マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート すずね☆マギカチャート(マギウスの翼チャート)   作:鰯のすり身太郎

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Part.17/x

  

 

 マギウスの翼として労働しまくるRTA、はぁじまるよー。

 

 前回は無事マギウスと顔合わせも済ませ、ついに本チャートの本格的なスタートを切ることが出来ました。

 

 

 それでですが、これからやることというと大体が地味目な労働作業です。

 

 マギウスの翼でも、その中でまた仕事がその人その人に応じて振り分けられているのですが……例えば魔女狩りでグリーフシードを集める担当、ウワサの監視担当、みたいなやつですね。広報とかの部署とかも後々出来ますが、これは今は出来てないので関係ないです。

 

 ここでホタルちゃんが担当するのは、経験値効率がわりかしいい魔女狩り! ではなく、作業が少なめで済むことが多いウワサの監視! でもなく。

 みふゆさんに無理を言って、その時々に応じて動けるようにしてもらいます。つまるところ、ピンチヒッターですね。

 

 というわけでみふゆさん! 何かひとつのグループに入れるのはやめてくれよな~頼むよ~。

 

「はぁ……。でも、そうなると一番大変なのはホタルさん自身ですよ? ノウハウの蓄積とかも出来ないわけですし」

 

 大丈夫だって安心しろよ~。腐ってもベテランだし、そういう人が穴埋めにあたれるのは地味に助かるんじゃないですか? 

 まだ組織も不安定なんだし、自由に動きたいんです! お願いします! 何でもしますから!

 

「そうですか……。では、お言葉に甘えさせてもらいますね。灯花達にはワタシから伝えておきます」

 

 みふゆさんは神的にいい人だから……。ちゃんと信頼度上げが聞いてますね。

 これからも度々無茶を言うと思うけどよろしくな!

 

 

 

 

 さて、それではあとはただただ単調な労働作業が続くだけなので、みなさまのためにぃ~、こんな動画を用意しましたぁ~。

 

 

 ……あっそうだ(唐突)。お仕事中ホタルちゃんが着てるのは白羽根のローブですね。

 幹部のみふゆさんは着てないし、同期の古参の天音姉妹も割と脱いでますが、まあ細けえこたあいいんだよ! あ、ホタルちゃんの立場は白羽根です。(幹部では)ないです。

 

 このローブ、本来後ろめたい事をしてる故に顔を隠すものなのですが、ホタルちゃんは普通にフード部分は脱いでます。

 なんで? となるでしょうが一応理由がありまして。素性を隠してると白羽根の一人、と多くのモブキャラ連中には扱われるのですが、顔出ししてると羽根としての信頼度的なものが上下するんですね。

 

 これでその数値を上げておくと、後々多少変なことをしても理由があるんだろう、と見逃して貰えたりといった恩恵があるので、基本活動は顔出しです。

 あと羽根とバレても、ホタルちゃんに失うものが無いというのもあります。神浜在住じゃないからね、仕方ないね。

 

 ちなみに、ローブを奪っておくと後半、マギウスの翼の本拠地に潜入するときに楽になるので通常プレイだと結構おすすめです。

 羽根連中の認識能力はガバガバ。大体どこぞのバーコードハゲのゲームレベル。

 

 上映会を中断してしまって申し訳ありません。引き続きそちらをお楽しみください。

 

 

 

 

 ……やっと等速に戻りましたね。ただ、予定ならもう少し倍速の予定だったんですけど。

 みふゆさんどうした! 今日はウワサの監視でよかったですよね!

 

「えぇ。ですがやはり、一人だと負担が大きいと思いまして。今日、そちらに二人黒羽根を送ります」

 

 げっ。外れイベントをひきました。まぁ遅かれ早かれって感じではあったのですが……。

 

 これまでホタルちゃんは一人で諸々雑用をこなすという、割とブラックめの職場環境だったわけですが、本来マギウスの翼はチーム制。リーダーの白羽根と部下の黒羽根という形が普通です。

 部下いなくても平気アピールは地道に続けてたんですが、限界がありましたね。

 

 一応ちょっとごねてみます。部下がいなくてもこれまでやってこれたんだから別にいらない……いらなくない?

 え? 無理されて潰れられる方が困る? それにそんなに余裕があるなら、育成だと思って引き受けて欲しい?

 ……駄目みたいですね。諦めましょう。

 

 部下がいると、いざって時の立ち回りが制限されたり、そっちが乙ったりしたときにメンタルダメージが入ったりするのでぶっちゃけRTAではデメリットの方が大きいんですよねぇ……。

 まあ想定はしてたので切り替えていきましょう。難易度ハードだからってみすみす頃したりはしないぜ! ホタルちゃんを舐めるなよ!

 

 

 では出勤。今日は水名区にあるウワサ、覗き見城下町のうわさの監視です。害があんまりないので、結構後半まで生き残る事の多いウワサですね。

 ただ、それでも安心は禁物です。そろそろこの『ウワサ』の存在がひろまってきているので、やちよさんが動き出し始めます。

 

 やちよさんですが、ご丁寧に『神浜うわさファイル』なんてものを作ってまで調査、その駆除をしてくるマギウスの翼にとってはかなり厄介な存在です。

 戦っても、その固有魔法でベテランのくせに弱体化してないので、普通にクッソ強いです。

 ウワサの監視をしているとまれに現段階でも交戦する羽目になるので、警戒を怠らないようにしましょう。一応練習はしてますが、タイムとかを考えてもロスにしかならないねんな……。

 

 黒羽根が来るのは学校が終わってかららしいので、一足先に監視を始めてましょ。

 ウワサの監視はやることが少ないので楽な部類です。画面の単調さについては……ナオキです……。

 というわけで倍速。このパート大体倍速……倍速じゃない?

 

 

 というわけでもうじき夕方です。すみませ~ん、朝倉ですけど、ま~だ時間掛かりそうですかね?

 初日から重役出勤とは、いい度胸してるじゃねえか(老害並感)。

 

 あ、電話。もしもしみふゆさん? え? ついてる? 見つからないから電話が来た?

 ……あっそっかぁ。ビルの上から監視してたから、羽根からはどこか分からなかったみたいですね……(ガバ)。

 

 え、要件はそれだけじゃない? 今日会議だから来い?

 なるほど、もうそんな時期だったんですね。この招集は拠点作成イベントでしょう。

 

 羽根の数が一定数まで増えると、育成している魔女の隠蔽に使っているアリナの結界が耐えきれなくなるので、ウワサで拠点を作るイベントが発生します。

 イメージとしては、どこぞのタヌキの店の拡張みたいなものと思っていただければ。シナリオ上ほぼ確実に発生する点は違いますが。

 

 このイベントですが、天音姉妹含めて呼ばれるちょっと珍しいヤツです。

 ほぼ間違いなく起きる上、古参なら幹部じゃなくとも呼ばれるので回避は難しいですが、戦闘もなく失敗もない息抜きみたいなものなので安心!

 

 これが起きるって事は順調にほんへにむけて進んでいる裏付けでもあります。チャートどおりの安定感、いいゾ~コレ。

 退屈ながらもきちんと進行していくのが感じられるこの感覚。これがマギウスチャートのいいところです。運ゲーをこなした甲斐があったな!

 

 

 ではでは、黒羽根と合流しましょう。今は気分もいいし、足手まといが増えることも、許せる!

 

 いましたいました。君が黒羽根か? 俺は朝倉、白羽根だ。力をあわせて頑張ろう。

 

「こちらこそよろしくお願いします! まさかホタルさんのグループで働けるなんて……」

 

 ……? あぁ、前会ったモブ2人組……。

 なんか妙に縁がありますねこいつら。そういえばグループに入るのは親交のある魔法少女の確率が若干上がるんでした。

 

 これもあるからゆきかとか会いたくなかったんですけど(手遅れ)、まあ来なかったからヨシ!

 むしろその脅威から守ってくれたという意味ではガバの功名ですね。

 

 

 というわけで早速仕事じゃー。結局絵面が死ぬほど退屈ですが、仕方ないね。

 

 覗き見城下町のウワサは、条件を満たすと以前の古い町並みが見られるというウワサで、長時間やってるとそっちの世界に引きずり込まれるという性質を持ちます。

 水名区が歴史ある観光名所であるからこそのウワサですが、そんな長いことやってるヤツがそういるかというとまあ、いないんですよね。

 

 なのでこういうときに動く必要があるのは……。

 

「すみません! 魔女が出たみたいで……」

 

 こういう風に、この辺で魔女が出たときくらいですね。

 

 魔女を狩るのが担当というわけでもないですが、出たら倒しとくくらいはしなきゃいけないのがこの仕事の辛いところ。

 ですがいい機会です。羽根を引き連れての戦闘、イクゾー!

 

 

 今回退治する魔女はこちらっ(砂場の魔女)。

 奇天烈なマスクと、人形のような身体。まだ力の弱いこの魔女は、私との戦闘に耐えることはできるでしょうか。

 

「いきますっ。はぁーっ!」

 

 さて、黒羽根ですが、こいつらは素性を隠して活動しているため、戦い方も画一的なものになっています。

 武器だけでなく、魔法少女の強み、個性たる固有魔法も使用しないのでまあ、言ってしまえばクソザコナメクジ。

 

 しかし使用する鎖や、短剣を飛ばす魔法は地味に使い勝手がいいので、プレイヤーも覚えておいて損はないです。

 ホタルちゃんも一応習得はしておきました。火力や耐久はなくとも、魔力消費が少なく搦め手に使えるんですよねぇ。

 

 あと顔出しをしてるので、ホタルちゃんはこの戦闘でも普通に固有魔法や武器を使えます。

 羽根武器だけだと時間がかかるからね、隠蔽を放り捨てるのもまあ、多少はね?

 

 今回の2人の実力ですが、まあ、そこそこですね(無礼)。

 雫をSSRとしたときのまあ……Rくらいです。Nではないだけマシっちゃマシでしょうか。

 それでも大して育ってない魔女相手には十分。終わり! 閉廷! 君もう還っていいよ!

 

 

 さて、戦闘も終わって時間もちょうどいい感じなので、こちらも解散しましょ。

 

 信頼度上げのために適当に会話しておけば、まあ大丈夫でしょう。

 

 それでは会議にむかいつつ、今回はここまでです。 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

 

 マギウスの翼が電波という武器を振るうようになって、それなりに時間が経った。

 

 

 すべての魔法少女の抱える、残酷な運命、真実。

 すなわちその魂がソウルジェムという宝石へと変容し、肉体はすでに抜け殻であること。そしていずれは、自らもそれまでに自分たちが災厄として屠ってきた魔女と成り果てるということ。

 

 このことを知り、絶望に打ちひしがれている魔法少女は多く。また、そもそも戦うという運命を受け入れられない者もそれ以上に大勢いた。

 

 マギウスの翼はそのすべてを受け入れた。彼女らが掲げる魔法少女の救済、その理念に同調するものすべて。

 

 

 電波は町を渡り、その理念にすがる者を、灯花達の目論見どおりに市外からも多く引き寄せた。

 人員は瞬く間に増えていき、組織の力はみるみる増していく。

 

 そして人員が多くなって組織としての体裁が整っていくと、その中でも細かく上下関係が生まれていった。

 羽根と呼ばれる構成員の中でも、強力な優秀な魔法少女は白羽根と呼ばれるグループのリーダーとなり、そうでない魔法少女は黒羽根という……身も蓋もない言い方をすれば下っ端に、と分けられる。

 

 彼女たちはその素性を隠すため、それぞれローブで姿を隠す。解放のため、とはいえ、魔女を育て利用したり、同じくらい不気味なウワサを守るということは多くの魔法少女には理解されないことでもあるからだ。

 組織内でも互いの素性には立ち入り無用、となっているくらいには(もっとも、そう遠くない内、グループ内ではこっそり互いに素性を明かし合うのが習慣化するのだが)、その隠蔽は徹底される。戦い方ですらも本来の固有魔法や武器を使わず一律、同じ武器や魔法を使うのだ。

 

 そしてその例に当てはまらないのが7人。

 組織のリーダー、マギウスとして彼女らを導く里見灯花、柊ねむ、アリナ・グレイ。

 その3人と羽根達を繋ぐ西のベテラン、梓みふゆ。

 そして彼女らと同じほどに組織の古株の白羽根、天音月夜と月咲、最後に朝倉蛍である。

 

 

 

「やー、初めまして。私は朝倉蛍。ちょっとばかし先輩だけど、遠慮なく頼ってね」

 

 白いローブを肩に羽織った少女と、黒いローブで身体を隠した二人の少女。夕暮れの町の中、場に不釣り合いなファンタジーじみた姿が目立つ。

 

「こちらこそよろしくお願いします! まさかホタルさんのグループで働けるなんて、光栄です!」

「やめてよ、そんな上に見られるような人じゃないからさ、私」

「でも前から、私はホタルさんを目標にしてて……!」

「ちょ、ちょっと……」

「その声、まさか……」

「はい! 私です! 以前昏倒事件の時にお会いしたわ……」

「しーっ! しーっ! 羽根が素性を明かすのは駄目って言われたでしょ!?」

 

 意気揚々と名乗ろうとするひとりを、もうひとりが慌てて止める。

 

「……。あぁ、うん。喧嘩はそこまでそこまで。まいったなぁ……」

「えっ!? いやいや喧嘩なんてそんなそんな! あはは……」

 

 もう一方からちら、と刺さる冷たい目線に気づかないふりをしつつ、黒羽根が声を張り上げた。人が聞けばぎょっと振り向きかねないほどの声であったけど、幸いここは町外れだ。

 

「はぁ……。ふたりは割と戦える子だったのに、それでも入ったって事は」

「そ、そうなんです……。その、魔女になるって事を、他の子と一緒に戦ってる内に聞いちゃって……」

「でも、一緒にマギウスの翼のことも知ったんです。それで……」

「解放のために働くって決めた、と……。でも分かってる? 私たちがすることは、ただ誰かを幸せにするんじゃなく、ひょっとしたら不幸にだってしかねないってこと」

「それは……」

「でも、ホタルさんはマギウスの翼で頑張ってるんですよね? だったら大丈夫です!」

「……まあ、よく考えてね。羽根になるってこと」

 

 そう言うなり歩き出す。揺れる白いローブをつかむように、あわててふたりもかけだした。

 

 物影に入れば黒いローブはその存在感を消し、逆に白はその在ることを声高に主張するよう。しかしそもそも、こんな日常において浮く格好に理由も無くなるはずも無い。

 ウワサと呼ばれる、柊ねむが感情エネルギーを収集するため生み出した怪異の守護。それが彼女らがここにいる理由だった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! ホタルさーん!」

「覗き見城下町のウワサ……でしたっけ。でもあまり引っかからないって聞きましたけど……」

「それでも監視はしてないとってこと。たまに魔女も出るとそっちも対処しないとだし、意外と大変だよ?」

 

 路地に声と足音が響く。彼女らの間にある感情がバラバラでも、それでも時は流れる。

 

 日が落ち、夜の帳が落ちて、そのうちに今日はもう終わりにしよう、となる。

 ふたつの影が見えなくなって、ほうと朝倉は息を吐く。そして少しばかりスマホをいじると、そのうちゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 舞台は移る。夜の町に6人の少女がたむろしている。

 家に居場所がない不良の集まりかというとそういうわけでもなく、むしろ上品さをうかがわせる者もちらほら。

 それが揃って深刻そうに顔をつきあわせているので、やはり異様だ。ほとんどがバラバラの制服を着込んでいるのもそれを助長する。

 

「肥大化する魔女の秘匿方法……羽根の増加に伴う統率の難化……」

「人数も増えてエネルギーの回収量も増えたけど、問題も山積みだにゃー……」

「白羽根の間でも、羽根どうしの認識違いは実感がございます」

「車輌基地の羽根たちでもあったもんねー……」

 

 そうして考え込む彼女らの背中を、どんと何かが叩く。わわ、とよろめきながら振り向くと、にっと笑いながら朝倉が立っていた。

 

「おまたせしましたっ、と。それで何話してたのかな? お姉さんも考えるよー」

「びっくりしたぁー……。驚かさないでくださいよ……」

「あ、ホタルさん。どうですか、あのふたりは」

「んー……。戦いに関しては問題なしかな。まだ初日だし、あとはおいおい」

 

 その格好は先ほどまでのローブ姿ではなく、普段どおりのジャージ姿。その肩にぶらぶらと小ぶりのかばんをぶらさげている。

 

「そういえば……。今日はうわさの監視でしたっけ」

「水名のやつだねー。とはいえ今日は何も起こらなかったけど」

「いつもすみません、急のヘルプばかり引き受けてもらって……。あのふたりが助けになってくれればいいんですけど」

「あー……それは……どうだろうね? まあヘルプに関しては望んでやってるようなものだし、気にしないで」

「いつも臨時の穴埋めばかりでございますから……。それなりに戦える子をよこしたつもりなのですが」

 

 白羽根がマギウスでになう役目として、最も基本的なのはその下の黒羽根たちの統率だ。しかし朝倉に関しては、今までまともに部下を持たず一人で行動することがほとんどだった。

 マギウスの翼はあくまで組織。基本的に一人にはひとつの役目……例えばグリーフシードの収集や、重要な地点の防衛といったような……を割り当て、その能力を伸ばすことが普通だった。もともと能力の低めな人材が多いのだから、適材適所が特に肝心だったのもあるが。

 とはいえ、いまだ発展の過渡期である以上、どこか手の回りきらない場所は出る。そういったところを適宜補うのが彼女の仕事だった。

 

「ま、私のことはどーでもいいよ。それよりさっきまで話してたことが気になるなぁ」

「そーだよー。人が増えれば良くなるかと思ってたけど、いいことばかりでもないんだよね-」

「というと……羽根達の間で話がこんがらがってたりすることかな?」

「それもだし、あとは生育している魔女をどう秘匿するかもだね」

「大きくなりすぎて、もう結界がリミット寸前なんだヨネ」

「え、そんなに大きくなってたんだ、あの子……」

 

 うーん、とうなり声をあげながら考え込む。聞いたはいいがアイデアはないようである。

 それを見て一人が声をあげる。メガネをかけた、幼さと聡明さをふたつともうかがわせる少女。柊ねむだ。

 

「そのことなんだけどね。僕に考えがあるよ」

「うっそ、すごい! どういうの?」

「羽根達を巨大な箱に纏めてしまえばいいのさ。それに、そこまで大きな箱なら魔女の秘匿だって容易だろうしね」

「ええ? わたくし、みふゆの時みたいにお家は用意できないよ……?」

「僕なら城を建てることだって出来るよ」

「どーやって! ……あ、そっかうわさなら!」

「さすが、名案でございますね!」

 

 その言葉に各々が顔を輝かせる。

 

 うわさ。ねむがその固有魔法で造り出すことの出来るそれの性質はまた、彼女が自在に調整できる。

 絶交という言葉を必ず遂行させるもの、不幸を吸い取りまた配るもの、その他諸々エトセトラエトセトラ。それらすべて、強力な力や性質を持つ。

 自然、それを拠点として使えるようにすることも、というわけだ。

 

「ただ、本当に作れるんですか……?」

「物語を一度紡いだところでそれは無理な話だろうから、連作として加筆して物語を厚くしていくよ」

 

 里見灯花の天才性が科学におけるものとするならば、柊ねむのそれは物語を描き出すもの。

 それは彼女の作るウワサが、ある種の都市伝説のような物語を背負い生み出されることと無関係ではあるまい。

 

 

 そんなわけで、次に必要なのはその箱となるウワサに必要な物語。

 どんな情景を描写するか、どんな空間を骨子としていくか……。

 

「それならグッドアイデアがあるんですケド」

「なに?」

 

 最初に口を開いたのはアリナ。彼女の自信ありげな表情がより一層力強く見えた。

 

「アリナ的には、アトリエがあるとハピネスだと思うワケ」

「……アトリエ?」

 

 なにか自分の聞きたいことと違わないか。そんなねむの思いはどんどんと裏打ちされていく。

 

「えっ、そんなのアリナだけズルい! それならわたくしも! 宇宙素粒子観測装置が欲しい!」

「ちょっと、灯花……。流石に私欲が過ぎるよ」

「そうです、現実を見てしっかり考えてください」

「みふゆの言うとおりだよ」

 

 私欲に走る同胞。こういうとき、さすがベテランは頼りになるとねむは深くうなずくが。

 

「周りのことを考えるならお風呂に決まってます!」

「あれ?」

 

 別にそんなことはなかった。横目に見るとかすかに欲望の炎が見え隠れ。

 

「魔女退治で身体を動かしたあとは体を流したいじゃないですか」

「さすが、みふゆさんでございます」

「ねー」

 

 そんな言葉を聞いてため息をつく朝倉。ねむは思う。もう一人のベテランはさすがに違ったかと。

 

「もう、そういうことじゃないでしょ」

「うんうん」

「本当に大事なのは、ちゃんと寝られることだよ。分かってないなぁ」

「あぁうん……予想はついてたよ」

 

 案の定そんなことはなかった。というか一人だけ欲求に実感がこもっている。

 

 痛んできた頭を抑えながら言葉を紡ぐ。なんだってこうも俗物的なのか。

 

「アトリエも研究所もお風呂も寝床も、広さは十分確保できるはずだよ。ただ、本当に正しいかどうか反芻することをおすすめするけどね」

「むー! じゃあ、ねむはどんな所がいいと思うの!?」

「僕?」

 

 その問いに答えを窮する。言われても、他の面々のようにパッとは浮かんでこない。

 

「じゃー仕方ない。ねむちゃんは次までに、どんなのが欲しいか考えてくる、ということで」

「いや、そういうことではないんだけど……」

「夜も遅いし、解散! ちゃんと家族がいるなら特に大変らしいしね」

「む……」

 

 家族。そう聞いて、ねむの胸にどこか複雑な感情がこみ上げる。

 どこか、自分がよそものであるかのような家庭。悪意がないのは分かっているが、それでも、いやだからこそ……。

 

「ねむちゃん?」

「あ……いや、なんでもないよ。確かに、今日はもう切り上げた方が良さそうだ」

 

 名前を呼ばれて意識を戻した。これではいけない。

 解散と決まると、皆がだらだらと話しながら、少しずつ散り散りになっていく。

 

 その光景に少し、名残惜しさを感じながらねむは帰路へついた。

 

 

 

 翌日。昨日よりも早く彼女たちはまた、一堂に会していた。

 場所はファミレス。どうせちゃんと話すなら、きちんとした場所にしましょうというみふゆの案であった。

 

「ファミレスかぁー。全然来たことないから新鮮な感じがするね」

「アナタ、今までどんな暮らししてたワケ?」

「え、なんか、うーん……こう……生きてた……?」

「つまり、どういうことでございますか……?」

 

 集まると自然と騒がしくなる。ちなみに朝倉の今日の仕事はこっち優先のため非番である。

 

「こほん! では、昨日ねむが提案してくれた新たな拠点についてですが……名前から決めてみるのはいかがでしょうか?」

「どーして? 必要なのは魔女を隠せて羽根も入る所って決まってるよ?」

「むしろ、それしか決まってない。案こそ出たけれど、ベースすら宙に浮いたままだよ」

「……はっ、名は体を表す! で、ございますね!?」

 

 まずは名前を決めて、そこからウワサをどうするか具体化させる。みふゆの言い分はこういうわけであった。

 異論も出ず、まずは少し時間を取って名前を考える、ということに決まった。ちなみに、うち一人はどういうことかよく分かっていなかったのは余談である。

 

 

 そして幾ばくかの時間が経った。

 みふゆや天音姉妹は自信ありげに顔をゆがめ、アリナや灯花は自分のそれをみじんも疑わないように悠然とする。そして朝倉はとりあえず満面の笑みを浮かべていた。

 

 先陣を切ったのはみふゆだ。その勝利を確信したような空気に、月夜と月咲は知らずつばを飲んだ。

 

「では言い出しっぺのワタシから発表しますね……はいっ」

 

 伏せられていたノートを勢いよく見せびらかす。そこに書かれていたのは、ずばり。

 

「えーと、希望の宿」

「ぷふっ!」

「ま、年寄りくさいヨネ」

「――っ!?」

「み、みふゆさーん!」

 

 みふゆ、轟沈。机に突っ伏すその様は、さながら帰ってきた赤点の回答を見た学生のそれである。

 次鋒。天音月夜。

 

「愛と希望のマギウスランド。おぉ、遊園地みたい」

「ダッッッッッサ!」

「月夜ちゃん! 大丈夫!?」

 

 屍二つ目。即死であった。

 

「ねーねー、南凪にもあるんだっけ、遊園地。行ったことあったり?」

「知らないケド。というかアナタ、何杯飲む気なワケ?」

 

 死体をよそに、コップのコーラを飲みほす朝倉。メロンソーダ、ジンジャーエールときて3杯目であった。

 そんなのんきなのとは裏腹に、姉の思いを継いで涙を拭う月咲、リベンジマッチ。

 

「羽根を休める場所~愛と希望を添えて~」

「工房で大鍋料理作ってる娘がなに、グルメぶってるワケ?」

「ぐっ……ま、まだっ……」

「アナタは『羽根のごった煮丼』がお似合いだと思うんですケド」

 

 想い届かず。無慈悲にも亡骸が積み重なるばかりに終わる。

 テーブルに横並びになる3人の悲哀は、ほんの少し前には想像も付かないものであった。

 

「あっ、駄目だったんだ……」

「見事な切れ味だったよ。でも勝負がついたあともいたぶるのはどうかと思うよ」

「アリナは勝負してるつもりはないんですケド」

 

 朝倉が手になみなみと注いだ乳酸菌飲料をもって帰ってきた。

 遺体3つの傍の空のコップを見て、何か入れてきてあげた方がいいかななどと考え始めた彼女にアリナが問いかける。

 

「アナタはどうなワケ?」

「えっ? これ私も考えるの?」

「それはまあ、そうだね」

「えー……じゃあ、希望のお布団とか」

「幼稚園かなにかなワケ?」

「ひどくない?」

 

 私にそういう知識あるわけないじゃん、とぐちぐちいいながらふてくされる。

 頬を膨らませ、ぶくぶくぶくとストローを吹く姿は完全に子供のそれである。

 

「じゃあ……アリナには……どんな案があるんですか……」

「そうでございます……」

「さぞかし素敵な案なんだよ……!」

 

 ぶくぶくという音が呪文になったようによろよろと屍が動き出す。

 怨念で動くその姿はまさしく怨霊とかのそれであった。

 

 しかし、それぐらいで動じないのがこの女、アリナ・グレイだ。眉ひとつ動かさずにすっとノートを持ち上げた。

 

「これだケド?」

「アトリエ・リトルホープ……けっこう綺麗に纏まってる」

「っ!? このままではアトリエに……灯花は何かありませんか!?」

 

 私怨で対抗馬を求める最年長。もう一人はコップを半分空にして、未だストローを吹いている。

 

「んー? わたくしはこんな感じかにゃー」

「希望観測所、ですか……」

「でもわたくしはアリナの案が好きかもー。ただ、ねむはどーなの?」

「そうですね、最後にねむの意見も聞かないと」

 

 少しの静寂。ウワサの主の言葉を、自然とつばを飲んで待ち構える。静かに気泡の破裂音だけが鳴った。

 

「……フェントホープ。ただの閃きだけど、希望を皆が使っていると思って」

「それで『かすかな希望』でございますか?」

「少し言葉を変えれば『見せかけの希望』にもなるよ」

「くふっ、それに言語を換えれば、『希望を作る』みたいにもなるね」

「今のワタシたちにとってピッタリかもしれませんね……」

 

 見せかけの希望。かすかで儚いそれを作ろうとしているのがマギウスの翼。

 まさにその在りようを示したかのよう、とその名は彼女らの心をつかむ。

 

 その様を見ていた名付け親はあっ、と思い出したようにこう付け加えた。

 

「あ、謝罪しないといけないね」

「ワッツ?」

「実はもう、拠点を作ったんだよ」

 

 さっきよりも長い沈黙。今回は破裂音も止んだ。

 

 そして、つんざく悲鳴。

 周りの客がみんな、つい振り向くくらいのそれがとどろいた。

 

 

 いわく。つい昨日の夜、魔力の反応を感じ取った。それで件の魔女が発見される恐れがあったので、うわさを作って隠す必要があった。

 必死の形相で問い詰める他の面々にねむはそう言った。

 

「……でもさ、だったら名前とか聞く必要なかったんじゃないの?」

「むふっ。皆の青写真を知りたくて少々泳がせてしまったよ」

「赤っ恥でございます!」

「まあそれに、希望というワードの判明は僕としても僥倖だったよ。今度の増築の時には、優先的に欲しいものを聞くよ」

「本当でございますか?」

「でも、そーなるとまたぼやけちゃうね」

「ねむは、どんな拠点がいいんですか?」

 

 ころころと感情を表す彼女らを見て楽しんでいた顔を少しばかりこわばらせ、ねむは考え込んで目をつぶる。

 

 自分の望み……。思い浮かんだのは家族のことだった。

 自分を異物のように扱う弟。その不和にまるで気づかない母。いびつな家庭。

 こうしている間は、そんなことはない。自分の名前を呼んでくれて一緒にいてくれる……。

 ……欲しいのは家らしさ? けれど活動する場所としての線引きもしたい。

 仲間達がいるけれど、戦場であれるような場所。

 

「みえた?」

 

 知らず、声が漏れていたことに少し驚いた。けれど赤面したりするようなことはなく、むしろ胸を張ってこう言った。

 

「……うん。僕が描く拠点はホテル。『ホテルフェントホープ』」

 

 かくして、少しばかり迷走した拠点は形を得た。

 従業員はマギウスとその翼。お客様は魔女。世にもおぞましき宿泊施設、フェントホープの誕生だ。

 またひとつ、マギウスの翼が力を手に入れ手を伸ばす。

 

 

 

「……家族、ねえ」

 

 ぶくり。

 

 コップでひとつ。泡が、爆ぜた。

 

 




Archive

○覗き見城下町のウワサ
  ほんへだとあっさり流されたウワサ。
  害悪度は他のものに比べるとかなり低め。

○黒羽根の強さ
  下限だと魔女相手にも太刀打ち出来ないレベルになる。
  強いと強いで白羽根になるから、これがなかなか……難しいねんな。

○ドリンクバー
  色とりどりのジュースが飲める。
  混ぜることはしなかった。

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