マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート すずね☆マギカチャート(マギウスの翼チャート)   作:鰯のすり身太郎

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「はぁ、はぁ、はぁ……撒いた!?」
「いいえ、まだ……! 止まったらすぐに追いつかれるわ、急いで!」
「そうはいってもさぁ……これ、いつまで続くわけ……?」
「あぁもう……! 何だってこんな……!」

 悪態をつく。存外余裕があるな、と自分に苦笑したくなる。
 ……もっとも。頭は動いていても、身体にはそんな余裕は無いのだけど。

「逃がしませんよ……! 神妙にお縄につきなさい!」
「こっちだって手荒な真似はしたくないからさ……逃げないでくれると助かるんだけど!」
「っ……! 本当、キリが無いわね……!」

 このはの声が早いか、アタシ達が走り出したのが早いか。
 息を整える暇も無い。本当に面倒なことになったと痛感する。

(いったん隠れてやり過ごそう! 多勢に無勢、このままじゃそう遠くないうちに追いつかれる!)
(あちしも賛成……! これじゃあ、逃げ切る前にスタミナ切れだよ!)
(そうね……。あそこの通りにさしかかったら私が霧を出すわ。合図をするから合わせて……!)
((了解……!))

 走る二人へ念話を飛ばす。もはや言葉を出す余裕は無かった。

 口を開けずとも会話でき、しかも相手に中身が聞こえる心配も無い。
 便利なものだ、と思う。魔法少女になる前からこれができれば、随分楽しかったし便利だっただろう。

(いくわよ、3、2、1……今!)

 振り向きざまにこのはが武器を振るうと、辺り一面に霧が立ちこめる。合わせ、アタシもすかさず放電。

「なっ……!」
「くっ、まぶしい……!」

 霧のスクリーンが激しく明滅する。
 夜の暗闇に慣れた目を潰すには、それは十二分の効果を発揮した。

 魔法のため足を止めたアタシ達を、すかさずあやめが担いで走る。

 ……物陰に身を隠す。そのうち、追っていた二人が通り過ぎていくのを見てやっと息をつけた。


「……やり過ごせた?」
「……みたいね……」
「なんなの……もう! どうしてあちしたちがこんな目にあうのさ~!」

 あやめの言うとおりだ。……まさか、家を出て途端にこうなるとは思わなかったけど。
 追われるわけだって分かっている。彼女たちが必死になって追っているわけも。
 だが。

「誰か……私たちをこんな状況に陥れた奴がいる……!」
「だね……」

 ひどい濡れ衣だ。アタシ達は何もしていないっていうのに……!



 ……数ヶ月前。アタシ達がここ、神浜へ戻ってきたときに起きた魔法少女襲撃事件。
 狂言にすぎなかった、被害者のいないはずだったそれが、今になって起き始めたらしい。


 アタシ達は元々それを追っていた。この町のベテラン……七海やちよと一緒に。

 調査を始めたのは被害者が出る前……もっと言えば彼女との衝突の後から。
 
 今はこのはも一緒だけど、最初に噂の出本を調べていたのはアタシだ。
(……ちなみにだが、あやめは危なっかしいので調査に参加させていない。このはも同意の上だ。もっとも、あやめは不服そうだったけど……)

 しかし、調査は最初は順調でも、ある線から一切の情報が途切れてしまうようだった。それは、以前十咎ももこと事件を追っていたときと全く同じで。

 魔女にこんな芸当ができるとは思えない。明らかな作為……いや、悪意すら感じたほどだ。
 しかし、それはつまりアタシ達を陥れようとする()()()()がいるということ。
 裏で糸を引く魔法少女の存在を強く感じていけばいくほど、アタシは慎重になっていき……そのうち調査には何の発展も無いのが当たり前になった。

 
 深呼吸。現状の把握のため、今一度過去も整理するべきだ。

 そもそもの始まり。例の噂は市外の魔法少女が利益のために、神浜の魔法少女を襲っているという内容だった。
 そしてちょうど神浜へと越してきたアタシ達が犯人として疑われ……終いには七海やちよ達との衝突まで発展したのだ。

 あの時は本当に大変だった。錯乱気味のこのはをどうにか説得できたから事なきを得たけれど……。
 ……錯乱気味だったのは、本当にこのはが環境や噂に振り回されたから、だけか? 例の魔法少女の糸が伸びていたのでは? もしそうならどうして決定的に対立させたままにしなかった?

 ……あぁ、ダメだ。今疑いだしたらキリが無くなる。考えるにしても後回しにすべきだ。

 別の事へ目を向けよう。このはを説得できたのは、あやめとその友達がいたからだ。

 夏目かこちゃんと、深月フェリシアちゃん。どちらも形こそ違えど、あやめの良い友達になってくれている。
 そしてその二人と一緒にあやめと付き合ってくれていたのが……。

「見つけた!」
「こんな所に隠れていたのですね……!」
「っ!」

 バレた。通り過ぎたはずだけど、わざわざ戻ってきて調べ直すとは周到なことだ。どうせなら、冷静にこちらの話を聞く方向にその丁寧さを向けて欲しいものだけど。

 竜城明日香と美凪ささら……家を出たときからこっちを追ってきた二人は、エミリーちゃん……木崎衣美里の友人だ。
 余裕がなくてゆっくりと話を聞けてはいないけど、このは曰く、彼女を含む数人の魔法少女が被害を受けたらしい。

 しかも……あぁ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうんだから……!

 そりゃあ、疑って当然だ。アタシだってこのはかあやめが同じ目に遭ったら、まずそいつに疑いの目を向けるだろう。

 けれど、だからってやってない罪をおっかぶる気はない。
 話を聞いてくれる雰囲気でもないし、そもそもそんな悠長にしてたら黒幕に何をされるか分かったものじゃない。

 そしてまた走り出そうとした足が、止まる。

「見つけた……!」
「待って……」
「悪いけど、逃がさないよ!」

 背後には、3人の魔法少女。
 保澄雫。加賀見まさら。江利あいみ。……なるほど、となると鞠子あやかと粟根こころも被害を受けたとみた。

「オマエ達、あいつらは見つかったのか!?」
「ちょうど今追い詰めたところです……!」

 前方にまた一人、魔法少女が増える。
 都ひなの……最悪だ。七海やちよにこそ及ばずとも、相当なベテランと聞く。

「うぐぐぐ~……! どうすんの、コレ!?」

 あやめの声に何も返せない。
 前方にも後方にも、それぞれ3人の魔法少女。左右はビルで塞がっている。
 ……考えれば考えるほど、万事休すだ。一か八か、説得に賭けてみるしかない……が、そう良い方向に向かう気もしない。

 じわりじわりと、にじり寄ってくる彼女たち。
 諦め、ため息をついたそのとき……空から何かがふってきた。

「なっ……!」
「うわぁ! 何だ!?」

 フェンスの残骸。コンクリート片。そして、穴の開いた土嚢。

 夜の暗闇も相まって、視界が完全にかき消える。
 混乱する中、声が聞こえた。

「目を閉じて。口も。2秒後に跳ぶよ」
「その声……!」

 声の主は意外な人物だった。
 あの日から、すっかり姿を見なくなった人物。

 戸惑った頭のまま、服の裾を握られた感覚があって……次の瞬間、景色が切り替わった。

「!?」

 土煙の暗闇から夜の空へ。そして目に映る夜景が断続して切り替わる。

 ほんの数秒だけ続いたそれは、ひどく頭を揺さぶって……コンクリートに打ち付けられた痛みで目を覚ました。

「きゃぁ!」
「ぐえぇ!」
「いったぁ!」

 ふらふらした頭で周りを見れば、そこはどこかのビルの屋上だった。
 ここ、という確信は持てなかったが、さっきまでいたところから離れているのは確かだ。

 そして、もう一つ。フェンスに寄っかかってえずいている魔法少女がいた。
 夜でも目立つ蛍光色の外套。そして何よりもさっき聞いた声から、その人物が誰かは明らかだった。

「ホタル! アンタどうして!」
「あはは……あやめちゃん、久しぶり……うえぇっ」

 かこちゃんとフェリシアちゃん。その二人と一緒にあやめと遊んでくれていて……そしてあの日からアタシ達の前に全く姿を現さなくなった人物。
 朝倉蛍。彼女だった。





Part.13/x

 

 叩いて被ってジャンケンポン!(リセット)なRTA、はぁじまるよー。

 

 前回はマギウスの翼に無事最速加入できたので、今回は散花愁章を攻略していきたく思います。

 

 というわけでホタルちゃんにはひたすら寝て起きてを繰り返していただきましょ。

 どうせやることも無し、ねっとりリセマラしていきます。快眠! 爆睡! 就寝! K! B! S! って感じでぇ……。

 

 一日を終える、一日を終える、一日を終える、一日を終える、一日を終える……。

 ……画面が動かず退屈も良いところなので、ここでみなさまのためにぃ、こんな動画を用意……できなかったので、ここの突破条件について説明させていただきます。

 

 

 前回お話ししたとおり、このリセマラができるのは3回が限度です。

 最速で拠点で寝ていくのを繰り返し、顔合わせイベントの発生が早いか散花愁章発生が早いかを賭けるだけのこの作業。

 大体発生までには数週間かかりますが、単調作業だからってそんだけ操作してたら普通にちょっとしたイベント一つ二つ分の時間はロスります。

 

 しかも散花愁章にしたって、ろくにレベリングも信頼度上げもしてない上にホタルちゃんは弱体化していくため、とれる方策も少なく、突破も厳しくなります。

 安全策でいきますが、これは更紗帆奈が逃走する可能性が残ってしまうので、ないと確信できるパターンを引かなきゃいけません。

 そんなわけで、後に控える諸々のロスを考えるとリセマラにも制限がかかってしまうのです。許されるのは3回だよ3回。

 

 で、突破条件ですが……ちょうどほんへで動きがあったのでお見せします。

 

「ホタルさんですか? 大事なお話があります。……ええ、件の……」

 

 はいリセット。

 ……こういう風に、イベント次第では発生時に特殊な電話がかかってきます。学生だと放課後だったりしますが、ホタルちゃんはフリーなので自由行動がとれる時間の始め、ということで起床してすぐにかかってきます。

 

 で、今のはみふゆさんからだったので散花愁章発生ではなくマギウスの翼の招集ですね。つまるところの時間切れです。

 散花愁章の開始の場合、昏倒した魔法少女と仲が良い魔法少女から連絡がかかってくることがあります。

 例えば、「五十鈴れん」が被害を受けると、「綾野梨花」から……みたいな感じですね。

 

 ただ、ホタルちゃんは交友が狭めなので、そのルートはそこまで期待してません。

 散花愁章発生時までにやちよさんと交友があり、定期的に連絡を取ってれば昏倒事件発生を教えてくれるのでこっちが本命です。

 それにホタルちゃんは外様の魔法少女。なんだかんだやちよさんは人が良いので、連絡を取ってなくとも心配して連絡をくれるときもあります。

 

 まあみふゆさんほどの頻度でないにせよ、やちよさんとも昏睡事件の調査について連絡はしてたので。

 発生してくれたら面識のない魔法少女だけ被害を受けてたとしても、確実に連絡が来ます。

 

 というわけで、みふゆさんから電話が来る前にやちよさんから連絡が来る。これが勝利条件です。

 残りリセットはあと2回。もうじき今回も半分が過ぎるくらいですね。

 

 こういう単純作業は、やっぱり他より大分メンタルに来ますね。ゲームじゃなくて何か別のことをやってる感じがしてきます。

 これだけ時間があれば、イベントもできる、レベリングもできる、ビキビキビキニ、1、2、3。

 せっかく自由度の高いゲームなのにこういうのをしてるのは勿体ない……なくない?

 どうせなら自由度の高いチャートにできれば良かったんですけどね。マギウス加入ではこれがなかなか……難しいねんな。

 

 

 そうは言いつつもできることは作業を繰り返すだけ。

 終える終える終える……。……なんで等速に戻す必要があるんですか?

 

「朝早くにごめんなさい。けど、大事なことなの。・・・・・・調査に協力してもらってた、魔法少女襲撃事件について。今日の夕方、時間いただけるかしら」

 

 きたぜ……ぬるりと……!

 やちよさんから連絡が来ました。まず間違いなくイベント発生のお知らせですね。

 

 はい、はい……夕方に水名神社ですね? かしこまり!

 

 では電話を切ったら日付をチェック。今日は……だいぶ日数経過してますね。もう数日でみふゆさんから連絡来てましたねクォレハ……。

 

 散花愁章は割と大きめのイベントなので、マギウスの翼招集イベントが時期として重なってもそっちが優先され、発生は後回しになります。

 なのでブッキングに関しては特に心配は要りません。ただ、時間をこうして雑に飛ばす都合上、把握できてないと面倒なことになることがあるので確認はしておきます。

 ついでに言えば今の時期で開始はわりかし普通くらいですかね。マギウス結成がちょっと早めな感じです。

 

 

 それでは夕方まで時間を潰していきましょうか。

 やちよさんは大学生なので忙しいですが、ホタルちゃんは旅人(笑)なのでやることがありません。久々にパトロールでもしましょ。

 

 ソウルジェムの穢れは……あれ、思ったより穢れが進行してないですね? この子穢れがたまりやすいと思ってたんですが、この調子なら平均くらいです。

 そこまで身体を動かしたりしていないので、そのあたりですかね……。あとは魔女化からの解放を知って精神的な調子が改善したか。

 

 何にしたって良いことです。省エネは大事。このままグリーフシードも手に入れられれば言うこと無し。

 まだいくつかありますが、あって困ることはありませんしね。

 

 

 散策ですが、魔法少女と極力会わないようにしていくのは継続です。

 まあ多分、昏倒被害で数が減っているのでエンカ率は普段よりさらに低いでしょう。というか普通の子は今は学校ですし。

 

 学校に行っていない魔法少女といえば更紗帆奈! 彼女はこの時期登校してません。

 ……いきなり出くわさないでしょうね。デスエンカとは言いませんが、いくらRTAだからって初めて会った奴をぶちのめすわけにはいきません。

 

 いやまあ、Any%レギュとかなら初対面で暗殺上等ですけども。

 更紗帆奈はきっちり組長達などにも会わせとかないと、後々面倒なことになります。

 

 マギウスの翼になる以上、後ろ暗い感じになっちゃいますので、彼女たちに詳しくこちらを知られてはいけません。

 なのに『飛蝗』の手がかり、として目をつけられたら敵対不可避です。

 

 あ、『飛蝗』は彼女たちが追っている因縁の魔女ですが、更紗帆奈が操っています。その情報を抜かずに討伐すると『飛蝗』の手がかりが消失するので調査の手が広まり、魔女の生育に手を染めるマギウスの翼は当然疑われる、というわけですね。

 組長らは干渉しなければ敵対関係にはならないので、こっちのことは善良な魔法少女B、くらいに思っていただかなければ。

 

 幸い、以前ちらっと顔を合わせたときに敵じゃない認定は受けられたので、よっぽど怪しいことをしなければ目をつけられることはないでしょう。

 マギウスの翼自体も、あくまで魔法少女の解放を掲げる組織なので組長の魔法でも普通では敵認定は受けません。

 ほかに例外があるとしたら、まあマギウス自体……トップの3人と接触するとかですかね……。あいつらは普通に敵扱いされるんじゃないかな……。

 

 あやふやなのは調査してないからです(ガバ)。

 そもそもニュートラルな状態で組長とマギウスが接触する機会がない。はっきりわかんだね。

 苦心して組長らを翼にする、っていう事もできますが、それで会わせてもまあ参考にはならないですし。

 

 結局の所、かなりあり得ない仮定と言うことです。そもそも更紗帆奈に出会わなきゃいいねん。

 

 このゲーム、名前が近い魔法少女と出会う確率が上がる仕様がありますが、朝倉蛍に更紗帆奈要素はないでしょう。

 そういうわけだから大丈夫だってヘーキヘーキ。

 

 それより魔女です。まだ一体も狩れてません。

 一日終えるのを連打した後はただただ歩くだけって、やめたくなりますよ~。

 調整屋を動かすのに使うかもなんだから、どんどん出て、どうぞ。

 

 

 

 ……もうじき夕方ですが、ただの一体も出ませんでした。何がいけなかったんでしょうねぇ……。

 

 まあ時間は潰せたので良し。ガバってダメージ受けなかっただけ幸運と思うことにします。そうでもしないとやってられないってばよ。

 

 

 気を取り直して、水名神社に行きましょうか。ここでやちよさんとこのはと会って情報交換します。

 

 得られる情報は今回の被害者と容疑者です。

 このあたりは固定のノーマルと違い、ハードモードだと数も種類もランダムに決定されます。

 傾向としてノーマルと同じ人が選ばれやすいですが、まあ所詮は傾向。過信してチャートを組んではいけません(1敗)。

 

 パトロールといっても水名から出てはいないので、すぐに着くでしょう。では倍速……なんでしないんです? 

 

「あぁっ! ホタルさんじゃないですか!」

 

 その声は! ……誰?

 

「前、かなり急いでいたみたいでしたし、それきり見なくなってしまったので何かあったのかと……。大丈夫でしたか?」

 

 あぁ、前のモブの子ですね……。そのときは二人いましたっけ。

 ……まさかもう一人が昏倒したとか言わないでしょうね。

 

 散花愁章ではコンビだったり、チームだったりする魔法少女の一人が多くの場合被害を受けます。

 といってもこの被害はネームドの子ばかり……モブで被害を受けたって言うのは今の今まで無かったんですが……。

 

「え、命華ちゃんですか? あー……その、補習で……」

 

 えぇ……(困惑)。モブのくせにそんなややこしい事やらなくて良いから(憤怒)。

 というか水名女学院って補習あるんですね……。そんなアホな魔法少女いなかったので知りませんでした。

 

 言われてみると、芸人集団扱いされるくらい愉快な魔法少女が多い割に学力的にアホな子っていないんですね。腐ってもお嬢様学校って事でしょうか。

 

「その、命華ちゃんは別におバカってわけでは……あるんですけど、ええと、それだけでは……?」

 

 もうそいつの話はいいから……(良心)。

 この子フォローしようとしてまったくできてないですし。実はそこまで仲良くないからターゲットにならなかった可能性が微粒子レベルで存在している……?

 

「あー、えと、えっと、違うんです! 良いとこだってたくさんあるんです! ほんとに!」

 

 んにゃぴ、そう、よく分かんなかったです(長所)。

 分かったのはモブでも水名は芸人気質って事だけです。なんでそんなとこのくせにみたまさんのメンタル追い詰めたりできるんですかね……?

 

 というかこんなことしてる場合じゃ無いんですよ。

 もう夕方になるって言ってるじゃないですか。とっとと切り上げて水名神社に行きましょ。

 

「そ、そういえばっ。以前の昏倒事件のこと、覚えてますか……?」

 

 んおぉ? 話長いっすねこの子。

 しかし昏倒事件については気になります。

 

 しゃーなし。もうちょっとだけ付き合いましょう。

 やちよさんからもある程度は情報をもらえますが、多くあるに越したことはありません。

 

 てなわけでどうぞ。これで大した情報じゃなかったら始末するからな。

 

「あ、わざわざすみません……。その、昏倒事件についてなんですけど。被害者が本当に出てきたみたいで・・・・・・」

 

 うん、知ってる。ホタルちゃんは知らないけどまあ予想はついてました。

 期待してるのはエクストラじゃ。頼むよ~。

 

「ええっと、エミリーちゃん……あ、知り合いの魔法少女なんですけど……、この子が昨日、急に倒れちゃったみたいで……」

「それだけなら疲れちゃったのかなって……エミリーちゃん頑張ってますから、そう思ったんですけど」

「相談所、あ、えっとエミリーちゃんがいつもいるところに行ったら、他の魔法少女も倒れてるって話を聞いて」

「七瀬先輩にも相談しようかと思ったんですけど、忙しそうだったのでできなかったんです……」

 

 ほーん……。まあろくな情報は無かったっすね。

 ただ『木崎衣美里』が被害を受けているのが分かったのはちょっとした収穫です。彼女が昏倒しないと、アザレア組が家を追われないことがあります。

 それならそれでいいんですが、若干動きが変わるのでそこはまあ少しだけうまあじ。ちなみに昏倒すると確定で追われます。かわいそ。

 

 ……で、考えないようにしてたんですが。地味にとんでもなく恐ろしい言葉が聞こえた気がします。七瀬先輩って言ったかこいつ。

 

 そりゃまあ同じ水名ですもんね……。交流くらい持つことあるか……。

 いやでも自分を襲ってきた相手と交流を普通にもつのはいかががなものか。これもスリルか? スリルなのか?

 

 ここにきてモブの調査不足が響いてきてる気がします。

 所詮モブ、なんてこと無いと思っていましたが、急におぞましい何かに見えてきました。

 後ろにあのバニーの影があるモブとか、爆弾(ガバ)積んだ飛行機みたいなものだと思うんですけど(名推理)。

 体質感染とかしてないだろうな……。

 

 

 俺もうね、逃げる。

 こんな奴と話していられるか! 俺は神社へ行くぞ!

 

「あ、長々とすみません。一度勘違いで襲った身でこういうのもなんですけど、お気をつけて……っ!?」

 

 ん? あっ(景色が変わる)ふーん(諦め)。

 魔女の結界に捕まりました。(大ガバ)(遅刻確定)(大ロス)

 言霊でしょうか。ゲームなのにね。なんでだろうね。

 

 

 いやまあ……真面目に考えれば、更紗帆奈の仕業だと思うんですが。

 というのも、今の今まで気配を感じない、っていうのは普通じゃあり得ません。ゆきかパワーでもそれは覆せません。

 

 なんで、こうして気配を感じず急に、っていうのは魔法少女が絡んでいます。

 どっかの芸術家(アリナ・グレイ)も同じ事ができますが、時期的に帆奈のが有力でしょう。

 元の魔法の万能性から、乱数次第ではできることが増えてますからねあいつ。魔女の気配を薄めるくらいは余裕です。ノーマルでも操作してるし。

 

 そんでもってホタルちゃんはアザレアと同じ市外産魔法少女ですからね……。目をつけられてても不思議では無いです。

 

 

 うあー……。幸いそんな強くなさそうなので、急いで倒しましょう。

 あと気づかないうちに『暗示』食らっても嫌なので、倒したら『瞬間移動』で速攻で移動しないといけないです。

 なんで、回復で消費するのでグリーフシードの貯蓄にもならなさそう、と……。ほんとに最悪なタイミング。

 まあそもそも落とすかも分かんないんですけどね! ちっくしょう厄日か!

 

 では魔女結界、行くぞオラァ!

 今回の魔女は『子守の魔女』みたいですね。結界を歩いてると赤ん坊の泣き声が聞こえてきたりする単純に不快な魔女です。

 あっそうだ(雑学)。赤ん坊の泣き声は人間が不快に感じる周波数が入ってるなんて話もあるらしいですね。悪趣味。

 

 それを抜きにしても、この魔女の背景を考えると怖すぎてブルっちゃうよ……。

 キュゥべえの毒牙にかけられた挙げ句絶望してこうなったと考えると、なんとも言えない気持ちになりますね。まったく、魔法少女は地獄だぜ!

 

 戦闘面ですが、この魔女は使い魔がしょっちゅう周りに群がってるので、道中楽な分最深部で多対一になりやすく面倒くさいです。

 超火力が出せればまとめてぶっ飛ばせるんですけどね、『ティロ・フィナーレ』みたいな。

 さっきからついてきてる君はそういうのできないの?

 

「うーん……私はそんなことはできないです……うぅ、ごめんなさい……回復くらいです……」

 

 でしょうね。モブがそんなんできたらとっくに多くのチャートで採用してるでしょうし。

 ホタルちゃんも火力難なので、派手な一発で一掃、というのは諦めましょう。

 ……結局『瞬間移動』使って急所を突くしかなさそうですね。ワンパターンだぁ……。

 

 

 というわけで『子守の魔女』君、オッハー! その命、神に返せ!

 やることは至極単純! 子守の魔女くんがこっち向いた瞬間に口内に瞬間移動して串刺しにするだけ!

 名付けて一寸法師作戦。そういうわけなので君はここで隠れててね。

 

「え……あ、う……はい。すみません……」

 

 よしよし。出てこられたらかえって足手まといだからほんと来るなよ。

 

 まだ気づかれてないのでさっさと突っ込みたい所さんですね……今です!(孔明)

 

 突入成功! 口内は魔女といえど防御が薄く、他の場所より格段に安全に、かつ効率的に殴れます。一方的にいたぶってやるぜ。

 ……あっちょっ待って噛まないで痛い痛い痛い!! 痛いんだよぉ!(逆ギレ)

 

 ……なんとか倒せました。ひどい目に遭いました。

 歯がないくせに噛みやがって……。火力不足が本格的に響いてます。

 試走ではここまでもつれたことは無かったんですけどねえ。だらしねえな?

 

「だ、大丈夫ですか……?」

 

 大丈夫だってヘーキヘーキ……(強がり)。

 あ、でも回復はありがたく受け取りますね……。くうぅ、モブの魔法に助けられるとはなんたる屈辱か。

 

 グリーフシードは……あぁ、良かった良かった落ちました。

 モブの子に一回使わせたら、残りはそのままもらっていきます。中古品になりますが、それでもだいぶ持つでしょう。

 

 

 グリーフシードが帰ってきたらいざ鎌倉。

 じゃあな! ゆきかとはあんまり縁を持たない方がいいと思うぞ!

 

「きゃっ! ……あ、き、気をつけて!」

 

 

 

 さて、現在、すでに日が暮れています。携帯に着信は……あぁ、やっぱきてましたね。

 その辺のビルの屋上まで跳びながら発信、と。変身してても夜だからそこまで目立たない……いやホタルちゃんの魔法少女服の色派手だから目立ってますねこれ。

 まあ遠目にはなんかの反射板くらいにしか見えないでしょう。そんなことより急げ急げ。

 

「朝倉さん!? 良かった、連絡がつかなくなったから昏倒の被害を受けたんじゃないかと……。いえ、それより本題に入るわね」

 

 やちよさんオッスオッス!

 電話がつながったのでいったんストップ、と。物陰に隠れて通話します。

 そこそこ距離はとれたので、帆奈も追跡しきれてないでしょう。もし場所が分かってたとしても単純に追いつくまで時間がかかるでしょうし安全。

 

 そんじゃあやちよさん、話を聞こうか。

 

「詳しい話は省くわ。事実だけ……私たちが追っていた魔法少女襲撃事件が本当に起きはじめた」

「被害者は今分かってるだけで4人。粟根こころさん、木崎衣美里さん、鞠子あやかさん、そして梢麻友さん」

 

 14万!?(様式美)

 真面目に考えると、被害者4人はまあ普通の範囲ですね。ノーマルでも被害を受ける3人にプラスして麻友だけですから。

 

「そしてその事件の容疑者として疑われているのが葉月さん……そう、あなたが知っている遊佐葉月さんよ。事件の被害者は全員、彼女の行く先々にいたらしいの」

「……えぇ。正直、私も彼女は犯人じゃ無いと思ってる。以前の事件、むしろ彼女たちは事態に振り回されているように見えたし……何より、やるメリットが無いわ。真っ先に疑われるのが自分たちだってことに気づかないほど馬鹿では無いでしょう」

「実のところ……私は今、誰かの『作為』を強く感じている。誰か、彼女たちを陥れようとしている者がいると……」

 

 はいはい。容疑者は葉月……通常通りですね。変な方向に飛んでいってないようで安心。

 ここでさっき、神社に向かおうとしたら魔女に襲われたことを報告します。

 やちよさんが『作為』というワードを出してくれれば、自身もそれに晒されたという感じで情報にできるんですね。

 

 ふふふ、更紗帆奈め……さっき受けたダメージ分のアドバンテージは稼がせてもらうぞ。

 今回の場合は黒幕の魔法少女が魔女を使役できるのでは、という疑惑を持たせられます。

 結果、後の捜査パートでの成功率などにボーナスが入ります。やったぜ。

 

 てなわけでチクらせてもらいましょ。へっへっへ。やちよさん、耳寄り情報ですぜ。

 

「! なるほどね……どうりで連絡がつかなかったわけ。偶然の一致って事もあるでしょうけど……警戒して損は無いかもね」

 

 そうだそうだーい。完璧に信じてもらえはしませんでしたが、これだけでも十二分です。

 魔女の操作、っていうところから魔法が『暗示』と速攻で割れることもあるんですが(1勝)、大分レアなことなので期待はしません。

 

 それでやちよさん、水名神社へは行かなくていいんですかね。今向かってるんですが。

 

「あぁ……そうね。報告と相談をしたくて、あなたのほかにこのはさんにも連絡していたのだけど。もう帰ってしまっているから……」

 

 ですよねー……。あ、じゃあ切りますね……。

 

 

 さあて。どうしましょうかね……。

 

 今日のうち、水名神社でこのはに直接会っておきたかったところさんでした。

 ほぼ確実に、今日の夜にこのはらアザレア組は更紗帆奈被害者の会に襲撃されます。そうなるとこの先しばらく、彼女たちとは一切連絡がつかなくなります。隠れ家に隠れて、やちよさん以外との一切の交流を遮断するからです。

 

 ただ、アザレア組と協力したかった、とかではなく、ホタルちゃんが彼女たちに疑われてるかどうか確認しときたかったんですよね。

 襲撃後、更紗帆奈は隠れ家に隠れたアザレア組に『暗示』でちょっかいをかけるんですが。

 これがやっかいで、彼女らがこっちに疑念をもってるとたまーにカチコミかけてくるんです。よくも私たちをはめてくれたな! 犯人はお前だろ! って具合に。

 

 そうなっても疑いが増すから倒すわけにもいかないし、かといって逃げるのもあやめ以外はその固有魔法的に骨だし。というわけで疑いを持たれてるのが伺えたら対策をしなきゃいけなくなります。

 ただ対策も対策で打ったらロスになるので、会えるうちにちゃんと見ておきたかったわけです。

 

 言っても仕方ないので、ロスは諦めて対策しときましょうか。若干情報アドは取れてるので前向きにいきませう。

 

 更紗帆奈がこのあたりにまだうろついてる可能性はあるので、もう少し時間を潰してから……電話?

 やちよさんからですね。報告漏れかな?

 

「っ、よかった、そっちは大丈夫!?」

 

 なんのこっちゃ。なんなら一歩も動いてないんで平和もいいとこですが。

 

「このはさん達が彼女を疑った魔法少女達に追われてるみたいなの。私から違うと広めるつもりだったけど……まさか、こんなに早く行動に出るなんて」

 

 あー。そういうパターンですか。

 基本はやちよさんに襲撃の連絡は行きません。襲撃後、隠れ家に隠れた連絡は確実に行われますが今回はそれとはまた別。

 

 このはからやちよさんへの信頼度が高めだと、襲撃時すぐに連絡がとぶ? みたいです。ただ正直、ここはまだ検証不足。

 でもチャートに組み込む余地はなさそうだし、調査サボっても……かまへんか。魔法少女同士の信頼度なんていちいち考慮してられるわけ無いだろ! いいかげんにしろ!

 

 やちよさんも大概お人好しですねぇ。ホタルちゃんは疑われてても不思議じゃ無い立場なんですけどね、ほんと。乱数に愛されてます。

 

 ……あっそうだ(閃き)。ここでオリチャー発動! アザレア組を救出にいきます。

 やちよさん! 3人の家の場所を教えてくんな!

 

「場所って、今から行って間に合うわけが……! なるほど、固有魔法ね……!」

 

 うっすそのとおり。

 さっきの魔女のグリーフシードもまだあるので、魔法連打も十分効きます。

 それでもって、救出成功すればアザレア組がホタルちゃんに疑いを持ってたとしてもその反証として機能するはずです。

 

 ……葉月あたりはそれでも普通に疑ってきそうとか、帆奈の『暗示』相手に反証もクソもあるかってのはまあ疑問ではあるんですが。

 しかしやらないよりは確実にマシ。ということでアザレアハウスへ、イクゾー!

 

 

 

 ここがあの女のハウス(の近く)ね……。

 あ、画面酔いの方は大丈夫だったでしょうか。『瞬間移動』連打はすごい勢いで映るものが変わってくので、苦手な方は目をつぶっていただければと思います。

 画面中央に何か置いといても効果が無いタイプだと思うので、そこはご容赦をば。

 

 では魔力を回復させつつ回りをチェック。

 ビルの屋上から屋上へと移動してきましたが、ここはその中でも比較的高めのビル。見下ろす形で裏路地を中心に周りを探していきます。

 

 

 さてさて……そこまで派手に彼女らも動かないでしょうが、それでも魔法少女が跳んだりはねたりしてれば目立つもんでしょう。どこかなー……。

 

 ……どこだ? 派手に戦闘音が無いのは後の禍根にならないんで良いんですけども……見つからないのもそれはそれで問題。

 もう逃げおおせたんですかね? でもそうだったらやちよさんから連絡が来ると思うので、まだ逃走中の方が確率は高いでしょうか。

 捕まった……わけでも無いと思うんですけどねぇ。被害者は4人。その子らと交友ある子らと戦っても、アザレア組は逃げるくらいはできる強さです。

 

 

 んー……んんっ!?

 なんなんだ今のはぁ……。めっちゃピカピカ光ってましたね。

 この状況だと葉月の電撃の光と考えるのが妥当でしょう。他にドンパチしてる様子は無いから目くらましかな。

 

 それじゃあ、さっきのを目印に上から捜索。彼女たちを追ってる魔法少女もいるはずですが、さすがに上までは見てないはず。蛍光カラーがいても大丈夫でしょう。

 

 ひとつふたつと跳んで……このあたりか。おーおー何人か探してるのが見える見える……太いぜ。

 ここから見える限りでは、追われてる人影は見当たらないですね。となると隠れてるかな?

 

 さすがに夜中にビルの上から探し当てるのは不可能なので、このは達には見つかってもらわないといけませんね。

 電話したらそれが原因で見つかったり……って番号持ってないんでした。

 

 ……というか、もしやったとしたらバレバレのマッチポンプすぎてかえって疑われますね(ガバ未遂)。

 さすがに思考鈍るの早すぎ……早すぎじゃない? まだまだRTA全体からしたら序盤なので、気を引き締めましょう。

 

 

 さて、そういうわけでこちらからはなにもできないので、捜索中の子らを上から眺めているだけの退屈な絵面が続きます。

 

 なので、みなさまのためにぃ、今度こそこのような動画をご用意……。

 

「――――!! ―――!!」

 

 したのですが、動きがあったみたいなのであえなくキャンセルとなります。本当に申し訳ない。

 

 声がいまだに聞こえ続けているので、今回は完全に場所を把握できました。

 この大声は多分明日香でしょう。ちゃんと信頼度を上げれば問題ないんですが、そうでないと早とちりと勘違いで敵対することがままある、ちょっとやっかいなキャラです。

 固有魔法はクッソ強いし戦力としてもそれなりなので、バランス調整もあるんですかね……?

 

 それはそれとして、アザレア組の真上を取れたので救出に移りたく思います。

 姿を見られると追跡組とイベント後半まで敵対になるので、目くらましのためここに来る途中に土嚢をかっぱらってきました。

 そしてさらに、フェンス周りを攻撃して破壊。大小コンクリート片を落下させます。魔法少女だからちょっとくらい当たっても大丈夫だってヘーキヘーキ。

 土嚢も投げていざ鎌倉。そのまま飛び降りると普通にクソデカ落下ダメージが入るので……やめようね! ちょっとタイミングを外して『瞬間移動』を撃つことで無傷で着地できます。

 

 

 着地したらアザレア組を持って『瞬間移動』再発動。

 結構多めの魔法少女に囲まれてますが問題なし。あばよ、とっつぁん!

 

 上空へ跳んだら前方へむけて再発動。いちいち屋上に止まっても良いんですが、無駄な手間なので空中で連発します。酔わないようご注意ください(激遅)。

 

 ……ここまで来れば大丈夫かな。では着地……あっやべ座標高くしすぎた(ガバ)。

 

 オォン!(落下ダメージ)

 

 ま、まあ逃げ切れたし、これくらいのダメージ誤差だよ誤差!

 

 実際、追跡のためには江利あいみの『行動予測』と雫ちゃんの『空間結合』を併用しないとまず不可能でしょう。

 しかも雫ちゃんはプレイヤーでもなかなか信頼度上げが難しいキャラなだけあって、この段階で他キャラと協力することはあり得ないので安心していいはず。

 

 というわけでアザレア組、おっ大丈夫か大丈夫か。

 

「ホタル! アンタどうして!」

 

 あやめも久しぶりですねぇ。

 信頼度上げすぎを避けるために会わないようにしてたので、一時期はよく顔を合わせてたのにここのところは全く見ていませんでした。

 

 さて、黙ってても怪しまれるだけなので情報交換。

 やちよさんから襲撃されたと連絡が入ったので、救出にきた事を伝えます。

 

「七海やちよが? それはまたなんで……」

「私から連絡を入れたの。葉月が疑われてるって聞いたから、もしかするとこうなるかも、って思ってすぐに連絡は入れられるようにしていたのだけど……まさか、救援が、しかもあなたが来るとは思ってなかったわ」

「そうだよもう……。ほんっと、どこ行ってたのさ!」

 

 ははははは。いやまあ、マギウスの翼に入られても困っちゃいますからね。

 

 実際はどっか別の土地へ行ってたわけでもなく、いそうなとこを避けたり寝て過ごしたりしてただけなんですが。

 まあそれを言っても何の得もないのでぼかしときましょ。

 

 そんなことよりこっからどうするんですかね(すっとぼけ)。

 家押さえられてるのはやっぱりまずいですよ!

 

「そうね……いちおう隠れ家は神浜へ来たときに目をつけておいたものがあるわ。ただ……」

「……うん、連れてってもらうのは遠慮しとくよ。ホタルさんが悪い人じゃないってのは分かってるけど……だからこそ知らないでいて欲しい」

 

 ウッス。じゃあ帰るっす。

 問答無用で疑わないレベルに信頼度があれば隠れ家の場所も教えてもらえますが、まあそこまで信用がないのは多少はね。

 

 葉月の台詞的に、その割にはいい反応のようには思います。こっち来なくても疑われてなかったかもしんないっすね。

 

 じゃあな! 拠点バレしてもホタルちゃんは関係ないから襲ってこないでね!

 

 

 

 では後は拠点に帰って就寝するだけです。

 

 割と長めの一日でしたが、やっと終わりですね。それでは今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

 こちらを見てにっこり笑うその顔は、よく見ると随分真っ青だ。

 声をかける間もなく、彼女はまたすぐにフェンスに顔を突っ伏してうめき始めた。

 

「……ちょ、ちょっと。ここで吐かないでよ?」

「いやぁー……やっぱ、酔うんだよねこれ……。吐くことは多分ないんだけど……うぅえぇっ……」

「あぁもう、しゃべんなくていいったら!」

 

 心配して駆け寄っていったあやめに、どうやらそのまま叱られているらしい。

 なんともあべこべな感じだけど、そういえばちょくちょく子供っぽい所のある人だったっけか。なんとも気が抜けてしまって、ついその場に座り込んでしまう。

 

 この状況であまりのんびりしてるわけにもいかないけど、かといって気を張っているばかりでも仕方ない。

 ……それに、酔ったのはどうも彼女だけでないみたいだし。

 アタシのふらついた視界と、それにうつった口を押さえたこのはがその証拠だ。

 

 つい目を閉じなかったのがやっぱり、いけなかったのかな? なんて。

 そんなつぶやきが漏れる前に胃からこみ上げてくるものがあった。……うん。笑い事じゃないね、これ。

 

 

「さて。いい加減落ち着いた頃だろうし、聞かせてもらおうかしら」

「えへへ……ご迷惑おかけしました……ほんとゴメンね」

「別に謝ることないと思うけど……このはだってさっき」

「ちょ、ちょっとあやめ! しーっ!」

 

 少し、日常の空気が漂い始めている。張り詰めていたはずのそれはすっかり弛緩して、大変なことを考えるのだっていささか億劫だ。

 

 しかし。そう暢気でばかりもいられない。アタシ達のいる場所も、格好も、なにもかもが今が非日常なのを知らせている。

 

「まぁまぁ……それで、なんでアタシ達を助けられたんですか? 今の今まですっかり姿を消してたのに」

 

 考えたくはないが、彼女は今回の事件ではだいぶ疑わしい立場だ。

 アタシ達と同じ市外の魔法少女で、以前の騒動から今まで、姿を見せることもなかった。

 

 このはから聞くには、七海やちよとはたまに事件について連絡を取っているらしかったけど。

 しかしそれについても、結局調査の進展は見込めなかったわけだ。フリだった可能性は否定できない。

 

 それで彼女の方を向けば、なんともばつの悪そうな顔をして人差し指をつっつかせあっている。

 

 ……つつじの家にいた時、こういう子を見たような。

 何だっけ……そうだ、何か失敗して、院長先生に叱られそうになっている子そっくりだ。

 

「す、姿を消してたっていうのはまぁ……その、悪いことしてた、とかではなくて。外に出る気になれなくて、家でじっとしてたというか……」

「いやいやいや、それにしたって長すぎるでしょ! アンタ、しょっちゅうかこのとこに来てたじゃないの! 前は!」

「それはまぁ、そうなんだけどね……? 今更行っても迷惑かなーと……」

「迷惑って、なにが!」

「えぇーっと……それはね……」

「まぁまぁ……あやめ、ちょっと落ち着いて……」

 

 叱られるホタルさん。叱るあやめ。それをたしなめるこのは。

 ほんとにアタシ達は家からここまで逃走劇を繰り広げてきたのだろうか。ひょっとして今見てるのはさっきの移動中気絶したアタシの夢だったり?

 

 試しに太ももをつねってみたらしっかり痛かった。ちゃんと夢じゃなく現実らしい。

 

 ……あぁもう! つくづく気が抜ける!

 

「それじゃあ! 姿を消してたのについてはいいですから! なんでアタシ達を助けられたのか、教えてください!」

 

 その声にあやめがこちらを向く。すかさず彼女がこのはの後ろに隠れる。

 そうしてほっと息をつくと、さっきまでが嘘のような調子で話しだした。

 

「……そのことは、やちよちゃんから聞いたんだ」

「七海やちよが? それはまたなんで……」

「私から連絡を入れたの。葉月が疑われてるって聞いたから、もしかするとこうなるかも、って思ってすぐに連絡は入れられるようにしていたのだけど……まさか、救援が、しかもあなたが来るとは思ってなかったわ」

「そうだよもう……。ほんっと、どこ行ってたのさ!」

「あっそれはあとで……え、えっと。私がやちよちゃんと事件について連絡を取ってたのは知ってた?」

 

 うなずく。それが本当だったかはともかくとして、そうらしいのは聞いている。

 

「まぁ、ろくな情報も出なかったからそのうち連絡も滅多にしなくなったんだけど……今日やちよちゃんから、夕方神社へ来てって連絡があったんだ。事件について話したい、ってね。けど……」

「あなたは来なかった。やちよさんは私とあなたを呼んだみたいだったけどもね」

「そう。まあ実際は行けなかった、が正しいんだけどもね?」

「……っていうと、どういうことですか?」

「魔女だよ」

 

 その手には、いつの間にかグリーフシードが握られていた。

 黒々とした魔女の種。彼女が耳のソウルジェムへとかざすと、その穢れがたちまちに吸い込まれる。

 

「向かう途中、ちょうど知り合いの魔法少女に会ってね。一足先に魔法少女襲撃事件が実際に起き始めたって教えてもらったんだ」

「その魔法少女は、なんて?」

「えっと、エミリーちゃん、だっけ? その子が倒れたことと、他にも被害者がいるらしいってことを言ってたかな。後になってやちよちゃんから、他の子の名前も教えてもらったけど」

「そう……それで? 魔女っていうのは?」

()()()()()()()だったんだよね、その魔女」

 

 ソウルジェムを指でいじりながら放たれた言葉に、知らず息をのんだ。

 

「普通、魔女が近くにいたら私たち魔法少女は気づくでしょ? まあ私だけならうっかりってことも十分あるけど……二人だしね」

「たまたまそういう特性を持った魔女……にしては出来すぎてるか。いや、でもそうなら……」

 

 嫌な考えが頭をよぎる。まさか、とは思いつつもそれは否定できない可能性だ。

 

「やちよちゃんは事件に何者かの『作為』を感じるって言ってたけど。魔女が他の魔女をけしかける、なんてのは経験上考えられないし、戦ったのもいきなり強力な魔女でもなかった。だから……」

「黒幕は魔法少女で、しかも魔女を操ったり、気配を隠したりすることができる魔法を持っている、と?」

 

 それだけじゃないだろうけどね、と呟きながら彼女は頷いた。

 

「で、その子はそのとき私を監視してたんだと思う。けど、魔法少女の魔力だって感じられなかった」

「その情報をくれたっていう魔法少女が黒幕って可能性は……」

「無いかな。彼女の固有魔法は多分回復能力だろうから」

「根拠は?」

「魔女と戦ったあと、怪我を治してもらったんだ。治癒くらい誰だって出来るとはいえ、その速度や魔力消費は固有魔法でもないとありえないくらいだったよ」

「なるほどね。それを抜きにしても、魔女に襲撃させておいて怪我を治す理由も無いでしょうし」

「……それであとは、魔法を使って慌てて逃げてね。やちよちゃんに連絡を取って、事件について聞いて、みんなが大変らしいことを知って……そして今に至るってこと」

 

 

 彼女の話には一定の説得力があった。ともすれば考えすぎとも言えるかもしれないが、何者かの悪意があることはそれに晒されているアタシ達が誰よりも分かっている。

 

「信じるかどうかは任せるよ。結局、証明出来るものはなにも無いからさ」

「んー……えっと、つまり、あちし達に濡れ衣を着せたやつが、ホタルにも魔女をふっかけたりして狙ってたってこと?」

「多分、だけどね? ま、それはそれとして。みんなはこれからどうするの? ほとぼりが冷めたら家に帰る、ってわけにもいかないでしょ」

 

 指摘はもっともだ。とはいえ、アタシ達も伊達にいくつかの町を転々としてきたわけじゃない。

 ましてや、神浜では初めが初めだったわけで。こういう事態を想定していなかったらウソだ。

 

「そうね……いちおう隠れ家は神浜へ来たときに目をつけておいたものがあるわ。ただ……」

「……うん、連れてってもらうのは遠慮しとくよ。ホタルさんが悪い人じゃないってのは分かってるけど……だからこそ知らないでいて欲しい」

「……む。よく私が連れて行こうかって言おうとしたのが分かったね。でもまあ、それがいいと思うよ」

「悪いね。いろいろ教えられておいて、さ」

「気にしないでいいって。そういうものだよ」

 

 まだ信用しきれない、と言っているようなものだろうに、思ったよりもサバサバとした答えが返ってきて拍子抜けした。

 そういえば、結構なベテランなんだっけか。今日だけで随分極端な側面を見せられた気がする。

 

「じゃあね。夜も更けてきたけどまだあの子らは探してるだろうし、移動中見つからないように。お互い気をつけよう」

「えぇ、あなたも。話が正しければ、あなたも狙われているんでしょう?」

「ありがとう。それじゃあ……」

「待った! あちし、なんでさっぱり顔を出さなくなったか聞いてないよ!」

「じゃ、じゃあね! またいつか!」

「あ、ちょっと!」

 

 フェンスから飛び降りて、たちまちのうちに彼女は姿を消した。地面をのぞき込んでも、あの目立つ外套姿は見えない。

 

「もーっ! 今度あったら絶対聞き出してやるから!」

「まぁまぁ、また会えるでしょ、多分。さっき本人もそう言ってたんだしさ」

 

 アタシ達を陥れた黒幕の前に、そっちに憤っているあやめを見てると、不覚にも頬が緩む。

 

 確かに、彼女が姿を消した謎はまだ残っている。でもそれに、何か企みがあるとかではないと思いたい。

 

 神浜に来て、あやめが自分で友達を作って。それを見てこのはも、アタシ達以外にも歩み寄ってくれるようになって。それに彼女が手を貸してくれたのは事実で。それになにより。

 

「はぁーあ……かことフェリシアも喜ぶと思ったのにさ、また会えたら」

 

 かこちゃんとフェリシアちゃんと同じように。彼女だって、あやめの友達なんだから。

 そうでしょ? ホタルさん。

 




Archive
○子守の魔女
  赤ん坊の鳴き声が響く結界を持つ魔女。
  どこかに落としてしまった赤ん坊を探している、とか幼い精神を持つ、とか設定が色々エグい。
  もうちょっとキツい倒し方をする案もあったが没になった。

○命華ちゃん
  今回登場しなかった方のモブ。頭が残念。
  した方ともども、実はヤツと交流ができていた。

○転移酔い
  目を閉じてれば軽減される。
  ホタルちゃんは跳ぶ座標を認識しなきゃいけないので、どうあがいても酔う。



【お詫び】
 前話で一部、設定と食い違う描写があったので1月7日付で修正しました。
 マギウスの翼は勝手に広がっていく、という部分です。正しくは天音姉妹が入ってから招集イベント発生まで増加しない、そのイベントをもって他イベントへの介入が不可能になる、となります。
 今後このようなミスの無いよう一層気をつけていきますので、引き続き読んでいただけたら幸いです。
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