まずは、彼女の名前。
名前は
彼女の家は4つ歳が離れた姉と父親と母親の4人で、かなりの金持ちだった。
長く伸びた髪はベージュで瞳は黄緑という特徴を持ち、明るく優しい性格で、彼女の笑顔を見ていると癒される感じがあった。
歳は2つ上で扇先輩とは幼馴染であり、俺とは家が隣で小さい頃から付き合いだった。
俺と扇先輩が仲良くなったのは、彼女のおかげと言っても過言ではないだろう。
俺たち3人は暇があれば集まり、色んな話をしたり遊んだりしたのを憶えている。
自分たちの家系についてや将来の話など、今思うと恥ずかしい話をいっぱいしていた思う。
俺にとって2人は外で会うことの出来る唯一の友人であり、毎回会うことが生きがいでもあった。
だが、そんな楽しい日々は突然終わりを告げた。
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俺が小学校に入学した日、いつものように課題を終わらせて彼女の家に行ったら、彼女の家の前で扇先輩が蹲って泣いていた。
「マサ、こんなところで何しているの?ナナの家に入らないの?」
いつもなら家の中に入って先に待っているはずのマサが、家の前で泣いていることを不思議に思う。
(この時の俺たちは互いに下の名前で言ってた。
扇先輩は下の名前のマサ、彼女はナナと呼んでいた。
ちなみに俺はカイだった)
マサは俺の声を聞いて顔を上げる。
「・・・・・・カイ・・・・・・か・・・・・・」
「そうだけど・・・・・・大丈夫?酷い顔をしてるけど」
その様子は空虚な感じで、今すぐにでも壊れてしまいそうだった。
「・・・・・・ナナ・・・・・・が・・・・・・」
「ナナが?」
「・・・・・・いなく・・・・・・なった・・・・・・」
「え?」
俺はそれを聞いた時は噓だと思ったが、マサが泣いてこんな状況になっているのを見て、本当のことだとしか思えなかった。
「ちょっと聞いてくる」
(この時の俺は、彼女がいなくなったことが噓だと思っていた。
いや、否定したかった。
そうじゃないと、彼女が遠くに行ってしまいそうだったから。
永遠に会えないと直感したから)
俺はインターホンを鳴らしナナの家へ入った瞬間、
「────なんで奈々美がいなくなったのよ!?」
そんな荒げた声が目の前の閉じた扉から聞こえてきた。
声の主はナナの姉でいつもは温厚な性格で妹思いのいい人だ。
だがそんな人が声を荒げている。
それがひどく怖かった。
なぜなら彼女が本当にいなくなったと思わせてくるから。
けれども足を止めてはいけない。
俺はこの目で確認しなければならない。
姉が本当に声を荒げているのかを。
目の前の閉じた扉の前まで行き、中が僅かに見えるぐらいに扉を開ける。
「・・・・・・あいつは家を出ていっただけだ。時期に帰ってくる」
「そんなの噓よ!」
中では姉と父親が言い争いのようなことをしている。
父親の顔は見えないが、姉の方は顔を見ただけで分かるほど怒っていた。
「私は見たんだから!奈々美が変な車に運ばれてるところを!」
それを聞いた瞬間、彼女が本当にいなくなったことを実感した。
(乗ったんじゃなくて、運ばれた?
それはまるで、誘拐と同じ...それなら、こんなことをしてる場合じゃない!)
それを耳にした俺は急いでマサのいる場所まで戻った。
「マサ、ナナを探しに行こ!早くしないとナナがいなくなる!」
そして俺は心ここにあらずな状態のマサに呼びかける。
それを聞いたマサの顔がいつもの感じに戻っていく。
「・・・・・・そうだよな・・・・・・。まだ諦めたらダメだ・・・・・・それに、もしあいつがいたら怒られるかもしれねえしな」
マサはそう言って立ち上がり、体の前で1つの握り拳を作る。
「カイ、探しに行くぞ」
「うん!」
(俺はこの時、早とちりし過ぎたのかもしれない。
明らかにおかしなところを見逃してしまった。
だが、それのおかげで先輩を復活させた。
そして今日、元気な姿を見ることができた。
もしあのままだったら、もう会うことすら出来なかったのかもしれなかった)
俺たち2人は手分けをして一日中ナナを探したが、見つかることはなかった。
次の日もまた次の日もナナを探す。
自分たちの街だけでなく隣の街も。
だが手掛かりすら見つからない。
そして月日が流れ、ナナがいなくなってから約1年が経ち、いつものようにナナを探しに行く準備をしていたら、父親に止められる。
「神威、明日からお前を親戚に預けることになった。扇のところには連絡をしてある。今からこちらに来るだろう」
父親がそう言って自分の部屋から出て行くのと同時に、マサが自分の部屋に入ってきた。
「カイ、明日からいなくなるんだって!?」
マサは肩で息をしながら、今言われたことについて尋ねてくる。
小学校の制服のままであることと息を切らしていることから、家に帰ってすぐに来たんだろう。
「僕も今聞いたところで・・・・・・」
「そうだったのか・・・・・・」
2人共俯いたのでここで一度会話が途切れる。
そしてマサは息を整えてから口を開く。
「・・・・・・お前がいなくなったとしても俺はお前を絶対に忘れないし、ナナを探し続ける。また3人で一緒にいたいからな」
俺はそれを聞いて嬉しくなったのと同時に悲しくなった。
なぜなら、もう会うことが出来ないと直感したから。
「僕もだよ」
「約束だ」
心に秘めた感情を隠し、突き出された拳に自分の拳を当てる。
この時の俺は泣きながら笑顔になっていたことだろう。
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あの後先輩が家に帰って、次の日にブラッディルームに入れられた。
場所はいまいち分からないが。
施設は島にあり、島自体はかなり広く滑走路や色んな建物がある。
島の隣には同じぐらいの大きさの無人島のようなものがあった。
ブラッディルームに入ってからは生きていくのがやっとだった。
毎日地獄のように動かされ、一歩間違えれば死んでしまう。
2日間飲まず食わずが普通、水があったとしても容易に飲めたものじゃなかった。
毎日同じことを繰り返し、体に覚えさせていく。
勉強はもちろん、銃の使い方、武術に暗殺術。
その全てのことを確認するかのような全員合同サバイバル。
それは夏と冬の合計2回あり、施設の隣の島で行われるものだ。
俺が彼女と会ったのは2年目夏のサバイバル、3回目のサバイバルの時だった。
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今日はブラッディルームの特別行事でもある日であり、施設にいる全員が隣の島に集められた。
夏の暑い日差しに照らされながら、俺たちの前に1人の男がマイクを持って立つ。
「ではこれよりサバイバルを開始する」
それを聞いた初めてサバイバルを体験する者はざわめき始める。
だがそれは周りにいる処刑人の圧によってすぐに収まる。
「今からお前たちはこの島で1週間暮らしてもらう。ルームは単純。1週間の間、生き延びるかポイントが一定に達すれば施設に戻ることが出来る。ポイントについては50ポイント。お前たち被験者を1人殺せば1ポイント、私の横にいる処刑人は1人で50ポイントだ」
そう言って、隣にいる処刑人を紹介する。
彼らは自分たちの武器を持っていて、銃や剣、槍や斧など様々だ。
「ポイントをどうやって数えるかだが、それはお前たちに埋め込まれたチップで行う。チップを集めたらここに戻ってくるがいい。ポイントを加算してやるからな。持ち物は事前に渡したナイフのみ。それでは始め!」
突然の開始の合図に俺たちは散開する。
「ギャァーーーー!!」
開始早々、後ろからそんな声が聞こえてくる。
おそらく初見のやつで、戸惑って動くのが遅れてしまい処刑人の餌食になったんだろう。
だが餌食になったのは1人のみ。
それは処刑人の最大の慈悲と聞いたことがある。
だからと言って足を止めない。
止まれば他の人に殺されてしまうから。
ある程度離れた場所に来れたので、木の上に登って周りにいる奴らの確認をする。
(見た感じだと3人。
1人はこちらに気付いて構えているが、他の2人はびびっている感じだな)
下に降りて山の方を目指していると、後ろから声がした。
「もしかして、カイ?」
(この声はまさか!?)
懐かしい声が聞こえたので、俺は構えながら後ろを振り向いた。
そこには突然姿を消したナナの姿があった。
あの時に比べて体は成長しているが、目が虚ろになっていた。
だからと言って、警戒を解くわけにはいかない。
身内という点を使って、殺しに来るかもしれないから。
すると、ナナは自分が持っているナイフを地面に捨て、両手を上に上げた。
「私はカイを殺さない」
そんな行動に俺は呆気を取られてしまう。
(俺と戦いたくないのは分かるが、武器を捨てたら危ないだろ!)
そんなことも束の間、俺はナナの後ろから頭を狙って飛んできた石を察知し、近くにあった石で弾き返す。
ついでに拾ったもう1つの石を飛んできた方向に飛ばす。
おそらく相手の顔を掠めた気がするので、これで追い払えただろう。
「ふー・・・・・・。お前に戦闘の意思がないのは分かった。だが、ナイフだけは捨てないでくれ」
この場所ではナイフ1本で命を守ることが出来る。
逆にナイフを捨てれば命を捨てたのと同じ。
そんなことを俺はしてほしくなかった。
「ごめんね・・・・・・」
そう言って、自分のナイフを拾い上げる。
「話をしたいの山々だけど、とりあえず今は身を隠せる場所を探そう」
「それならいい場所を知ってるよ」
「なら案内してくれ」
その言葉にナナは頷き、海の方へと走り始める。
それを後ろからついていくと、大海原が一望できる浜辺の方へと出てきた。
そんな浜辺を海に沿って右に行くと岩肌が見え、そこから少し海に入って進んでいくと、浜辺から死角となった洞窟が現れる。
「ここなら誰も来ないから」
ナナが洞窟の奥へと進んでいくので俺もその後ろをついていく。
洞窟の入り口には海水が入っているが、少し進むと陸が出来ており海水が上がって来ないようになっていた。
だが洞窟の中は太陽の光があまり入って来ず、ぎりぎり相手の顔が見えるぐらいだった。
と言っても、俺たちには暗闇の中でも相手の顔を確認できるため、そこまで関係はない。
「こんなところがあったとは・・・・・・」
「ここはサバイバルの時に毎回入るようにしていてね。ここには処刑人も来ないから安全だよ」
ナナが言った通りここには戦闘の跡が全く無く、処刑人が入ってきていないのだと思う。
それに、女性であるナナが今日まで生き残っているという事実もある。
(女性はこのサバイバルで囮となって死んでいくのが多いと聞いたことがある。
理由は簡単で、処刑人が男でありその欲求の矛先が女性に向いてしまうから。
捕まった女性は殺す前にその場で陵辱される。
その間に他のやつは逃げて、生き延びるというのがよくあるからだ。
なぜ知っているかと言うと、その現場に3回出くわしているから)
俺が壁側にもたれるよう座ると、その隣にナナが座った。
「それにしても久しぶりにナナの顔を見れて俺は嬉しいよ」
「私も嬉しいけどこんな場所じゃなかったらね・・・・・・」
確かにそれは分かるかもしれない。
突然いなくなった友人と奇跡的に再会する。
本来ならもっと感動的な再会だろう。
だが、状況が最悪すぎて涙すら流すことが出来なかった。
(もしここではなく他の場所で会っていたら、その場で涙を流す自信があるな)
そんな所感を心の中で述べていると、ナナがここに来た理由を聞いてきた。
「カイはなんでここに来たの?」
おそらく、俺がここに来た理由が分からなかったのだろう。
俺も実際分からないだらけだが、これだけは言える。
「俺は親に騙されてここに来た。親戚の家に預けるとかで。ナナは?」
「私は・・・・・・いらなくなったから捨てられたに近いかな・・・・・・」
俯きながらそう言った時の顔は、どこか感傷に浸っているようだった。
「理由はお見合いを私が断ったから」
その先の言葉も俺は黙って耳を傾ける。
「私の家はね、代々2人目以降の子供は決まった相手としか結婚できないの。私はそのことを知っていて、いざ相手の人と会ってみたら大人の人だったの。
相手の人は凄く良さそうな人だった。話を聞いててもそれが伝わってきた。けど私が思っていたのとは全く違うかった。それで断ったら・・・・・・」
最後まで言う前に、ナナは泣き始めてしまった。
(お見合いとか小学生がするものじゃない。
なのに断ったら捨てる?
まるで物として扱っているようじゃないか。
そんなことが許されるわけがない)
激情を胸の中で抑え込みながらナナを落ち着かせるために、俺はそっと肩を抱き寄せる。
「俺はナナを絶対に見捨てない。俺はいつだってナナの味方だ」
俺はそう言って、ナナに微笑みかけた。
それを見たナナも微笑み返してきたが、あの頃みたいな笑顔ではなかった。
そこから少し時間が経ち、隣で小さな寝息が聞こえてきた。
寝ていることを横目で確認してこちらも眠ることにした。
それから4日目まで、大半の時間を睡眠に費やした。
無闇に動けば殺されてしまうかもしれないし、動く理由が全くないからだ。
(外に出たとしても食料なんてほとんどないから、ただの体力の無駄使い。
食料があったとしても、食えるものかと言われれば怪しいものが大半だ。
それなら、洞窟から一歩も出ないで寝るのが一番いい。
それに俺たちは睡眠をしている間、消費されるエネルギーを必要最小限に抑えられるから生き残ることもできる)
だがサバイバル5日目、俺は取り返しのつかない過ちを犯してしまった。
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サバイバルが始まって5日目、外から雨の音が聞こえてきたので起きることにした。
(初日にナナが泣いたのを考慮すると、雨で水分補給をした方がいいだろう)
念のためを思い、俺は横で寝ているナナを起こす。
「雨が降ってきた。水分補給のために外に出よう」
「んー・・・・・・」
低血圧なのか脱水症状なのか分からないが、立ち上がった瞬間ふらつき始めた。
俺はそんなナナが倒れないようにしっかり肩を支える。
「ありがとう・・・・・・」
そのまま支えながら、洞窟の外に出る。
海水の水位が少し上がっているが、膝の高さぐらいなので大丈夫だろう。
「もう大丈夫」
そう言われたので、肩から手を離す。
周りの確認のために上を向いた時、5m近くある崖の上に誰かが何かを構えているのが見えた。
「危ない!」
そう叫んで、ナナを洞窟の方に突き飛ばし、上からの投擲物から避ける。
上から投げられたのは2m近くある槍だった。
(これは非常にまずい状況だ...)
「惜しー!あとちょっとでいけたのに!」
崖の上からそのような声が聞こえる。
「ナナ、早く洞窟の中に!」
「う、うん!」
こちらが指示した通り、ナナは洞窟の中へ戻っていく。
「あれー?1人消えちゃった?」
崖の上にいる男は見渡すポーズを取り、自分が投げた槍の上に飛び降りて綺麗に着地する。
崖の上にいた相手は処刑人。
このまま逃がしてくれることはないだろう。
「後ろに洞窟があったから1人消えたのか!」
相手は後ろの洞窟を見て独りで納得し、ポンと手を叩く。
「と言っても死んじゃうけどね」
よっと言って槍の上から降りる。
(相手はこの状況を遊び程度としか思っていないだろう。
声のトーンとかでだいたい分かる)
「それじゃあ、行くよ」
相手がそう言葉を発した瞬間、槍を地面から抜いてこちらへ向かってくる。
(速い!)
まばたき1回で3m近くあった間合いを詰めて、槍を突き出してくる。
俺はそれを横に回避するが、僅かに服が掠めてしまう。
「これはどうだ!」
突き出した槍を薙ぎ払ってきたので、体を後ろにそらし手を使って後方へと下がる。
そこで僅かに空いた間合いを相手は一足飛びで詰め、激しい突きを繰り出してくる。
頑張って避けるが、約1秒間に2回、それも不規則にとんでくる槍と足場が悪いせいで避け続けるのは容易ではない。
「くっ!」
足に槍が掠め、それを好機と思った相手は先ほどよりも速い突きを繰り出してくる。
致命傷になりそうな攻撃だけはナイフで弾き他の攻撃は避けるが、足を負傷したせいで上手く避けれず体に槍が刺さる。
「どうしたどうした!これで終わりとか言うんじゃねえぞ!」
相手には喋るほどの余裕があるが、こちらは致命傷を防ぐだけで精一杯だ。
攻撃をかわし続けていると、2分ジャストに横から薙ぎ払いが繰り出され、槍の柄の部分が脇腹へと直撃し、岩肌に投げ飛ばされる。
「久しぶりにここまで耐えたやつを見たぜ。お前とはもう少しやりたいが、中に入っていったやつを先に殺らないとな」
そう言って処刑人は洞窟の中に入っていく。
「待てよ・・・・・・!」
相手を追いかけるために立ち上がろうとしたが、足の刺し傷のせいであまり力が入らず上手く立ち上がれなかった。
だがナナを助けるためにナイフを岩肌に刺して立ち上がる。
幸い、ナイフを持っていた手は無傷だったので力を入れることが出来た。
(絶対に守る...!
守らないといけない...!
またあの時みたいに3人で遊んで暮らすんだ!)
ナイフを少し前の岩肌に刺しゆっくりではあるが、着実に1歩ずつ進んでいく。
やっとの思いで洞窟の中まで入りひと息つこうと思ったら、前から足音が聞こえてくる。
「ちょうど今からフィニッシュを決めようと思っていたんだ。えーっと、カイだっけ?」
処刑人は前から、片手でナナの頭を鷲掴みにして引きずって来た。
そして俺の目の前まで来て、それを持ち上げる。
ぱっと見た感じだと外傷が無いように見えるが、指は爪を全て剝がされ骨も全て砕かれている。
「いやー、本当に思われてんだな。お前。こいつ、犯してるときも爪を剝がしたときもカイって言ってたんだぜ」
「カイ・・・・・・」
ナナはここまでされても意識があるようで、頑張ってこちらへと手を伸ばそうとする。
「ハハハハハ!こいつはおもしれえ!」
そんな行動がおもしろおかしいのか、処刑人は高笑いする。
「面白いものを見せてくれたお礼に冥土の土産をくれてやる。この施設はな、
(とある実験?それは何なんだ?)
俺が聞こうとした瞬間、処刑人は片手で持っていた槍の石突で俺の鳩尾を突く。
「グハッ!」
突かれたときの痛みでナイフを掴む力が弱まって手が離れ、仰向けに倒れ込む。
「話はこれまでだ。それじゃあフィニッシュといこう」
「カイ・・・・・・」
処刑人は持っていた槍を手放し、俺が壁に刺したナイフを抜いてこちらに向けてくる。
「想い人が使っていたナイフで死ねるんだ。これほど幸せなことはないだろう」
「やめろ・・・・・・」
処刑人はナイフの切っ先をナナの正面に向ける。
頑張ってそれを阻止しようと思ったが、痛みで立ち上がれなかった。
「すぐに想い人も送ってやるよ。じゃあな」
処刑人にナイフで心臓を一刺しされる直前、ナナの口元が動きあの時の笑顔をこちらへと見せる。
「愛してる」という言葉にならなかったものを残して。
「あ、ああ・・・・・・!」
俺は仲の良かった人を目の前で失った悲しみで、この施設に来て初めての涙を流す。
「次はお前だな」
処刑人はナナを俺の横に放り投げ、自分の槍を拾ってこちらへと向かってくる。
(目の前でナナが殺されたのに、俺は何も出来なかった...。
何て無力な俺なんだ...)
近くまで来た処刑人に目を向け、己の未熟さに歯を噛みしめながら覚悟を決める。
「何も守れなかった俺に生きる価値なんてない・・・・・・さっさと殺せ」
「安心しろ。お望み通り殺してやる」
処刑人は槍を振り回してこちらの心臓目掛けて刺してくる。
俺はそれを受け入れるように目を瞑った。
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(俺が目を覚ましたとき、俺は死んだ彼女を抱きしめていた。
その横には処刑人の死体があった。
処刑人を俺が殺したそうらしいんだが、俺ではなくおれがやったせいで全く思い出せない。
この時はまだ、おれの記憶が俺に共有されなかったから仕方がない。多分。
俺が目覚めてから少しして施設のやつらがこちらに来て、俺は回収され医務室みたいなところに入れられた。
そこで軽井沢にあげたキャンディーに使われている薬が投与され、傷が全て完治した。
おそらくその時の薬の副作用で記憶が一部欠如してしまい、彼女が死んだことしか思い出すことが出来なかったんだろう。
まあ、先輩と会って思い出すことが出来たから良かったが)
一区切りがついたので、部屋の窓の外に視線を向けると真っ暗になっていた。
(俺が部屋に戻って来た時はまだ日差しが眩しくて鬱陶しかったんだがな...。
とりあえず明日は学校だし、さっさと寝るか)
部屋にあるベットへダイブし、すぐに眠りについたのであった。