マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート すずね☆マギカチャート(マギウスの翼チャート)   作:鰯のすり身太郎

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Part.10/x

 

 

 

 祈祷力が試されるRTA、はぁじまるよー。

 

 前回は運ゲーに大敗北してタイムやらグリーフシードやらをロスしましたが、いまだ運ゲーは続いております。というか本来こっちが本命、賭ケグルイ兎はいろんなところに沸くクソエンカみたいなものです。

 では本命のほう、団地イベントが成功しているかどうか、そろそろ確認できるようにしに行きましょう。今日からだいたい一週間以内にクリアが確認できなかったら再走です。マジ震えてきやがった……(30敗)。

 

 

 

 というわけで、やってまいりました商店街。今日は昼に一体魔女を倒せましたし運の流れが来ている気がします。

 さて、まずは道端に人混みができているか見ていきます。この人混みですが、周回ごとに場所が変わるので捜索に若干手間がかかります。とはいえ完全ランダムというわけでなく、何通りかのパターンの上なので焦らずねっとり探索していきましょう。どこ……ここ?

 

 ……お、見つけました。

 遠目でもわかるくらいの大きな人混み、そして遠目でもわかるくらいのペースで散っていく人たち。

 間違いなくあやかのストリートライブですね。よく心が折れないなって思うわけ。

 

「さあいきます! ここでとっておきの新作ギャグ! ……巻き! 握り寿司ぃ~っ!」

 

 ちょっと何言ってるかわからないですね(TMZW)。

 彼女のギャグセンスはご覧の通りのぶっ飛びっぷりです。謎の寿司ネタとHHEM村ばりの激寒ギャグが飛び交うこのストリートライブですが、うまくいっていれば二人の魔法少女がこの観客に混ざっています。

 

 一人は以前会った雫ちゃん。もう一人が団地組の一人のせいかです。

 このライブにせいかが観客として参加していれば、団地イベントが確実に成功していることになります。

 

 簡単に説明しますと、せいかがここでストリートライブを見るようになるには彼女の誕生日イベントが発生する必要があるのです。そしてその誕生日イベントは団地イベントが成功しないと発生しないので、こうして参加しているかどうか確認することで団地組と面識を持たず、成否だけをチェックできるんですね。

 雫ちゃんに電話でライブの様子を聞くことで確認するのが普通ですが、そのためにはまずあやかのライブの情報を入手している必要があるので、初回はこうして顔を出す必要があります。

 

 さて、あやかの連絡先は持ってないので代わりに雫ちゃんがいることを確認しましょう。雫ちゃんは基本的にライブに参加しているのでそこは心配しなくて大丈夫です。ここから見えるかな?

 

 ……ん? おぉ? あの水色髪! お笑いを見ているとは思えない仏頂面!

 やりました! 間違いなくせいかです! 再走ポイント突破! どうにか前回突破してよかったって思うわけ(安堵)。

 普段は雫ちゃんに何回か電話で確認してやっと、というのが多いので一発発見はなかなか珍しいし嬉しいです。ええぞ! ええぞ!

 

 

 では確認はできたので帰りましょう。ついでに調整屋へ寄ってもいいかもしれないですね。使いおわったグリーフシードが貯まってきました。

 

「あー! ホタルさんじゃないですかー!」

「ちょっと、あやか……ホタルさんびっくりしてるって」

 

 ファッ!? ……いつの間にかライブ終わってるじゃないか(困惑)。客いなくなるの早い……早くない?

 えー、うーん、どうしましょう。雫ちゃんはまあいいんですけど、あやかはあまり信頼度あげたくないんですよねぇ……。あやかがまかり間違ってマギウス入りしたらその時点でチャートはお亡くなりになりますし。だからそのニードルローラーのチケットはしまって、どうぞ。

 

 仕方ないので適当に相手しておきましょう。今日一日ぐらいならそんな大きく影響することはありません。で、どこにいくんです? バイトも何もしてないのでお金ないですけど。

 

「んー、どうしますかねぇ。やっぱり雫ちゃんちがいいかな? ね、雫ちゃん。いーい?」

「別にいいけど、うちって喫茶店だからね? お金いらないってわけじゃないんだよ、一応」

 

 本当に申し訳ない。

 

 お金がある方が取れる動きは当然多いんですが、バイトすると使える時間は減るし、他の魔法少女といらない交流が生まれる可能性が爆上がりするしなので本チャートでは削っています。

 今回は雫ちゃんがおごってくれるみたいです。前回に続きすまんのぉ……。マギウス加入後はお小遣いがもらえるのでそれまで頑張ろうなホタルちゃん。

 

  

 時期的に言えば、マギウス結成もそう遠くないくらいになってきています。みふゆさんの様子からするとまだ勧誘されてないみたいなので、気づかないうちに、ってことはなさそうです。あると今後が少し辛くなるのでここばかりはガバがないことを祈るばかり。

 

 明確にそれを判別する方法として、キュゥべえの存在の有無があるんですが……まだ会ってないんですよね。わざわざ会いたいような奴でもないのでまあ別にいいっちゃいいんですけど。

 あいつ自体はイベントで必要な情報を聞き出したり、魔法少女になるか不安定な子を確実に契約させたりするのに役立つので利用価値がないわけではないですが、このRTAに関してはまず使えません。お金の工面もしてくれません。君もう帰っていいよ!

 

 これは完全に余談になりますが、マギウス3人組の監視をする、ないしキュゥべえにさせるというチャートも以前試したことがあります。

 結果はまあ、あいつら相手にそんな小細工は逆効果でした。監視のためにはあいつらの情報をどこかしらで入手する必要もあるので、結局そこからバレて襲われるか、よくても警戒されるかなんですよね。マギウスの翼に入ることすら難しくなります。

 そんなわけでやっぱりみふゆさん経由が一番安定すると思います。突飛なことをやることもないし。

 

 

 まあともあれ、団地イベントがおそらく無事に終わったであろうことはこの先のためにもかなり安心できることです。後の懸念点は団地組でのせいか以外のふたり……『相野みと』と『伊吹れいら』が契約してくれているかどうかですね。

 誕生日イベント発生はハッピーエンドじゃないとしないので、たぶん大丈夫だとおもうんですが……全員での契約なしでも到達しないわけではないです。一応。

 プレイヤーの介入なしでそこまでうまくいったためしはありませんが、万が一いってしまっていたらあるイベントのクリアの難易度が上がります。そうなるとかなり力を入れて介入する必要が生じるのが怖いところ。

 ただまあ、こればかりはそのイベントが来るまでなんとも、といった感じですね。団地組と会う予定は無いですし。

 

「むむっ! この反応……使い魔かな?」

「みたいだね……先に片付けようか。ホタルさんもお願いします」

 

 おぉっと。魔女じゃないのが残念ですが、まあいいでしょう。

 ちゃんとこういう使い魔も狩るのが神浜の子は多いですね。もったいないからと放置すると周りの信頼度が低下していくので通常プレイでもきちんと倒すのがおすすめです。マギウス内でも下がるキャラは割といるので、本RTAでもしっかり狩っていきます。というわけでイクゾー!

 

「結界見っけ! いっくよー!」

「ちょっとあやか! もう!」

 

 おっほっほっほ~元気だ(レ)。魔力もあまり使いたくないので、適当にふたりについていきましょう。

 

 しかし、なにか入った時変でしたね。結界が綻んでるというかなんというか、なんか先に誰か入ってるみたいな。

 ……ん? 使い魔? 先客? この二人で? ……なんか嫌な予感が。

 

「はぁーっ! ……今だよ!」

「よーし! いーかげんに……しなさーい!」

 

 あ、結界が消えましたね。そっすねあやかさん、あっさり片付いて何よりで。ええ。

 ……いや違う、そうじゃない。大事なのは……!

 

「あーっっっ!!」

「ぬぬっ!? ……おっと! 魔法少女……?」

 

 こっち! せいかです! 

 ほかの魔法少女との遭遇イベントに出くわす。こういうケースは前にもあったよなぁ? 雫ちゃん実はタイミング図ってたりしない?

 

 

 

 というわけでせいか共々喫茶店です。(せいかとあやかのHHEM合戦は)キャンセルだ。

 ここでHHEMを言い放って参戦すると二人の信頼度を一気に稼げるので信頼度が欲しいならうまあじポイントでした。あと雫ちゃんも上がります。でもこのRTAには必要ねぇんだよ!

 

 そんなことよりも大事なことがあります。みとちゃんとれいらの契約の確認です。

 どうせ会ってしまったのなら、必要な情報をしっかり抜いておきましょう。若干の信頼度上昇のデメリットがあるならその分しっかり儲ければいい、はっきりわかんだね。

 

 ……いやニードルローラーのチケットはいらんて。そんなもん見てきたらタイムロスの上信頼度もガバるとかいう最悪中の最悪ですよ。せいかに話を振って話題を変えさせます。そうすればあやかの話が始まるので今の話題から逃げられるでしょう。

 

「そっか、人見知りの克服で……実は私も、昔は暗かったんだ……」

 

 よしよし。大胆な過去語りは魔法少女の特権。だからといって自分もとやり始めるとガバもいいとこなので絶対やらないようにしましょう。最悪魔法少女ストーリーが始まったり再走まっしぐら案件になったりします。

 

 

 ……あ、終わりました? じゃああとは、みととれいらが魔法少女になっているか聞いておきます。

 二人友達がいること自体はせいかが話したことで情報を抜けるので、そこから魔法少女仲間なのかさえ聞いておけばいいです。どう? (回答)出そう?

 

「……そ、そうです! 大事な、大好きな、友達で……!」

 

 よきかな。これで団地関連の不安要素がなくなりました。ここからは例のイベントに備えていくようにします。アザレアと団地がクリアされていたらまず確実に発生しますからね。

 

 じゃああとは適当につきあっておきましょう。こういう時間はトイレタイムになるくらい暇ならいいんですが、微妙にそうならないのが困りどころさんですね。

 ……いやだからニードルローラーのチケットはいらないから。単純にいらないから。オーケー? ……いらねえっつってんだろ! ノー漫才! 連絡先まで抑えようとするんじゃねぇ!

 

 そうそうそう、せいかとあやかで行ってきてください。ホタルちゃんはこれから忙しくなるからね、しょうがないね。……微妙に裏切られたような目をするな雫ゥ!

 

 

  

 今後に備えてチャートを確認しつつ、今回はここまでです。御視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 〇 〇 〇 〇 〇

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 ふいに口からため息が漏れる。それを聞いてもう一度、ぽろり息を吐いた。

 マンションから見えるいつもの景色も、一人になって見てみれば不思議と懐かしさを感じる気がした。毎日毎日見ていたはずの景色なのに……。

 

 

 

 ……私たちが住む神浜大東団地でのひと騒動が終わり、ぎこちなくてつらかった日々からまた、いつもの日常へ戻ってくることができた。

 魔女に殺されたれいらを生き返らせるため魔法少女になって、それでこんな世界にれいらもみとも関わらせたくないって必死になって……。でもかえってそのせいで、れいらが魔法少女の契約をしてしまって喧嘩しちゃって、そんな私たちのためにみとも魔法少女になって。

 

 でも最後には仲直りできたし、団地に巣くっていた魔女だって倒せた。みんな魔法少女になっちゃったこととか、みとが転校してしまうこととか、変わってしまったこと、変わることもあるけれど、それでも私たちはこれを乗り越えて、今までよりももーっと深い絆でつながることができた!

 

 

 そしてふと気づけば、もうじき私の誕生日、という時期になっていた。毎年私たちはお互いの誕生日を祝ってきたし、たぶん今年も二人は祝ってくれるだろう。それはとってもありがたいことだ。

 でも私はこうも思う。そんな節目の日、私はただ二人に祝われるだけでいいのだろうか、と。

 ……いいや! そんなはずはない。せっかくの誕生日、私はその時、成長した私を二人に見てもらいたい!

 それにそのための方法はすでに見つけてある。すなわちそれは……「笑い」!

 

 私には昔から変わらない悩みがある。そしてそれをいまだ解決できないまま、ついにまた誕生日という節目を迎えようとしている。……人見知りだ。

 これに私は昔から苦しめられてきた。人見知りが頂点に達するととんでもなく怒っているような表情に見えることもあって(自分ではよく分からないが)、人付き合いが良い方向に転んだことはほとんどない……。

 最近も結界で出会った他の魔法少女にそれで逃げられてしまった。二人がいれば誤解されることも少ないのだけれど、いつまでもおんぶにだっこでいたくない。そう思いながらもいまいち克服の手がかりをつかめないでいた。

 

 

 しかし! そんな私に衝撃的な出会いが訪れる……!

 

 ひょんなことから見かけた毬子あやかさんのストリートライブ……。人見知りに悩む私の目に飛び込んできた彼女の姿は本当に衝撃的だった。

 客は全く笑っておらず、それどころかどんどん帰っていってしまっているくらいなのに……全く心が折れていない! なんてハートの強さだろう!

 そして思った。その強さが私にあれば、変われるかもしれないと!

 

 こんな経緯で、「笑い」に光明を見出した私は、それの勉強を始めた。

 毬子さんのライブに通う傍ら、辞書で「笑い」を引いてみたり、ダジャレを考えてみたり……。私は一歩ずつ、自分なりの笑いを追求していった……!

 

 

 

 気づけば今日も私はいつもの商店街へと足を運んでいた。かなり考え事に没頭してしまっていたが、それでも足を運んでいるとなるとこれはもはや、今の私にとって毬子さんのライブへ通うことは無意識に行うほどのものということか。ますます敬意が強まっていくのを感じる……!

 

 毬子さんのライブはいつも初見の人が多い。しかもそう長く見ている人はまれで、始まりこそ大きな人混みでも、終わるころにはすっかり人がはけているというのもザラだ。何度も見ていて、かつ最後まで居続けるというのは私ともう一人……紫の髪の人くらいだろうか。

 彼女のファンが私だけでなく、もう一人でもいるというのはとてもうれしいものがある。人見知りを克服できたら、ぜひ一緒に話してみたい……!

 私は新たな目標を胸に抱き、またライブへと意識を傾けた。

 

 

「どうもありがとうございましたー!」

 

 ……今日もまた、彼女は騒々しいライブを最後まで駆け抜けていった。毎回のことだからなかなかそうは見えないが、ライブのたびに新作を引っ提げてくるというのはそうできることではない。

 その飽くなき向上心もハートの強さによるものなのだろうか?

 

 そういえば、今日は最後まで残っている人がもう一人多かった。

 黒いジャージの女の人……。最初はいなかったので途中から聞いていたんだろうけど、ライブの途中ふと目に入った時にはずっとにこにこ笑っていたのが印象的だ。よほどライブが彼女の琴線に触れたに違いない。新たなファンの誕生ということだろう。

 さすが毬子さん。強いハートでまた、新たなファンの心をつかむとは……。本当にすごい人だ。

 

 

 

 そんな日での帰りのことだ。今日のライブを頭の中で反芻していると、ソウルジェムに反応があった。

 

(追わないと……!)

 

 魔法少女として、こういう反応を見逃すわけにはいかない。少し辺りを探せば反応のもとの結界はすぐに見つかった。

 笑いを探求するのも大事だが、いったんお休み。今いるのは私一人だけだし、ここからはシリアスにいかなければ。

 

 そうして結界の奥へと進んでいくと、一体の使い魔が顔を見せた。やはり魔女のものではなかったらしい。

 とはいえ、だからといって油断してはいけない。そう気を引き締め、戦おうとしたその時。

 

「はぁーっ!」

「……え?」

「今だよ!」

 

 どこからともなく飛んできたチャクラムが使い魔を切り裂いた。その主は……なんと! あの紫髪の毬子さんのファン!

 しかし驚いたのはそれだけじゃない。彼女の呼びかけた先の魔法少女は、もっと驚くべき人だった。

 

「よーし! いーかげんに……しなさーい!」

 

 そう言って振りかぶったハンマーで使い魔にとどめを刺した魔法少女。それは最近、何度も聞いた声の主。そう、あの毬子あやかさんだ!

 

「おあとがよろしいようで!」

「なんだ、もう倒しちゃったの? 何もしてないし、ちょっと申し訳ないな」

「いやいや! ホタルさんが気にすることじゃありません! あたしと雫ちゃんが強いってだけですから! なははー!」

 

 少し遅れてやってきた外套の人は、今日ライブを見ていたジャージの人。

 次の瞬間、いろんな驚きのこもった叫びが私の口からこぼれていた。

 

「あーっっっ!!」

「うわぁっ!?」

「ぬぬっ!? ……おっと! 魔法少女……? ……しかも見た顔!」

「……私も……」

「雫ちゃんも?」

「あー、びっくりしたぁ……。そういえばさっきライブにいたね。ふたりとも知り合いなの?」

「まぁ知り合いというか……」

「いつもあたしのライブを見に来てくれるんです! いやー、まさかお客さんが魔法少女だったなんて……すごい偶然だね! お名前は……?」

 

 まさか、毬子さんとそのファンのお二人が揃って魔法少女だったとは……。こんなことってそうないんじゃないだろうか?

 ……いや! そんなことを考えている場合じゃない。名前を聞かれたんだから、ちゃんと答えないと。……で、でも!

 

(ダメだ……言葉が……出ない!)

 

 私の口は震えるばかりで、ちゃんと言葉を発せない。前に魔法少女の人と会ったときとかと同じ状態だ。ど、どうしよう……。

 

「あの……?」

「……」

「大丈夫? 苦しいの?」

 

 ある意味苦しいです……! 言葉が出ない……これじゃあいつも通り……いや! ダメ! ちゃんと目の前の人を見て言葉にしなければ! この人を見て変わろうと決意したんじゃない、私!

 

「すごい顔してるけど……」

「使い魔に攻撃を受けてたとか……? 休める場所、この辺にあったかな……」

 

 なにか言っているけれど、いまいち頭に入ってこない……それでも、学んだことを何とか生かさなければ……!

 

「……ま……!」

「……ま?」

「……ま、ま、ま……魔法少女なのは……まあ、本当です!」

「え?」

「へっ?」

「む! ……ならば……魔法少女なら……マジ、苦労するよね!」

「……は!」

 

 こ、これは……『魔法』と『マジック』をかけたギャグ! こんな一瞬ですかさず返してくるなんて……!

 

「……あの……あやか?」

「えぇと……ふたりとも、どしたの?」

 

 ならば、次は……!

 

「こ、こんなところにマンホールが!」

「まあ、放っておきましょう!」

「そうしまほう!」

 

 すごい! 私の意図を素早く読み取って返してくれる……! さすが毬子さん!

 

「……いや、そんな目で見ないでくださいホタルさん。私だって分からないです。なんですか急にマンホールって」

 

 やった! 私は、ついに殻を破れた……! ……たぶん……!

 

 

 

 その後、流れで私は皆さんが行く途中だったという喫茶店に一緒に行くことになった。なんでも私がファンだと思ってた紫髪の人……雫さんのおうちでもあるんだとか。

 

「私は保澄雫……ライブに行ってたのは毎度すごく誘われてたからだけど、まあ……ファンといえばファン……なのかなぁ」

「照れなくていいんだよ!」

「照れてないよ……」

「すごい素の返し……」

「あはは……私は朝倉蛍。世界を旅する魔法少女! ふたりとは前、たまたま知り合ったんだ。今日までこういうのをやってることも知らなかったよ。……でもパンクじゃなくてこう……お笑い? なんだね?」

「パンクぅ? なんでですか?」

「あー……いや、違うんです。そもそもあやかと行ってきたのもパンクじゃなくて……」

「え、あれお笑いだったの? てっきり新しい流行りのバンドの名前とかかと……」

「うえぇーっ! ニードルローラーを知らないなんて勿体ないですよ! やっぱり今度一緒にライブに行きましょう! チケットとっておきますから!」

「いやぁー……私は遠慮しとこっかなー……。あ、そうだせいかちゃんはどう?」

(え? 私? えぇーっ!)

 

 喫茶店に入ってどうにかこうにか自己紹介を済ませ。そのまま彼女たちの話を聞いていると、急にこちらへと話が飛んできた。ジャージの……朝倉さんからの突然のキラーパス!

 ど、どうしよう……毬子さん一押しのお笑いを見られるなんて思ってもみなかったし、行けるならぜひ行きたいけど……。しかし、私が『笑い』を勉強しているのはそもそも人見知りの克服のため。このことを打ち明けずに一緒に見に行く……というのは難しい。間違いなく楽しんでないとか誤解されるだろう。

 

 

「あ、あああ、あのっ!」

 

 そういうことも相まって、私は毬子さんへ自分のこととか何とか、そういうのも含めて思いのたけをぶつけることにした。緊張しながらだったけど、皆さんちゃんと聞いてくれて……そうしてなんとか話し終えると、静かに毬子さんが口を開いた。

 

「そっか、人見知りの克服で……実は私も、昔は暗かったんだ……」

「……え?」

 

 そうして彼女の口から話されたのは、思いもよらなかったこと。

 毬子さんは願いの力で明るい性格を手に入れたのだという。明るい友達にあこがれ、その人のようになりたいって……。

 

「だからちょっと前まで、後ろめたさもあったんだ……これは本当の自分じゃないっていう、さ。でもね! そこにいる雫ちゃんに励ましてもらったの! 今の私も本当の私だって!」

 

 それは、なんて。

 なんてすばらしいことだろう! そう伝えると保澄さんは顔を赤くして伏せてしまった。私の好きなドラマみたいで本当にいいものだと思うんだけど。

 

「せいかちゃんは願いで……っていうわけにはいかないけれど……きっと変われるよ! だよね? ですよね?」

「……うん、そうだね」

「私もそう思うな。ほんとに思っているなら、きっと形になるって」

「毬子さん……保澄さん……朝倉さん……!」

「なりたい自分を求めていくのが願いをかなえるってこと……なんじゃないかって言ってみてしまう私!」

「おっ! あやかちゃんいいこと言った!」

「なははー。でしょー!」

 

 温かい言葉が胸にしみる……! 

 この後毬子さんは私に、自分を変える手助けとして自分の持ちネタをひとつ教えてくれた。なんて太っ腹! このネタを誕生日の日、私の成長の証としてれいらとみとに披露できないだろうか……。いや、してみせる! 変われるといってくれた皆さんのためにも!

 

「雫ちゃん……。私あまりテレビとかって見ないんだけど、やっぱりどうにか見たほうがいいのかな? なんだか流行りについていけてない気がするよ……」

「いや、流行ってないですから……。騙されないでください……」

「流行ってないのぉ……?」

 

 

 

 ……そして気づけばその日は、私はすっかり日が暮れてしまうまでお邪魔してしまった。

 お笑いのことや人付き合いのこと、魔法少女のこと……私は終始緊張しっぱなしだったけど、それでもかなり頑張って話すことができた! と思う。

 

 さらに、今度の毬子さんおすすめのライブにもなんと一緒に行くことになった!

 他にも誘われてた朝倉さんはその日は予定がある、と言って断ってたけれど。

 

「……本当に予定あるんですか? そんな忙しそうには……」

「いやいやいや! マジのマジだよ、大マジだよ。信じて! ね!」

「うーん、残念だなぁ~。ほんっとーに面白いのに……あ、そうだ! だったらその次のライブに行きましょうよ! 連絡先教えてください! 決まったら連絡しますから!」

「えっ」

「あやか、その辺に……うーん、ま、いいか……」

「……ねえ、やっぱりその反応的にアレな奴だよね? ねえ、雫ちゃん目をそらさないでって! ねえ!?」

「まあ……せっかくだし、見てきてもいいんじゃないですか?」

「いやいやいや! 面白いですよ本当! 雫ちゃんはまあ、ツボに合わなかったみたいだけど……」

「やっぱそれダメな奴じゃないかなぁ……?」

 

 

 あの日の皆さんの声がよみがえってくる。まさか私がああして一緒にれいらとみと以外の人と長く話していられるなんて……。

 わかる。確実に私は成長している……!

 ふつふつと自信がわいてくるのを感じる。何度も何度もあの時を思い返し、今日という日へ私は備えてきた……!

 

「お邪魔しまーす! おーい! せいか、来たよ~!」

「お邪魔します! あ、おばさん! 私、ケーキ焼いてきたんです!」

 

 玄関からふたりの声が聞こえる。

 ……そう。今日は私の誕生日当日。私の成長をふたりに披露する日!

 

 毬子さんからいただいたネタは何度も何度も心の中で反復して練習した……。そして何より、これまでの努力こそが今の私の背を押してくれている!

 

「二人とも、今日は来てくれてありがとう……!」

 

 出迎えに行く足が不思議と軽い。祝ってくれることはもちろん嬉しいし、ありがたい。けれど今の喜びはそれだけじゃない。自分の成長を見せられる喜び!

 今日だけじゃない。きっと私、これからも一歩ずつ変わっていける!

 こういう時の言葉は、好きなドラマでいうなら……そう!

 

(私の戦いはこれからだ……!)

 

 玄関へ行くと、二人の笑顔が見えた。魔法少女になってひと騒動があって、それでもまた見られるようになった笑顔。

 ちょっと早いけど、一足先に心の中で。祝ってくれることのほかにもいろんな意味を込めて……。

 

 ありがとう! れいら! みと!

 

 

 

 

 




Archive
〇バイバイ、また明日
  入れたかったけど入れられなかった(メタ)。
  団地組の心温まる友情ストーリー。

〇アルバイト
  資金も信頼度も稼げるうまあじのはずの行動。
  チャートとの食い合わせが悪かった。

〇契約してなかったらどうなるの?
  今から他魔法少女の信頼度を上げる羽目に。
  まず再走。
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