ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第43話 プールの準備

 夏休みも明日で最終日となり、そのことを知って少し憂鬱な気分になっていると1件のメールが届く。

 差出人を確認すると『龍園』とあったので、珍しいと思いながらそれを確認する。

 

『明日、プールでも行かないか?』

 

 龍園の口からそんな言葉が出るとはと思いながら、どうするか考える。

 

(別にプールに行ってもいいが、やりたいことなんてないしな...。

 それなら部屋の中でくつろいでいる方がいいんだが、行かなかったら龍園に何をされるか分からないのが怖い。

 ここは行っておいた方が良さそうだな)

 

 行くと返事をして、プールに行く準備をする。

 

(水着とタオルはあるからいいとして、日焼け対策としてのラッシュガードが欲しいな。

 あんまり日焼けしたくないし)

 

 ラッシュガードを買いに行くため学生証と携帯を持って外に出る。

 

「あっつ、まぶし!」

 

 今は昼前。

 3日ぶりぐらいにクーラーが凄く効いた、真っ暗な部屋から出ればこうなってしまう。

 

「さっさとケヤキモールに行って用事を終わらせよう・・・・・・」

 

 片手を日除け代わりにもう片方をうちわ代わりにし、エレベーターを使って1階まで降り寮を出る。

 

「やばい・・・・・・溶けそう・・・・・・」

 

 暑くて嫌になってきたが、行かないと明日は日焼けしてしまうと自分に言い聞かせる。

 そしてケヤキモール方面へ向かおうとしたら、学校方面の並木道に軽井沢が歩いているのが見えた。

 

(学校に用事があるような奴じゃないのになぜ学校方面に?

 誰かに会うため?

 暑いが気になってきたから追ってみるか)

 

 興味本位で後をつけてみると、誰かが座っているベンチの隣に座ったので誰かと会っているのだろう。

 

(軽井沢をこんなところに呼び出すやつなんてかなり絞られる。

 最近のことも含めると綾小路だろう。

 ぱっと見た感じの髪の長さもそれぐらいだしな)

 

 ここでやめてしまってもいいが、軽井沢にはあのキャンディーを渡している。

 それがどうなったのか、正直気になっているのだ。

 折角の機会を水の泡にするのは勿体ないため、対象に話しかけてみる。

 ゆっくりと距離をつめていくと、綾小路がこちらに気付いたのか、話を中断してこちらを見てくる。

 軽井沢もいきなり話を中断され綾小路の視線がこちらに向いたので、何事かとこちらを見てくる。

 

「こっちにノコノコやって来て何の用?」

 

 俺を見るなり、軽井沢は機嫌が悪そうに聞いてくる。

 

「キャンディーをどうしたのか気になってな」

 

「キャンディー?そんなの知るわけないでしょ」

 

 軽井沢の突き放すかのような言葉には噓を吐いているようには思えない。

 どうやらキャンディーはあの後、綾小路に回収されてしまったようだ。

 

「綾小路、お前なら知ってるんじゃないか?」

 

「オレも知らないぞ」

 

 どうやら、持っているはずのものなのに白を切るようだ。

 

「さっきから何なの?Dクラスを裏切ったやつがいきなり現れて」

 

「ただ渡したものがどこにいったか気になってな。それにしても、あのキャンディーがあれば軽井沢にある傷が治るんだが」

 

「なんであんたがそのことを知ってるのよ!?」

 

 傷のことについて知っていることが癪に障ったのか、いきなり立ち上がって大声を出す。

 

(ブラフかもしれないのに反応するなよ...。バレてしまうぞ)

 

 あのことを本人は全く覚えがないため、自分の秘密を裏切り者である俺が知っているのは、この上なく不快だろう。

 

「お前の口から聞いただけだ。左脇腹に傷があるってな。と言ってもお前は覚えていないと思うが」

 

「う、うそ・・・・・・」

 

 他人に知られていることがかなりのショックだったのか、軽井沢は膝から崩れ落ちる。

 そんな軽井沢にさらなる追いうちをかける。

 

「1つだけいいことを教えてやる。何も覚えていないが何故か自分が握りしめていたハンカチがあるだろ」

 

 実はキャンディを持たせた反対の手にあの時貸したハンカチを持たせていたのだ。

 

(新品だったしハンカチ程度だから回収する気にはならなかったんだよな。

 それも人が使ったやつだし)

 

「ま、まさか・・・・・・」

 

「あれは俺のだ。新品だったし、別に返さなくてもいいが」

 

 それを聞いた軽井沢の顔が一気に青ざめる。

 

「そこまでにしたらどうだ?」

 

 もう少し言おうかと思ったが、先ほどまで黙って聞いていた綾小路に止められる。

 キャンディを軽井沢は知らないことを知れたので、今回は引き下がることにした。

 

「流石にこれまでにしておこう。こんな暑い中、地面に膝をずっとつけさせるのは嫌だしな」

 

 真夏の地面は火傷しそうなぐらい熱い。

 それもコンクリートとなればなおさらである。

 そんなところでこれ以上膝をつけさせるのは拷問でしかない。

 

「俺も流石にこの暑さに耐えられないから、この辺で失礼する」

 

 そう言って2人に背を向け、お詫びとしてポケットから携帯を出してポイントを綾小路に振り込んでおく。

 

「詫びとしてポイントを振り込んでおいた。何か冷たいものでも買ってやれよ」

 

 そのまま歩こうとしたら、綾小路に呼び止められる。

 

「お前は()()()()にして動いている?」

 

(何をか。

 俺は綾小路から見たらイレギュラーにだろう。

 自分のクラスのために動いたり、敵だとしても仲が良ければそいつのためにも動く。

 自分にプラスしかないものをスルーしたりだってする。

 だが、これだけは言える)

 

「俺はただ強者と戦いだけだ」

 

 そう言い残して、俺はケヤキモールに向かった。

 

-----------------------------

 

 ケヤキモールに到着すると、水着等を売っている店へと入る。

 店内にはシンプルな水着から派手な水着、明らかに誰が買うのか分からない際どいものまで売ってある。

 

「シンプルイズザベスト。白色のパーカータイプが1番だな」

 

 パーカータイプの白色のラッシュガードを買い店の外に出ると、思いがけない人物と出会う。

 

「久しぶりだな、黒瀬」

 

 外にたまたまいたのはBクラスの神崎。

 会うのは船上試験以来だろう。

 

「神崎か。こんなところで何をしているんだ?」

 

「それはこちらのセリフだ。普段外で見ないやつがいきなり外に出てるなんて。まさか、何か企んでいるのか?」

 

 前回の試験のせいで裏があると思われて、神崎に睨まれてしまう。

 

(俺、そんなに外に出てなかったっけ?

 うーん...よくよく考えたら、図書館とスーパーに行くぐらいでしか外に出てなかったわ)

 

「ラッシュガードを買っただけだ」

 

 そう言って、手に持っている袋からラッシュガードを取り出す。

 

「どうやら勘違いだったようだな。すまない」

 

 俺が白であることが分かり、神崎は謝罪をしてくる。

 

(白のラッシュガードで白と分かる、白だけにね!)

 

 ダジャレを脳内でしたら、神崎が寒気でか身震いを一瞬起こす。

 

「一瞬寒気がしたんだが・・・・・・」

 

「・・・・・・多分気のせいだろ。それより神崎は何をしていたんだ?」

 

「俺は遊びの帰りに水着を買おうと思ってな。明日、クラスの仲間とプールに行くことになっている」

 

 どうやら明日はBクラスの人達もプールに行くようで、面倒なことにならないことを祈る。

 

「そういうことか」

 

「お、黒瀬じゃん」

 

 返事をしたら、横から俺を呼ぶ声がしたので見てみると橋本がいた。

 

「俺はこれで失礼する」

 

 橋本の方を見るなり、神崎は店に入っていった。

 

「今のって神崎だよな」

 

「そうだが」

 

 橋本は神崎を知っているようで、神崎の先程の態度からも、神崎も橋本を知っているようだ。

 

「神崎って、あんまり他人と話してるイメージがないから少し珍しく思ってな。それより外であまり見かけなかったやつが外にいる理由を教えてくれよ」

 

 こいつもかと呆れてしまうが、ここはしっかり答える。

 

「ラッシュガードを買っただけだ」

 

 俺はもう一度、ラッシュガードを袋から出して見せる。

 

「なんだ、買い物をしただけか・・・・・・」

 

 面白い理由を期待していた橋本は落胆する。

 

「それで橋本は?」

 

「俺は明日のために水着をな」

 

 橋本も明日プールに行くようだ。

 

(てことは1年の3クラスが既に行くことが決まっているのか...。

 何か悪い予感がするんだが)

 

「そうか。俺はこれで帰る」

 

「じゃあな」

 

 俺は橋本と別れ、まっすぐ帰宅するのであった。




綾小路と軽井沢

 黒瀬が去ってから話を終えて軽井沢が寮へと帰ろうとしたその時、何かを思い出したのか、こちらを向いてくる。

「あんた、あたしに何か隠してるよね?」

 軽井沢が言っているのはおそらく黒瀬が言ったキャンディーのこと。

「そうだな。オレは確かに隠し事をしている」

 オレはあの現場を見た後、軽井沢に握られていたキャンディを回収した。
 だが、地面に落ちていたハンカチまで握られていたとは思ってもいなかった。

「それって、さっき黒瀬が言ってたキャンディーでしょ?」

 オレは少し考えて、本当のことを言うことにした。

「そうだ」

「そのキャンディーがあれば、あたしの傷を治すことができるって言ってたけど、本当なの?」

 軽井沢にとってこのことは重要になってくるだろう。
 目に見えて残っている自分の過去。
 それを消すことが出来れば苦労することは無くなるだろうし、思い出すことも無くなる。
 だが、俺にはそれを越えてもらわなければいけないと思っている。
 過去のことを乗り越えた人は、今までよりも強くなる。

「それは分からない。本当にそんな効果があるのか一切な」

「そう・・・・・・」

 それを聞いた軽井沢は落胆する。

「効果についてしっかり分かったらおまえに返そう。それまではオレが持っておく。その方が安全だからな」

「分かったけど絶対に捨てないでよね。それで私は生まれ変われるから」

「分かっている」

 それを聞いた軽井沢は寮へと戻って行った。

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