インフィニット・ストラトス【褐色の魔獣】Rē season1 作:グ・ラン
Pixivで投稿した1話と2話を足して修正を入れて書いた結果、結構な文字数に達した訳ですが書きたい事は書ききったので私自身は満足しています。
ではでは改めましてリメイク版【褐色の魔獣】第1話をお楽しみに!
Pi…pi…pi…
目覚し時計に寝起きの身体を起こし、時刻を見るとタイマーをセットした時間通りに起きた僕は瞼を軽く擦り時計のベルを切った。
軽く背伸びをして寝心地が良いベッドから起き上がり、充電済みのスマホを取り出して日課になっている朝の占いを見る。今日の運勢は中間より下と余り良い運勢じゃなかったが直ぐに切り替えて冷蔵庫にあった作り置きの朝食(サンドイッチ)を食べ終えて洗面所で最低限の(姉達に徹底的に叩き込まれた)身だしなみを整えると寝間着から白で統一された制服に着替えて3日間滞在していたホテルを後にし、目的地であるIS学園行きのモノレールが発車される駅へと向かう。
IS学園
【インフィニット・ストラトス】通称ISと呼ばれる宇宙空間での活動を目的としたマルチフォーム・スーツに関する操縦技術、専門知識を学びつつ世界各国から狭き鬼門を掻い潜って来た優秀な生徒達だけが入学することが出来る教育機関であり最新鋭の技術が集った他国からの武力介入も一切受けない難攻不落の要塞と言っても良い。
だがこのISには1つの問題があった。それは動かせるのが女性だけという事だ。それにより世界は別の意味で大きく変化し女性を優遇する女尊男卑社会が構築され世界中に浸透するには1年も掛からなかった。ISが出現してから世界は大きな発展を遂げたがそれと同時に大きな歪みを孕んでいたがある日世界に激震が走る1つのイレギュラーが発生した。
それは…女性しか動かせなったISを高校受験で来ていた少年が動かしたのだ。
ISを動かした少年はすぐさま時の人になり、テレビ番組では連日その少年の事でニュースになっていたがその翌週にアメリカで2人目のISを動かした男性が発見した事でまたもや世界中に激震が走る事になったからだ。そしてその2人目のイレギュラーは現在……
はぁ……部屋に帰って寝たい気分だ。
入学式を終えて自分のクラスが記載された電光掲示板を確認し学園内を移動する度に好奇心旺盛な視線と男の分際で神聖な学び舎に入ってきやがって等の様々な視線を向けられるのだ。そして自分のクラス内でもその視線は途絶える事は無く、さっきから視線が止まらない状況に飽き飽きしていた。まあ無理もないかIS学園は本来、女性しかいない学園だからな。それにこの学園内にいる生徒が小中一貫女子校で蝶よ花よと育てられた生徒が多いのも事実だ。自分と同年代の男子生徒と関わりが無かった生徒がいてもおかしくない、何日か経てば飽きるだろうと考えていた時、予鈴が鳴り教師と思われる小柄な童顔女性が入る。
「1組の皆さん入学おめでとうございます、はじめまして皆さんの副担任を務めさせて頂きます山田真耶です。1年間よろしくお願いしますね」
童顔女性こと山田先生が挨拶をするもシーンとした空気が流れる。山田先生は「アハハ…」と空笑いするもコホンと咳払いをして気を取り直したのかクラスメイト達の出席を取り始めア行の生徒から名前を呼び始めて呼ばれた生徒が各々の自己紹介に写るも中々盛り上がる空気は無い。
それもそのはず、皆もう1人の男子生徒に興味津々な様子だからだ。
織斑一夏
今、世界各国が注目を集める少年だ。
容姿は黒い髪に整った顔が好印象を与え、人柄の良さがにじみ出た好青年といった容姿をしている。山田先生に大声で呼ばれたのか驚いた表情を浮かべて答えるも呼んだ張本人である山田先生は更に驚き、小動物の様に怯えた様子で当の織斑一夏に自己紹介をするように促す。しかしこの人は本当に且て国家代表最有力人物として推薦されたあの山田真耶本人だろうか…資料に載っていた人物を見比べるとにわかにも信じがたいが僕の姉が興味を持つ程だったのだ。見た目や目に映る姿や仕草だけで判断するのは命取りだと嫌ほど教わっている。しばらくは様子見と行くか…と思考を一旦止め自己紹介が途中な織斑一夏本人の様子を観察する。
皆興味津々な表情を浮かべ、彼に注目しているが視線を向けられた本人は中々言葉を出さない。軽い沈黙が続く中、何かを吹っ切った表情を浮かべて一言発する。
「以上です!」
がたんっ!と思わずずっこける女子達。僕は想定外過ぎた様子に鳩が豆鉄砲を喰らったようなポカンとした表情を浮かべているとそこに黒一色で統一された長身の女性が手に持っていた出席簿で彼の頭を叩く。
頭を叩かれた織斑一夏は…フルネームで呼ぶのは長いな…織斑は痛みに悶えて後ろを振り向くと「げぇ、関羽!?」と驚愕の表情を浮かべた直後またもや関羽(女性)に頭を叩かれていた。
しかしそれも束の間、織斑の頭を躊躇なく2度も叩いた女性は何事も無く教卓に移動し自分の名前を教室内の生徒全員に答えた。
「1組の諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者は出来るまで私が教導してやる。私の仕事は君達弱冠15歳を16歳にまで徹底的に鍛える事だ。逆らっても良いが私の言う事は聞け。以上だ。」
入学式が終わってからのSHRで鬼軍曹と言わんばかりの発言をするこの女性こそ、第1回IS世界大会モンド・グロッソ杯優勝者にして世界最強の称号【ブリュンヒルデ】を持つ
織斑千冬その人である。そして言わずと知っているが彼女が頭を叩いた織斑は彼女の実弟だ。(資料にて確認済み)僕は内心、今の発言は初日にきついんじゃないかと考えていた矢先、意外なリアクションが起きる。
「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」
「キャー!!本物の千冬様よ」
「私、千冬様に憧れてこの学園に入りました!!」
「千冬様ぁ、是非とも私を教導してください!!」
等の黄色い歓声が響く中、織斑千冬いや、織斑先生はうんざりした表情を浮かべて副担任の山田先生にSHRを任せた事を謝るが山田先生は頬を赤く染めて満更でもない表情を浮かべて謙遜する様子で答えていた。そんな様子に自分の身内がここに居る状況に頭の整理が着いていない様子の織斑が織斑先生に話すと当の織斑先生は一言で直ぐに慣れるとバッサリ切り捨てていた。話の内容を聞いて、織斑は姉である織斑先生には頭が上がらないことが分かった。お互い姉には振り回されて大変だな…と2人の様子を見ていると出席確認は続きいよいよ…
「ガモン君、ヴェリル・ガモン君。」
「はい」
「それではガモン君、クラスの皆さんに自己紹介をお願いしますね」
山田先生は落ち着いた声色で僕の名前を呼ぶと返事した僕の様子に更に驚いたのかブルリと身体を震わせていたが呼ばれた僕は席を立ち自己紹介を始めようとした時、1人の女子と偶々目が合うと…
「ひっ!?」
その女子は怯えた様子ですぐに顔を下向けに僕の視線を逸らす。
何故彼女がこのようなリアクションを取ったのか僕自身の容姿を見て驚いたのだなと察した。まあ無理もないか、親代わりのあの御方や姉達には「気にするな」と言われているが自分でも見た目が怖がられているのは理解している。僕自身自分の容姿をあまり語りたくは無いが敢えて客観的に説明するとしよう。
血のように真っ赤に染まった赤い短髪、獲物を狙う獰猛な虎のような目つきと180㎝の大台に届こうとしている大柄の体格と褐色肌、そして左目にうっすらと頬を伝う涙のように刻まれた刀傷を見れば幾戦の修羅場を乗り越えてきた殺し屋と言っても言い容姿だ。一般人からしたら先ずお近づきになりたくないだろう。怯えた彼女には申し訳ない、だが僕は僕だ。この容姿を変える気は一切無い。
怯えた女生徒の様子に教室内には緊張した空気が流れるが僕は気を取り直して自己紹介を行う。
「皆さん始めましてアメリカから入学したヴェリル・ガモンです。織斑君と同じくISを操縦できる2人目の男子です。皆さん気軽に話しかけてください。1年間よろしくお願いします」
僕は媚びる事も無く自己紹介を終えて席に着くと…
パチパチパチパチと少人数ではあるが拍手が聞こえてきた。
「見た目とは裏腹のギャップ系男子だぁ!!」
「私、さっきまでガモン君を怖い人だと勘違いしてたよ。こちらこそ仲良くしてね。」
「ガモン君の声、私の好きな
予想外の出来事に僕は内心驚いていた。最後の彼女は声優好きなのか自分の推し声優の写真をチラチラと僕に見せるが鬼軍曹もとい織斑先生が手を叩き出席確認を早く促す。僕はすぐさま自分の席に座るとポカンと表情を浮かべていた山田先生はハッとなった表情を浮かべて出席確認の続きに戻る。出席確認が終わり誰1人欠席が無い事を確認したと同時にSHRの終わりを告げる予鈴が鳴る。
「さてSHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。実習はその後だが、基本操作は半月で身体に覚えさせろ。いいか?いいなら返事をしろ。返事をしなくても私の言葉には必ず返事をしろ。いいな。」
織斑先生の恫喝に近い言葉で終了したが、鼓舞と捉えた生徒達が更に盛り上がりそんな様子に織斑先生は呆れていたのは言うまでも無い。しかしこのクラスのメンタルが凄まじいのか流石はIS学園とも言うべきなのか彼女達の精神面での(主に織斑先生面)逞しさには敬服ものだ。そして入学早々1時間目の授業が始まるのだった。
1時間目のIS基礎理論授業が終わり、軽い休み時間が入った。
教室の周りを視回すと僕と一夏を一目見ようと別クラスの女子やら2,3年生の先輩が廊下にまで殺到している。そんな光景に僕は改めて自分の置かれている状況が特殊過ぎる事と入学前にあの御方から聞かされた話を振り返る。先ずは最重要人物との接触を図るべく僕は早速、その対象である織斑一夏に話し掛ける事にした。因みに当の織斑は1時間目の授業で頭に?マークを浮かべながら学園支給のタブレットと教科書、専門用語で埋め尽くされたノートとにらめっこの真っ最中だった。
「うーん・・・さっぱり解からん」
「織斑君。予習中に悪いけど、ちょっと良いかな?」
「あぁ、良いよ。君は…」
「HRで自己紹介したヴェリル・ガモンだ。君と同じISを動かせる2人目の男子だよ」
「あぁ、そういやそうだったな。よろしくなガモン」
「ヴェリルで良いよ織斑君。僕はファーストネームで呼ばれるほうがしっくりくる」
「じゃあ、俺も織斑君なんて他人行儀で呼ばれるより一夏で呼んでくれ、よろしくなヴェリル」
「こちらこそ改めてよろしくね一夏」
僕は利き手を出して織斑こと一夏に握手を促すと一夏は嫌な顔を浮かべずに満面の笑みで僕の手を握る。僕はこのやり取りで抱いた一夏への第一印象は何処までも人が良い事が理解した。間違いなく彼は良い奴だな…初対面の人間にこうまで好印象を持たせるのは彼の良い所だろう。
「ちょっといいか?」
「えっ?」
その時1人の女生徒が一夏に話しかける。
「…箒?」
「知り合いかい一夏?」
「………」
一夏の名前に呼んだ女生徒は、肩下まである黒い長髪を緑のリボンで纏めてポニーテールにした髪形に女子の平均身長を少し上回った長身に大和撫子といわんばかりの綺麗な顔たちをした美少女といった容姿であった彼女は確か…。
「済まないがガモン。少しいち、いや織斑と話があるんだが良いか?」
「僕は構わないけど、えーっと…君は確か篠ノ之箒さんだったかな?」
「ああ、そうだ」
篠ノ之箒
ISを創造した稀代の天才、篠ノ之束博士の実妹であり彼女は確か日本国内において保護対象リストとして長年監視されていたと資料には書いてあったが…こうもIS関係者の身内に会うとはな…奇跡か偶然なのか分からないものだ。それに彼女の眼は喜々とした様子を顔には出してはいないが浮かべているのは確かだ。多分、一夏と久々に会えたことで色々とはしたい事があるだろう。僕は彼女の表情を見て華を持たせる考えに至り、一夏の肩をポンと軽く叩きその場を離れる。
「久々の知り合いなんだろう?彼女と話してきなよ」
「ありがとなヴェリル、箒ここじゃなんだし別の場所で話そうぜ」
僕の言葉に一夏は席から離れて篠ノ之さんと教室を出るのだった。僕は2人の様子にフッと軽く笑みを浮かべて自分の席に座り鞄の中に入っている本を読み始めようとしたが…
「ガモン君。私と少し話していい?」
「あっ、ずるーい梨沙!ガモン君私も良いかな?」
「ちょっと待ってよぉ、ガモン君私もー!!」
様子見していたクラスメイトが一気に集まり僕の席はあっという間に見えなくなり、質問責めと彼女達の自己紹介をもう1度聞く事になったが…こんな空気も悪くはないかな。
その頃、一夏は早速、箒に連れられて人気が無い廊下まで移動していたが移動する中で一夏はふと思い出したことがあり、早速話を切り出す。
「あっ、そういえば・・」
「何だ?」
「去年、剣道の全国大会優勝したってな。おめでとう」
箒は一夏の言葉に口をへの字にして顔を赤らめて言い返す。
「な、なんでそんなこと知っているんだ」
「なんでって新聞で見たし」
「だが、小さな記事で紹介されただけだ」
「小さな記事だとしても身内が新聞に載るのは正直嬉しいぞ」
「~~!!」
箒は一夏のさりげない言葉に湯気が出んばかりに顔を赤くして、喜びを隠せずにいた。
「あ、あとそれから…」
「!!な、何だ?」
「久しぶり。6年ぶりだけど、箒ってすぐに分かったぞ。」
「え?」
「ほら、髪型一緒だし」
一夏の言葉に箒は自身の髪を人差し指で髪をクルクル巻き出す。
(今まで、この髪型にしていて良かった…こうしてまた一夏に逢えたから)
と喜びを隠しつつも箒は会話を続ける。
「よ、よく覚えていたものだな」
「いや忘れないだろ。
ビシッ…と何かに亀裂が入ったと言わんばかりの擬音が箒の心に響くと
「………」
一夏を睨み付け黙り込むのだった。そして睨まれる本人は『えっ?なんで?』と言わんばかりの表情を浮かべていた。会話が途切れ沈黙の空気が流れだすが…
キーンコーンカーンコーン…
予鈴のチャイムが校舎中に響き渡る。
「おっと、俺らも戻ろうぜ」
「わ、わかっている!」
予鈴が鳴ると一目散に教室まで走る一夏と箒。そして遠目で2人の様子を眺めていたクラスメイト達も急いで自分の教室へと駆け足で戻りかろうじて2人は間に合い自分の席に着くと2時間目の授業が始まるのだった。
2時間目の授業が終わって休み時間に入ったが、さっきの授業は中々強烈だったな…僕はさっきの授業風景を思い出す。
2時間目の授業中、山田先生は分からない事があれば挙手をするようにクラスメイト達に声を掛けたが真っ先に手を挙げたのが一夏だった。一夏の様子に山田先生は答えようとしたが「全部わかりません!!」と想定外過ぎた言葉にアタフタし、他の生徒にも確認を取るもその気配は全くなかった。僕は大丈夫だったかだって?入学前に配布された参考書を読み、教える事には血も涙もない姉に朝から晩までミッチリ叩き込まれたから。その時は本当に生きた心地はしなかったな…思い出しただけで頭が痛くなる…
んんっ!話に戻ろう。そんな一夏に見兼ねた織斑先生は一夏に入学前に渡した参考書はどうしたと訊ねると当の一夏は「古い電話帳と間違えて捨てた」と清々しい表情で答えると一夏の頭部に落雷に等しい伝家の宝刀【
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
後ろから声を掛けられた一夏が振り向く。話し掛けてきた少女はロールが掛かった地毛の金髪に、白人特有の透き通ったブルーの瞳、真っ白な純白の肌に身体から貴族オーラのようなものが身体から滲んでおり上から目線で一夏をジッと見ていたが呆れた様子で口を開ける。
「訊いてますの?お返事は?」
「ああ、訊いてるけど、で、俺に何か用?」
一夏が訊ねると、少女はかなりわざとらしく声をあげた。
「まあ!なんですの、そのお返事は。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんじゃなくて?」
「………」
一夏は内心でこの少女の振る舞いに呆れていた。
(ISを使えるのは女しかいない。でも、その力を振りかざすのは違うだろう。こんなものただの暴力だ。)と内心思っていたが話し掛けるだけで時間が惜しいと判断して少女の顔を観ずに答える。
「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」
しかし少女は一夏の返事に腹が立ったのか吊り眼を細め、いかにも見下した口調で答える。
「わたくしを知らない?この、セ」
「セシリア・オルコットさんだったかな?」
「!?」
僕は彼女の様子と話す態度に見兼ねて言葉を遮って彼女、セシリア・オルコットの名前を呼ぶ。
「なっ、何ですの急に。今はわたくしが話していましたのよ」
「一夏、彼女は学園指定の入試を上位で入ったイギリスの代表候補生だよ」
僕は彼女、オルコットさんの会話はスルーして、一夏に彼女が自分の自己紹介で声高らかに自慢していた特徴を簡易に答える。そんな僕の様子にオルコットさんは『わたくしが言おうとしたことを何サラッと仰ってますの!!』と言っていたが僕はスルーする事にした。
「ふーん。あ、質問いいか?」
一夏はふと疑問に思ったことを僕に訊ねる。
「代表候補生って何?」
ガタタンッッ!!
聞き耳を立てていたクラスメイト達とオルコットさんが思わずずっこける。
「あ、あ・・あ・・」
「あ?」
「貴方、本気で仰ってますの!!」
「おう。知らん」
オルコットさんは剣幕を立てて一夏に言うと一夏はサラッとした表情で答える。一夏の返答に一時呆れていたが、冷静さを取り戻し自慢げに語り始める。
「しょうがないですわねぇ、このわたくしが教えて差し上げますわ。代表候補生とは国家代表IS操縦者の候補として選出されるエリートのことですわ。単語から想像したらわかるでしょう?」
オルコットさんは自慢げに腰に手を当てて答える。
「成る程、そう言われると凄いな」
「そう!エリートなのですわ!」
オルコットさんは自分の中で納得したのか人差し指を一夏に向けて指して答えるも僕は捕捉を付け足して答える。
「でも、その中で国家代表と選出されるのはごく僅かしかいないんだ」
僕は一夏の耳元で答えるがオルコットさんピクッと反応して腹を立てて僕に視線を向ける。
「ちょっと貴方、今わたくしはこの男子と話してますの。茶々を入れないでくれませんこと?」
「すまない、自分の事を自慢してマウントを取りたがる言動につい答えてしまったよ、気を悪くしたら失礼」
「馬鹿にしてますの?」
僕の一言にオルコットさんは益々腹を立てるがこれを言えば直ぐにでも自分が如何に優れているか身の程を弁えるだろうと言いたそうな表情を浮かべて答えるがその想像は直ぐに音を立てて崩れ去る事になるのだった…
「ふん、まあわたくしは優秀ですから貴方のような人間にも優しく接して差し上げますわよ。何せわたくしは、入試で唯一教官を倒したエリートの中のエリートなのですから!」
オルコットさんはまたもや高貴?なポーズを取り誇らしげにドヤ顔を浮かべて自慢すると一夏はハッとなった表情を浮かべて何かを思い出す。
「入試って確か、ISを動かして戦う奴か?」
「それ以外に入試などありませんわ?」
「あれ?俺も倒したぞ、教官」
「……は?」
一夏の意外すぎる言葉に固まる驚きのあまり眼を見開くオルコットさんに気が付かない一夏は入試時の事を事細かに思い出しながら話し出す。
「いやでも、あれは倒したと言うより突っ込んできたのを軽くかわしただけだったなぁ…」
「運も実力のうちだよ一夏。それに入試試験は受験者のIS適正を測る為に設けられたものだから教官を倒す必要は無いのさ」
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
一夏の言葉に相当ショックを受けたのかオルコットさんは目を見開いたまま答えるが…
「女子だけってオチじゃないのか?」
一夏の何気ない一言にピシ!っとオルコットさんから何かが壊れたような擬音が聞こえた気がした。僕はそんな様子に嫌な予感がしたがオルコットさんは幽鬼のようにフラッと身体を前のめりに倒す。
「つ、つまりわたくしだけではなかったと…」
「いや、知らないけど」
「あ、あなたも教官を倒したって言うの!?」
「まあまあ、落ち着きなよオルコットさん」
「これを聞いて、落ち着いていられ―」
オルコットさんは剣幕を立てて一夏に迫るが…
キーンコーンカーンコーン…
無情にも3時限目を告げる予鈴が鳴り響くのだった。一夏はほんの少し安堵の表情を浮かべているのに対してオルコットさんは納得いかない表情を浮かべて一夏に指を指して宣言する。
「っ…!またあとで来ますわ!逃げ出さないことね!よくって!?」
オルコットさんはそれだけ伝えて自分の席へと戻って行く。
嫌だとはとても言える雰囲気ではなかった僕等は一応頷いたが…それにしても厄介な子に目を付けられたもんだ。どうしたものかな…はぁ…
「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」
3時限目の授業は山田先生が担当ではなく戦闘経験が豊富な織斑先生が教壇に立ち説明することになる。1、2時限目まで教壇に立っていた山田先生も必死にノートを取っており、クラスメイト達にいたっては織斑先生の言葉を一言一句逃さず聞く勢いで授業を聞いていた。客観的に見ると目が血眼になって見開いているから真剣さよりかは怖さが伝わる光景だったと言っておく。そして授業も一段落着いた所で織斑先生は何かを思い出すように口を開く。
「ああ、そういえば再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表を決めないといけないな」
クラス対抗戦の言葉に一夏は首を傾けるとそれを見た織斑先生は話を続ける。
「クラス代表者とはその言葉の意味通りだ。対抗戦だけではなく、生徒会が開く会議や委員会の出席にも顔を出すまあ、クラス長といったところか。ちなみにクラス対抗戦とは入学時点での各クラスの実力を測るものだ。今のお前達ではさほどの実力は無いが競争心は向上心を生み出す。一度決まれば1年間変更は出来んからな。期限は今日から1週間までだが自薦または推薦で決めて貰っても構わん」
ざわざわと教室がざわめき各自1人1人誰を推薦するか話していた。僕としてはある程度実力と人柄も良い人物を推薦したいが入学初日では誰が1番適任かだなんて解らない。ここは自分でも代表候補生として声高らかに自慢していたオルコットさんを推薦するのが最良の判断だろうと思っていたその時、1人のクラスメイトが手を上げる。
「はい!私は織斑君を推薦します」
「私も織斑君に」
「いえ、私はガモン君を推薦します」
「私もガモン君を推薦します」
それと同時に次々と僕や一夏を推薦するクラスメイト達が挙手し始めるが勝手に推薦された一夏は思わず立ち上がる。
「
ちょっ、ちょっと待ってくれ!!俺はそんなのやらないからな!!」
いきなりのことで一夏は立ち上がり抗議の声を挙げるがしかし…時は無情であった。
「勝手に立ち上がるな馬鹿者。それに他薦された者に拒否権は無い。さて、織斑とガモン以外いなければこのままこの2人に投票して決めてもらうが他にいないか?」
「い、いやでも…」
一夏は反論を続けようとするが場の空気は完全に僕等2人から推薦しようという流れが出来上がっていた。僕はオルコットさんを推薦しようと手を挙げようとしたその時…
「待ってください。納得いきませんわ!!」
1人の女生徒が机を叩き立ち上がるのだった。声の主は他でもない休み時間に大いに揉めたでオルコットさんであった。納得がいかない表情を浮かべたオルコットさんは教室内のクラスメイト全員に意義を唱える。
「そんな選出は認められませんわ。大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!!わたくしに、このセシリア・オルコットにこんな屈辱を1年も味わえとおっしゃるのですか!?」
オルコットさんは余程自分を推薦されなかったことが頭にきたのか今まで抑えていた堪忍袋の緒が切れて勢いよく口を開く。
「実力から行けばこのわたくしがクラス代表に推薦されるのが必然。それを物珍しいからといって極東の猿か、欧米の移住人にされては困ります!わたくしはこんな島国に来てまでIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ありませんわ!!」
オルコットさんの容赦ない罵倒は勢いが止まる事無く更にヒートアップして行くがそれと同時にオルコットさんの言動にクラスメイト達は苛立った表情を浮かべているが当の本人は気付く気配すらない。更には…
「いいですか?クラス代表は実力トップの人間がなるべき、そしてそれはこのわたくしですわ!!」
自分のことしか見えておらず、周りの意見を無視した自己中心的な発言をする仕舞いになっていた。自分に絶対の自信があるのは良いがこうまで歪んだ自信を掲げられては僕自身考えが変わる。だがオルコットさんの言葉が途絶える事は無い。このまま放っておけば取り返しのつかない発言に至るまで最早時間の問題だ。
「大体、文化としても
遂には日本そのものを否定する発言に至ってしまう。こうなっては取り返しが付かない。僕は歯止めが利かなくなった彼女を止めるべく立ち上がろうとしたが更なる爆弾が投下されることになった。
「イギリスだって大したお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」
この爆弾を投下したのは他でもない一夏だ。一夏は「やべっ」と言いたげな焦った表情を浮かべるもその一言に反応したオルコットさんは突然ピタっと止まり、顔を赤くして一夏に視線を向ける。
「あ、あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
オルコットさんは怒りを抑えられずにいたのか一夏に猛抗議の声を挙げそうになるがこれ以上は見ていられないな…出遅れたがこの不毛な言い争いを終わらせる必要がある。
「あー、2人共。盛り上がっている所申し訳ないけどそこまでにしておこう」
「なっ、なんですのいきなり!?今わたくしは祖国を侮辱したこの無礼者と話している最中ですの。関係ない方は席に着いてなさい!」
「関係ないか…残念だが大いに関係ある。オルコットさん、君の今までの発言は下手をすれば国際問題になりかねない可能性があったから言わせてもらった。君の発言を振り返ろう。君はさっき日本を文化としても
オルコットさんは何当たり前の事を聞いているんだと言った表情を浮かべるも僕の質問の意図を直ぐに理解したのか真っ赤な顔から真逆な真っ青とした顔色を浮かべて質問に答える。
「に、日本ですわ…」
「その通り、そして第1回モンド・グロッソ杯を優勝した織斑先生の出身国は当然日本だ。IS発祥の地でもある日本が一体何処が後進的だと言えるのかな?君の口から聞かせて貰えないかオルコットさん」
僕の言葉にオルコットさんは顔色が悪くなるが追い詰める必要は無い。彼女が自分の発言が如何に問題であったか悟って反省して貰えれば良いと考えていたが中々思い通りに行かないのが現実だ。オルコットさんは一言も発せずにいたが追い込まれた空気に耐え兼ね僕に向けて指を指す。
「そんな事、男の貴方に言われずとも理解していますわ!少しわたくしの発言に棚を上げて優位に立ったと思ったら大きな間違いでしてよ。決闘ですわ!わたくしの顔に泥を塗ったその愚行その身を以て償って貰いますわよ!!」
どうしてこうなった…僕は予想の斜め上を行く展開に頭が痛くなった。
「ちょっ、決闘って待てよオルコット!元はと言えばお前が…」
一夏がオルコットさんの理不尽な言動に耐え兼ねて声を掛けるが僕は利き手で一夏を制止する。君の気持ちは有り難いが相手は僕を所望している様子だ。悪いがここは僕に譲ってもらうよ。
「ああ、構わないとも。その決闘受けて立とう」
「言っておきますけどわざと負けたりしたらわたくしの小間使い―いえ奴隷にしますわよ」
「いいとも。その時は僕を煮るなり焼くなり好きにすれば良いさ。それで僕が勝てば君は何をしてくれるのかな?」
僕の発言に虚を突かれたのかオルコットさんや他のクラスメイト達も一瞬ポカンとした様子だったがすぐに笑い声が挙がる。
「ガモン君、それ本気で言ってるの?
「よしなってガモン君、後で惨めな思いをしても知らないよー」
「セシリア相手にそれは言い過ぎだよ」
僕の発言にクラスメイトが本気で笑い面白半分で答える。僕はそんな彼女達の言葉に冷や水を放つように言い返す。
「昔の話か…それは本当に実証済みかな?今ここにISを動かせる男が2人も居る。今の現状に胡坐を搔いて痛い目を見るのはどちらか見物じゃないか」
「ではわたくしが万が一負けた場合は、貴方の言う事を何でも聞いて差し上げますわ。最もわたくしが負けるなんて天地がひっくり返ってもあり得ない事ですが」
僕の言葉に馬鹿にした態度で話したクラスメイト達は一瞬、頭に来た様子だったが所詮は男の戯言と言った視線を向けて口を閉じる。対してオルコットさんは僕の言葉に冷静さを取り戻したのか嘲笑っていた。
「お、織斑先生、どどど、どうしましょう…」
事の顛末を見守っていた山田先生はあたふたした様子で一部始終を見ていたのに対して織斑先生は頭を抱えた様子だったが何かを吹っ切った表情を浮かべる。
「全く、入学早々こうも問題を起こそうとするか…まあいい、ガモン・オルコット以下2名の決闘を認める。クラス代表選抜はこの勝負が終わった後だ、勝負は明後日の放課後第3アリーナで執り行う。両名はそれまで準備を行うように。では今日の授業はここまでだ」
織斑先生が腕時計をチラッと見て時刻を確認し終えると3時限目終了の予鈴が鳴り響く。あまりのタイミングの良さに驚くのも束の間、クラスメイト達が一斉に教室から駆け足で走り出し他のクラスに言いふらしに向かったのだった。やれやれまさかこんな展開になるとは…その後、僕を心配するクラスメイトの声や一夏からは謝罪の声もあったが僕は「過ぎた事だから気にしてないよ」と答えて納得してもらい放課後を迎えるが既に校内中に噂が広まっており、いつの間にか僕とオルコットさんの勝敗を賭けた賭け事まで行われるほどにまで発展していた。まあいい。僕の選んだ選択に後悔は一切無い。それとこの程度で躓く様子ではあの方に遭わせる顔が無い。僕は放課後、山田先生に職員室まで呼ばれると学生寮の地図と僕の部屋番号が書かれたカードキーを渡され学生寮まで歩いていた。学生寮に着くと玄関前には織斑先生ともう1人の人物が入り口前で待っていた。その人物は僕の顔見知りでもあり、ここIS学園内では保険医として赴任している人物でもあった。
「お帰りなさいヴェリル。入学初日からお疲れさまです」
「ただいま沙苗さん。沙苗さんがここに居る事は…」
「ああ、彼女がお前と相部屋になる東城沙苗先生だ。といっても2人が顔見知りである事は知っているがその事を知っているのはここにいる私達だけだ」
「ええ、この事は他言無用でお願い致します織斑先生」
白衣を纏い桃色の長髪を三つ編みに纏めた織斑先生以上の背丈をした女性は東城沙苗と言い、IS学園の保険医として赴任している人物でもあり僕のサポート役として先に半年以上前から僕の実家ガモン家から派遣された人物だ。
「それと今日は色々と面倒事を押し付けてすまんなガモン、お前が一夏の助け舟になろうとしていたのは理解したがこうも話が抉れるとは私も予想していなかった」
「貴女が謝る事はありませんよ織斑先生。これは僕自身が招いた問題です、それに僕自身現役の代表候補生と戦ってみたい好奇心がありましたから」
「やれやれ、お前という奴は…考え方まであの姉に似てきたな」
「いえいえ、僕はまだバネッサ姉さんの足元にも及びませんよ」
「2人共お話はそこまでに致しましょう。そろそろ1年生の生徒達が戻って来る頃合いです。お話はまた今度」
「それもそうですね、ではガモン今日はゆっくり休め」
「ええ、お言葉に甘えて」
織斑先生は一言言い残して今日1日に起こった出来事の報告及び第3アリーナの使用許可の手続きを行う為、職員室へと戻って行った。織斑先生を見送った後、僕と沙苗さんは学生寮へ入り今日1日に起きた出来事をレポートに纏めて本国へ送信した。それから数時間後に一夏らしき人物の叫び声が聞こえた気がしたが…まあ気のせいだろう。
To Be Continued…
次回はいよいよヴェリルVSセシリアの対決を向かえます。オリジナル版ではヴェリルは自身の専用機を用いてセシリアに対抗しますが、リメイク版はどう変化しているかお楽しみに!感想やご意見も随時お待ちしております。