夏休みに行われた試験も終わり、長期休みというのを満喫している。
だがそれはこいつらがいなければの話。
「先輩、それはずるいですよ!」
「ハハハ!プレイ中によそ見するやつが悪いぞ」
笑いながら石崎をハメて勝利する先輩。
何故か知らないが、連日朝から晩まで石崎と仲の良い先輩たちが俺の部屋でハイファイをプレイしながら入り浸っている。
「はあ・・・・・・、なんで俺の部屋に集まるんだよ・・・・・・。まあ先輩方はいいとして、石崎。お前はポイントあるだろ」
Cクラスは前回の試験で450万プライベートポイントを入手しており、9月になったら振り込まれるが俺が450万をちょうど持っていたので、それを分けてCクラス生徒全員に10万が振り込まれている。
その10万ポイントがあれば、ゲーム機を買ってもお釣りが返ってるぐらいだ。
それでハイファイをプレイすればいいのだが、なぜか石崎は俺の部屋に来てやっている。
「それは黒瀬さんのプレイを見るためですよ!俺は知ってますよ、黒瀬さんが世界大会の予選で驚異の強さを見せつけたことを!」
「ほんとそれだよな!身近にいたやつがこんなに強いとは思ってなかったぜ」
熱心に説明する石崎の言葉を聞いた他の先輩方も頷く。
どうやらここにいるやつらは、俺が世界大会の予選に出ていたことを知っているらしい。
「なのに黒瀬さん、一度もプレイしてくれないじゃないですか!」
「最近はハイファイじゃなくて、Strongest Legendsやってるから無理」
そうは言ったが、実際は読書ばっかりでパソコンやゲーム機に触れていない。
(だってひよりが本をいっぱい薦めてくるし、感想を求められるから読むしかないんだよな)
試験が終わってから時々、ひよりから図書館で一緒に本を読まないかという誘いを貰うようになり、その時にかなりの量の本を薦められるのだ。
薦められた以上読むしかなく、その本を読んでいるといつの間にか1日が終わっている。
ちなみに、今日は毎日のように聞かされる笑い声が鬱陶しくなっただけで、普段は完全無視を決め込んでいる。
それを聞いても石崎は俺とやりたいらしく、引き下がろうとしない。
「そんなこと言ってないでやってくださいよ!」
「そうよ。あ、もしかして本当は負けるのが嫌でやらないのかしら?」
それに乗っかる形で先輩に煽られ、頭にきてしまう。
(そんなことを言うんだったらやってやろうじゃねえか!)
内心の感情隠し、至って冷静に話を進める。
「分かりました。1つ何かを賭けてやりましょう」
「いいじゃねえか。受けて立つぜ」
強気な先輩がその提案を受ける。
それを聞いて口角が上がりかけたが、すぐさま元に戻しルールを決めていく。
「俺対他全員、ルールは他全員が負けるか俺から3回勝てたら終わり。もし俺が勝ったら明日から俺の部屋に来ないでください」
「舐められたものね」
「じゃあ俺たちが勝ったら、明日からも来させてもらうしお前にもやらせるからな」
「負けて泣きついてきても知らねえぞ」
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「許してください、黒瀬さん!何でもするので!」
1人の先輩に泣きつきながらこちらに言い寄ってくる。
(先ほどの勝負の結果は言うまでもなく、俺の完全勝利。
これで部屋の平和が確保できた)
「何でもするなら、今すぐ俺の部屋から出ていけ!」
俺は全員を外につまみ出して、扉を閉める。
(扉の外がうるさいが無視しよう)
いつも騒がしかった部屋が俺1人だけになったので、静かになり居心地も良くなる。
「昨日の続きでも読むか」
体を軽くほぐしてから読書を始めたのであった。
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読書を始めて3時間、読んでいた本を読み終えたので、立ち上がって固まっていた体をのばす。
「気分転換に外をぶらぶらするか」
俺は部屋着から半袖パーカーと長ズボンに着替えて外へと出る。
「それにしても暑いな」
外は日が照っており、試験以降ほとんど部屋に籠っていた俺にとってはかなり辛い。
手をうちわの代わりにして扇いでいると、前から見たことある男女がやって来る。
(面倒くさいから、顔を逸らしとくか)
話しかけられるのが嫌なので顔を逸らしていたが、相手にこちらの存在がバレて話しかけてくる。
「久しぶりだな、黒瀬」
「久しぶり~」
2人に声をかけられ、それを無視して横を通ろうとしようとするも、肩を掴まれてしまう。
「放してくれるとありがたいんですが」
「そんな冷たい言葉言わないでそこで話そうぜ」
断ってもいいが手を放してくれるとは限らないので、ここは了承しておく。
2人を先頭に近くのベンチに行き、男の方はベンチに座り、女の方と俺は立ったままで話を始める。
「それで何か用ですか?南雲先輩」
「そんなにせかさなくてもいいだろ。どうせ、このあとの予定はないだろうし」
男の方、この学校の副会長にして2年生の南雲先輩から見る俺は暇人らしい。
たしかに生徒会に入っている人からすれば暇人だろう。
(自分でも暇人であることを否定できない)
「確かに予定はないですけど」
「本当だったんだね・・・・・・」
包み隠さず事実であることを告げると、南雲先輩と同じ2年生である
そのことを鼻で笑った南雲先輩は夏休みについて尋ねてくる。
「ここに来て初めての夏休みはどうだ?」
「今日まで地獄で、明日から天国になります」
今日まで部屋に入り浸っていた人たちが明日からは来ないため、俺からすれば地獄から天国に変わったのと同然である。
「もしかして彼女でもできるのか?」
「いえ、そんなんじゃないです」
冗談半分でそんなことを言う南雲先輩に、こちらは真面目に返す。
恐らくだが、彼女ができたぐらいで天国と俺は表現しないだろう。
有り得るとしたら普段より少し楽しいじゃないだろうか。
「少し気になるが・・・・・・それは置いておこう」
「私は気になるけどな~」
先輩方はそのことが気になるらしく、朝比奈先輩はこちらに何度か目を配らせて教えてくれることを期待してくるが、顔を逸らして無視する。
それを見ていた南雲先輩は咳払いをする。
「生徒会に無人島、そして船上での試験の結果が上がってきたが、どうだった?」
「思い通りになりすぎて、楽しいとは思いませんでした」
「この学校が始まって以来、初めてのクラス替えを行ったやつには、今回の試験は楽しくなかっただろうな」
南雲先輩はそう言って肩を竦める。
(普通にこの学校初めてのクラス替えっていうのを忘れてたわ)
クラス替えをしたこと自体も一瞬忘れていたのは、この際伏せていていいだろう。
「お前の結果を見て思ったが、今のやり方だったらいつか痛い目に合うぜ。絶対にな」
こちらをしっかり見据え、先輩らしく忠告をこちらにしてくる。
(無人島試験も船上試験も上手く行き過ぎた。
前回みたいに俺が思った通りに全てが動くわけじゃない。
だけど前回の結果のせいで上手くいくと思ってしまう。
あの施設にいたときはそう思わなかったが、やはり気の緩みが出てきているのかもしれないな)
前にも堀北兄から同じようなことを告げられている。
そう考えると、どれほど上手くいきすぎたのかがよく分かるというものだ。
そう思っていると、南雲先輩の口元が笑う。
「まあ、俺が生徒会長になったらお前が苦戦するような試験をやってやるからな。覚悟しとけよ」
(南雲先輩、それ普通に言っちゃダメなやつ言ってる気がするんだが...)
「一応楽しみにしています」
「
俺たちのやり取りを静かに聞いていた朝比奈先輩に言われて、南雲先輩は立ち上がる。
「次にある試験を楽しみにしてるぜ。それじゃあな」
「またねー」
そう言ってケヤキモール方面に向かう2人の先輩の背中を俺は見送る。
(あの2人、付き合ってそうに見えるけど、先輩方曰く南雲先輩の女癖が酷いらしいからな。
絶対南雲先輩みたいにならないでおこう)
そう心に決めて、寮へと戻るのであった。