最近レッドキャップの動きがおかしい。   作:にんじんsf

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最近レッドキャップの動きがおかしい。

四駆八駆の沼荒野。

そこは各種鉄鉱が取れる良質な鉱山であり昼と夜で出現するモンスターが変わる初心者プレイヤーにとっての修練場でもある。

しかし最近そんな沼荒野にある変化が生じていた。

 

「どうしてこんなことに…!」

「くそっ一体どうなってんだ!ここらへんのレベル帯じゃねえぞこいつら!」

「俺もなんでなのかわかんねぇよ…!」

ある昼下がりの荒野にて3人ほどのプレイヤーが悪態をつきながら逃げ惑う。

それを追いかけるのは十ほどの小さな人に似た影。それぞれ赤い帽子をつけている。

ザッザッザッ…

その影は規則正しい足音を立てながらプレイヤーたちをじわじわと追い詰めていく。まるでそれは訓練された軍隊のように。

「うわー!」

追い詰められパニックになったプレイヤーの一人が火球を放つ。しかし影はそれをひらりとかわした。

そしてその火球が合図だったかのように影は一斉にプレイヤーへと襲いかかる。

「そもそもなんでレッドキャップが昼にいるんだよ…」

混乱で連携を崩されたプレイヤーたちはそんな断末魔を残して元いた街へと戻されることとなった。

 

それと同時刻、襲われるプレイヤーを見て嗤う影が近くの高台に一つ。

「フフフッ、ざまぁみやがれ!つるはしもスコップも持ってない時点でお前らの目的なんてお見通しなんだよバーカ!」

このかわいらしい少女の姿にモデリングされたキャラと相反する表情と言動をしている彼女こそが今回の事件の主犯である。

彼女はレッドキャップの集団攻撃と高い知性に目をつけより効果的な陣形と追い込み方、彼女の命令を聞くことを覚えさせた。もちろん抵抗されたが最終的には言うことを聞いたほうが強くなれると気づいたのか、彼女の強化に強化を重ねた剣型スコップ(性能的にはほとんど幅広の刃がついた丈夫な槍である)に殺されるのを恐れたのか従うようになった。

もちろん彼女がやっているのはMPKでありレッドネームにはまだなっていないものの(レッドキャップの知性が高いためかレッドキャップが自主的にやっている判定のようだ)カルマ値の大幅な上昇は避けられない。

ではなぜ彼女はそんなことをやっているのか、それは…

 

ピョコン ゲコッ

「あーん、マッフロちゃんどうしたんでちゅかー!お腹が空いちゃったのかなー?」

実は彼女は重度のマッドフロッグ厨だった。どれくらいかと言うとマッドフロッグを集めて自分専用の牧場を作るまでに。

そう彼女がMPKをするのはプレイヤーの魔の手からマッドフロッグを守るためである。

マッドフロッグはモンスターであり倒すと皮をドロップする。

そしてその皮は斬擊にある程度の耐性を持つ防具「隔て皮」シリーズの材料となるのだ。故にプレイヤーはマッドフロッグを狩る。そしてそれ故にプレイヤーは彼女らに狩られるのだ。

 

といっても彼女も最初からそんな過激派だったわけではない。ファスティアのしがない鍛治屋だった彼女は旅立つ初心者プレイヤー達を見守り続けてきた。当然防具の重要性も理解している。鉱石を掘っていると良く見かけるマッドフロッグはかわいいと思ってはいたが倒すことに異論は抱いてはいなかった。

そして開拓者たちのレベルが上がるにつれ高レベル帯のモンスターの素材が安価に手に入るようになり見た目もあまり良くない「隔て皮」シリーズの需要は下がっていった…それなのに。

きっかけは「ティーアスちゃんを着せ替え隊」だった。あの初心者の町で馬鹿騒ぎしてるPK集団どもは防具屋にとある依頼をした。「隔て皮の撥水着(すくぅるみずぎ)」の作製である。それによってマッドフロッグの皮のゴムのような質感は水着に最適だと知られてしまった。そしてプレイヤーの水着の需要に応えるために防具屋がマッドフロッグの皮を買い占めたために値段が高騰し初心者には手が出せなくなった。それだけではなく高値で売れるためにこづかい稼ぎとしてマッドフロッグ狩りが大規模に行われ鉱石を掘るプレイヤーの迷惑とすらなっている。

彼女は許せなかった。幼い女の子を追いかけ回し水着を着せるために自らが水着を来て初心者の町に居座る馬鹿も初心者用の装備の材料を買い占める馬鹿も迷惑も考えず狩りをする馬鹿も。

そして彼女はいつしかこう思うようになった。

 

かわいいマッフロちゃんはあたしが保護しなきゃ…そして薄汚い人間どもを滅ぼしこの荒野をマッフロちゃんの楽園とする…!

 

そう思い愛用のスコップを握りしめた彼女はレッドキャップを従える魔王となったのだった…。

 

そんな彼女には目標があった。このような騒動を起こした原因のPK集団、それに協力した防具屋に復讐するという目標である。もう水着の需要は止められない。牧場を作りレッドキャップに守らせても荒野全てを守れるわけじゃない。でもせめて。最初のきっかけの奴らに一矢報いてやらねば気がすまない。

それが八つ当たりであることを頭の片隅では理解していても彼女は止まるつもりはない。そしてついにその時は満ちた。

配下のレッドキャップ達を集めスコップを振り上げ宣言する。

「お前たちは強くなった!幾多のプレイヤーの血を啜り今や集団戦においてはプレイヤーたちに引けをとらないだろう!よって今夜!ファスティアに赴きあの憎きPK野郎どもに鉄槌を下す!」

レッドキャップ達は言葉を理解したわけではないだろうが興奮に乗せられたのかギャッ!と叫び声を上げた。 それは了解の合図。そのまま彼女らはファスティアに向かい着せ替え隊を囲んで…

 

 

ぼっこぼこにされた。やはりPKの頂点にいたものたちは例えふざけているようでも格が違った。配下を失った彼女は反省し教会へと行き、荒野は元の平穏を取り戻したのだった…。しかしどこからか伝達が飛んだのか水着は完全受注生産となり皮の値段が高騰するということはなくなったそうな。めでたしめでたし。

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