坂上先生の話し方がいまいち分からずこうなりました。
第46話 新たな場所
「そういえばクラスが変わったんだった」
夏休み明けの朝、1学期と同じようにDクラスの教室に入ろうとした瞬間、夏休みにCクラスへと移動したことを思い出す。
俺はCクラスの教室へと向かい、既に教室の中にいたCクラスの生徒の中から話せる相手を探す。
(クラスが変わったせいでどこに座ればいいのか全く分からんから、誰か聞けるやつはいないか?)
「ちょっと邪魔」
扉のところで突っ立ていたため、後ろから来た人の邪魔になっていたようだ。
「すまんな」
詫びを入れて壁際に寄った時、相手を確認するとそれは伊吹だった。
伊吹は特に気にすることもなく自分の席に座る。
(話せる相手がいないからここは伊吹にしておくか)
そう思った俺は伊吹に話しかけてみることにした。
「おはよう、伊吹」
「何か用?」
挨拶をしたら素っ気ない言葉が返ってきた。
(返事の仕方から真面目に友達がいなさそうだな...。
まあ俺が言えたことじゃないが)
「初めてこの教室に来たから席がどこなのか分からなくてな。教えてくれないか?」
「多分あそこ」
伊吹は壁側の一番後ろの席を指しながら言う。
「ありがとう」
感謝を述べ、伊吹に教えてもらった席に移動して、身の回りの確認をする。
(もし他人の席だったら失礼だから、しっかりと確認をしておかないと)
引き出しの中などを確認したが、かなり綺麗で新品のような感じがする。
誰も使っていないことに安心し席へ座る。
そして、窓の外に目をやる。
(今日からこの場所になるのか...。
落ち着くような...。
なんか一句読めそうな────)
「おはようございます!」
自分だけの空間に入ろうとしたら、真横から石崎が元気よく挨拶をしたせいで現実に戻されてしまう。
睨んでやろうかと思ってしまったが、石崎は悪意を持ってやったわけじゃないためやめておくことにした。
「おはよう」
(前の俺だったら睨んでいるところを、挨拶でしっかり返す。
俺は今日から進化するのさ!)
「俺、今日から黒瀬さんと同じクラスになるなんて嬉しいです!」
石崎の言葉に引っかかる点があったが、めんどくさいため無視しておく。
「そうか」
「今からホームルームを始める。席に座るように」
俺が返事をしたタイミングで坂上先生が教室に入って来る。
「また後で話しましょう!」
それを横目で確認した石崎は自分の席へと戻る。
立ち歩いていた奴らも席に座り始め、もちろん俺の前の席のやつも当然戻って来た。
「・・・・・・」
そいつを見た瞬間、言葉を失ってしまった。
なぜなら前のやつは、巨漢のアルベルトだったからだ。
アルベルトはこちらに気付き、軽く一礼して席に座る。
(デカいのは分かっていたが、前にいると一段とデカく感じてしまう...。
何よりアルベルトのせいで全く前が見えん)
先生に目を向けることは諦め、聞くことだけに専念することにした。
「えー、まず最初に今月のクラスポイントを発表します」
先生が前で何かを貼っているが、先ほども言った通り前が見えないので自分で考えることにした。
(確か暴力事件の時、Aクラスが1004、Bクラスが663、Cクラスが492、Dクラスが87だったはず。
そこから無人島試験と船上試験で、Aクラスが1004-200で804、Bクラスが873-100で773、Cクラスが568+450で1018、Dクラスが262-250で12。
そうなると、CクラスがAクラスになるのか)
「Aクラスが804cp、Bクラスが773cp、Cクラスが1018cp、Dクラスが12cp。CクラスがAクラスのクラスポイントを超えたため、今日からCクラスがAクラスとなり、AクラスがBクラス、BクラスがCクラスとなります」
茶柱先生と違い坂上先生は優しいのか、しっかりと俺らに教えてくれた。
それを聞いたCクラスの生徒はざわつき始める。
「私たち、今日からAクラスだって」
「毎月10万も入るのかよ!」
「これでポイントを好きに使える~」
「てめえら、静かにしろ」
ざわざわしていた空間が、龍園の低い声1つで静かになる。
それにより、坂上先生の言葉は再開される。
「船上試験で獲得したプライベートポイントは今日、振り込まれたはずなので確認しておいてください」
(ていうことは俺に400万ポイントが戻ってくるのか。
戻ってこなかったら問い詰めてやる)
「皆さんが分かっている通り今日から2学期が始まります。Aクラスの生徒として、自覚を持って行動をしてください。それではホームルームを終わります」
必要なことだけを俺たちに伝え、坂上先生は教室を去って行った。
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午前の授業と昼休みが終わり、午後の授業が始まる。
午後は2時間ともにホームルームとなっており、何かがあると予想できる。
ちなみに400万はしっかりと俺に戻ってきたため少し気分がいい。
「今日から改めて授業が始まりましたが、2学期は9月から10月初めまでの1ヶ月間、体育祭に向けての体育の授業が増えることになります。新たな時間割を配るためしっかりと保管しておいてください。それと時間割表と共に体育祭に関する資料も配っていきます」
体育祭というワードに一部から悲鳴が上がる。
と言ってもこのクラスは運動が出来るやつが多いのか、数人程度しか言っていない。
坂上先生は先頭の人に時間割表と体育祭の資料を渡し、それが俺に回ってくる。
俺はそれを受け取り、体育祭の資料をパラパラと見ていく。
(これは面倒なことになりそうだな...)
先生の話を聞きながら、今回の体育祭について考えていく。
(まず、体育祭の組み分けは全学年を赤組と白組に分け、赤組がAクラスとDクラス。
白組がBクラスとCクラスになる。
競技には2種類あり、全員参加競技と推薦参加競技がある。
全員参加競技は、
・100メートル走
・ハードル競走
・棒倒し(男子限定)
・玉入れ(女子限定)
・男女別綱引き
・障害物競走
・二人三脚
・騎馬戦
・200メートル走
点数配分は1位が15点、2位が12点、3位が10点、4位が8点、5位以下は1点ずつ下がっていく。
団体戦の場合、勝利した組に500点が与えられる。
推薦参加競技は、
・借り物競争
・四方綱引き
・男女混合二人三脚
・3学年合同1200メートルリレー
点数配分は、1位が50点、2位が30点、3位が15点、4位が10点、5位以下は2点ずつ下がっていく。
最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる。
各個人競技で1位を取った生徒は5000ppの贈与もしくは筆記試験で3点に相当する点数が与えられる。
各個人競技で2位を取った生徒は3000ppの贈与もしくは筆記試験で2点に相当する点数が与えられる。
各個人競技で3位を取った生徒は1000ppの贈与もしくは筆記試験で1点に相当する点数が与えられる。
(点数を選んだ場合、他人への付与は出来ない)
各個人競技で最下位を取った生徒は-1000pp。(所持しているポイントが1000ポイント未満の場合、筆記試験で-1点を受ける)
上の報酬と違うのがあり、
最優秀生徒報酬は、全競技で最も高得点を得た生徒に10万ppを贈与。
学年別最優秀生徒報酬は、全競技で最も高得点を得た学年別生徒3名に1万ppを贈与。
結果が与える影響は2つあり、
・全学年の総合点で負けた組は全学年等しく-100cp。
・各学年、総合点で1位のクラスは+50cp、2位のクラスは変動なし、3位のクラスは-50cp、4位のクラスは-100cp。
反則行為については、
・各競技のルールを違反した者は失格同様の扱いを受ける。
悪質な者については退場処分にする場合有り。
それまでの獲得点数の剥奪も検討される。
全競技終了後、学年内で点数が下位10名はペナルティとして、次回の筆記試験で10点の減点。
参加表と呼ばれるものがあり、各種目どの順番に参加するか記入して、体育祭1週間前から前日の午後5時までに担任の先生に提出する。
もし提出期限が過ぎた場合、ランダムで割り振られる。
推薦参加競技で欠員が出た場合のみ、代役を立てることができる。
その時に代償として、10万ppを支払わなければならない。
こんな感じかな。
運動神経で俺より上回る可能性があるのは高円寺と綾小路ぐらい。
高円寺が参加するとは思えないから綾小路だけになるが、本気でやれば目立つことになる。
綾小路は目立つことを嫌がっているため、実質敵なしだろう。
俺自身を心配することはないが、運動神経の悪い奴らがかなり心配だ。
どれくらいなのか知らないが、1人でも下位10人の中に入ることは絶対に避けたい。
そうなれば、男女問わず運動神経の悪い奴らを集めて特訓でもするか...って、もっと心配しなきゃいけないのは、うちのクラスのボスである龍園がどう動くかだ。
あいつがどう動くかによって、今回の体育祭で最下位を取る可能性が出てくる。
どうしたものか...)
そう思って龍園の席を見たが、既に前へ行っていた。
「今回の体育祭ではDクラスを徹底的に潰す。異論はねえな?」
龍園はそう言うが、意見すればボコされるだけなので誰も異論を唱えない。
俺は聞きたいことがあったので、手を上げて聞くことにした。
「それに異論はないが、運動のできない者をどうするんだ?放置していたらクラスにマイナスとなるが」
俺が反対するかと思っていたのか数人の生徒から安堵の声が聞こえる。
「クク、そうだな・・・・・・黒瀬、お前がそいつらをどうにかしてクラスのマイナスにならないようにしろ」
龍園は少し考え、俺が予想していた言葉を口にする。
「分かった」
「他はいねえな?」
龍園はそう言って全体を見渡す。
俺以外特に何もないようだ。
「皆さん、次の時間は第1体育館に移動して、各クラス他学年との顔合わせとなるので遅れないように」
この時間の終わりのチャイムが鳴り、坂上先生が次の時間の補足をする。
(体育館で顔合わせとかめんどくさいな...)
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移動ということで体育館に行くと、1年から3年の生徒、教師たちが集められていた。
赤組と白組で分かれて座るようで、俺は赤組の同じクラスの人達が集まっているところに行く。
時間が経つことにつれて生徒が多くなり、全員が座ったところで数名の3年生が前に出る。
「俺は3年Aクラスの
藤巻先輩は続けてこう言う。
「1年生には先にひとつだけアドバイスしておく。一部の連中は余計なことだと言うかも知れないが、体育祭は非常に重要なものだということを────って、おい!どこに行く!?」
先輩が話している時に突然龍園が立ち上がり、出口に向かって歩き始める。
Aクラスの生徒も事前に言われていたわけではないが、それに習って龍園の後ろをついて行く。
「俺は端から話し合いに興味はねえ。なら話を聞くだけ無駄だ」
先輩に呼び止められても龍園は歩みを止めない。
先輩から目をつけられるとなにかとめんどくさいので、藤巻先輩に近寄ることにした。
「藤巻先輩。うちのクラスが迷惑をかけてすみません」
頭をしっかりと下げ謝っておく。
それを聞いた藤巻先輩は頭を抱える。
「後であいつに伝えておいてくれ。先輩の話をしっかり聞けと」
「分かりました。あいつにそう伝えておきます」
龍園の名前をあえて出さず一礼してこの場を去ろうとしたら、1年生の堀北に前を塞がれる。
そのせいで、先ほど以上に周りから注目を集めてしまう。
「あなたたちは何を考えているの?これはクラス同士で協力して行う試験よ。なのに、話し合いの場を放棄するなんて馬鹿すぎるわ」
堀北はこの体育祭をクラス同士で協力するものだと思っているらしい。
「協力したところで変わることなんてごく僅か。体育祭と言えどクラス間での勝負であることに変わりはない。それに話し合いをしても、何も決まらないことなんて目に見えている。そんなことをするよりも、少しでも対策を練っている方がよっぽど有意義な時間を過ごせる。そもそも俺たちが協力すると言っても信じないだろ?」
「今は確かに信じないでしょうね。でも話し合いをすることで少しは変わるかもしれないわ」
そうは言ったものの、堀北は意地でも話し合いをしようとしているため、一歩も下がらない。
(堀北先輩が見ているからか?
それとも本気で話し合いをしようとしているのか?
それも違うくて、今回でクラスポイントを少しでも上げたいから?
まあ何にしろ興味はないんだけれど)
「そう」
無関心にそう返し、堀北の横を通って龍園を追いかける。
横を通る時、堀北に止められるか須藤が襲いかかって来るかと思ったが、杞憂だったようだ。