9月18日に日付が変わった時、
「ハッピーバースデー!俺!」
自分でクッラカーを鳴らして、自分の誕生日を祝った。
もちろん1人で。
「1年間頑張ったご褒美に、我々から人をダメにするクッションを贈呈する」
「わぁ、ありがとう!」
自分で買ってきたクッションを自分で手に取り、それを抱え込む。
「そんなに喜んでもらえるとは・・・・・・。わたくし、泣けてきましたわ・・・・・・」
「べ、別にあんたのために買ってきたんじゃないんだからね!そこだけは、絶対に勘違いしないでよね!」
「お兄様に喜んでいただけて、私はとても嬉しいです・・・・・・」
「お前に喜んでもらえて俺は嬉しいぜ」
「ふっ、喜んでもらえることなど、俺が選んだ時点で決まっている!」
「君が喜んでくれて、僕は嬉しい」
1つ1つ動作を変えながら、役を作っていく。
もちろん1人で。
「ささ、それを早速使ってみてはどうでしょうか?」
「うむ、それはそれは良い提案じゃな。では」
「よっこいしょういち」
「・・・・・・ああー・・・・・・これ、ダメなやつだ・・・・・・」
クッションに座ってみて直ぐに分かる。
これは人が沼に落ちた時の感覚だ。
「この包み込まれる感じ、たまらねえぜ・・・・・・」
人はその生命が誕生した時、母体の中にいる時から包まれている。
それは人肌を感じたりすると暖かくなったり、気が緩んでしまいがちであることの証明になるんじゃないかと思う。
全人類に当てはまり、人以外の動物にも当てはまるものがいる。
つまり、この商品は世界最強の兵器ということだ。
(まあ核とかに比べたら全然だけど、人を殺さずに済むという点では最強かもしれない...。
いや、ゴムの方が強いか...あ)
そんなことを思っていると、1つのことを思い出した。
それはクローゼットに仕舞って置いて、捨てるのを毎回忘れている避妊具のことだ。
家に置いておいても問題はないが、使うわけでもないものをずっと置いておくのは後々面倒なことになる。
俺は今までで1番重い腰を上げ、クローゼットから避妊具を取って燃えないゴミに捨てる。
(前から思っていたが、最初に置いていた場所から少し動いていたような...。
まあ、誰もクローゼットなんて見てないだろうからいいか)
そんな杞憂が本当にあったことを知らない俺は再度クッションに座り眠った。
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「ああー、いてえ・・・・・・」
「大丈夫ですか黒瀬さん?朝からそんな調子ですけど」
今日の授業が終わり皆が帰る中、一緒に帰るためにこちらへやって来た石崎が心配してくる。
「昨日買った枕が合わなくて首が痛くてな・・・・・・」
「俺は枕をこだわったりしないので分からないですが、それは痛そうですね・・・・・・」
本当は噓で、枕ではなくあのクッションで寝てしまったせいで首を痛めてしまったのだ。
(あれはしっかり使わないといけないやつだな...。
これからは気を付けないと)
「とりあえず帰るか」
「そうですね」
俺たちはカバンを持って校舎から自分たちの部屋へ戻る。
(誕生日と言ってもやることないな...。
俺の誕生日を知ってる友達はいないし、かと言って今日誕生日なんだよアピールするには遅い。
つまり、いつもの平日と変わらないということだ)
誕生日だからと言って、何か特別なことをしなければならないというのはない。
ワイワイ騒いで1日を過ごすのも、1人で普段やらないことをやるのも、普段と変わらない生活を送るのも、それは人それぞれなのだ。
大人数でいるのが嫌な人や1人が嫌な人もいる。
だから俺はこう言いたい。
(誰か1人でもいいから祝ってほしかった...)
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後日ポストを確認してみると小包みが入っており、中には扇子と手紙が入っていた。
手紙の内容は『誕生日おめでとう。俺は今年で卒業してしまうが、お前はまだ2年以上ある。残りの学校生活、存分に楽しめよ マサより』だった。
(すっかり扇先輩の存在を忘れてたわ...。
ごめんなさい先輩)
心の中でそう謝る俺であった。
クッションの購入日問題で50話の修正をしました。
次回から6章いきます。