ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第62話 崩れていた日常

 あの後、誰かが俺に接触してくると予想していたが、その予想は外れ普通に寮へと帰ることが出来た。

 

(それはそうだよな。

 Xに負けたのは龍園であって、クラスには何も影響を与えていない。

 むしろ、Xがいる状態でCクラスからAクラスまで上がっているのだから、俺たちには関係ないとか思ってそう...。

 俺からしたらこの状態はかなり危ないとしか思えないが。

 やはり一度痛い目に遭うのが一番だろう)

 

 適当に空いたスペースに座り込んで、今回の試験について考える。

 

「さて、どうしたものか・・・・・・」

 

 俺が今回描いている構図はAクラス対Dクラスの直接対決だ。

 

(今回はAクラスがDクラスに負けるのが絶対条件。

 ここで負けることによって今後の向上心に繋がってくるだろうし、何より誰かさんの計画を邪魔ことができる。

 それが出来るがAクラス対Dクラスであって、他のクラスとだと誰かさんは動かないかもしれないし、面白い結果にもならない)

 

 AクラスがDクラスを狙うことは決まっているし、DクラスがAクラスを狙うことは分かり切っている。

 そうなると残りはBクラスとCクラスをどうにかしてぶつけるということ。

 これが1番の難しいと言っても過言ではない。

 

(Cクラスは坂柳に頼めばBクラスを狙ってくれるだろうが、Bクラスはかなり難しい。

 一之瀬や七詩に言ったとしても神崎が反対する可能性しかないし、そもそもBクラスにCクラスを狙うメリットがそこまでない。

 なぜなら学力ではCクラスの方が軍配は上がるし、Aクラスを狙えば確実に差を縮められる。

 それにこんなチャンスを捨てるようなクラスじゃないからな...。

 どうすればいいのか全く分からん)

 

 Aクラスは今回の試験で絶対に負けると言っても、Bクラスが信じてくれないだろう。

 

(やはり賭けに出るしかないのか?

 そうすれば半分の確率で俺の描いているものになるが、その逆もまた有り得る。

 次の試験がいつ行われてどんな内容なのか、それが分かっていない状態でこの好機を捨てるのは勿体ない...。

 いや待て。

 俺が今回で1番の目的は誰かさんの計画を邪魔をすること。

 最悪、誰かさんが何もしなければそれでいい。

 これさえ出来れば面白くない結果以外はどうでもいい。

 どの道Aクラスが負けることは確定しているのだからな)

 

 とはいえBクラスが攻撃してくるとなった時、負けるのをただただ傍観するのは面白くない。

 ここは全クラスを巻き込んで少し遊んでみるのもいいかもしれない。

 

「そう思うとBクラスが狙ってくれると嬉しいなぁ」

 

(「とか言って、Dクラスになったとしてもやるだろ」)

 

「当たり前だ」

 

(「そ。あ、今日は無料商品を買いに行く日じゃね?」)

 

 短く返事をしたおれは、思い出したかのように聞いてくる。

 

「そういえば忘れていた」

 

 試験のことや裏切り者のことなどで忘れていたが、今日は無料商品を買いに行く日である。

 俺は久しぶりに綾小路へと連絡をして外へ出かけた。

 

-----------------------------

 

 制服のままでスーパーの前にいると、俺と同じく制服の綾小路がやって来た。

 

「体育祭で会っているが、こうやって綾小路と会うのも久しぶりだな」

 

「船の上以来か?」

 

「そうだな」

 

 綾小路が横に来たのを確認してスーパーの中へと入る。

 出入口でしっかりとカゴを取って。

 野菜コーナーをまわりながら、最近のDクラスについて尋ねてみる。

 

「最近のDクラスはどうなんだ?」

 

「Dクラスとは思えないほど気力がないな」

 

 流石にクラスポイントが0になってしまったら、やる気を出そうにも出せないだろう。

 綾小路はだがと付け加えて話を続ける。

 

「だが、堀北や須藤の成長は見られたな」

 

 どうやら、俺の見た通りと堀北と須藤に成長が見られたようだ。

 そう話した綾小路はこちらのことも聞いてくる。

 

「Aクラスの方はどうなんだ?」

 

「向かうところ敵なしってのが定着してるな。そのせいでほとんどが危機感を持っていない」

 

「Dクラスとは違う意味で同じだな」

 

 今回の試験が発表された時もほとんどのやつがいつもと変わらない。

 今のAクラスには油断大敵というのがよく似合う。

 

「あと言うなら、龍園がDクラスの裏で動くお前を探し始めたぞ」

 

「そうか。それで黒瀬は参加するのか?」

 

 龍園が動きだしたことには興味を持たず、俺が参加するかどうかを聞いてきた。

 これを本人が聞いていたらキレるなと思いながら、現状考えていることを伝える。

 

「暇だったら参加するって感じだ。相見える時はよろしく頼む」

 

「お手柔らかに頼む」

 

 船の上で言葉を交わした時はもう少し血の気に溢れていたが、今はいつもの綾小路と変わらない。

 あの時は頭に血でも昇っていたんだろうか。

 カゴの中に商品を数点入れ、最後に無料の商品が置かれているコーナーまで行く。

 狙いは特にないが、ここは安定して「豚バラ肉 300g」を取ることにした。

 

(あれ、これってデジャヴなのでは?)

 気づいた時にはもう遅し。

 俺が商品に触れた時、俺の横にいつの間にかいた七詩も同じ商品に触れていた。

 

「ふふふ、まさかあの時と同じシチュエーションで会うとは」

 

「それほど気が合うのかもしれないな」

 

 微笑んでくる七詩を見ると、ついつい口角が上がってしまった。

 

「黒瀬」

 

 手を引っ込め綾小路の方を見ると、七詩のことを知らないからか、目で誰なのか聞いてくる。

 

「ああすまん。こいつはBクラスの七詩だ」

 

「七詩蒼です。よろしくお願いします」

 

「綾小路です」

 

 律儀に礼をする七詩を見習って、綾小路も礼をする。

 それを見た七詩は何かを思いだしたようで、こちらに耳打ちをしてくる。

 

「綾小路くんって、Dクラスの足速い人だよね?」

 

「そうだが」

 

「初めて会ったけど、何か掴みづらいというか・・・・・・」

 

「それは分かるぞ」

 

 初対面の人にそんなことを言うのは失礼だが、綾小路は本当に掴みづらいから同意しか出来なかった。

 

「いきなり会った人にそういうことを言うのは酷くないか?」

 

 割と声が大きかったようで、綾小路に全てを聞かれていた。

 

「事実だから許せ、綾小路」

 

「それはそれで傷つくんだが・・・・・・」

 

「ふふふ、黒瀬くんと綾小路くんは仲が良いんですね」

 

 軽いやり取りを見ていた七詩が微笑みながらそんなことを言ってきた。

 

「綾小路がどう思っているのか分からんが、そこそこの仲だとは思っている」

 

 俺を何と認識しているのか全く分からないため、こう言うしかない。

 少し似ているから波長が合うのかもしれないが。

 

「俺もそう思っている」

 

 綾小路も同意見のようだが、「そこそこ」という曖昧さがあるためどちらとも思えない。

 俺が先に使っておいてだが。

 

「そうなんですね。あ、私はまだ買い物があるのでこれで。黒瀬くんはポイントを多く持っていると思うので貰っていきますね」

 

 そう言って手を振りながら、去り際に平然と取っていく七詩。

 それを見て俺は苦笑いする。

 

「黒瀬は七詩といる時は感情豊かになるんだな」

 

「最近の俺は何時もこんな感じだが」

 

「そうだったのか。それは知らなかった」

 

 いくつかの無料の商品を俺と綾小路のカゴに入れ、会計を済ませて外に出る。

 寮へと帰る途中、綾小路が体育祭の時のことを聞いてきた。

 

「体育祭の時、かなり怪我をしていたようだが大丈夫なのか?」

 

「あの程度は3日もあれば治る」

 

「そんなものなのか?」

 

「そんなものだ」

 

 一般の人からすれば怪物的な早さだが、あの施設にいた俺からすると少し遅くなったと思うぐらいだ。

 だって、腕の肉がほとんど抉れた状態でも2日あれば治っていたのだから。

 そんな場所にいたら、日常が分からなくなり頭もおかしくなってしまう。

 

「じゃあ体育祭後のことなんだが、本城にあの写真を送らせるよう指示したのはお前だな?」

 

「そうだ」

 

 確信めいたその言葉に、俺は嘘で包み隠さず真実を伝える。

 嘘をついていいことは無いし、ついたとしてもすぐにバレるのがオチだろう。

 質問はそのあとも続く。

 

「あの写真を撮るために、櫛田を見張るよう指示していたのか?」

 

「その時は違う。櫛田がスパイだなんて思ってもいなかったし、まずそのことを知ったのは体育祭1週間前だ」

 

 あの写真は体育祭1週間前より過去に撮影されたものだ。

 その時は全くノーマークだったため、相手を見張るよう指示なんて出来るわけが無い。

 

「そうだったのか」

 

 綾小路は少し考える仕草をする。

 そして話すネタも無くなったのか、そこから静かな時間が流れていった。

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