昼休憩になりAクラスの大半の生徒は、1ヶ所の場所に集まって昼食を取っている。
「うーん!美味しい!」
「ポイント払って正解だったぜ」
「それな!」
「うますぎて泣けてきた・・・・・・」
「それは大袈裟すぎるが、確かにうまい」
各々が感想を述べながら食べているのは、龍園に言われ俺が前日に気合を入れて作ったおかずたちだ。
どれも1から作っており、高い食材を出来るだけ使っているため、かなりの時間とポイントを使ってしまったが、こうやって喜んでもらえるとそこまでした甲斐があったなと実感できる。
「何かしらの薬剤でも入っていると思ってたけど、普通に美味しいとはね・・・・・・」
「だから言っただろ、うまいって」
「口に含みながら喋んないで」
口におかずを含みながら話す石崎を、隣にいた伊吹が睨んでいた。
俺はそんな光景を少し離れたところで見ていた。
(なんだかんだ言って、伊吹は集団がダメじゃないんだな)
(「目を向けられるのが嫌なだけだろ。夏休みにプールへ行ったことを忘れてんのか?」)
(あんまり遊んでなかったから忘れてた...。
あ、そう言えば扇先輩はAクラスだったんだな)
(「あの人ならAクラスでもおかしくないだろ。逆にAクラスじゃねえ方がおかしいわ」)
おれにそう言われて、確かにと思う。
あの先輩は出会った時から俺の一歩前を歩いていて、兄には劣るが何をしても出来てしまう完璧な人間だ。
今は俺の方が前にいると思うが、それでもそこまで差が開いているとは思えない。
(「学年もちげえーし、直接戦うことなんてそうそうねえだろ。気にする暇があるなら、飯でも食いやがれ」)
(そうだな)
俺も昼食を食べている輪へと入り、自分の料理を美味しく頂いた。
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チャイムが鳴り、体育祭午後の部が始まる。
残された競技は全て推薦参加競技となっており、一部の生徒にとっては関係ないことだろうが、俺は全てに参加させられているので午前と変わらずにやろうと思っている。
1番最初は各クラス6人ずつ参加する借り物競争。俺がこの体育祭で1番やりたくない競技だ。
ルールはくじを引いて、そこに書かれているお題の物を持って来るという一般的なもの。お題の中には難しいものもあり、変更する場合はくじの近くにいる審判に申し出ることでできる。だが、それには30秒の待機が要求されるため、1位を目指すのは難しくなるだろう。
説明が終わり、2レース目に出るための準備をしていると、横に綾小路がやって来た。
「久しぶりだな」
「こうやって話すのは船の上以来になるな」
「夏休みに一度話したが・・・・・・」
「あ、すまん」
どうやら、俺の脳内から夏休み中の記憶が一部消えているようで、綾小路と会っていたことを忘れていた。
(「いよいよ老化でも始まったか?」)
(それはない。
老化が始まったら、もっと記憶が消えててもおかしくないだろ)
(「それもそうか」)
「そろそろオレたちの番じゃないか?」
綾小路に言われたことに現実へと戻されゴール方面を見ると、1レース目の池がゴールをしていた。
そうなると、そろそろ2レース目が始まるところだろう。
「そうだな。お互い頑張ろう」
「ああ」
池がゴールしてから他の2クラスもゴールし、俺たちのレースがすぐに始まる。
俺よりスタートが速いやつはおらず、1番最初にくじ引きの場所につく。
置かれている箱に手をいれて、中に入っている複数の紙の中から1つを取り出す。
それは4つ折りにされており、開くとお題が書かれていた。
『眼鏡で巨乳の超絶可愛い女の子を連れてくること』
「これ書いたやつ、くたばれや!」
(え、何これ?
これ書いたやつの性癖とか?
そんなものを借り物競争に加えんな!)
お題にイラついてしまい、書かれた紙を思いっきり地面に投げつけてしまった。
「・・・・・・噓だろ」
俺の後にくじを引いていた綾小路も嘆いていた。
俺と同じでお題が意味不明だったんだろう。
イラついても仕方が無いのでルールに則り、審判に変更を申し込んで30秒後に再度くじを引く。
その間にも、BとCクラスはお題のものを探していた。
(次は簡単なやつをお願いします!)
『ネコ耳カチューシャを持っている人』
(そんなやつはこの学校に絶対いねえよ!
てか何?
これ書いたやつ、自分の性癖を暴露したいの?
それとも遊び半分?
とりあえずくたばれ!)
(「俺の運悪すぎだろ!おもしれえ!」)
脳内でおれにゲラゲラ笑われながら、もう一度変更を申し込んでくじを引く。
綾小路も俺と同じで変更を申し込んでいた。
『メイド服を着ていて汚物を見るような目で見てくれる女の子』
(ついに本性表したよこいつ...。
てか、これ絶対無理じゃん。
メイド服の時点でいないし、更に絞ってくるとか...。
もはや鬼畜)
(「やば・・・・・・!笑いすぎて死にそう・・・・・・!」)
自クラスから困惑している声が聞こえてきているが、もう一度変更を申し込みくじを引く。
その間に綾小路は見つけられそうなお題が出て来たのか、くじ引き場から離れていた。
(頼む!せめて見つかるものでも!)
『好きな人』
(なんでよりによってこんなやつなんだよ...。
だが仕方ない。
背に腹は代えられぬ!
1番近くにいて、俺と話したことのあるやつを連れていく!)
周りを見渡して、近くにいる知り合いを探す。
幸いにも、近くに七詩がいたので頼むことにした。
「お願いします七詩さん。黙ってゴールまで来てほしいんですが」
「え、えーっと・・・・・・借り物競争のお題に私が当てはまったってことかな?」
いつもと違う言葉遣いに困惑する七詩だが、こちらの意図を理解してくれたようだ。
「そうでございます七詩様。ささ、早くゴールまで行きましょう」
「何か変だけど分かった。一緒についていくよ」
俺の頼み込みが功を成したのか、はたまた別の理由なのかは知らないが、何とかお題をクリアすることが出来た。
(何か分かりやすい方法を取った方がいいだろう)
七詩の左手を手に取り、ゴールまで行く。
行くまでに、たくさんの生徒から冷やかされたが気にすることではない。
ゴールすると、既にBとCクラスはゴールしており結果は3位となってしまった。
(何とか最下位は免れた...あとは適当に誤魔化せばいけるだろ)
「あ、あのー・・・・・・手を・・・・・・」
声のした方を見ると、顔を赤くした七詩がいた。
(俺はいいとして、お題のために手を取ったのはやってしまったな...。
早めに謝っておかないと)
「それは悪かった」
俺は握っていた七詩の手をゆっくり離す。
その時の七詩の表情は少し名残惜しそうにしていた。
「そ、それで、どんなお題、だったんですか?」
何故かかなり動揺して改まっている七詩は新鮮味があっていいなと思ってしまう。
「お題は『可愛い女の子』だ」
「!!そ、そうだったんだね!」
「俺が思うにかなり可愛い七詩が近くにいて助かった。感謝する」
「そ、そんな可愛いだなんてー・・・・・・」
「うん?」
感謝の言葉を言っただけなのに、七詩は両手を頬につけて俯いてしまった。
(流石に俺でも分からん)
(「わー。無自覚ってこわーい」)
今回に関しては、おれが言っていることが全く分からない。
無自覚で俺が何かをしたのかもしれないが、それでも覚えているはずだ。
(...全く分からん。
とりあえず、女の子の心の中は読めないってことが分かった)
(「・・・・・・やっぱ俺って馬鹿だな」)
(今回だけは認めてやる...)
悔しいが今回だけは認めるしかない。
それぐらい俺は分からないのだ。
(これからしっかり、女の子の心の中を勉強していこう)
そんなことを心に決めて、七詩をCクラスのテントに返し自クラスの所に帰った。
お題のところは作者の趣味じゃないですよ。単純に思い付いたのを書いたので