ようこそ2人の最高傑作がいる学校へ   作:クリッピー

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主人公の過去について触れてみました


第7話 再、生活指導室

 夜になり、放課後メールを送った綾小路から返信が来る。

 

『世間話をしただけだ』

 

『そうか』

 

 おそらく世間話はしていないと思うが、本人が話したくないならこれ以上聞くのは無粋だろう。

 

(昨日辺りに思い出したことだが、俺があの時聞いた綾小路という人はこいつなのか?それとも親?それとも別人?)

 

 俺がこう思ったのは俺と父親との会話?が関係してくる。

 

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 俺はこの日、『あの施設』から出ることが出来た。

 その方法だが、施設の人が出したのではなく、父親が出してくれたのだ。

 

 なぜ出してくれたのかを知りたかったが、それ以上に自分の感情がまだ生きていること、何より『あの施設』から出れたことが嬉しかったのでどうでも良かった。

 

 そして施設を出た今、俺と父親と父親の護衛の人と共に飛行機に乗っている。

 飛行機に乗ってから1時間程度は寝ていたが、今は起きて外の変わらない景色を見ている。

 起きている俺が目に入ったのか、父親がこんなことを言う。

 

「お前は自分と同じように、『最高傑作』と呼ばれるやつを知っているか?」

 

「いいえ、自分はそのような人を知りません」

 

 俺はそう返した。

 施設にいる間は、外の情報が全く入って来なかったため、あの施設以外のことはほとんど知らない。

 

「そうか。ならお前に教えておく。名前がたしか綾小路。そいつはお前と同じ年齢、『ホワイトルーム』と呼ばれる場所にいて、『最高傑作』と呼ばれている。お前がさっきまでいたところとは全然違う場所だ。その施設の食事や寝場所は知らないが、明らかにお前がいた施設とは違うところがある」

 

「それは、何なんですか?」

 

 それを聞いた父親は間を入れてこう言う。

 

「それはな、人の手によって人が殺されるか殺されないかの違いだ」

 

「・・・・・・自分はてっきりその施設でもやっているのかと思っていました」

 

「普通は、人を殺したりしない。だがあの施設は、いや、あの場所がおかしいだけだ。人を殺しても誰も咎めない。むしろ殺さないと未来が約束されないなんて・・・・・・俺は間違ったことをしたみたいだ・・・・・・」

 

 そう言った父親は片手を目に当てて俯く。

 俺は一瞬、泣いているのかと思った。

 だがそんなことは有り得ないと決めつけ、俺は窓の方に再び視線を向けた。

 

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(今思うと、あれが最後になるんだよな。父親と話したのって。あの後はずっと、昔から仲良くしてもらっていた執事さんが全てやってくれたからな。

 この学校を卒業したらあの執事さんに感謝の言葉を言わないと)

 

 俺は携帯の電源を落として寝ることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 今月のポイントが0であることを聞いてから1日、あんなにうるさかった教室は静かになり、ほとんどの人が真面目に授業を受けている。

 そんな授業が全て終わって放課後になり、寮に帰ろうと思っていると、

 

『1年Dクラスの黒瀬くん。担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

 そんな放送が流れる。

 今日は特に用事はないので、鞄を持って職員室へと向かう。

 そして職員室の扉を開け、前回と同じように茶柱先生を呼ぶ。

 

「サエちゃんなら、もうすぐ戻ってくると思うよ」

 

 すると、たまたま近くにいる、茶柱先生をサエちゃんと言った女性の先生が教えてくれた。

 

「なら、廊下で待っていると言っておいてください」

 

 その先生の返答を聞く前に、扉を閉めて廊下で待つことにした。

 そんな俺に何かあるのか、閉めたはずの職員室の扉から誰かが出て来た。

 

「君って、黒瀬くんで合ってるかな?」

 

 わざわざこちらを覗き込むように聞いてくる先ほどの先生。

 この先生は俺のことを知っているらしい。

 

「人違いです」

 

「君の顔は前に見たことがあるから、私を騙そうとしても無駄だからね~」

 

 面倒だったので噓を言ってみたが、この人は俺のことを知っているみたいで、全く通用しなかった。

 先生はうりうりとか言って、俺の頬を突いてくる。

 

(この先生鬱陶しいな。それも無駄に近いし)

 

 内心で苛立ちつつも、先生の後ろに現れた人の顔を見て笑いそうになってしまった。

 

「そろそろ離れないと、頭をクリップボードで叩かれますよ」

 

「またまた~。噓をついて私から逃げようとしてるでしょ~?」

 

 先生はお気楽なことを言っているが、今回は本当で、職員室から出て来た茶柱先生がクリップボードで頭を叩いた。

 頭を叩く良い音が鳴り響き、叩かれた先生は頭を押さえて蹲る。

 

「いったぁ。昨日みたいに叩かないでよ!」

 

「昨日と同じで、私の生徒と絡んでいるからだろ」

 

 2人は仲がいいのか悪いのか分からないが、同級生のような感じなのだろうと思う。

 俺は叩かれた先生に構う気はないので、茶柱先生に呼ばれたことについて聞いてみる。

 

「茶柱先生、何か要件でもあるんですか?」

 

「そんなところだ。着いてきくれ」

 

 歩き出した茶柱先生の後ろについていくと、何故かその後ろから叩かれた先生もついててきた。

 俺は茶柱先生に気づかれないように、叩かれた先生の隣に行く。

 

「あの、叩かれた先生。話を聞かれて嫌じゃありませんが、今回はやめてもらっていいですか?」

 

「私は叩かれた先生じゃなくて、Bクラス担任の星之宮知恵(ほしのみやちえ)って言うの」

 

「それでどうなんですか?叩かれた先生」

 

「じゃあ、私を下の名前で呼んでくれるなら聞いてあげてもいいよ」

 

 星之宮先生はニタニタしながらそう言ってくる。

 ふざけて名前を言わなかったことが仇となり、先生の下の名前を言う羽目になってしまった。

 言っている感じだと、今後もそうしなければならない気がする。

 

「知恵さん、でいいですか?」

 

「うんうん、じゃあ今回は見逃してあげよう。その代わり、今度話でもしようね黒瀬くん」

 

 意外といい人なのか、それともからかいたかっただけなのか。

 星之宮先生は満足したように、手を振って職員室へ帰って行った。

 途中で、スキンヘッドの男子が職員室へ向かうところを見たが目的地に着いた。

 ここは生活指導室で、来るのは2回目なので前回と同じ場所に座る。

 

「先に質問していいですか?」

 

 俺は気になっていたことがあったので、聞いてみることにした。

 

「いいぞ」

 

「ありがとうございます。では、なぜ綾小路と分けて呼んだんですか?」

 

「出来れば昨日、一緒に呼び出したかったんだがな。だが、お前にだって人に聞かれたくないことがあるだろ?」

 

 聞かれたくないこと、やっぱり綾小路は何か悪いことでもしたんだろう。

 

「ありますね」

 

「そういうことだ。それでは本題に入らせてもらう。お前は小テストのことを前もって知っていたか?」

 

「いえ、小テストがあることは知りませんでした」

 

「そうか。なら、あの小テストの結果はお前の実力で合ってるんだな?」

 

 その言葉で、先生が俺を探っていることに感づく。

 

「そうですけど・・・・・・。何か前に話した時も思ったんですが、遠回しに俺のこと探ってません?」

 

「それは仕方がないことだ。こちらはお前のことを1年の中でもだいぶ謎な生徒だと思っている。小学2年から小学6年までの長期欠席。中学では成績が全て平均ほど。普通の生徒と変わらなかったと聞いている。

 だが、入試のテストで国語10点、数学30点、英語20点、社会90点、理科10点というまるで意図的にとったような点数。そして小テストの結果が100点。身体能力は高円寺や部活で活躍している生徒と同じぐらい。

 これだけを見ていると、お前が本物か疑いたくなるぐらいだ」

 

 先生にはこちらのことが筒抜けで、プライバシーなんて言葉が全くないのがまる分かりである。

 

(普通の高校でもそんな感じかもしれないけど、流石に個人をそこまで調べてるのはそうそうないと思いたい)

 

「隠す必要もないので言いますが、俺はこの学校に来るまで実力を隠して過ごしていました。本来なら隠す気でしたが、ポイントが手に入る引き換えに自分の実力を隠さずに出したってだけです。小テストに関しては、単なるミスですが」

 

 もし何らかの形でポイントが絡んできた場合、俺はおそらく本気で取り組むと思う。

 それには実力を周りに示すことが含まれているが、やはりポイントが欲しいというのが本音だ。

 

「そうか。お前は上のクラスに上がる気はあるか?」

 

「上のクラスに上がる気はありません。だからと言って、クラスに協力しないわけではないですが」

 

(Aクラスに上がるための準備をしている。そんな感じか?)

 

「分かった。呼び出してすまなかったな。もう帰っていいぞ」

 

「分かりました。と、その前に────」

 

 俺は茶柱先生と少しだけ話をして、指導室を出ていった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 5月初めての土曜日、俺は校内にある教室に訪れた。

 その教室は普段ボードゲーム部の方々が活動しているところで、この学校の部活内で1番交友のある部である。

 

「お邪魔します」

 

「お、きたきた」

 

 中に入ると、眼鏡を掛けた2年生、園崎(そのざき)先輩が声を上げる。

 先輩はDクラス所属で、本人は否定しているが、Dクラスとは思えないほどのポテンシャルを持っている人だ。

 俺は先輩と対面になるように座る。

 いつもは数人の先輩方がいるので狭く感じる部室だが、今日は俺が昨日連絡した園崎先輩だけで、広く感じてしまう。

 

「例のブツは持ってきましたか?」

 

「ああ、もちろん。言われた通り、過去にあった小テスト、テストの問題と答えを全てこの封筒に入れてきた」

 

 先輩はそう言って、傍らに置いている鞄の中から少しぶ厚い封筒を取り出し、こちらに渡してくる。

 それを受け取り中を確認すると、先輩が過去に受けたテストの問題とその解答が入っていた。

 

「今後のテスト対策としてほしかったので、ありがたいです」

 

「ん?俺はてっきり、抜け道を見つけたのかと思ってたぞ」

 

 それを聞いて、俺は耳を疑ってしまう。

 

「それはどういう?」

 

「ここだけの話だが、1年生で最初に行われる小テストと中間テストは、過去問をそのまま使っているんだ。だから、それで必要になったのかと思ってたが、まさか予想の斜め上をいくとはな」

 

 園崎先輩は笑いながらそう言う。

 

(過去問が使えるとは思っていたが、本当にテストで使えて、それも過去問と同じものが出るとは...)

 

 それよりも、この情報を下級生に話していいやつじゃない気がするが、大丈夫なんだろうか。

 

「それ、喋っちゃ駄目な気が・・・・・・」

 

「それはどうかな?ちなみに俺は、この部にいた口が軽い先輩からこのことを聞いたから、喋っても問題はないと思うが。もし駄目なら、今後から気をつければいいことだし」

 

 園崎先輩は校則がどうとかうるさそうに見えてしまうが、結構お気楽な感じの人なのかもしれない。

 人は見かけによらないとはこういうことだろう。

 

「・・・・・・一応、情報ありがとうございます。もしよければ、何か対価を払いますが、どうしますか?」

 

「それは嬉しい提案だ。それなら俺とチェスでもしよう」

 

 そう言って先輩は嬉しそうに、ロッカーからチェス盤を探し始めた。

 普通はポイントとかを貰うと思うが、本当にこの先輩は変わっている。

 

「分かりました」

 

 俺らは夜になるまでチェスを楽しんだ。

 




ホワイトルームと分けるために主人公がいた施設との明らかな違いを書いてみました。
作者はホワイトルームで人を殺したりしないと思っているので。あとは、小6の冬のサバイバルのところで生きている理由はそういうことです。

過去の話でそういうシーンを書くことはあります。
描写が酷くならないよう善処しますのでよろしくお願いしますm(*_ _)m
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