ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第53話 揺れるユレル

『合計60個で、白組の勝利です』

 

 1年男子が綱引きの準備している中、行なわれていた1年女子の玉入れは白組が勝利を収めていた。

 あれを見た誰もが、白組が勝って当然と言う勝負だった。

 

(赤組はAクラスが真面目にやってなかったからな...。

 ボールは拾っては玉入れのかごより遠くを狙う。

 そのせいで、Dクラスの女子たちがボールを集めるのに一苦労していて少し可哀想に見えた。

 あと、おれが女子の揺れる胸に興奮してたわ)

 

(「あれは仕方ねえだろ!あんなに揺れてたら誰だって興奮する!って、そういえばお前、そういうのに興味ないんだったな」)

 

 などとふざけたことを言っているが、俺は女性の胸に対して興味はある。

 

(どれほど弾力があるのかとか揺らされた胸と揺れる胸の違いとか、あとよくラノベで見かけた『でかいと肩を凝る』とか『でかいと水に浮く』とか...。

 色々と気になることがある)

 

(「自分で解決出来ることを・・・・・・」)

 

 おれがそう言った時に、1年生男子が審判に呼ばれ綱引きの説明がされる。

 ルールは単純で先に2点取った方が勝ちというものだ。

 

 グラウンドの真ん中に集められた俺らは、2つの組ごとに分かれる。

 

「お前ら、事前に言った通りに並びやがれ」

 

 Dクラスとしっかり話をして決めたのかと思ったが、すぐに須藤が嚙み付いていたのでAクラスの独断で決めたことのようだ。

 それに何やら、Bクラスの方も揉めているみたいだ。

 おそらく坂柳が仕組んだことだろう。

 

 結局、審判の教師がこちらに来ることになり、それを見た平田がこちらのことを聞いてくれるということになった。

 Dクラスが前、俺たちAクラスが後ろで並ぶこととなった。

 

 俺は今回、一番後ろで重要な役割を担っている。

 それはDクラスとアルベルト、龍園、石崎、小宮、近藤で足りない力を調整して、均衡にするというものだ。

 他のやつは綱を引くふりをしてるだけでいいらしい。

 

(何故俺がやることになったかと言うと、先ほどの棒倒しがきっかけになって、本来なら数人のクラスメイトでやることを俺1人がやることになった。

 ちなみに、3回戦までやってこちら側が勝利しなければならない。

 出来なかったらポイントを全額没収されるという横暴さ。

 多分出来ると思うけど...)

 

 試合開始の合図と共に俺たちは綱を引く。

 最初少し前に行ったが、俺が本気で綱を引くことによって少しずつ後ろに下がっていく。

 

(ここぐらいか?

 真ん中がいまいち分からないせいで、どこまで引けばいいのか全く分からん...)

 

(「がんば!がんば!」)

 

 脳内でおれが応援している中、綱の中心がおそらく始まったところに戻ったと思ったので、力を少し抜いて綱を固定させた。

 

「お前ら、しっかり引きやがれ!」

 

「引いてるけど全く動かないんだよ!」

 

 そのままの状態で時間切れとなったのか、審判が合図を出してこちら側が勝利したことを告げる。

 

「ふぅ・・・・・・これをあと2回とかきつすぎる・・・・・・」

 

(「それに、左腕に負荷が掛かって危ない状態とみた。このままだと3回戦目で左腕をやるぞ」)

 

 親切におれが忠告してくれたが、だからといって手を抜くことは出来ない。

 こちらはポイントが関わっているのだ。

 それに、利き手じゃないからと言って左手をあまり鍛えていなかった俺の落ち度でもある。

 

(左腕だけで済むならマシだ。それに修復しないわけじゃないし)

 

(「腕が取れかけたときよりもよっぽどマシかもしれないが、この後の競技に支障が出るぞ?」)

 

 本当に先ほど興奮していたやつとは思えないほど心配してくるが、これは俺自身との戦いである。

 

(俺は絶対に負けない。

 勝ってみせるんだ!)

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「・・・・・・それで上腕二頭筋腱断裂を起こしたと」

 

「はい・・・・・・」

 

 目の前に座っている保健室にいた先生が怒り気味に聞いてきたので、それに答える。

 

 あの後にあった2回戦は負け、3回戦が始まり少しすると、バツン!という大きな音をたてて左上腕二頭筋が断裂した。

 その音が聞こえた龍園がクラスメイトに命令を飛ばし、何とか勝利することが出来た。

 勝った後、俺は何食わぬ顔でテントに戻ろうとしたら、龍園の命令で動いたアルベルトに保健室へ連れていかれて現在に至る。

 

「あざも出来てるし、筋肉が縮こまってこぶが出来てるじゃない!もっと自分の体を大切にしなさい!」

 

 痺れを切らしたのか、俺の肩を掴み揺らして、俺の母親かよってツッコミたくなるぐらい怒ってきた。

 こっちは怪我人なのに更に怪我が増えそうだ。

 

(「目の前で揺れてるぞ、胸が!でかい!そして顔も美人!この人こそ運命の人だ!告白しろ!」)

 

 こちらは顔があるなら、血眼で見てそうな勢いで興奮している。

 板挟み状態のところへ追い打ちをかけるかのように、第三勢力が押し寄せてきた。

 

(や、やばい...吐きそう...マーライオンになる...)

 

 保健室の先生に肩を揺らされているせいで、吐き気が催してきたのだ。

 右手で口を抑えながら、何とか我慢する。

 

(「そのまま先生にかけちまえ!ぶっかけろ!」)

 

 一瞬卑猥な言葉に聞こえたが、それをつっこむほど元気がない。

 

「せ、先生・・・・・・早く止めて・・・・・・吐きそう・・・・・・」

 

 声を出して止めようと試みるが、全く聞いてもらえない。

 

(ここは強行手段をとるしか...。すまん、先生)

 

 俺は先生の眉間にめがけてデコピンを繰り出す。

 威力はかなり抑えて跡が残らないように調整した、はず。

 

「いたぁい・・・・・・!先生に向かって何するのよ・・・・・・!」

 

 先生はデコピンを食らい、涙目になりながら眉間に両手を当てる。

 そのおかげで拘束が解かれた。

 

(この人、怒ったと思ったら泣くし。

 感情の隆起が激しいというか、豊富だな...。

 それより気分悪い...)

 

 弁解をする前に、保健室にある洗面台で溜まったものを吐くことにした。

 

「オエェェ・・・・・・」

 

「だ、大丈夫?」

 

「・・・・・・大丈夫です」

 

 先生が心配してきたが、吐いたおかげでかなりマシになった。

 

(この体が難儀すぎる...。

 外から揺らされただけで気分が悪くなるなんて...。

 あいつらまじで許さんと言いたいが、回復速度が早いのもあいつらのおかげだから何とも言えない...)

 

 先ほどまで座っていた椅子へと座り直し、先生と対面する。

 それを見た先生は咳払いをして、こちらに聞いてくる。

 

「先ほど私に向かってデコピンをしましたが、なぜですか?」

 

「俺はもの凄く酔いやすい体質なので。もしあのままだったら、先生に向かって吐いていたと思いますよ」

 

「えぇー・・・・・・」

 

 それを聞いた先生は体を後ろに引くほど不快感を露にする。

 

(「引かれてやんのー」)

 

(本当のことを言っただけなんだが...。

 それより治療を)

 

 そんな様子をよそに、俺は怪我をした部分を先生に見せる。

 

「とりあえず治療をお願いしてもいいですか」

 

「え、ええ。そうでしたね。キネシオテープを貼るので待ってください」

 

 先生は棚の中からキネシオテープを取り、俺の左腕に貼っていく。

 

「はい、終わりましたよ」

 

 先生の手際はよく、いつの間にか貼り終わっていた。

 感謝を述べて立ち去ろうとして先生の方を見ると、何故か涙を目に浮かべていた。

 

(「やーい、やーい。俺が泣かせやがったー。先生に言いつけるぞー」)

 

(おかしい...。

 この人おかしすぎる...。

 情緒不安定すぎるだろ...)

 

 おれの言葉は放置するとして、この先生をどうにかしないといけない。

 このままだと、ここへ入ってきた人に誤解を招いてしまう。

 それだけは絶対に避けたい。

 

「あ、あのー・・・・・・大丈夫ですか・・・・・・?」

 

「あ・・・・・・すいません。私の知っている子がもし成長していたら、黒瀬くんぐらいだったので。それにその子が黒瀬くんに凄く似ていたので重なったのかもしれません」

 

 それを聞いて腑に落ちない点はあるが、おおよそのことは理解した。

 

(先生の知っている子は俺と同年代で、今は亡くなってしまっているんだな...。

 それも俺に似てるなんてきたら泣きたくなる...のか?)

 

(「うぅ・・・・・・なんて泣ける話なんだ・・・・・・」)

 

 おれが泣いてるから、先生が泣いてしまうのは仕方がないことだろう。多分。

 だが、こちらも急がないといけない。

 

「そうですか・・・・・・治療をして頂きありがとうございます。それでは」

 

「あ、競技のほうはどうしますか?普通ならその腕での参加は認められませんが」

 

 至極当然のことを言われたが、クラスのため、個人競技だけでも出ておきたいのだ。

 

「個人競技だけでも出させてください。お願いします」

 

 俺は頭を下げて、先生にお願いする。

 それを見た先生は驚きながらも少し考える仕草をしてこう言う。

 

「私に免じて競技に出ることを認めましょう。ただし、無茶だけは絶対にしないで下さい。問われるのは私の方なので」

 

「ありがとうございます」

 

 もう一度頭を下げて、保健室を後にした。

 

 




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