ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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第65話 誕生日は悪夢

 放課後といえば、クラスメイトと一緒にケヤキモールへ遊びに行ったり、図書室で勉強会を開いたり、はたまた彼氏彼女を作った強者のみが許されるデートをしたりなど、平日で唯一色んな生徒が有意義な時を過ごせる時間である。

 

 それは俺も例外ではなく、自室に籠って先輩方と有意義に『World Cricis』(ワールドクライシス)というバトルロイヤルゲームをしている。

 いわいるバトロワFPSというものだ。

 

「ここから100m先、貨物のところに2人、どっちもARとLMG。ワンパっぽいので周りの警戒を」

 

『んー。それにしても黒瀬、敵見つけるの早すぎ。僕なんて言われてなかったら、あれに近づくまで分からなかったし』

 

『流石、この学校唯一の元帥は違う。3ヶ月近くのブランクがあるのにその実力は衰えていないとはな』

 

『私の弟は優秀だからね!お姉さん嬉しい!』

 

 今回パーティーを組んでいるのは2年の井川(いかわ)先輩、野切(のぎり)先輩、鹿野(かの)先輩だ。

 3人はBクラスで、今でも俺とそこそこ仲のいい、2年の中でも珍しい先輩方になる。

 俺が集中して相手を見ている間、3人の会話は続く。

 

『おい井川。鹿野、いや馬鹿女を囮にして残り2人を探すぞ』

 

『うわー・・・・・・野切、それはやばいんじゃないかな・・・・・・』

 

『あんたらの声丸聞こえだからね!後で覚えておきなさいよ!』

 

『ちっ』

 

『今舌打ちしたでしょ!?だから野切はモテないのよ!』

 

『黙れ、無駄肉をぶら下げた馬鹿女如きが俺に話しかけるな』

 

『2人共その辺に・・・・・・』

 

『井川はすっこんでろ!』『井川は黙ってて!』

 

『・・・・・・2人共、後でじっくり痛めつけるから覚悟しててね』

 

『『すいませんでしたー!』』

 

 こんな感じで、よく野切先輩と鹿野先輩は言い合えば井川先輩に謝っているのが日常的風景である。

 2人は昔馴染みとか幼馴染とかではなく、普通に高校で初めて知り合ったらしい。

 知り合って少ししてから2人は付き合ったそうだが、野切先輩は鹿野先輩の顔はドストライクだが体が気に食わない、鹿野先輩も野切先輩の顔はストライクゾーンだが性格が嫌いだから別れ、今に至る。

 2人だけだとずっと言い合っているが、井川先輩がいるおかげそれもすぐに治まるのだ。

 一応ひと段落ついたので指示を出していく。

 

「俺が今から1人抜くので、もう1人の方を鹿野先輩が。こぼしても拾います。井川先輩と野切先輩は鹿野先輩の周りについて寄ってくる敵を迎撃してください」

 

『『了解』』『はーい!』

 

 それを聞いた瞬間、貨物のところにいる2人のうち1人の頭をスナイパーライフルで打ち抜く。

 威力重視型なので頭は一撃である。

 もう1人を狙撃しようと思ったが、そちらは鹿野先輩が倒したのでスコープを覗いて周りを確認する。

 すると、部屋のインターフォンが鳴った。

 

『もしかして彼女!?私に内緒で作っていたなんて・・・・・・!』

 

「俺に彼女なんていません。多分クラスメイトです」

 

 龍園の誕生日会をしている中、俺だけ自室にいるのだ。

 クラスメイトが訪れてきてもおかしくない。

 

『まさか体だけの関係・・・・・・私という姉がいながらそんなこと、許しません!』

 

『黒瀬に限ってそんなことは・・・・・・あるな。好奇心の塊がクラスメイトに手を出してないなんておかしい』

 

『僕たちは言ってくれたらボイチャ切ってあげるから。その時になったら言ってね』

 

「なに勘違いしてるんですか・・・・・・。とりあえず一旦離れるので監視だけお願いします」

 

 そんな3人を軽くあしらいつつ、適当な茂みにキャラを隠してから画面を離れ、訪問者を確認するために玄関を開ける。

 そこには私服の伊吹がいた。

 

「伊吹か」

 

「ちょっと用があって来たんだけど、今から暇?」

 

 それを聞いて伊吹が俺を訪れた理由を考える。

 

(私服で訪れたということはどこかに行く用事があるからだろう。

 俺の部屋に来るために着替えたとは考えられないからな。

 となるとその用だが、今日は龍園の誕生日。

 おそらく龍園が絡んでくる物のはずだ。お、分かったかも)

 

「先に言っとくが、龍園の欲しそうな物は分からんぞ。それでもいいなら行くが」

 

「私まだ何も言ってないんだけど・・・・・・。用件はそれだから、龍園が欲しそうな物を探すの手伝って」

 

「分かった。だが先輩たちとちょうどゲームをしててな。それが終わるまで部屋にいていいから、待っていてくれ」

 

「それぐらいなら全然。黒瀬の部屋は少し気になってたし」

 

 前回よりも丸くなったなと思いながら、伊吹を部屋に招き入れる。

 俺は再びゲームを再開させる。

 すると、先輩方が何やら話をしていた。

 

『おい、聞いたか?家に女を入れやがったぞ』

 

『クラスメイトなら外で話すぐらいで十分なはず。やはり肉体関係が濃厚に・・・・・・』

 

『声からして・・・・・・ボーイッシュな女の子が好みなのね!私頑張ります!』

 

『鹿野は一途だからこそ、その相手に尽くすタイプの人間だ。こうなったら止められん』

 

『恋って怖いね・・・・・・僕、好きになる相手はしっかりと決めることを心に誓うよ』

 

『絶対に顔だけで決めるなよ、俺らみたいになるからな。って、いつの間にか死んでたな』

 

『あ、本当だ』

 

「・・・・・・」

 

 俺はこれから彼らの前で女性について触れないことを心に決めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「これどう?」

 

「あいつがゲームすると思うか?」

 

「ならこれは?」

 

「あいつが漫画を読むと思うか?」

 

「じゃあこれは?」

 

「あいつが眼鏡をかけると思うか?翔だけに」

 

「面白くない!」

 

 何故か思いっきり脛に向けて蹴りを放ってきたので、後ろに下がることでそれを避ける。

 伊吹は避けられたことが余程嫌だったようで、舌打ちをされてしまった。

 今俺たちはケヤキモールに龍園の誕生日プレゼントを買いに来ている。

 色々なところをまわり伊吹が提案してくるが、どれも龍園にしっくりこない。

 

「やはりあれしかないな」

 

「龍園が好きそうなのがあるなら先に言ってよ」

 

 ぶつぶつ言いながら睨んでくる伊吹を横目に本屋へと戻る。

 そして目当てのものを手に取って伊吹に渡す。

 

「ってこれ、エロ本じゃないの!」

 

「違う、ヤング向け雑誌だ」

 

「だからエロ本じゃないの!」

 

 顔を真っ赤にして抗議してくる伊吹は新鮮味があって面白い。

 表情を見ている感じだと、これを買うなんて有り得ないとでも思っているだろう。

 真面目に考えたつもりなんだがな。

 

「伊吹さん、本屋は静かにするところですよ」

 

「本屋だけじゃなくて、どの店でもそうしないといけないから」

 

 たまたま本屋にいたひよりと神室が伊吹の声に釣られてやって来た。

 そのあまりに変わった組み合わせに少々驚く。

 

「変わった組み合わせだな。2人は仲良かったか?」

 

「少なくとも私はお友達だと思っています」

 

「私もそう思ってるわよ」

 

 どうやら2人は仲良しらしい。

 俺はてっきり、神室は坂柳に言われて本屋を見張っていて、ひよりはたまたま本屋に寄っているのかと思っていた。

 

(プールの時に一緒だったから仲良くなっててもおかしくないか)

 

「ひよりが本屋に行くから一緒に来たって感じか」

 

「その逆。私が本屋で本を探したくて、本に詳しいひよりに一緒に来てもらっただけ。主にあんたのせいで」

 

 急に不機嫌になった神室を見て、俺の考えていたことは半分合って半分間違っていたことが分かった。

 

(坂柳関連で来たのね。何となく分かったわ)

 

「まあ、ここで会ったのも何かの縁だ。龍園の誕生日プレゼントを一緒に考えてくれ」

 

「私はこの後暇なので構いませんよ」

 

「晩ご飯作ってくれるなら付き合ってあげる」

 

 強情なやつがいるが、2人共俺と伊吹に付き合ってくれるみたいだ。

 

(3人寄れば文殊の知恵と言うし、すぐに見つかるだろう)

 

 だが、それは大きな間違いであった。

 

「私言っとくけど、龍園とあんまり関わりがないから」

 

「私も試験の時に少し話すぐらいで・・・・・・」

 

 2人共龍園とあまり関わりがないことを忘れていた。

 神室は他クラス、ひよりはあまり話しているところを見たことがない。

 結局、伊吹と探していた時と変わらないという。

 

「探すだけなら人手が多いほうがいい」

 

「それじゃあ、まわってないところから行こ」

 

 俺たちは伊吹を先頭に歩き出した。

 だが全員あまり人付き合いを好まない、得意ではないので、横に並ぶことはなく横から1歩下がったところに皆並んでいた。

 

(今思ったら全員ぼっちじゃん。

 俺は言わずともぼっち、伊吹は1人になりたいからぼっち、ひよりはよく1人でいるからぼっち、神室は絶対ぼっち。

 これは俺たちぼっちズと名乗らないと)

 

(「ここはぼっちとボッチな仲間だろ」)

 

(この際ぼっちって分かれば何でもいい)

 

 俺と伊吹がまだまわっていない服屋、ゲームセンター、雑貨屋、家具屋などに寄ってみるも、龍園に合いそうなものは無かった。

 その間に女子同士は仲良くなっていたみたいで、いつ間にか3人横に並んで歩いていた。

 ひと通りまわりどこかで話し合うため、近くにあったベンチに女子たちが座った。

 

「疲れました・・・・・・」

 

「それは分かる・・・・・・」

 

「これは黒瀬のせいよ・・・・・・毎回「龍園に合うか?」とか聞いてくるし」

 

「それ、黒瀬を呼んだ私が馬鹿だった」

 

「事実だから仕方ないだろ。てかお前らも言われたら、すぐに戻してただろ」

 

「「・・・・・・」」

 

 疲れた原因を俺に押し付けてくる神室と伊吹に正論をぶつける。

 あの龍園がぬいぐるみやコート、ヘアバンドを求めるとは思えない。

 そんなものを貰って喜ぶとは思えないし、第一、龍園のぬいぐるみを持ってる姿、コートを着ている姿、髪を束ねている姿なんて全く想像出来ない。

 コートは分からないが他は絶対に笑う自信がある。

 そんな物を見せられたら、持ってきた人に問いたくなるのは道理だ。

 もう日が暮れ始めこのままでは明日になってしまいそうなので、俺も頭を働かせて考える。

 

「んー・・・・・・サングラス、とかどうだ?」

 

 サングラスなら喜ばない人は少ないだろうし龍園に似合う気がする。

 

「それは良さそうですね。特にティアドロップ型のサングラスは龍園くんにお似合いです」

 

「服よりかは無難よね。私もいいと思う」

 

「龍園にサングラス、確かに合うかも」

 

 3人の反応を見る限り好感触である。

 これなら失敗することはないだろう。

 

「それなら早く買いに行くか」

 

 俺たちは再度眼鏡屋に寄り、伊吹がティアドロップ型の少し値の張るサングラスを小包に入れてもらって購入する。

 そこから伊吹は龍園のところに行き、残った俺たちは神室の要望に応えるため、2人を家に招いて料理を振る舞う。

 今日は昨日作ったハヤシライスがだいぶ残っていたので、それをドリアにしたものだ。

 

「美味しすぎて手が止まらない・・・・・・」

 

「料理も出来るなんて本当にずるいです」

 

「こればっかりは努力した結果だ」

 

 料理なんて一朝一夕で出来るようなものじゃない。

 努力を重ね、試行錯誤を繰り返し自己流を確立させたから者だけが到達出来るのだ。

 多少の才能は必要になるかもしれないが、結局は努力次第で上に上がれるものだと思っている。

 美味しそうに食べる2人を見ていると、インターフォンが鳴った。

 

(もうそんな時間か)

 

 実は石崎から依頼を受け、それがケーキを作ってほしいとのことで作っておいたのだ。

 冷蔵庫からケーキの箱とそれよりも少し小さな箱、クーラーボックスを石崎に渡した。

 




 誕生日会

 黒瀬たちと別れ、買った誕生日プレゼントを渡すためカラオケ店の大きめの個室に入る。
 中では龍園をはじめとする男子数人、女子数人がいて盛り上がっているようだ。

「クク。俺が恋しくなったのか、伊吹?」

「そんなんじゃない。本当は何も渡す気はなかったし、あんたの顔なんて見たくないけど、一応CクラスをAクラスまで上げてくれたから、その感謝も兼ねてだから」

「俺は嬉しいぜ、伊吹とは言え女から貰えるんだからな」

 龍園は私の手にある小包を受け取って、中身を確認する。

「いいサングラスじゃねえか。感謝するぜ」

「ふん、私はそれだけだから帰る」

 そう言って私はこの場から去っていた。

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(バレットでケーキを買えなかったけど、黒瀬さんがいて本当に良かった...。ついでに飲み物とか貰えたし、本当に感謝です!)

 昨日バレットでホールケーキを買えずどうしようか悩んでいたところ、黒瀬さんの存在に気付き頼んでみると、なんとOKとのこと。
 俺は黒瀬さんに頼んで、今それを取りに行って戻って来たところ。

「龍園さーん、ケーキ持ってきました!」

「それを待ってたぜ。さっさと開けて中身を見せろ」

「驚かないでくださいよ!」

 そう言って箱からケーキを取り出す。
 そこには職人が作ったと思えるほどのショートケーキがあり、上には『happy Birthday 龍園翔』と書いたチョコがのっていた。

「切り分けてあるとは気が利くじゃねえか」

 ケーキは予め8等分されており、切らなくても大丈夫なようになっていた。
 それは黒瀬の気の利いた気遣いではなく、実は何かを隠蔽するためのもので。
 そんなことを知らずに、龍園はメッセージの書かれたチョコがのっているケーキを一口食べた。

「!?!?」

 口の中に広がるのは甘味ではなく、辛味。
 それもかなりのものだ。
 龍園が辛さで咽ていると、石崎が心配して渡してきた飲み物のキャップを開けると、

 プシューッ!!

 そう音を立てて炭酸が中身から外へと溢れていく。
 それでは飲むことが出来ないので、近くにあった飲み物を飲み干す。

「石崎」

 何とか落ち着いた龍園のその声は今までにないほどドスが利いていて、周りにいる生徒は怯えていた。
 呼ばれた石崎はすぐに龍園の前に跪く。

「は、はい!」

「俺がカプサイシンの入ったケーキを食べれると思ったのか?」

「か、カプサイシンですか?」

 カプサイシンの意味が分からず顔を上げると、目の前にケーキがあった。

「食えば分かる」

「分かりました・・・・・・!?!?からっ!!」

 口に入れた瞬間、見た目とは裏腹に辛味が広がっていく。
 実はこのケーキ見た目は普通だが、中にカプサイシンを混ぜたクリームが仕込まれており、断面からそれが判断されないように事前に切ってクリームを塗っていたのだ。

「の、飲み物!」

 辛さで咽返る石崎は近くにあった飲み物を飲み干すと、龍園が問う。

「石崎、大体想像はつくが誰がこれを作った?」

「え、えーっと・・・・・・」

(ど、どうすれば...。黒瀬さんのことは尊敬してるし、こんなことはしない。た、多分何かの間違えで、本命は小さい方ってことですね)

「た、多分本命はこっちです・・・・・・」

 尊敬している人を見捨てないため、もう1つ貰っていた箱を龍園の前に差し出す。
 その中には小さなシュークリームが10個と印刷した文字が書いた紙が入っていた。
 石崎はその紙に書いてある内容を読む。

「『パーティーならロシアンシュークリーム。1つだけ違うのがあるよ』だそうです・・・・・・」

「「「・・・・・・」」」

 全員が明らかに1つだけ色が違うシュークリームを見つめる。
 それはシュークリームだが、圧倒的に他と違う何かを感じる。

「こんな鼻から分かるゲームなんて面白くねえよなあ、石崎?」

 その言葉の裏には「お前がそれを食べろ」があることを察し、そのシュークリームを手に取る。

「シュークリームを食いてえやつは取っていけ」

 龍園がそう言うと、女子を中心にシュークリームを取っていく。
 龍園はわざと何も取らず顎で食べることを命じる。

「「「・・・・・・」」」バタッ・・・・・・

「・・・・・・あれ、美味しい・・・・・・」

 シュークリームを食べたやつらが次々と倒れていく中、美味しそうにシュークリームを食べる石崎。
 実はこのシュークリームには、『1つだけ』違うのがある。
 それは罰ゲームではなくご褒美。
 残りのシュークリームが外れなのだ。
 これも仕組まれたもので、1つは表面だけを偽装し、残るは中身を変えてある。
 その変えられた中身は、一口で気絶するぐらいのヤバい品。
 それを察した龍園はあえて何も取らなかった。

「随分やってくれるじゃねえか、誰かさんよお!」

 その顔はXを見つけた時よりも不気味な笑みだった。

 後日、犯人探しが行われあっという間に犯人は見つかった。
 めでたいしめでたし。

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後書きで出てきたヤバい品は、よくある料理下手のヒロインが作るゲテモノと思ってくれれば嬉しいです。



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