ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第4話 ブラックボーイ

「 やってしまった・・・・・・」

 

 今日は入学してから1週間。

 俺は今、自分の部屋にの中にいる。

 そして、朝のホームルームまで残り5分。

 

 おわかりいただけただろうか。

 

 俺は人生で初めて遅刻というのを味わいそうになっている。

 

 

 

 これにはれっきとした理由がある。

 それは・・・・・・。

 

 

 

 今日の授業に水泳があるからだ。

 

 俺は別に泳げないとか泳ぐのが苦手とかではない。

 なら、なぜ水泳が遅刻と関係するのか・・・・・・。

 それは今の教室の状態を想像したらわかりやすいだろう。

 

 まず、男子が池を中心にある話題で騒いでると思われる。

 その話題とは多分、クラスの女子の胸の話だろう。これに至るまでの証拠は池の視線だ。

 まだ会って数日しか経ってないし、数回しか話したことはないが、女子の胸をよく見ている気がする。

 特にクラスで人気の櫛田(くしだ)?と話をしている時、露骨に視線が胸に注がれている。

 まあ、あの凶悪な胸が目の前にあったら普通の男子高校生なら池と同じようになるだろう。

 

(えっ、俺はどうかって?

 それは胸には興味あるけど、あそこまで露骨に視線を注いでいない)

 

 少し話がそれた気がするが、そんな池が布1枚の向こう側に本物がある状態の水着姿を見たらどうなるだろう?

 おそらく、いや絶対興奮するだろう。

 そして今日のことを想像し、眠れなくて早く登校する。

 そうなると、俺がその話に付き合わされそうな気がするし、そして女子からの冷たい視線をもらうことになる。

 

 この2つだけは避けたいため、思い付いたのがホームルームの時間ギリギリに教室に入ること。

 それを実行しようと、今から25分前に目覚まし時計をセットした気がするが、気付かず今の状況になってしまったということだ。

 

 俺は急いで身支度をし、部屋を出て階段で一気に1階まで降りる。

 そして寮のロビーを出て全速力を出そうとした瞬間、パンを咥えた少女と・・・・・・。

 ではなく、寮から出てすぐのところに女の子が俯いた状態で倒れていた。

 

(...。一応助けてあげるか)

 

 俺は女の子を助けるために、倒れているその子に近づく。

 

「大丈夫か?」

 

「・・・・・・大丈夫じゃないです・・・・・・」

 

 声からしてあまり元気がないようだ。

 怪我をしたとかだろうか。

 

「どこか怪我でもしたのか?」

 

「・・・・・・膝を擦りむきました・・・・・・」

 

 どこか知っていたような言葉を聞いて、心の中でため息をつく。

 

(うん、状況を整理しよう。

 まずこの子は寮から出てすぐのところで倒れている。

 普通なら1人ぐらい通りそうだが、今は朝のホームルーム3分前である。

 これで上級生であることはないだろう。

 そして膝を擦りむいたと言っている。

 ここから導き出せる答えは...)

 

「1年生であるお前は寝坊をして急いだのはいいが、寮を出てすぐにつまづいて転けてしまい、膝を擦りむいた、で合ってるか?」

 

「・・・・・・まあ・・・・・・そんなところです・・・・・・」

 

 俺の推測はだいたい当たっていたようだ。

 

(探偵でも目指そうかな。

 この推理力があれば、某探偵に勝てるかもしれない。

 そんな冗談はいいとして)

 

「いつまで倒れているんだ?遅刻するぞ」

 

「・・・・・・実は、朝ごはんを食べてなくて・・・・・・」

 

(えっ、それだけですか...?

 俺も食べてないけど、俺がおかしいのか...?

 いやいや、何度か朝ごはんを抜いたことはあるが、倒れたら起き上がれない状態になったことないぞ!

 もしかして、こいつが異常なのか?

 うん、絶対そうだ。

 それはいいとして、時間も時間だし、こいつは遅刻確定だろう。

 と言っても、俺も五分五分なところなんだが...。

 このまま放っておくのも可哀想だし、消毒とかして学校まで運んでやるか)

 

 とりあえず俺は倒れている女の子を仰向けにし、近くのベンチまで運んで怪我の具合を確認する。

 

(膝を擦りむいたと言って「いきなり何をするんですか!?」いたが本当に擦り傷だったとは...。

 必要な時に備えて、消毒液を持っておいてよかった...。

 あとは絆創膏か)

 

 俺は自分の鞄を漁り、消毒液と絆創膏を取り出した。

 

「染みるかもしれないが我慢してくれ」

 

「あっ、はい!」

 

 顔を真っ赤にした彼女の膝を消毒して、絆創膏を貼ってあげる。

 

(あとは学校までだが...。

 先生を呼ぶほどでもないしな。

 ここはあれしかないだろう)

 

「少し怖いかもしれないが我慢してくれ。あとは鞄をしっかり持っとけよ」

 

「えっ?」

 

 そう言った俺は、彼女を世間でお姫様抱っこと言われることをして全速力で走った。

 

「ちょ、ちょっと降ろして────ってはやいーーーーーー!」

 

 その間、何か言葉を発していたようだが、全て無視して走った甲斐もあり、数秒で学校の玄関まで着いた。

 

「やっ、やっと着いた・・・・・・」

 

(そう言っているけど、数秒だけだったぞ。

 今気づいたが、うずくまってる姿が可愛な...。

 ってそれよりまだチャイム鳴ってなかったよな!?)

 

 俺は急いで女の子を下ろして、靴を履き替える。

 

「もう今日みたいなヘマするなよ。俺は急いでるからじゃあな!」

 

 そう言って、急いで教室に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「よっしゃプールだ!」

 

 昼休みが終わり池がそう叫ぶと、池を含んだグループはプールへと向かい出す。

 俺は本城と一緒に、あのグループに混ざらないよう、少し離れて歩いている状態だ。

 

「すごく元気だね。池くんたち」

 

「そうだな・・・・・・」

 

「池くんたちと対照的に黒瀬くんは元気がないね・・・・・・」

 

 俺は現在進行形で元気がない。

 理由は簡単。

 女の子を下ろした後、急いで教室に向かったが途中でチャイムが鳴ってしまった。

 そして初めての遅刻をしてしまい、俺の元気はなくなってしまったのだ。1番後ろの廊下側だったからダメージは少しマシだが。

 

「遅刻したのが辛くてな・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・。朝来た時、いつもいるはずの黒瀬くんがいなかったから、まさかとは思ったけど、本当に遅刻するとは思ってもいなかったよ」

 

「ちょっと色々あってな・・・・・・」

 

 その後も、今日の朝にあった出来事を誤魔化しながら話していると、更衣室に辿り着く。

 中に入ると須藤が(水着に着替えるため)全裸だった。須藤はバスケをしているため、凄い肉体(筋肉)をしていた。

 須藤曰く、体育会系だから着替え1つで慌てないとか。

 俺も水泳の授業のために着替え始めた。

 

「そういえば、朝からメガネ付けてないけど大丈夫?」

 

 隣で着替えている本城がそんなことを聞いてきた。

 

「今日はコンタクトをしてるから大丈夫だ」

 

「そうなんだ。それにしても黒瀬くんって意外と筋肉あるんだね。特に腹筋とか」

 

 それを聞いて、少しイラッとする。

 

「意外とはなんだ。意外とは」

 

「普段の黒瀬くんは・・・・・・だいぶ細く見えるからかな?」

 

 本城の言っていることが本当なら、俺は着瘦せしやすいようだ。

 俺の視点では、須藤みたいな筋骨隆々とした身体ではなく、かなり引き締まった身体だと思っている。

 

「そうか」

 

 そう言って更衣室を出た。そしたら池が、

 

「意識しない男が居るかよ!・・・・・・勃ったらどうしよう・・・・・・」

 

 と言うのが聞こえてきた。

 多分女子についてだろうが俺の脳内では、更衣室に入った瞬間の出来事を合わせてしまい、

 

「(須藤の全裸を)意識しない男が居るかよ!・・・・・・勃ったらどうしよう・・・・・・」

 

 という歪曲をしてしまった。

 

(そうか、池はやっぱりそっち方面の人間なのか...)

 

 そんなことを思っていると二の腕辺りをつんつんされた。

 いや現在進行形でされている。

 

「おい」

 

「うん?」

 

「つんつんするのをやめてくれ」

 

「だめ?」

 

(こ、これが悩殺術、上目遣いというやつか!男なのに威力が高すぎる!それ以上に本城もそっち方面だとは知らなかったぜ...)

 

 男とは思えないほどの威力がある上目遣いのお願いに、無言で首を横に振ってしまった。

 それから腕を触ってくる本城を横目に、何故かまだ女子が出てきていないのに池が叫んでいる方を見ると、最終的に見学している女子にキモって言われる始末に。

 可哀想と一瞬思ったが、キモって言われて当然の行為をしていたので仕方がない。

 

(とりあえず、池に同情1割と軽蔑9割の視線を送っておこう)

 

 視線を池に送っていると、女子が更衣室から出てくるのが見えた。

 だが大抵の男子は騒ぐのではなく、視線を余所に逸らし始めた。

 

(生理現象ね。まあ、仕方ないか)

 

 女子の生々しい身体を見て、どこかのボルテージが上がってしまうのを避けるためだろう。

 もし最高潮まで達してしまえば、それは大惨事となり、3年間が辛いものと変わってしまう。まあ、俺には関係のないことだが。

 

(そんな中、綾小路は櫛田と綾小路のお隣さんと話しているようだな。

 頑張れ。

 高円寺は...凄いね!

 色んな意味で!)

 

 そんなことを思いながらいるとマッチョなおっさんが入って来て、

 

「よーしお前ら集合しろー」

 

 と集合をかけて授業を始めた。

 

 先生の話を聞いていると、授業の見学者は16人。

 先生いわく夏までに必ず泳げるようにしてくれるらしい。それと泳げるようにしておくと、必ず役に立つそうだ。

 

 先生の話が終わり準備体操を全員で始め、終わったら50Mほど流して泳ぐように指示をされた。泳げない人は底に足をつけてもいいらしい。

 軽く50Mを泳ぎ終わり、上で他の人が終わるのを待った。

 

「とりあえずほとんどの者が泳げるようだな」

 

「余裕っすよ先生。俺、中学の時は機敏なトビウオって呼ばれてましたから」

 

(機敏なトビウオってすげー)

 

「そうか。では早速だがこれから競争をする。男女別50M自由形だ」

 

 この競争では1位になれば、先生からの特別ボーナスとして5000ポイント、1番遅かったら補習になるというものだ。

 先生の言っていた実力を測るというのは、これが初めてな気がする。

 

 俺はこの競争で本来であれば、本気で泳ぎたくないのだが、今回は本気で泳ごうと思っている。

 それは須藤に運動ができることを知られてしまったからだ。

 経緯に関してだが、部活での賭け事は最初ボードゲーム部だけにする気だったが、1ヶ月で1000万ポイント貯まるのか試したくなった。

 それで、運動部にも行って勝負をしてポイントを稼ごうと思い、バスケ部に行った。

 その時に須藤に見つかってしまい、誤魔化すのもめんどくさかったので運動が大半できることを話したのだ。

 

 まあそんなことがあり、別に隠す意味もないし、いつかバレると思うので、運動は本気でやることにしたのだ。

 

 ちなみに賭け事で今行ったことがあるのは、ボードゲーム部とバスケ部とバレー部だけだが、5月までにはほとんどの部活に行こうと思っている。

 そこで1年にこのことが見つかるのは嫌なので、1回目は連絡先を交換して、2回目から賭けをする形でいこうと思っている。

 

 水泳の話に戻すが、現在女子がレースしている。

 第1組目は綾小路のお隣さんが1位で、第2組目はおそらく水泳部の子がぶっちぎりの1位だった。

 正直に言うと、周りの男子がもの凄く興奮しているので、もの凄くうるさい。

 

(チンパンジーか、お前ら)

 

 そして男子の番がまわってくる。

 俺は1組目なのでスタート台に向かうと、第3コースで隣には綾小路、その向こうには須藤がいた。

 

「おい黒瀬、絶対本気でやれよ!俺も本気でやるからよ!」

 

「分かった。本気でやるから覚悟しとけよ」

 

「おうよ!お前こそ覚悟しとけよな!」

 

 須藤に本気でやれと言われたので、本気でやろうじゃないか。

 先生の笛が鳴り、スタート台から飛び出した。

 スタートはやはり体格差もあり、須藤に先行されたのが見えるが、30M付近で隣にあった気配が後ろにいき、そのままゴールした。

 そして水面から顔を出す。

 

「23秒87・・・・・・」

 

 そんな先生の声が聞こえた。

 

「黒瀬、水泳部に入らないか?練習すれば全国も夢じゃないぞ」

 

「俺は部活をやらないと決めているので、すみません」

 

 先生の提案を断って、俺は陸に上がる。

 

「やっぱり黒瀬って運動出来るんだな」

 

 少しして須藤がそんなことを言ってきた。

 

「疑われてたのか、俺って?」

 

「そりゃー、バスケは凄く上手かったけどよ、運動してるイメージがないって言うか・・・・・・」

 

「それ分かるよ、須藤くん」

 

 うんうんと頷きながら本城が話に入ってきた。

 

「なんて言うか、池とかみたいな感じなんだよな」

 

「そうそう、平均ぐらいだと思ってたよ」

 

 着瘦せしやすいせいで、池と同じくらいだと思われてしまう羽目に。

 ちょっと失礼だが、あんなやつと同じにされるのは心外である。

 

「お前らは俺をいじめて楽しいのか・・・・・・。「きゃー!」うん?」

 

 女子から悲鳴が聞こえてきたのでそちらを見ると、イケメン平田くんがスタート台に立っていた。

 

「勝ち上がってきたら全力でたたき潰してやるぜ。この俺と黒瀬の全力をもってな」

 

(なんかものすごく物騒なこと言っていた気がする...。

 その中に俺も入ってた気が...気のせいだな。

 とりあえずレースを見よう)

 

 第2組は平田以外知らないが、平田が1位だったので特になし。

 第3組は本城と高円寺で、高円寺が23秒22というタイムを出していた。本城はギリギリ4位という結果に。

 

 合計3組の競争が終わり、タイムの上位5人の決勝戦が始まった。

 俺は第2コースで第1が高円寺と第3が須藤だ。他のコースは平田以外知らないのでパスで。

 

「私を本気にさせてくれよ、ブラックボーイ」

 

 隣にいた高円寺がそんなことを言ってきた。

 

(ブ、ブラックボーイ?

 少しこいつのネーミングセンスを疑いたい)

 

「俺は本気でやるとだけ言っておくぞ、高円寺」

 

 そして先生の笛が鳴り、水に飛び込む。

 

 やはりスタートでは体格的に大きい高円寺に先行されてしまうが、今回俺は先ほどよりもスタートが早くなっている。

 そのおかげで、20M付近のところで高円寺の隣に並ぶことに成功した。だが、並んだと思ったら少し離されてしまう。

 そこから並んでは離されてを繰り返し、45Mを超えたあたりで、俺は再び隣に並び1段階ギアを上げる。

 高円寺はここで速くなるとは思っていなかったようで、隣に並んだ俺は高円寺に離される前に先行し、そのままゴールした。

 

「さっきより1秒以上速くなっただと・・・・・・!」

 

「黒瀬すげえなー!」

 

「あの高円寺を抜くなんて・・・・・・!」

 

 そんな声を聞きながら、俺は上に上がった。

 

「黒瀬くん、1位なんて凄いよ!」

 

「黒瀬まじで速すぎだろ、って言うか1回目手抜いてただろ!?」

 

 あまりの変わりように、今にも殴りかかってきそうな勢いで須藤が詰めてくる。

 

(まじで変なことを言ったら、殴ってくる勢いなんだが...)

 

「1回目の時も本気だ。2回目は速いやつの泳ぎを真似てみたから速くなったんだ」

 

「お、おう」

 

 須藤を何とか説得出来てほっとしていると、高円寺がこっちに来た。

 高円寺が来た瞬間、須藤の顔がちょっと怖くなったけど。

 

「最後の最後で私を抜くとは流石だね、ブラックボーイ」

 

「いや、俺はただ賭けに勝っただけだ」

 

「それは違うね。君が私に勝ったというのが全てさ。それじゃあ、シーユー」

 

(...俺って名前を覚えられてるのか?)

 

 そんな疑問を残し、高円寺は去っていった。

 




今回最初に出てきた腹ぺこの女の子はオリキャラです。

ボキャ貧な私には高円寺は辛い・・・

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