ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第51話 体育祭の開幕

 いつの間にか迎えていた体育祭。

 今日は生徒全員が制服ではなくジャージという、今後も見る機会が多くなりそうな服装だ。

 全校生徒で行進をして、開会式とかいう長ったらしい言葉をただひたすら聞くことを終え、各々のクラスごとに設置されたテントに戻る。

 

「てめえら、事前に言っておいたことは必ず遂行しろ。命令違反したやつは分かってるよな?」

 

 テントに全員が揃えば、龍園はそう言って指の関節を鳴らす。

 それを見た数人が怯えているが、龍園から直接何か言われた人はそこまで多いわけじゃない。

 俺が知っている範囲だと、木下と伊吹と俺。

 他は全員に向けてだったのでノーカウントでいいだろう。

 ちなみに俺は『圧倒的な力を見せつけてやれ』としか言われていないので、そこそこ頑張りたいと思う。

 

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 1つ目の競技は100メートル走。

 最初にやるのは1年からと決まっており、途中の休憩までは男子から、休憩が終わってからは女子から始まるようになっている。

 

 俺たちは事前に龍園が言っていた通りの配置につく。

 俺は1組目で、運動出来ない組の野村(のむら)と一緒に走ることとなっている。

 

「てめえだけは絶対に潰す」

 

 そんな物騒な声が横から聞こえたと思ってそちらを向くと、そこには須藤がいた。

 どうやら同じ組のようだ。

 

「それなら全力で来い。そうじゃないと話にならないからな」

 

「上等だ、ごら!」

 

 軽く挑発をすると相当俺に怒っているのか、簡単に乗ってくれた。

 

(まあ、前からこんなんだったけどな)

 

 その様子を見ているDクラスの生徒は固唾を飲んでいた。

 それはそうだろう。

 1番最初に須藤を持ってきて勝たせることによって、後に走る者のやる気は確実に向上する。

 だが、今こうして1組目にいるのは須藤と俺。

 短い間だったが、須藤と俺が勝負して須藤が勝ったことは一度もない。

 俺と須藤はスタート位置でクラウチングスタートの態勢を取る。

 そして合図と共に俺は飛び出したが、思わずコケてしまう。

 

「「「ぷ・・・・・・!」」」

 

 後ろから笑い声が聞こえたが、俺は特に気にしていない。

 なぜなら、これは相手を油断させるため、普通に勝っては面白くないと思ってやったこと。

 つまりわざとコケたのだ。

 コケてから体内時計で1秒ロスしたところで、立ち上がりと共に一気に加速する。

 スタートからすでに3秒が経っているが、すぐに最下位を抜かし、残り10mのところで須藤との距離はほんの僅かに縮める。

 

「ッ!」

 

 後ろから迫ってきた俺に気付いた須藤は、更にスピードを上げようとしたが時すでに遅し。

 俺は須藤を抜かし、1mの近くの差をつけてゴールした。

 

「クソが!」

 

 ゴールした須藤は怒りを表しており、それに巻き込まれたくないため、足早に自クラスのテントに戻ったのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「クク、序盤からいい滑り出しじゃねえか」

 

「そうだな」

 

 男子の100メートルが終わり、テントの中でゆったりしていると、いつの間にか横にいた龍園に話しかけられた。

 男子は龍園の言っている通り、かなり良かった。

 特に運動出来ない組は誰も最下位にならず、3位を取ったやつはいないがかなり頑張っているなと思う。

 そのおかげで総合点は4クラス中2位という結果だ。(脳内で点数を数えてた)

 

「それにしてもあのコケっぷりは良かったな。流石の俺でも笑っちまったぜ」

 

 龍園の横にいたアルベルトは龍園の言ったことに首を縦に振る。

 

(あのアルベルトが笑った...だと...。

 その姿、めちゃくちゃ見たかったんだけど...)

 

「須藤がお前に負けて悔しがっているのも見れて、俺は満足してるぜ」

 

「それは良かった」

 

 そう言って、女子の100メートルがどうなってるのか気になったので見てみると、どうやらそれがこの競技のラストのようだ。

 

「伊吹にひより、堀北に七詩か・・・・・・」

 

(この中で1番気になるのは七詩。

 あいつがもし、俺の予想通りならダークホースだろう...)

 

 あの組には坂柳が入っているようで、7人しかあの場にはいない。

 全員がスタートの準備をし、スタートの合図で同時に駆け出す。

 

 スタートダッシュで先頭に立ったのは伊吹。

 そのすぐ後ろには七詩が迫っていた。

 堀北はスタートで出遅れたが、負けじと食らいつく。

 中盤になっても、伊吹の位置は変わらず、七詩と堀北はほぼ横並びで伊吹の後ろにつく形になっている。

 残りもう少しというところで、伊吹のスピードが上がる。

 それはかなりのもので、同じくスピードを上げた堀北をゆっくりとだが離してはいた。

 だが、後ろからそれ以上の加速で伊吹を抜かしたのは七詩だった。

 七詩に食らいつこうと伊吹のスピードは更に加速するが、順位は変わらず堀北は3位で、ひよりは4位という形でゴールした。

 

「クク、あいつは流石に盲点だったぜ」

 

「俺もあそこまでとは思ってなかったな・・・・・・」

 

(伊吹のあの加速はかなりのものだ。

 あれを抜かすのは女性より力のある男性でも難しい。

 だが、七詩はあの加速を超える速さを持っていた。

 それにゴールした後を見ても、肩で息をしている感じではない。

 俺が言うのもなんだが、かなり化け物じみてるな...)

 

 再度ゴールの方を見ると、堀北には勝ったが1位を取ることを出来なかった伊吹は悔しそうに地面を蹴っていた。

 堀北もここまで相手が速かったと思っていなかったのか、悔しがっているように見える。

 その隣でそれを気にしていないのか分からないが、ひよりは4位を取れて嬉しそうにしている。

 

「Cクラスも隅には置けねえな」

 

「俺には実力者が集まっていてもそれをまとめるリーダーがいない。いいところまで行ったとしてもBクラスで止まるだろう。だから、そこまで気にすることはない」

 

 俺はそう言ったが、正直怖かったりする。

 

(BクラスとAクラスには明確なリーダーがいる。

 実力を認められて、それについて行きたいと思う人がいてクラスが成り立っている。

 だが、Cクラスと一応Dクラスにはそう言ったリーダーがいない。

 前に出ているやつはいるが、クラスメイト全員の意見を聞いている状態。

 そのうちDクラスには出てきそうだが、Cクラスにはその兆しがない。

 

 だからこそ怖いのだ。

 リーダーがいるクラスはそいつを知っていれば、対策が可能だからそこまで怖くない。

 だが、リーダーがいないCクラスは皆の意見を聞き、ほとんどの人が賛成している状態で挑んでくる。

 崩そうにも崩せない。

 安定しているクラスと言える。

 まあ、攻めに問題を抱えているのは明白だけど、Bクラスとの小競り合いのせいでAクラスに上がられる可能性だってある。

 視野は広く持っておくか。

 広くしたら、他クラスの動きもしっかり見れるし)

 

 そんなことを考えていると、先ほど激闘繰り広げていた伊吹とひよりが帰って来た。

 

「私やりましたよ!黒瀬くん!」

 

 ひよりはこちらに来て嬉しそうに報告してきた。

 それも体をぴょんぴょんさせるほど。

 

(可愛いな)

 

「よく頑張ったな」

 

「あのひよりが4位を取ったなんて・・・・・・。ありがとうございます、黒瀬さん」

 

 近くで聞いていた石崎はこちらに来るなり、ちょっと泣きそうになっていた。

 

(どれだけ心配してたんだ...。石崎はあれか、ひよりの親か?)

 

「こんなところで泣きそうになってどうする・・・・・・体育祭は始まったばっかりだぞ・・・・・・」

 

 俺も言うまで忘れかけていたが、体育祭は先ほど始まったばかりだ。

 こんなところで泣きそうになっていたら、後で大泣きするかもしれない。

 

「そうですね・・・・・・ひより、頑張れよ!」

 

「はい!頑張るので、しっかり見といてください!」

 

 やる気満々なのはいいが、それで怪我をしないことを祈りたい。

 俺はひよりの相手を石崎に任せ、1人でいる伊吹のところへ行く。

 色々と教えた立場として、労いの言葉を言うのは普通だろう。

 

「お疲れ様、伊吹。堀北に勝てて良かったな」

 

「何?嫌味のつもり?」

 

 意図して言ったわけじゃないが、伊吹には嫌味に聞こえたようだ。

 

「そう聞こえたのならすまんな。それでどうだ?堀北と戦った感想は?」

 

「正直相手にならなかった。黒瀬のおかげでもあるし、一応感謝だけしとく」

 

 無愛想だが、伊吹から感謝されるなのは何か心に来る。

 

(やったことと言えば、走った時に相手をよく向いてたから直せとしかぐらい。

 それだけで感謝されて刺さるとは...。

 いや、もしかして名前呼んでもらったからか!

 俺氏、乙女なのかもしれない...)

 

「べ、別に感謝されても嬉しくないんだからね!」

 

「何言ってんの?」

 

(グハッ!)

 

 乙女説を立証させるために、ツンデレっぽくボケたら真顔で言われたので、かなりのダメージを受けてしまった。

 何も聞かされてもいないのに、それを察するなど出来ないことは分かっていたのに。

 

「何も用がないならどっか行くけど」

 

「もう何もないです・・・・・・」

 

「そ」

 

 そう言って伊吹はどこかへ行ってしまった。

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