Dクラスとの契約から約2週間、月は12月に変わり、ついに今日から期末試験が始まる。
先週の金曜日にテストの問題を先生へ提出し、それがしっかりと通り、龍園が偽の解答を櫛田に渡したため、あとはDクラスが勝ってくれることを祈るだけだ。
ちなみに今日までの間に少し面白いことがあったそうだが、生憎その場所に居合わせることが出来ず、龍園から話を聞かされるだけになってしまった。
なんでも、誰かが龍園の名義で一之瀬が不正にポイントを集めてるということを手紙にして、それを1年全員のポストに入れたらしい。
結局、後日学校側は一之瀬に『不正なし』という判断を発表しているため、それがデマであることが知らされたのだ。
そんなことがあり、おれはその犯人の意図が何なのかを考えている。
試験をそっちのけて考えることではないと思うが、しっかりやるべきことはやったので大丈夫だろう。
朝から教室でそのことについて考えていると、ひよりがこちらに近寄ってきた。
「おはようございます、黒瀬くん」
「おはよう、ひより。昨日はしっかり眠れたか?」
「いつもよりかは少し遅くに眠りましたが、全然平気です」
元気な証拠を見せつけるように、こちらに笑顔を見せてくる。
「黒瀬くんの方はどうですか?」
「おれはいつもと同じ時間に寝たから大丈夫だ」
「それは良かったです。勉強会や試験問題の作成など色々なことをやっていただいたので、しっかり睡眠が取れているのか心配で」
ひよりはおれが夜更かししていないことを聞くとホッと胸をなで下ろす。
どうやら色々なことをやっていたからそれを心配してくれたようだ。
「どういった状況であっても睡眠は大事だからな。だから怠るわけにはいかないんだ」
睡眠は人間の三大欲求の1つで、おれにとっては他の2つよりも優先順位の高いものである。
食欲はあるが数日間何も食べなくても生きていけるし、性欲に関しては湧きもしない。
だが睡眠欲だけは例外で、毎日決まった時間に眠たくなり、それを無視して活動をすると翌日の朝、勝手に寝てしまうぐらいに身体が欲している。
それも場合によっては変わることもあるが。
(その原因はおれで多重人格が関係してくるんだよな。
おれが表に出ている時、脳に掛かる負担は1人分だが、俺のときはおれもいるから約2人分。
疲労も約2人分なんだから、眠たくなるのは必然)
そのため、いつも決まった時間にベットへ入り睡眠を取っている。
「黒瀬くんにとって睡眠は大事なことなんですね。それなら目が充血しているように見えるのは擦りすぎたからでしょうか?」
「あ、ああ。ちょっと朝に擦りすぎてな。気にしないでくれ」
「そうだったんですね」
(あー、そういえば昨日コンタクト外してたの忘れてたわ・・・・・・。
はぁー・・・・・・)
おれと俺の違いの1つである目の色を分からなくするために、市販のカラーコンタクトを変わった時から付けていたが、昨日自分の部屋へ戻った時に外していたのを完全に忘れてしまっていた。
俺との見分け方の1つである雰囲気は自分で変えられるが、目の色に関しては自力ではどうにもできず物に頼るしかないのだ。
バレて何かあるわけじゃないが。
おれの返答に満足がいったのか、ひよりはテスト勉強をするため自席へと戻っていった。
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予鈴が鳴り全員が勉強道具を教室後ろのロッカーに仕舞う。
これは義務付けられていることで、机の上に筆記用具以外の物を置いてはいけないことになっている。
もし消しゴムやシャープペンシルの芯がなくなったりした場合、先生に言えば替えが貰えるためその点は安心していい。
「これより期末テストを行います。1時間目は現代文です。開始の合図までは用紙をひっくり返さずに注意してください」
今回は今までのテストのように先頭の生徒に回させるのではなく、先生自ら1人1人の机に問題用紙を置いていく。
「試験時間は50分、体調不良やトイレは極力控えてください。もしどうしても我慢できない時は挙手をしてから申告してください。それ以外の途中退出は一切認められません」
禁止事項を伝え、用紙を全員に配り終える。
今回ペア2人で取るべき総合点は692点。言われるまで存在を忘れていたが、総合点ボーダーを下回るような柔な鍛え方はしていないので、心配することはないだろう。
程なくしてチャイムが鳴り、試験の開始が告げられる。
「始めてください」
合図と共に用紙をひっくり返し、問題を確認していく。
問題の全体的な練度は高く、問題文などにも変な点はない。
簡単な問題は約20点程度で難しい問題が半分近くを占め、時間稼ぎの問題が他を占めているのを見ると、この制作者は坂柳か頭の回る人だと考える。
あたりを軽く一瞥すると、勉強会参加組の奴らは頭を抱えながら問題用紙と睨めっこをしていた。
勉強会をしたとはいえ、やはり辛いものは辛いのだろう。
それに、勉強会に参加していない他の数人の手が止まっているのを見ると、この問題自体がそこそこの難しさなんだと実感する。
(他人の心配をしても意味はないか)
軽く頭を振るい、目の前にある問題を集中して解くことにした。
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「ふぅー・・・・・・」
今日あったテストを終え、ひと息つく。
現代文の後に、英語、日本史、数学の3教科があり、その難しさは現代文と同等でそこそこの難しさだった。
100点以外を取ることはほぼないと思うが、簡単な間違いをしていそうで少し怖い部分もある。
自己採点をしながら教室の扉の方を見ていると、不敵な笑みを浮かべた龍園が出ていくのが見えた。
どうやら、おれの考えた計画は上手くいったようだ。
(おそらく、櫛田にはDクラスに渡した情報は絶対に知っているはず。
だが龍園があんな顔をしているということは、櫛田が偽の答えが偽物であることに気付かず、Dクラスに流れている本当の情報を噓だと信じ込んでしまったか。
櫛田に情報が渡っていれば契約違反になるが、そもそもおれたちにそれを確認する手段はほぼない。
本人から直接そのことを聞くか、本城あたりからおれが聞くかの2つ。
そのうちの1つである、本城あたりからの情報をもらう気は全くないため、実質1つ。
そこに引っかかることはなかったから、契約違反ではないことでいいか)
かなり甘い考え方をしているが、俺の狙いは『堀北に櫛田が負ける』であって、それが上手くいけばおれは契約違反だろうと目を瞑ることにしている。
それに情報が渡っていたとしてもそれに確証はなく、そんな情報で契約破棄まで持ち込むのは三下のやることだ。
「あとはテストをやって結果を待つだけか。それが終わったら俺を覚ます準備だ」
独り言を呟いて、1人教室から去っていった。
Dクラスの方は6巻と同じ内容だと思ってください。