午後7時、自分の部屋に鼠、牛、猿、鳥、犬、猪グループにいるCクラスの生徒を1人だけを俺の部屋に呼んだ。
俺の部屋にいるのは合計7人。
今回は龍園を呼んでいない。
「それで、僕たちを呼んだ理由は何ですか?黒瀬氏」
ここに呼んだメンバーである金田が聞いてくる。
「お前らを呼んだのは今から55分後に優待者のメールを一斉に送ってもらうためだ」
「え!?もう優待者分かったの!?」
「龍園さんに信頼されてる人はやっぱり違う!」
「流石ですね・・・・・・」
「1つ質問をしてもいいですか?」
「いいぞ」
「55分に送る理由はないのでは?」
各々がそのことに驚いているのに対し、冷静な金田は挙手をして質問してくる。
「あまり相手に考える時間を与えたくないからだ。今から優待者のメールを送れば、相手に考える時間を与えてしまう。そうなってしまえば、何かしらの対策を取られて、他のことに支障が出る恐れがあるからな」
「他のことですか・・・・・・少し気になりますが、それよりもなぜ5分前なのですか?その意見だと送るなら1分前とかの方がいいかと思うのですが」
「確かにそうかもしれない。だが俺はあえて5分前にする。それはな、1分前なのに部屋にCクラスの生徒が来なければ、Cクラスがやったと遠回しに言ってるようなものなんだ。そんなことが起こってしまえば、勘のいいやつにすぐバレる」
「・・・・・・グループディスカッションが始まる5分前は部屋の中にいる人は少ない・・・・・・。そういうことですか」
金田は小さく独り言を漏らし、考えが纏まったようでこちらに視線を戻す。
(流石は頭脳派。
まあ、俺のヒントで分かるやつなんて意外と居そうだけどな)
「質問がなさそうだから、グループごとに優待者の名前を口頭で教える。約束として、今回の試験で優待者を当てて得たプライベートポイントの半分は龍園に渡すこと。これを守れる者はこっちに来い」
それに逆らう者はここにはおらず、全員がこちらに集まってくる。
1人ずつ個別に優待者を教え、メールに書いた名前も確認をしていく。
そして携帯はテーブルの上に置いてもらい、あとから変えられないように万全な態勢を作る。
(これで間違えたら龍園に殺されるしな。確認はしっかりしとかないとね)
そして7時55分。グループディスカッションが始まる5分前に、学校からの通知が届く。
『鼠グループの試験が終了いたしました。鼠グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『牛グループの試験が終了いたしました。牛グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『猿グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『鳥グループの試験が終了いたしました。鳥グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『犬グループの試験が終了いたしました。犬グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『猪グループの試験が終了いたしました。猪グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
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2回目のグループディスカッションが始まり残り数分になった頃。
竜グループの空気は始まってからずっと重く、誰も口を開かないままである。
やはり5分前に送ることで、仲間との話し合いが十分に出来なかったのだろう。
(何かみんな律儀に携帯の電源を落としてるけど、別につけてていいんだよ。
ていうか、つけてないと他のグループが危なくなるよ)
ずっと考え事をしていた堀北が龍園の方を向く。
「さっきの6つのグループ終了のメール。全てあなたがやったことじゃないかしら」
「鈴音が何を言ってるかさっぱりわからねえな」
「とぼけないで。ほとんどの人がさっきのメールについて考えているのに対して、あなたはずっと笑っていた。まるでこの状況を見て笑っているかのように」
(そうだよな。龍園のやつ、部屋に入ってからずっとあんな状態だしな。
分かって当然だろう)
「クク、それは当然じゃねえか。俺は誰がやったかは知っているからな」
「それを教えてもらえないかしら?」
「流石にそれは言えねえな」
「まあいいわ。それで大体の犯人は分かったから」
「そいつは誰なんだ?教えてくれよ、鈴音」
「それはあなたよ。黒瀬くん」
俺に対して指を指し、堀北はそう宣言した。
そのせいで、A、B、Dクラスの生徒の視線が全てこちらに集まってくる。
(指をさすなよ。Aクラスは話し合いに参加しないんじゃなかったのかよ...。)
パチン。
そして何故か、急に頭の中にあるスイッチが押される。
これはもう1人のおれが表に出る時の合図。
そして俺からおれへと人格が変化する。
「ク、ククク・・・・・・そうだ、おれがやった!さっきのメールのことも!今回の試験でこれから起こることも!」
「く、黒瀬くん・・・・・・落ち着いて・・・・・・」
落ち着きを無くしたおれを、平田が止めようとする。
そんな平田を一瞥し、こう言い放つ。
「喋るんじゃねえよ、偽善者が。てめえの仮面を剥がすぞ。それが嫌なら話しかけてくるな」
「くっ!」
平田は痛いところをつかれたようで、黙ってしまう。
あまりの張り合いのなさに鼻で笑い、全員に向かっても警告しておく。
「他の奴も同じだ。AだろうとDだろうと関係ねえ。自分を守りたければ喋るな」
「あなたがそんな人だったとはね・・・・・・。全く思ってもいなかったわ」
「くだらんな」
おれの変わりように驚く堀北。そして葛城はくだらないと一蹴りする。
そんな物動じない2人に他のやつは不安を募らせる。
「おれに話しかけられるほどに自分の存在が上だと思ったか?」
「いきなり何を言っているのかしら」
「そのままの意味だ。自分の立っている場所とおれが今いる場所。それは同じかと聞いているんだ」
「同じに決まっているじゃない。あなたは自分が私より上だとでも言えるの?」
「この状況を理解出来ていない時点でおれはお前より上だ」
「もう手詰まりとしか思えない状況で、理解できていない人の方が少ないんじゃないかしら」
「」
言い終わったタイミングで終了のアナウンスが告げられる。
「初めて巣立つ鳥たち。ほとんどの鳥が空を飛ぶことが出来た。そんな中、皆が普通に飛び立てたせいで焦ってしまう鳥が出てきてしまった。そしてその鳥は大空へと飛び立つ。けれどその鳥は落ちていく。なぜなら巣立っていった鳥たちは、違う種類の鳥だったから」
「くだらないわね」
「変わった話だな」
「黒瀬に耳を傾ける必要は無い。勝手に暴走してるだけだ。俺たちは失礼するぞ」
それを聞いた神崎は綾小路と同じ意見を口にする。
葛城はおれが暴走してると思ったようで、他の人を連れて部屋を出ようとする。
だが次の一言で葛城は少し歩みを止めた。
「この試験も、もう少しで終盤に突入する」
「まだ試験は始まったばかりだ。それに終盤ではなく、まだ半分もグループはある────」
『虎グループの試験が終了いたしました。虎グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『蛇グループの試験が終了いたしました。蛇グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
『羊グループの試験が終了いたしました。羊グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』
そんな葛城の言葉を遮る形で、3グループが終了した通知が来る。
「なん・・・・・・だと・・・・・・!?」
「3グループを終わらせただと・・・・・・」
突然のことに龍園以外のメンバーは啞然としていた。
「残り3グループ。これで終盤戦に突入だ」
俺は部屋にいるやつを見やり、先ほどの態度から一変させて改めて挨拶をする。
「それでは皆さん。残りのグループディスカッションもよろしくお願いしますね」
俺は扉の前にいる葛城たちを退けてから部屋を出る。
すると、こちらに来る一之瀬と綾小路が見えた。
「神崎くんたちはまだ部屋の中にいる?」
「いますよ。入りたければどうぞ、入ってください」
部屋の扉の前にいるため、そこを空けて一之瀬が入れるようにする。
「じゃあお言葉に甘えて。綾小路くんはどうするの?」
「オレは少し黒瀬と喋ってから入る」
「分かった。じゃあ先に入っとくね」
一之瀬は手を軽く振って中に入っていく。
それを確認した綾小路は口を開く。
「9つのグループを終わらせたのはお前だろ?」
「そうですね」
「その喋り方はやめてくれ。気持ち悪い」
(綾小路にディスられた...)
心の中で落胆していると、綾小路が聞いてくる。
「よく自分のクラスのグループを終わらせられたな」
「そこまで難しくないと思うが。それよりもDクラスの優待者は残してあげてるけど、どうしたい?」
「俺たちは今、お前の手のひらの上にいるってことか・・・・・・」
「今回は手伝ってくれるやつがいないと辛い試験だ。お前にはかなり厳しいからな」
「痛いところをつかれたな」
「まあ頑張れよ」
綾小路の肩を叩いて、俺は部屋に戻った。