マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート すずね☆マギカチャート(マギウスの翼チャート)   作:鰯のすり身太郎

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Part.18/x

 ゲームでも結局無賃労働RTA、はぁじまるよー。

 

 

 羽根に休みはないわけではないけど、基本的に報酬はやりがいオンリー。アットホームな楽しい職場です。

 

 とはいえ、ほんの少しはお金を貰えているので交通費くらいは出せるようになりました。

 これは本来、マギウスの翼に入ることで、交友に制限が入りバイトなども難しくなる事への救済処置みたいなものですね。所詮雀の涙なのはご愛敬。

 

 

 前回下に羽根をつけられ、微妙に動きが制限されましたがやることには特に変わりはなし。

 引き続き、みふゆさんから指示をもらって下っ端仕事を続けていきます。

 

 というわけで起床。この廃墟も、そろそろ住みよい我が家といった風格をもってきたのではないでしょうか。

 ホテルフェントホープも着々と改装が進み、そろそろあっちに住むことも出来そうになってきました。そうなったら安全性とかから移住になるのですが、なんとも寂しいものがありますね。

 

 まあそれはそれ。今日のお仕事は夜間の魔女狩りです。真っ昼間の今、やることねぇなぁ~、どうするよ、暇だよ~。

 

 

 即寝でもいいのですが、いい加減経験値も貯まってきたので調整屋にステータスを上げにいきましょうか。

 この時間なら知り合いと鉢合わせてロスる事もないのでいいですね、えぇ。そういうわけでみたまさんのところに、イクゾー!

 

 

 

「あら、こんな時間に珍しいわね~? どうぞ、空いてるからすぐに始められるわよ~」

 

 みたまさんオッスオッス! 今日は全うに調整ですが、なんかすごく久々な感じですね……。

 

 情報収集先としても調整屋は優秀ですが、本来の仕事はステータスの割り振り。ホタルちゃんはもともとそこそこあって、その上成長がクソザコナメクジなせいであまり利用してないですが。

 

 なんかテーブルの上に劇物(食物への冒涜)が見えていますが、スルーします。なんでお昼時に来てしまったんですかね……(後悔)。メシマズな上、自分の味覚もイカレてるのはやはりヤバい(再確認)。

 

 

 さてさて、それはさておきステータスの低下具合は……うーんなかなか。

 若干また火力が足りなくなってきたなあとは思ってましたが、じわじわ削れてますね。今回は防御力以外を元ぐらいの位置に戻しておきましょう。完全に元通りとはいきませんが、幾ばくかマシにはなります。

 

 ホタルちゃんはバランス型に近いパラメータですが、正直あまりRTA向きではないのは言うまでもなく。

 攻撃力とあとひとつに重点的に振る、がやはり一番いいんですが、ベテランで下手にステを元からかけ離れたのにすると、戦い方に不慣れなせいでしばらくデバフが入ってしまいます。

 

 なので途中からRTA向きのものに矯正する、というのは出来ないのがつらいところさん。

 水準自体はまあまあ初期から高いので、時間をかけていいならそこまで気にはなりません。でも悲しいけどこれRTAなのよね。

 

 

 調整をする度に愚痴ばっか言ってる気がしますね……。一応悪いことばかりでもないんですよ、本当に。

 

 ホタルちゃんは元々火力が低めでしたが、これは対人では最適なくらいでした。

 RTAだと対人がキツくなるのの要因のひとつが過剰火力ですが、普通に人間相手にも振っていけるのは実のところ結構ありがたいです。

 

 防御力やスピードもそこそこあるくらいが一番幅広く対応できますし、バランス型は対人で強めと言っていいでしょう。反面チーム戦では火力以外は特化の方がやりやすかったりしますが。

 

 追加習得魔術のパラもまあまああるので、ベテラン補正抜きでも羽根武器の使用や杖の使い分けも出来たかもですね。

 このステータスは劣化がほとんどしませんが、ぶっちゃけRTAではそこまで使いどころさんに恵まれないものです。恩恵が他より受けにくい、はっきりわかんだね。固有魔術は覚えないしね。

 

 

 というわけで今回の調整は終わりだぁ! はいお代……あやっべ無駄に話しかけちゃった(ガバ)。

 

「そういえば……明日の午後、商店街でフリーライブをやるらしいわよ~? ホタルさんも、たまには息抜きがてら行ってみたらどうかしら」

 

 フリーライブ。あやか……ではないですよね、そりゃあ。あ、さゆさゆの。

 

 さゆさゆこと『史乃沙優希』は刀剣アイドルなる、面妖この上ない魔法少女です。

 メインストーリーで敵対する『水波レナ』はこの子の大ファンで、うまく利用すれば一気に信頼度を稼げたりします。こういうライブとかにもまず欠かさず参加しているといっていいでしょう。

 

 つまり参加するだけガバです。やっぱり無駄話だったな!

 

 

 しかしミニライブ……ミニライブ……何か引っかかるような……。

 

 さゆさゆがほぼ確実に絡むイベントというと、彼女が主人公の『ほわほわ少女頑張る!』か『沙優希ステップアップ仕る! ですぅ~』と水着イベントくらい……。

 うーん、他に何か関係しかねないのありましたっけ……。

 

 ……ままええわ。何にしても、そこまで深く関わってきたことはこれまで無かったですし、今回も大丈夫でしょう(楽観)。いかに(気を抜いて)サボるかっつーのも仕事の内や。長期間だから、神経質になるのもまあ多少はね?

 

 というわけで今度こそ出ていきましょう。今戦っても、調整後で若干デバフ入ってるので非効率的です。夜まで寝て時間経過させましょ。

 

 

 

 オッハー!(真夜中)

 

「こんばんわ! また今日もよろしくお願いします!」

 

 というわけで羽根ふたりとも合流して、早速見回り開始です。(魔女は)どこだぁ……探すぞぉ……。

 

 

 この仕事は経験値効率は戦闘が多い分、他より良好ですが獲得したグリーフシードは上納させられます。

 つまり通常のパトロールの劣化ですね。そんなんばっかだなマギウスの翼!

 

 ワルプルギスの夜撃破じゃなく、マギウスの翼ルートを狙うにしても育成の観点から言えば間違いなく、途中から入った方がいいです。

 そういう意味でも今走っているのはベテラン専用チャートですね。育成気にしなくていいのはやっぱりありがたいぜ!

 

 

 羽根と一緒に行動しているのでそちらにも経験値は入っていますが、モブなので結局そこまで期待できる戦力にはなりません。

 戦力として使いたいなら、雫とゆきかがツートップでしょう。どっちも伸びしろが高く、固有魔法も非常に強力。翼で低レベルクリアしたいなら必須クラスです。ただし後者はガバをひきよせるので(RTA向きでは)ないです。

 

 他の羽根のネームドだと例えば、『観鳥令』や『牧野郁美』がいますが、前者はまず白羽根になるので戦力にしにくい、後者は割と歳がいってるので伸びしろが低いという感じです。

 他にもいますが、まあ言ってるとキリが無いのでこの辺で。結局育成チャートではないしな!

 

 ところで魔女はどう? 出そう?

 

「うーん……全然出ないですね。いつもはもう少しいるんですけど……」

 

 駄目みたいですね。この時期になると魔女は結構ぽこじゃか出るんですけど、何かイベントでも引いたかな……?

 

 

 

 ……うーん、深夜、魔女が出ない、さゆさゆのライブ……。

 

 ……あっ。

 

 あっえっあっあっ、あぁーーっ! 

 アレか! アレだな! アレだわ!

 

 やばいやばいやばいやばい! 

 完っ全に失念してました! 下手したらリセットオア再走案件のイベントですよコレ!

 

 思い出しました! 特殊な始まり方だったからすぐに出てこなかった! 

 

 さゆさゆのミニライブですが、何も彼女のイベントだけのフラグではありません。普通に町でやってるときもあるし、今回もそれだと思ってましたが……。とんでもないイベントの時にも確定で起きるんでした!

 このパターンだと失敗したらみふゆさんかアリナが退場しかねない!

 

 ちょい羽根! 今日他にパトロール担当の羽根はいる!? いる? どこ!?

 

「えっ? それならとここからすぐ近くですけど……」

 

 ウオオオオオーッ! 急行! 急行! 間に合え!

 

 全力ダッシュしながら今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

 

 あるいはそれは偶然であり。あるいはそれは必然だった。

 

 ただただ荒い息だけが夜に響き渡る。ぼつぼつと流れる汗が地面をぬらす。

 

 起こるべくして起きた邂逅。血に塗れた物語の始まりの合図。

 

 少し、遡る。

 

 

 

 

 

 

「貴方の名前……教えて?」

「……そう。いい名前ね」

「忘れないわ。……絶対に」

 

 ……さよなら。

 

 

 

 結界が消えたのを見て、変身を解く。

 

 今日は久々に()()があった。間際に聞いた名前を反芻する。忘れないように、大事に自らの心に刻みつける。

 

 結界にいたのは一匹の少しばかり成長した使い魔と、1人の魔法少女。

 けれど、結界の消えたそのあとに何も残るものはなかった。その喪失にもろとも飲み込まれ消えたからだ。使い魔だけでなく、魔法少女も。

 

「……」

 

 やはりもう頃合いだと思った。この町にもはや魔法少女はいない。魔女も滅多に見かけることは無い。

 何もかもすべて……()()()()()()。災禍、そしてその種子。この町にそれはもう無いのだ。

 

 さっきの魔法少女は、全く見かけたことの無い顔だった。かといって、初陣という様子でも無く。

 おそらくは近くの町から迷い込んだのだろう、とあたりをつける。使い魔を追って自分の縄張りから出てきてしまったのだ。

 

 

 家へと歩く。髪を纏めるお守りの鈴が、リンと鳴る。

 

 この町にいるのももうじき終わり。狙いを果たした今、ここにとどまる理由は無い。

 

 実のところ、もうすでに別の町へと移る計画は立ててある。

 ホオヅキ市、茜ヶ咲中学へ転校。住む場所もめどはついている。

 

「……けれど」

 

 魔女を殺すのは魔法少女の使命。災厄を振りまく、いやともすれば災厄そのものである魔女に立ち向かえるのは、超常の力を持つ魔法少女のみ。

 

 しかし、世界はそう単純な対立構造のみで成り立っていない。

 魔法少女は絶望しきれば魔女に堕ちる。魔法少女が狩る魔女というものは、すべて同胞のなれの果て。

 ひどく残酷な、インキュベーターによってもたらされた悲劇の連鎖。

 

 故にこそ、殺す。

 魔女を殺し、魔法少女を殺すことでその悲劇を止める。

 

 そのために私は町を渡り、魔法少女の殺戮を続けている。

 ツバキの、両親を魔女に殺された私を代わりに育て、最後には魔女へ変わってしまった、彼女の力で……。

 

 

『……ツバキ? この子……』

『……大丈夫、大丈夫だから。わたしは……』

『……お姉ちゃん代わり、ってやつみたい。どういうのか、正直よく分からないんだけどさ』

『……顔が、怖い……? え? ツ、ツバキ……わたし、そうなの?』

『……スズネちゃーん! あはは、どう? 意外と教え方厳しいでしょ、ツバキ』

『……スズネちゃん、今日は……』

『……スズネちゃん、……』

 

『……え、嘘……はは、えっ? 嘘、だよね? ねえ、キュゥべえ、スズネちゃん、そんな、ツバキが、そんな……』

 

「――っ!」

 

 いつかの思い出がフラッシュバックする。

 一緒にツバキの下にいた彼女。いつも不器用な優しさを向けてくれていた、姉代わりだった彼女。魔法少女の先輩として、私を導いてくれた彼女。

 ……最後には、どこかへ逃げて消えてしまった彼女。

 

 知らず強く拳を握りこんだ。

 私がこうして町を渡る、もう一つの理由。

 

 私は。

 彼女がツバキのように魔女へ墜ちるその前に――

 

 必ず。彼女を、殺す。

 

 

 

 

「実はごく最近のことなんだけど、ボクたちの監視が及ばなくなった町がある」

「その原因は分からないが、ひとつ興味深い現象として――」

「その町に少しずつ、魔法少女が集まり始めているんだよ」

「その町の名は”神浜”。……君が追っている彼女の手がかりもあるかもね」

 

 

 その日家に戻ると、インキュベーターは私にそう言った。

 

 なんて見え透いた罠。そもそも魔法少女を、魔女を作り出したのはそのインキュベーターだ。

 魔法少女を魔女とすることが目的であるヤツらにとって、そうなる前に殺し芽を摘み取ることを続けている私は目障りな存在でしか無いはずだ。

 

 当然、その神浜に魔法少女が集い始めているということを伝えたのも――裏に何か思惑あってのことだろう。

 魔法少女が多いというそこへけしかけることで、返り討ちにでも遭うことを期待しているのか?

 それとも、もはやなりふり構ってもいられないほどの異常事態であるのか?

 

 ……どうだっていい。

 魔法少女が集まっているのなら好都合。インキュベーターのいうことは実際、すべて私にとっても利のあることだ。

 

 ()()を探し始めてからも長く時間が経っている。

 生存していることは、インキュベーターから聞き出したがそれ以上は分からない。

 今回、そのことすら持ち出したことは、相当にヤツらが神浜へ関心を持っているということでもあるのだろう。

 

 ならば、せいぜい利用されてやるまでだ。

 そしてその上で、その目論見を正面からくじけばいい。

 

 電車の中で、今一度決意を新たにする。ふと窓の外へ目を向ければ、真新しい町並みが見え始めていた。

 ――新興都市、神浜。

 

 

 

 電車から降り、改札を抜ける。魔法少女達が集うという町並みも、ただ見る分には何も他の町と変わらない。

 

 魔法少女を確実に見つけるには、方法がある。

 まず、魔女の結界を探すこと。そして、それと戦っている魔法少女に協力し……そして油断したところを殺す。

 

 魔法少女の命はソウルジェムに凝縮される。

 苦しませずに殺すには、それを破壊するのが一番だ。そのためにも、この方法はひどく理にかなっている。

 

 

 結界を探し歩き続ける。途中、椿の花を世話している女の子を見かけた。

 

 彼女の名前と同じ花。優しくて、綺麗で、強かった彼女。

 ……思い出させるものの、なんて多いことだろう。振り払おうとした感傷に沈む。幸福だった日々。何も知らなかったあの頃――。

 

 

 

『――、来てたんだ!』

『おー、スズネちゃん。お邪魔してるよー』

『こんにちは、――。ちょうど買い物に行っていたんです』

 

 その日帰ると、すっかり慣れ親しんだ姿があった。むしろ来ない日は無いくらいで、姿を見ないと心配になるくらいだった。

 ツバキは一緒に住めばいいのに、といつも言っていたけれど、お世話になりすぎるのも嫌だ、と彼女はこれまたいつも断るのだった。

 

『ところでその怪我、どうしたんですか?』

『これ? 途中で魔女を見つけたから狩ってきたんだ。……そんな顔で見ないでよ、もう。他の魔法少女とは戦ってないよ』

『ならいいですけど……。初めて会ったときなんか、ひどかったですから……』

『わたしだって成長してるよ! 漢字とかの読み書きも出来るようになってきたし……』

『……そうですね。私もそれは感じています、――」

 

 ばつの悪そうな顔。何度か、彼女がツバキから勉強を教わっているのを見たことがあった。聞いたら、知り合って間もない頃から続けているのだとか言っていたっけ。

 その時間、私は一人で暇になるので、あまり楽しくはなかったのを覚えている。……結局、そう経たないうちに彼女は勉強を投げ出してしまうので、そこまで不満でも無かったか。

 

 たまにそのことでツバキに叱られているのもよく見る光景だった。

 自分よりもずいぶん年上なのに、なにかと彼女は子供っぽかった。初めはひどく表情に乏しかったけれど、そのうちころころと感情を表すようになると、それはより顕著にうかがえた。

 

『あ、そういえばスズネちゃんも魔法少女になったんだっけ』

『そうです。倒した魔女の力を吸収できるですよ』

『へぇ……。それはまた、見たこと無い魔法だなあ』

 

 そう言うと、彼女は私の頭をなでた。

 笑いながら、今度戦い方を教えてあげる、と言う彼女。

 

『ふふふ、うん。わたしはほら、お姉ちゃんってやつだからさ……ねえ。どーんと、頼ってよね』

『頼もしいですね、ふふ』

『強くだってなってるんだよー。次は、ツバキにも負けないから!』

『あら。じゃあ私も頑張らないとですね』

 

 みんなが笑っていた。間違いなく幸せだった。

 

 ……遠い遠い昔のような記憶。

 

 

 

「えっと、あのっ!」

「……え?」

「椿……好きなんですか?」

 

 声で現実へ引き戻される。声の主はついさっきの女の子。

 どこか戸惑ったような顔を見るに、ずいぶんと長くボーっとしてしまっていたようだった。

 

 好きだ、と答えると、かえでと名乗った彼女は嬉しそうに顔をほころばせた。

 適当に切り上げようと思っていたけれど、ついつい話が続く。椿の花を見て笑う彼女に、つい気が緩んでしまったのかもしれない。

 

「スズネちゃんかぁ……。中学生だよね? 椿の花が好きって子あんまりあったことが無いから、私、嬉しいな……!」

「……そうなの?」

「うん。私は大好きだから、ここに通ってお世話してるんだけど、同い年くらいの子には渋すぎるって言われたりするの……」

 

 それを聞いて思い出したことがあった。

 『落椿』と言って、椿の花は根本から落ちて散る。それが人の首の落ちるのに似て不吉、とされるという。

 

 そのことを言うと、目の前の彼女はこう言った。

 

「そっかぁ……。それで悪いイメージを持っちゃってる人もいるんだね。椿は悪くないのに……」

「……」

 

 ……ツバキ。ツバキは悪くなかった。花のそれと同じように。

 でも、彼女は魔女になった。希望をもたらす魔法少女から、絶望をまき散らす魔女になった。

 

 罪が無くても、殺されなければならないものはいる。それが魔法少女だ。

 であれば、それを殺す罪はすべて私が負う。

 すべての魔法少女が。そして、()()が罪を負う前に。

 

 

 そのうち、彼女は他の友人に連れられ去って行った。仲の良さそうな三人組。

 明日の午後に予定が空いてるか、などと話しているのはいたく幸せそうで。

 

 ……自分のやるべきことを思い出す。

 休憩も、思い出にひたるのも終わりだ。魔女の結界を探し、そして魔法少女を見つけなければ。

 これ以上、絶望する人を増やさないためにも。

 

 

 

 ……歩く。歩く。歩く。

 結界を求めてひたすらに、歩く。

 

 魔女の結界、とは言ったが、実のところそれが使い魔のものであっても何でもいいのだ。要は人目のつかないところで接触さえ出来ればいい。もちろん、魔女であることに越したことはないが。

 

 着いたときには明るかった空は、すでに暗くなってしばらくが経つ。夜が更けていくにつれ、焦りを感じるようになっていた。

 

(どこ……?)

 

 インキュベーターが無意味にここを教えたわけがない。やつらに、私がだまされ一日が徒労に終わったことを笑うような……そんな感情は備わっていない。私を一日程度足止めしたからと、何にでもなるわけでも無い。合理的なモノである以上、なにか理由があってけしかけたのは間違いないのだ。

 

(魔女の結界は……)

 

 焦ってはならない。魔法少女が多く集まっているというのなら、魔女が多く狩られるのも必然。

 それでも、ひりついた空気もないということは、魔女が足りてないということもまたないはずだ。いずれ確実に捕捉できる……。

 

「――っ!?」

 

 ついに見つけた。空き地の近く、堂々と構えられた異界の城。

 

 中に入れば、その大きさや力から、使い魔ではなく魔女のものであるとすぐに分かった。

 色とりどりの包装紙や、ドレスで飾られた結界を進む。魔力を探知すると、魔女でも使い魔でもないものもすぐに見つかった。魔法少女だ。

 

(……?)

 

 彼女らは一人ではなかった。それはまあいい。

 

 ただ、奇妙だったのはそのすべてがそろいの衣装を身に纏い、正体を隠していたことだ。

 黒いローブに身を包み、顔を覆い隠している。ソウルジェムの場所も分からない。

 

 

 それでもと接触してみると、会話は普通に成り立った。

 友好的とは言わずとも、会話も何もせず襲ってきたりというようなこともなかった。

 

 ……であれば、何の問題も無い。普段どおりにやればいい。

 

 魔女を倒すまで、お互い邪魔せず協力することをどうにか約束する。

 あとはそれまでに、ソウルジェムの位置を探りつつ、隙を見いだすだけだ。

 

 心残りなのは、名前を聞き出せなかったこと。今までも、殺す前にその魔法少女の名前を聞いていた。

 それはひとつのおまじないのため。ツバキのやっていた、死んだ人の名前を書いてお守りにしまっておくというもの。

 そうしていると、ずっと忘れずに一緒にいられる……私の負った罪も。

 

 

 少し進めば最深部はすぐそこだった。

 着くとウサギの人形を思わせる魔女が飛び出してくる。

 

「◇▲○□▽□!!」

「魔女……!」

「任せて」

「あ、ちょっと……!」

 

 彼女たちの実力があまり高くないことは、道中の戦いでうかがえていた。

 変に相手に合わせるより、自分がひとり戦った方が楽だと結論づける。一足早く飛び出した。

 

 一直線に飛び込んでいる魔女に合わせて、手に持った剣を構え、切りつける。

 ……問題ない。なんてことない強さの魔女だ。

 

 

『……魔女はなんていうか、面倒な性質を持ってたりしてね。倒したー、って思っても本体が別にいたり、わけの分からない魔法使ってきたり、あとそもそも死ににくい、とかね。こういうのがあるから魔女より魔法少女の方が……』

『ちょっと、――。魔法少女と戦うのを教えないでって言ったじゃないですか』

『あ、ごめんごめん……。ともかく、魔女相手に油断しちゃ駄目ってこと。オーケー?』

 

「――っ」

 

 昔のやりとりをまた思い出した。

 今日はずいぶん、そういうことが多い。インキュベーターが話に出したからだろうか。

 

 ……油断はしない。魔法で炎を操り、剣として形にする。

 ツバキから受け継いだ魔法。力。彼女はこれを『炎舞』と呼んでいた。

 

「……ハッ!」

 

 剣を飛ばす。結界の中、地面に潜って逃げようとする魔女の動きを先んじて潰し、封殺するように。

 いくらかは突き刺さるが、決定打には至らない。……想定内だ。

 

 その先、どこへ逃げるかなど予想がついている。その身体へ手の大剣を突き刺した。

 

「なんて速さ……」

「決めるッ……!」

「▲△○■▽◇△!?」

 

 力を込め、引き裂くように。剣を引けば魔女の身体が爆ぜた。

 途端に結界は不安定に揺らぎ、そして消えた。すでに場所は夜の空き地になっていた。

 

 落ちたグリーフシードを拾う。……頃合いだろう。

 

 

 彼女たちのソウルジェムの場所は分からなかった。ただ、大体の見当はつく。

 見れば何か、私について話しているようだった。どうだっていいことだ。なんと言われようが、やるべきことをやるのみ。

 

「ねえ」

「――っ! な、何ですか?」

「もう一度だけ聞くわ。あなたたちの本当の名前――教えてくれない?」

「答えは……同じです……」

「……そう。残念ね」

 

 もう一度名前を聞く。空振りに終わる。

 ……素性を徹底的に隠しているあたり、なにか後ろめたいことでもやっているのかもしれない。

 

 けれど、どうでもいい。私のやることがそれで変わるわけではないのだから。

 

「……『炎舞』」

「なっ……! あなた、何を……」

 

 さっき魔女を焼いた炎の剣が、今度は彼女たちに襲いかかる。

 かろうじて躱されるが、狙いどおりだ。魔法でも何でもなくよけたのなら、その先にまた動くことはできまい。

 

 ひとりと距離を詰める。

 フードに隠れた顔、口元から混乱と戸惑いがうかがえた。

 

「……さよなら」

 

 手の剣がその首をかききる。彼女だけはちらと見えていた。首にかけられた宝石……ソウルジェムが。

 一刀で砕く。せめて、楽に。

 

 

 ……けれど、思っていた感触は帰ってこず、剣は空を切った。代わり、顔に白いローブが投げられたようだった。

 途切れた視界。とっさに剣で防御すると、衝撃が走る。勢いよく蹴りつけられたらしい。

 

「く――ッ」

 

 ローブを投げ捨てる。彼女を庇った何者かを見るために。

 

 ……その人は、私の予想のしていない人物だった。

 

 

 

 あるいはそれは偶然であり。あるいはそれは必然だった。

 

 ただただ荒い息だけが夜に響き渡る。ぼつぼつと流れる汗が地面をぬらす。

 

 起こるべくして起きた邂逅。血に塗れた物語の始まりの合図。

 

 

 

 

「まさ、か。そんな、そんな、そんな……!」

「嘘。本当に――」

 

 古びた街灯が点滅する。

 ガジガジ、という音とともに、照らされ、暗がりになり、また照らされる。

 

「スズネ、ちゃん……?」

「やっと。やっと会えた――ホタル」

 

 血の花の種が、芽吹く。

 

 

 




Archive

○今話の中身
  天乃鈴音 魔法少女ストーリー1話~3話

○パラメータ
  『追加習得魔術』はたるとマギカのカバー裏準拠。
  中身は独自解釈。変でも許して……。

○ミニライブ
  ほとんどイベントの本筋にからまない。
  しかもいわゆる表ルートの方なので、忘れるのもまあ多少はね?

○経歴
  ロスるので確認してなかった。
  一手間を惜しんではいけない(戒め)。


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