ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第36話 インターバル

 試験のインターバルとなる今日、俺は朝から坂柳に連絡をした。

 内容はもちろん昨日のことだ。

 

『おはようございます。こんな朝にどうかしましたか?』

 

 2コールぐらいで出てきた坂柳は声からして今起きたようではないようだ。

 

「おはよう。本当は昨日に連絡するつもりだったんだが忘れていてな。それで朝から電話させてもらった」

 

『そうですか。それにしてもメールでもよかったことをなぜ電話で?』

 

(連絡と思うと毎度電話しか思い浮かばなくて、メールという存在を忘れていた)

 

「時短になるかなーと」

 

 適当に思いついたことを吐くとそれが噓であることを見抜かれてしまう。

 

『噓をついているのは分かりました。ですが今は暇なので、ちょうど話し相手が欲しいとも思っていました』

 

「電話した甲斐があったようでよかった。それで話というのが昨日、鈴木というやつが俺に接触してきてな。その時に優待者を教えてほしいとのことで、俺はそいつのグループの優待者を教えた」

 

『鈴木くんですか・・・・・・。黒瀬くん、現在残っているグループはいくつですか?』

 

 坂柳にどこか思うところがあるようで、残るグループを聞いてくる。

 

「2つだが」

 

『龍園くんのことですから1つのグループは残しておけとでも言われたのでしょうから、残るは1つだけですか。その残っているグループのAクラスのメンバーを教えてください』

 

 それを聞いて何を企んででいるのか察してしまう。

 

(鈴木、どんまいだがお前はただ50万ポイントを俺にくれるやつだったとだけ覚えておくよ...)

 

 おそらくAクラスの誰かに接触し、優待者を外して当てた分をなかったことにするのだろう。

 心の中で鈴木に謝りながら俺は坂柳に兎グループのAクラスのメンバーを教える。

 そして坂柳にその中から指定された人物を呼ぶので接触するように言われ、試験の現状を少し話し電話を終えた。

 

「はぁ・・・・・・」

 

 めんどくさいことを押し付けられたと落胆していると、メールが1件来た。

 差出人は本城でお昼をカフェで一緒に食べないか?という内容だった。

 人探し以外にやることはなかったので、OKとだけ送っておく。

 

(さっさとAクラスの件を終わらせるか)

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 坂柳に指定された3階の階段近くの廊下に行くと、橋本と1人知らない男がいた。

 

「うちのリーダーに森重(もりしげ)を呼んでここにいとけって言われたが、そういうことだったのか」

 

 こちらを見た橋本が納得したように言う。

 そして森重と呼ばれた男は蔑むような目でこちらを一瞥し、呼ばれた理由を聞いてくる。

 

「それで俺はなぜ呼ばれたんだ?唐突に、橋本に呼ばれて来たのだが」

 

「今から兎グループのCクラスの生徒を1人選んで、それを学校に送るということをしてほしい」

 

 そう答えると、こちらを全く信頼していない森重は橋本に確認する。

 

「・・・・・・本当なのか、橋本?」

 

「黒瀬が呼ばれたってことはそうだろうな。ということで頼んだぜ、森重」

 

 そう言われ渋々ではあるが森重は了承し、兎グループのCクラスの生徒の名前を適当に書きそれを送る。

 

『兎グループの試験が終了いたしました。兎グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 というメールが届き残るグループは竜グループだけとなる。

 俺はそれを確認してここから立ち去ろうとしたら、橋本に呼び止められる。

 

「お前にはこの試験はお遊びみたいなものなのか?」

 

「今回の試験を例えるなら、欲しかったおもちゃを貰ったけど想像していたより面白くなかった。そんなものだ」

 

 橋本の方を向いてそう答える。

 その返しの言葉に興味はないので、俺は本城と昼ごはんを食べる店、カフェに行くことにした。

 

「あれ、黒瀬くんだ」

 

 向かっている途中、後ろから声がしたのでそちらを見ると七詩がこちらに近づいてきていた。

 

「七詩か。お前もカフェに行くのか?」

 

(七詩がカフェに行くと考えた理由はまず、船の甲板でこの時間にご飯を食べに来る人が多いはず。

 ましてや七詩のことだ。食い────食欲旺盛な人間が、別の目的で来たというのは考えにくい)

 

「そうだよ。もしかして黒瀬くんも本城くんに誘われたの?」

 

 こちらの聞いたことを肯定し、こちらに首を傾げて自分と同じか確認してくる。

 どうやら、俺らは本城に誘われた仲間のようだ。

 

「そうだ。七詩も呼ばれてるみたいだから一緒に行くか」

 

「そうだね」

 

 俺たちは一緒にカフェに向かうことにした。

 その間、すれ違った人に好奇な目線を向けられた。

 

(自分で言ってはなんだが、俺は1年生の中でもかなり有名な部類に入るはずだ。

 それに七詩も男子トークの中に出てきているのを俺は知っている。

 そんな2人が一緒にいることはなかなか無いことのはずだ。多分。

 とりあえず、一部男子からの殺気が凄かったということだけは記憶しておかないと)

 

「2人ともこっちだよ~!」

 

 カフェに着くと先に着いていた本城が手を振りながらこちらを呼ぶ。

 それを見て俺たちは本城のいる席に行く。

 

「すまないな。俺のせいで居心地が悪くなって」

 

 席に着くなり俺は先に2人に謝っておく。

 なぜなら周りにいる生徒が気まずそうにし始めたからだ。

 

(思った以上に悪い方に目立ってしまったな。情報っていうのは怖いものだ)

 

「私は全然大丈夫だよ」

 

「僕もそこまで気にしないから」

 

 2人の表情を見る限り、本心で言っているようだ。

 

「ありがとう」

 

 俺たちは各々に注文をしそれを待っている間、なぜか俺を中心に話が広がっていった。

 

(2人の話の中心にいるのは別にいいんだが、俺のいないところでやってほしかった...。

 なんだよ、俺がこの学校に入って今まで何をしたのか話し合おうって。

 そんなに凄い奴でもないのにいっぱい出しやがって...)

 

 注文した品が全て届いてから、俺は無人島試験から思っていた疑問を2人ぶつけてみることにした。

 

「それで、黒瀬くんは────」

 

「ちょっといいか」

 

「どうかしたの?」

 

 七詩と本城がこちらに視線を向けて聞いてくる。

 

「2人はいつ知り合ったんだ?俺は2人を会わせた覚えがないんだが」

 

(すくなくとも俺は2人を会わせた覚えが本当にない。

 それに俺が七詩と学校で会った回数は片手で数えられるほどだ。

 そうなると誰か経由で友達になった可能性があるが、本城が女子と仲良くしているところをあまり見たことがない。

 それに男子から紹介された可能性はないと言える。

 七詩に関しては知らないが、本城が話題に出たとしても会いたいとは思うかと言われたら微妙なところだ。

 そんな感じで考えたら、俺以外いないはず)

 

 それを聞いた2人は互いに見合って笑う。

 

「何を笑っているんだ?」

 

「・・・・・・ごめんね。えーっと、本城くんといつ知り合ったか、だっけ?」

 

「そうだ」

 

「それは無人島試験のときだね。私たちが知り合ったのは」

 

「そうですね」

 

 ねーと2人は呼吸を合わせて言う。

 俺が思っている以上にかなり仲がよいようだ。

 

(無人島試験?

 あの試験の最中に他クラスの人と会うのは難しかったはずだ。なのに会っていた...確かに本城が言っていたが...。

 分からん!もういい、面倒くさい!)

 

 俺の知らないところで2人が仲良くなっていたとしても、こちらに何らかの悪影響を及ぼさない限り関係のないこと。

 むしろ、俺がいないところで仲良くなってくれた方が、後々誤解を招く恐れがなくなったと考える方がいいだろう。

 そんなこんなで考えることが億劫になり放棄することにした。

 

「分かった。まあ、仲が良さそうだし別にいいが」

 

 そう言って、頼んだサンドイッチを口にした瞬間、

 

「もしかして私たちが仲良くしているのを見て、嫉妬してる?」

 

 といたずらな笑みを浮かべながら七詩に言われる。

 突然のことにサンドイッチが変なところに入ってしまいむせてしまう。

 

「だ、大丈夫!?」

 

 むせたことで本城が席を立ってこちらに近寄ってきたがそれを手で静止させる。

 

「大丈夫だ・・・・・・。七詩、俺は嫉妬していない」

 

「嫉妬してたよ」

 

 七詩はどうやら、俺が嫉妬していたと思うらしい。

 俺からすれば2人の関係のはじまりに興味があるだけで、仲の良し悪しとかは特に興味はない。

 それを誤解されるわけにはいけないため、こちらも引くことは出来ない。

 

「してない」

 

「してた」

 

 そんな俺たちの様子を見て本城があたふたし始める。

 それから少しの間、同じやり取りを繰り返していると、今1番会いたくないトップの1人、いつものように口角を上げている龍園がこちらにやって来た。

 

「クク、あんまり外で見かけねえやつが昼間から遊んでるじゃねえか。俺も混ぜてくれよ」

 

「俺たちは遊んでない。一緒に飯を食べてるだけだ」

 

「そうか?傍から見たらただのハーレム野郎にしか見えねえが」

 

 からかうためか分からないが、龍園は本城を女子の1人と考えたようだ。

 

「すまんが、女子は1人しかいない」

 

「てことは修羅場ってわけか。クク、それはお邪魔だったな」

 

 そう言って龍園はここから去っていった。

 

(結局何がしたかったんだろうか...。

 からかいたかっただけ?ていうか修羅場でもない気が...)

 

そんな様子を静かに見ていた七詩は口を開く。

 

「面白い人だね、さっきの人」

 

 その言葉はまるで初めて会ったようかのように聞こえる。

 そのことにびっくりして、つい本当なのか聞いてしまう。

 

「まさか、龍園を初めて見たのか?」

 

「え!?あの人が龍園くんなの!?私、知らなかった・・・・・・」

 

 さっきの男が龍園であることに七詩は驚く。

 どうやら初めて見たのは本当だったらしい。

 

「流石に知っているかと思ってた」

 

「同じく、Bクラスにいるから知ってると思ってたんだが」

 

 苦笑いしながら言う本城に俺は同意する。

 

(この学校の1年生で、龍園の顔と名前が一致しないやつは初めて見たな...。

 そんなに会わないものなのか?)

 

「そ、それよりクラスがこれで3クラスになったんだから、情報交換をしよう!」

 

 不思議そうに思っていると、そのことを誤魔化すように提案をしてくる。

 それには賛成するが、見え透いた話題転換に少々呆れてしまう。

 

「僕はBとCに関してあまり知らないから賛成だよ」

 

「Bはあまり知らないから俺も賛成だ。ただメールでのやり取りにしよう。ここは聞き耳が多いしな」

 

 周りに視線を向けながら、声を落としてそう言う。

 そのことに、そうだねと本城が相槌を打つ。

 

(こんな場所でクラスのことを話せば、そいつのクラスメイトからの評価が落ちるのは当たり前だ。

 それに最悪、クラスで孤立する可能性も出てくる。

 そんなものを周りに聞こえるように言うのは危ないからな)

 

「じゃあ、私から」

 

 そう言って、メールが来る。

 

『Bクラスは仲良しクラスだよ。みんな仲良しで、人に対しても優しく接する人が多いかな。それをまとめてるのが、帆波ちゃんで、神崎くんがそれのサポートみたいな感じだよ。

 今回の試験だったら黒瀬くんが結構な数のグループを終わらせたから、慌ててるかな。それで勝手に優待者を当てないようにっていうのは言われたかな』

 

 どうやらBクラスは仲良しクラスだそうだ。

 俺の情報が共有されてることからも、しっかりと情報を皆に伝えているクラスにも思えてくる。

 

「次は僕かな」

 

『Dクラスは普通のクラスかな。全員仲がいいわけでもないし、カーストみたいなのも存在しているような感じ。先頭に立っているのは男子なら平田くん、女子なら櫛田さんあたりかな。

 今回の試験はかなり厳しいと思う。みんな焦ってる感じだったから』

 

 Dクラスはやはりこういう試験ではかなり厳しいようだ。

 自分勝手に動く人間が数人いるということは、その分勝手に優待者を当てようとする。

 そうなればそうなるほど俺の作戦は効く。

 狙い通りと言ったところだろう。

 

「最後に俺だ」

 

『Cクラスは、王制だと思ってくれればいい。その王が、さっきの龍園だ。恐怖でCクラスを支配している。

 今回の試験は俺の作戦で動いている』

 

 どこまで教えるか悩んだが、クラスの表向きの情報だけならいいと思い、これだけにした。

 というより俺もそこまでCクラスを知らないので、教えられる情報がこれだけしかない。

 

「やっぱり黒瀬くんは最近Cクラスに移動したからあんまり分からないよね」

 

「俺は移動してから一度も授業を受けていないからな。どういう感じか全くだ」

 

「そうだよ────」

 

「あ!」

 

 本城の言葉を遮るように、七詩が何かを思い出す。

 唐突な出来事に俺たちは驚いて肩をビクッと動かす。

 

「私、この後集まる予定があったんだった!私はこれでお邪魔するね!」

 

 そう言って、慌てながら去っていった。

 

「僕たちもそろそろ解散しようか」

 

「そうだな」

 

 お皿に残っていた分を食べ、俺たちも自然と解散することにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 解散した後、俺はあまり船の散策をしていなかったので、適当に船の中を歩くことにした。

 ちょうど最下層エリアへの出入り口の扉の前、特にいく必要がないと思い部屋に戻ろうとしたら、扉が開く音が後ろから聞こえた。

 

「誰だ!」

 

「あんたは!」

 

 振り向きざまに放った言葉は相手の放った声と重なる。

 そのことに俺は少し距離を置き臨戦態勢を取る。

 だが相手を目視してすぐにそれを解除した。

 なぜなら扉から出てきたのは、Cクラスの生徒である真鍋志保(まなべしほ)とその友達3人だったからだ。

 

(話したことはないが、石崎から一通りクラスメイトの名前を教えてもらった時に、「真鍋ってやつが女子の中で一番悪目立ちしてるっす」と聞いたからそのことと結び付けて覚えている。

 )

 

「真鍋か・・・・・・。こんなところで何をしてたんだ?」

 

「そ、それはこっちのセリフよ!」

 

 真鍋の言動に俺は首をかしげる。

 

(なんでキレてるんだよ...。

 意味が分からない。だが、怪しいな)

 

「俺は船内散策をしていただけだ。お前たちみたいに怪しいことはしていない」

 

「わ、私たちはただ・・・・・・」

 

「ただ?」

 

 俺は真鍋の歯切れの悪い返答を問い詰める。

 

「そ、そう!黒瀬くんみたいに船内散策してたのよ!ねえ、みんな?」

 

「そ、そうだよ」

 

「う、うん」

 

「散策してただけだからー・・・・・・」

 

 とってつけたような噓を吐く真鍋に対し、俺は今のやり取りでこいつらが何かを隠していることに気付く。

 

(全員の目が泳いでいる。

 ということは扉の中に何かを隠しているな。

 だが、どうしたものか...。強行突破でもしてみるか)

 

「俺はこの部屋が気になっててな。入らせて────」

 

 扉のノブに右手が触れる寸前で真鍋たちに止められる。

 右手を2人に掴まれ、扉が開かないようにその2人が前に立ち塞がる。

 

(だいぶ力を入れられてるな。

 それほど見られたくないということか。

 まあ、こんなんで止められると思われると困るんだがな)

 

 俺は力を入れて扉のノブに手を触れ、扉を壊さない程度に思いっきり引っ張り、扉をこじ開ける。

 

「や、やばい・・・・・・!」

 

 真鍋はそれを危ないと思ったのか、最後の抵抗とでも言うかのように俺の体にしがみついてきた。

 

「すまんが、ここで真鍋が止めれば俺は龍園に報告させてもらうぞ。お前たちが何かを隠してるってな。だが、離れてくれれば()()黙秘しておこう」

 

「ほ、本当に・・・・・・?」

 

 それを聞いた真鍋の力が少し弱まる。

 

「ああ、約束しよう」

 

「わ、分かった・・・・・・」

 

 その約束を聞き、真鍋は俺から離れる。

 そして俺は中に入る前に真鍋たちに言っておく。

 

「早く失せろ」

 

「ひ、ひぃ・・・・・・」

 

 4人は血相を変えて足早にここから去っていく。

 それを見届けてから俺は中へと歩を進めた。

 

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