンスが流れる。

 

(退出する時は、オシャンティーにいかなかければ)

 

「君たちと次に会うときが楽しみだ。それではまた、もう1回のディスカッションの時に会いましょう」

 

 オシャレ?に退場の言葉を言って部屋を退出する。

 そして俺は、AとBの優待者がいるグループに所属しているCクラスの生徒1人を所定の場所と時間に集まるように、龍園にメールを送っておく。

 

「次のグループディスカッションがすごく楽しみだ」

 

 奇妙な笑みを浮かべながら、割り当てられた部屋に戻った。

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