マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート すずね☆マギカチャート(マギウスの翼チャート)   作:鰯のすり身太郎

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Part.21/x

 

 ふと、ベッドから身を起こす。そのごく普通であるはずのことに酷く違和感を覚えていることに、朝倉は思わず苦笑した。

 

 魔法少女になってから、もっぱら野宿ばかりで過ごしてきた彼女にとって、暖かな寝床は全くの縁遠いものだった。

 いつからか悪夢に悩まされるようになり、その原因の一端は冷たい床で寝ていることで――だったら、いい布団があれば自分もよく眠れるだろうと思いもしたが、都合のいい考えだったな、と自嘲する。

 

 とはいえ、それだけだ。バイクや車の騒音、起き上がったときの身体のきしみ、そういった諸々がないだけでも、ここ(フェントホープ)は快適そのものだ。心地よすぎて辛いほどに。

 

 許されるのならばもとの路地裏に戻りたいのだが、あいにくとみふゆは厳しかった。いや、優しいというべきなのだろうが。

 まあ実際、あそこは人が住むに足る環境とはあまり言えない。慣れ親しんだものだが、認めるところは認めるべきだ。

 もっとも、ただ友人を道ばたに放るのが忍びない、というだけの理由で朝倉をフェントホープへ住まわせたわけではないことは、朝倉自身も十分に分かっていた。

 

 明確に、強く殺意を向けてきた魔法少女。大事な妹のようで、もう死んでしまったのだと思っていた彼女。

 ……あれから、もう一ヶ月以上経とうとしている。

 

「……スズネちゃん……」

 

 再会を思い出し、朝倉は顔を曇らせる。

 ……彼女をああしてしまったのは、自分の責任だ。ツバキが魔女になってしまった現実から目を背け、逃げだし、結果スズネには魔法少女殺し(殺人)で手を汚させた。

 

 ……優しい彼女のことだから、きっと魔法少女が魔女へ成り果ててしまうのならせめて、と思ったのだろう。それすら出来ないほど、攻撃性は薄い子だったと思っていたけれど、事実は事実だ。あの戦い方は、手を汚した人でなければ出来ないと、多くの魔法少女を見て知っている。

 なんてことだろう。そうなってしまうまで戦うなんて、自分が残っていれば、そんな悲痛な選択を迫ることはなかったはずなのに。

 

 穢れを増していくソウルジェムを浄化し、立ち上がる。

 ――それでも、まだ殺されてあげるわけにはいかない。魔法少女の、宿命からの『解放』を為すまでは。

 

 嘘か真かも明白には分からない、まるで夢物語のようなそれ。だとしても、それにすがるしかもう、彼女にはなかった。

 気持ちを揺らしもう一度固める、振り子のような心の動き。もはやルーティンのようになったそれ。今日、それがいつもと違ったのは、マギウスからの呼び出しが続いたことである。

 

 

 

「『キリサキさんのうわさ』……それって」

「多分、想像しているとおりじゃないかな。僕も普段は他から影響を受けて作ることは滅多にないんだけど、今回は特別というわけだね」

「……少し、悪趣味なんじゃない? あの噂の()()()がなんなのか、知ってるでしょ」

 

 呼び出された朝倉に、マギウスの一人……『柊ねむ』が命じたのは、あるウワサの監視の仕事だ。

 それだけならなにも、わざわざ呼び出すことでもないのに、と。そう思った朝倉は続けられたその名前を聞いて眉をひそめた。

 『キリサキさんのうわさ』、と。そう告げられた名前に既視感があったからだ。

 

 そもそもの『キリサキさん』の話は、神浜市に広まりつつある都市伝説じみた噂である。

 いわく、夜一人で人気のないところを歩いていると、突然鈴の音が聞こえてくる。すると、どこからともなくコートを来た女が現れて、名前を聞く。答えたら最後、刃物でズタズタにされて殺される。

 

 ()()()()()()()、とそれを聞いたとき、朝倉は確信した。恐らくは、彼女が犯行に及ぶとき、警戒されるように誰かが仕掛けた安全網といったところだろう。

 上手くやったものだ、と舌を巻いたのを彼女は鮮明に覚えている。

 

 ……しかし、ねむの口から出されたそれは、大多数にとっては与太話にすぎないそれではなく、明確な怪異としての『ウワサ』だ。

 内心の動揺を隠しながら、何故、と朝倉はねむに問う。

 

「まあ、おおよそは予想がついてるよ。ただ、忘れられつつあるとはいえ、すでにある噂を下敷きにした『ウワサ』であれば、一から作って広めるより、効率よくエネルギーを回収できるんじゃないかと思ってね。ちょうどよく耳にしたその話を使わせてもらった、ということさ。何も君への嫌がらせというわけじゃない」

「……そう。エネルギーの収集もあまり好調じゃないみたいだね」

「ああ。みふゆから聞いただろう? せっかく作った『ウワサ』も最近は消され始めている。有限である僕の命を使う以上、効率は求めて然るべきだ」

 

 ねむの言葉には嘘は含まれていない。そう感じた朝倉はほう、とため息をついた。どうあれ、それなら自分が文句を言う筋合いはない。

 

「……で、そんな大事なものになんでわたしをつけるの? 他の羽根達と一緒にやれない私より、他のグループをつけたほうがいいと思うけど」

「もちろん、君にでもないと任せられないからだよ、ホタル。元々のキリサキさんの話は天乃スズネを元にしたものだろうし、その噂が市外まで広がりつつあると聞いている。それがさらに『ウワサ』となって広まったなら、()()が危険を冒してでもやってくる可能性は高い」

「だったら……」

「なおのことグループでやった方がいい、なんて言わないだろうね? 又聞きだけど彼女の強さは把握してる。集団でかかったところで、みんな返り討ちになるのが関の山だ」

 

 だから任せたいんだ、とねむは言う。

 

「どうあれ、君は一度は彼女を退けた。また戦闘になったとき、対処できる可能性は君が単独であることを考慮しても、他よりも高い」

「……なるほどね。念のため聞いておくけど、その『ウワサ』は元ネタみたいに、人を殺すものではないんだよね?」

「もちろん。よほど切羽詰まっているならともかく、死を必要とするほど火急でエネルギーが必要なわけではないんだ。取り込まれこそすれ、事が終われば無事解放されることは約束するよ」

「……そっか。分かった、場所はどのあたり?」

 

 異論はない、と彼女が告げる。だが、そこに一人、異議を挟むものもいた。

 

「ま、待ってください! 前に退けたって、そのとき彼女はすごい負傷を負ってたじゃないですか! それに、ホタルさんはその子を……」

 

 みふゆだ。その理屈は通らない、と思わずと言った形で言葉をもらす。朝倉はそれを、みふゆちゃん、とひとこと放って遮った。

 

「でも、死んではないでしょ? それなら報告するなり、助けを呼ぶなりはどうとでもなるよ」

「ですが……」

「いいんだよ。で、えーと……市内の路地裏だね。早速行ってくるよ。監視できる場所を探しておかないとだ」

「ちょ、ちょっと、ホタルさん!」

 

 言うなり朝倉は踵をかえして部屋から出て行った。その後ろ姿を慌ててみふゆは追っていく。

 

 

 そのまま、一度用意のため彼女が自室へ戻るまで、追うみふゆとの差は縮まらなかった。どうにか話の続きが出来たのは、身支度を……といってもただ、スポーツパーカーを着るくらいだが……して、部屋から出てきたときになる。

 以前に着ていたジャージは、件の戦闘で血まみれになったので着られなくなった。代わりにと適当に見繕ったものだが、その差がまた、みふゆにとってはこの仕事の不当さを表しているように思われる。

 

「待って、待ってください! 分かってるんですか!? もしスズネが本当に来たら、次こそ命はないかもしれないんですよ……!? しかもあなたにとっても彼女は大切で、それを『ウワサ』にしたのを見続けるなんて、そんなの酷いじゃないですか……!」

 

 自分の考えていることを細かく文章にするのもやめて、みふゆは慌てて言葉を吐き出した。

 それを聞いてくるりと振り向いた彼女の顔は、どこか困ったように笑っている。

 

「……まあ、それはそうだね。次こそ殺されるかもしれないし、別物とはいえ、スズネちゃんを元にした『ウワサ』を見るっていうのも、考えてあまり楽しいことじゃない」

 

 そうだ、と認めて、でも、と彼女は続ける。

 

「でもまあ、それだけだからね。ねむちゃんの理屈は通ってるし、当たり前のことじゃない? 辛いっていうのも、結局は私の問題だし……それに、スズネちゃんに殺される魔法少女を、これ以上増やしたくもない。……これ以上、手を汚して欲しくない」

「……」

「だから、ね? あまり気にしないでよ。お互いウィンウィン、ってやつでしょ、これ」

 

 おどけたように言う姿を見て、みふゆは何も言えなかった。どこまでが本心で、どこまでが強がりなのか。……それとも。強がりもなく、本心でそう思っているのだろうか。

 

「……分かりました。これ以上何も言いません。ですが、もしあなたと一緒に活動してもいい、という羽根がいるなら、同行させてもかまわないですね?」

「そりゃあまあ、断れる理由は無いけど……いないと思うよ、そんな子」

「もしも、の話です。戦いになったとき、助けを呼ぶ誰かくらい、いた方がいいでしょう?」

 

 せめてものあがきだった。朝倉の避けられようはみふゆ自身よく分かっている。

 そんな都合のいい子がいるわけがない、と思いつつも、ただ分かりましたと放り出すのは諦観以上に嫌悪が勝る。

 

「……まあね。でも、無理強いするのはやめて。危険なのは分かってるでしょ」

「ええ。全部の事情を知った上で、です。……気をつけて。ワタシもそんな人を探しますから」

「いやぁ~……。別にいらないんだけど……ま、いいか。でも、本当気にしないでよ?」

 

 手を振って廊下を歩いて行く後ろ姿を見て、さて、と自分に気合いを入れる。

 ヘルプの捜索をするためにも、自分は自分で早く仕事をこなさなければ。

 

 

 

 フェントホープを出て、また歩く。もともとは神浜でも西の方を拠点としていたので、中央区へはあまり行った覚えはないが、それでもおおよその場所や行き方は見当がつく。

 魔法少女になる前はほとんど外へ出たことはなかったが、その後旅をするようになってから、道に迷った記憶はそう多くない。自分の覚えがいいのか、それとも願いの影響なのか。

 ぼお、と考えながら歩を進めていく。正直、どっちだっていいことだ。ただ、頭を暇にするのはやめた方がいい、と思ったからやっているだけのこと。そうなったら余計なことを考えてしまうだろう、となんとなく朝倉自身分かっていたのだ。

 

 そのうちにこのあたりがいいか、とおおよそ見当をつけて裏路地へ入っていく。

 件の『ウワサ』の性質は移動中にメールで送られてきていた。『ウワサ』自身の名前を聞き、正解したら何も無し。ただし答えなければ取り込まれ、間違ったならば回答者の記憶を切り裂く。

 

「……軽い記憶喪失みたいなもの、ってことかな?」

 

 過激さは以前より増している気はするが、まだ許容できる範囲内だ。どうあれ、取り返しのつかないことにはそうそうならないと判断した。

 路地裏に入った時点で自分も襲われる危険はあったが、自分には『瞬間移動』がある。このウワサはあくまで路地裏に潜むもので、表へ出たら無害化……というかいなくなってしまう。相性はいい。

 

 こつこつと、路地裏を通ってはまた別の路地へ出ることを繰り返す。

 こつこつ。こつこつ。こつこつ。靴が鳴る。そのうち、見覚えのある()()を発見した。

 

 それは人を模していても明らかに人ではなく、見た目は魔女の使い魔のようだった。目元は髪で隠れ、口元には笑顔をたたえ陽気に何かを口ずさむ。

 明らかに不気味なそれは、何人かの学生の集団(サボりだろうか?)の中に異物でありながら溶け込んでいる。彼らは何も違和感なく、話を聞くのに夢中になっていた。

 

「……と、もう広まり始めてるのか」

 

 朝倉はその何かに見覚えがあった。『ウワサ』を伝播させる役割をもつ、ねむの使い魔のようなもの……ウワサさんというらしい……で、彼女自身、何度か見覚えがあった。

 ここにそれがいると言うことは、『ウワサ』本体もこのあたりにいるのだろうか。さっと元の路地裏へ身体を戻し、人目のないことを確認するや否や、即座に近くのビルを駆け上がる。

 

 適当に決めたビルだったが、そこは中に店も何も入っていないのか寂れており、人気がない。背もそう高くもなく、かといって低くもない、いうならば()()()()()の場所だった。

 軽く下を見渡し、今のところ誰も()()()()様子がないことを確認する。天気は快晴、日は頂点へさしかかろうとしていた。スマホを見れば時刻は11時57分。通りの表は人が増え始めていたが、魔法少女の多い高校生以下はほぼほぼいないようだ。

 

「さて、と……」

 

 一つ、ここを監視の拠点としてチェックする。とはいえ、神浜市は大都市とはいわずとも、決して狭くない。ここから見渡せる範囲はそう広くない。

 いくらか同じような場所を見繕っておく必要がある。魔法少女の姿が増え始めるまで、おおよそ4時間程度だろうか。その間に、できるだけそれを済ませておくことにした。

 

 

 同様に人気のないビルを見つけては、場所を記憶していく。

 懸念材料は大学生ゆえに時間に融通が利く七海やちよだったが、この『ウワサ』ができあがってからそう時間は経っていない。

 さしもの彼女でも、一朝一夕にこれを嗅ぎつけるのは難しいだろう。まして、今回は元があるのだから、すぐに異常に気づくのは難しいはずだ。

 ひとまず満足のいくくらいに場所を確保して下を見れば、ちょうど学生らしき姿が増え始めていた。これからが本番だ、と気合いを入れる。

 なにせ、『ウワサ』にとっての脅威は魔法少女以外にあり得ないのだから。

 

 

 手持ちの双眼鏡を覗き、裏路地へ入る人影がないか観察する。

 元の品物がそこまでいいものでなくとも、魔法でいじればそれなりの距離は見渡せるようになる。こういう、融通の利きやすさは魔法少女の便利な点だ。

 しばらく探り、そしてまた場所を移すことを繰り返す。

 

 『ウワサ』が発生して間もないからか、少なくとも視認できる範囲に、興味本位などで路地裏へ入っていく一般人はいないようだった。

 『ウワサ』はウワサさんによって人々に広められ、それがまた人づてに広まっていく、というプロセスで拡大する。

 話を聞いてすぐに行動、というのもありえたが、どうもこの様子だとそこまでのアグレッシブな誰かへの警戒は杞憂だったらしい。

 

 その件の『ウワサ』はというと、視認はまだ出来ていない。場所など条件を満たすものがいないと姿を見せないタイプだからだろう。

 気を張っていても、じき日が沈み、人の行き来が途絶え始めると思考が緩む。変化のない行動を繰り返してすでに数時間。今は人の時間(白色)でも魔法少女の時間(黒色)でもない、中途半端な灰色だ。

 

 移動中の退屈しのぎに、『ウワサさん』が広めていた『ウワサ』の内容を頭の中でそらんじる。

 

 アラもう聞いた?ダレから聞いた?

 キリサキさんのそのウワサ

 

 路地裏フラフラ彷徨い込めば

 響くはスズノネ リンリンリン

 無くしたモノを響かせて

 スズノネ リンリン

 リンリン スズノネ

 

 どこどこどこなの?

 見つからなーい

 お名前教えてくださいな

 

 ホントにホント?

 その名前

 正しくなければ ズッタズタ!

 

 ズタズタ切り裂き

 記憶のちぐはぐ ズッタズタ!

 ダメダメダメダメ もっとダメ!

 答えられないのは もっとダメ!

 

 それならアナタはキリサキさん!

 ようこそ 無名の無くし人!

 無名のアナタはキリサキさん!

 

 無くした名前はすぐそこにあるって

 廃墟の迷子たちの間ではもっぱらのウワサ!

 ワタシダレー?

 

「……ほんと、悪趣味」

 

 一言だけぼつ、と吐き捨てた。

 ねむが実際のところ、どこまで考えてこれを作ったのかは定かではない。

 ただ言ったとおりの意味しかないのか、それとも自分への嫌がらせ――というよりかは、スズネへの執着をはかるとかのがしっくりくる――のような別の意味があるのか。

 どうあれ、結局は断るに足る理由はないのだ。悪趣味というだけで蹴る事が出来るほど、朝倉の解放への想いというのは軽くはない。

 

 ただひとつ、祈るのなら。

 それは、スズネが元になったこれが、できるだけ犠牲者を出さずにすむように、という弱々しい矛盾だけだった。

 

 

 

 

 監視を始めてから7日ほど経つ。

 動きがあるならそろそろだろう、と直感する。元のものがあるとはいえ、この『ウワサ』は相当に発動する条件が緩い。

 広まってきた話に興味を持った何者かが行動に移すのに、そう時間はかかるまい。

 

 はたして、その予感は当たっていた。

 時刻は昼を回ってしばらく経つ。新西区の表通りに、少しばかり不自然な動きをする見覚えのある姿があった。

 

「あれは……かこちゃん?」

 

 どうしたものか、と周りを見回すその姿は以前に何度か交流のある魔法少女のものだった。

 しばらく観察しても、誰かと待ち合わせというような様子ではない。いる場所がおかしい、というわけではないが様子は変だ。

 そのうち通行者へ声をかけ始めたのを見て、あぁ、と内心で嘆息する。

 この考えがあっていなければいいのに、と。そんな甘い考えはそれこそすぐに砕かれた。

 

 

「あ、ホタルさんこんにちは! このあたりに顔を出すなんて、珍しいですね」

「こんにちは。私だって同じ場所に引きこもってばかりじゃないよ。もともと一カ所にいるのが嫌だから旅なんてしてるわけだし?」

「そういえば、そうですよね。なんだかすっかり馴染んじゃったような気がしてて」

「そう? だったらいいんだけど。馴染むっていう感覚は自分だと分からないからさ」

 

 見られないよう少し離れたところへ降りてから、何でもないように声をかける。久々に顔を見た気がしたが、何も変わりないようで少し安心する。

 きっとあやめやフェリシアとも仲良くやっているんだろう。言葉に出すと藪蛇になりそうなので黙っていたが。

 

 世間話を続けながら、不自然さを見せないようにそっと疑問を切り出した。

 いろんな人から話を聞いてるようだったけど、なにかあったの、と。

 それを聞くと彼女は、笑みを曇らせて、疑いもせず、言葉を返す。

 

「実は……ホタルさんは『キリサキさん』って聞いたことありますか?」

「……えーと、あの夜歩いてると切り裂かれて殺されちゃう、とかっていうあの怪談?」

「あ、そうです。そもそものその噂は、実はななかさんと美雨さんが作ったものなんです」

「二人が?」

「はい。ななかさん達は前、ある魔法少女に襲われて……」

「っ、二人は無事だったの?」

「だ、大丈夫でした。その魔法少女もなんとか追い返したんですけど、倒したわけではなくて。また襲ってくるかもしれないから、他の魔法少女に警戒を促すために似た要素を入れた噂話を流したんです。大体一ヶ月くらい前でしょうか」

「……なるほどね。でもよかった、無事だったなら」

「あはは……私もちょっと驚きました。そんな剣幕のホタルさん、初めて見た気がします」

「いやあ……その魔法少女、一度私も戦ったから。だから少し心配になっちゃってね」

「そ、そうなんですか? でも、ホタルさんも無事だったならよかった……って、話それちゃいましたね」

 

 こほん、と軽く咳払いをすると、かこはまた真剣な口調へ戻る。

 それでもどこか、なりきれてないという感じがするのは彼女がまだ幼さが残るからか。

 

「で、その『キリサキさん』の話なんですけど……想定だと、お二人は一ヶ月もすれば飽きられて話を聞かなくなると思ってたそうなんです」

「……へえ。でも、何か琴線に触れたとかって事もあるんじゃない? 怪談とか都市伝説として、単に出来がいいから流行っただけかもよ」

「でも、一度は実際、聞かなくなったんです。だけどここ数日の間に、また盛んに話を聞くことが増えて……」

「だからなんでなのか、調査に乗り出した……か。確かに私がこれを聞いたのは結構前の話だね」

 

 そういうことです、とかこは答えた。この様子から見ると、まだ『ウワサ』の存在にはたどり着いていないらしい。

 

「分かった。私も私なりに調べてみるよ。何かあったら連絡するね」

「ほ、本当ですか? でもまたあの魔法少女が関わってるかもしれないですし……」

「それこそ言いっこなしじゃない? ななかちゃん達もそれをいったら同じなんだから。おねえさんのこと、ちょっとくらい頼りにしたっていいんだよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて……。その、よろしくお願いします!」

「……うん。任せてよ」

 

 それでは、とかこは離れていく。

 ……なんて嫌な話だろう。今自分はどんな顔をしているのか? どうせいつもとあまり変わりはないだろう。そっちの方が都合はいい。

 

 確保しておいた、監視の拠点を急いで巡る。

 ……嫌な予想ほどよく当たる。思った通り、他に4つの『ウワサ』を探る姿があった。

 

 

 

 朝倉ホタルと別れてから、夏目かこはまたいくらか聞き込みを続けた後、とあるファミレスへと足を運んだ。今日の調査の結果をいったん報告しあおう、とななか達と約束していたからだ。

 ふと、すっかり今では慣れたけれど、少し前まではお父さんやお母さんと一緒の時くらいしか来なかったよね、と思ってみる。魔法少女として契約して、ななか達と手を組んで。そう前の話でもないはずなのだけど、そう思うことがなんだかむずがゆい。

 もともとは『飛蝗』を探すために結成されたチームだったが、それが解決しても、自分たちはまだ同じチームでいられている。そのことが自分たちの紡いだつながりのようで、なんだかとても嬉しかった。

 

「……と、いけないいけない……」

 

 頬をぺしぺしと叩いて気を入れ直す。

 『キリサキさん』のことが鳴かず飛ばずだった以上、浮かれている場合ではない。

 望外の協力者こそ得られたが、情報自体は進展無しだ。せめて他の誰かが、今後に繋がる何かを掴んでいればいいのだけど。

 

 

「敵の気配……ですか?」

 

 結局、調査自体は、みんな自分同様進展はないようだった。報告するあきらはくたびれた、という表情を隠さないし、美雨は対照的にいつも通りのポーカーフェイスだ。結果が同じでも、人によってこうも変わるものか。

 そんな中、ただ一人ななかだけはその後ひとこと、ですが、と続けた。

 

「はい。調査のため聞き込みをしていたところ、うっすらとですが何者かの気配を感じました。もっとも、すぐ消えてしまったので具体的なことは分からないのですが……」

「近くに魔女とか使い魔がいたとかではないのカ?」

「それは私も考えましたが、探っても結局、そういったものは全く見つかりませんでした。『キリサキさん』がまた広まった裏に何者かが絡んでいるのなら、恐らくはその気配の主ではないかと」

 

 その言葉に空気が重くなる。

 気配、といえば気のせいのようにも思えるが、常磐ななかに関してだけはその心配は当てはまらない。

 彼女の魔法は『敵を見つける』特性を持つもの。その彼女が言う気配とはつまり、害意を持つ何者かの事に他ならない。

 

「でもさ、うっすらと……っていうのはどういうこと? 前襲ってきたスズネってやつは殺意むき出しだったじゃない」

「それが私も引っかかっているんです。ともすれば、スズネや『キリサキさん』は囮にすぎず、別の何者かが絡んでいるのか……」

「確かに、スズネじゃない別の人のしわざなら、探っているななかさんを訝しんでも、いきなり殺意を向けることはないかもしれないですね……」

「……まあ、そのことをここで考え続けても仕方ないヨ。明日、それぞれ探す場所を代わってみて、また敵意を感じるか調べてみるのはどうカ」

「……そうですね。もし別の場所でも同様のものを感じるなら私に目をつけているのでしょうし、そうでないのなら場所に理由があったということでしょう。しかし、どうか皆さんも警戒を怠らないようお願いします」

 

 目をつけられているのが私だけとは限りませんから、と言葉を聞いて、思わず身震いする。

 今日街を歩いているなかで、誰かが自分を見ていたのではないか、という疑念。

 『飛蝗』……更紗帆奈の一件で、ほんの少しの気まぐれで被害に晒される恐怖も、気づかないうちに誰かの手の中にいるおぞましさも、かこはよく知っていた。

 それは決して誇大妄想でなく、本当にありうることなのだと。

 

「……このまま談笑、という空気ではありませんわね。今日はもうお開きといたしましょう」

 

 ななかの声ではっと我に返ると、顔を曇らせていたのは自分だけでないことに気がついた。

 そこにある感情の割合に差はあれど、その言葉に思い出される事実はみな同じだ。『飛蝗』への復讐のため結成されたチームである以上、思うこともある程度は共有されるのだろうか。

 

 入るときとはうってかわった暗い足取りで店を後にする。

 帰り道で別れて、しばらくしてからようやく、協力者の存在を言いそびれていたことに気がついた。

 

「あ……やっちゃった……」

 

 慌てて連絡を取る。

 仲間同士、捜索場所を交代する事になった以上、また新西区に自分がいると思ってやってくるであろう彼女(朝倉)はきっと困惑するだろう。取り急ぎ、交代相手であるあきらに話をつける。

 

 メッセージの返事はすぐに来た。

 一度顔はあわせてるし、大丈夫だよという言葉を見て、ほおっと胸をなで下ろす。どうも、あの場の空気にのまれて、自分でも気づかぬうちに緊張していたらしい。

 

 まだ見ぬ敵への小さな恐れ。

 ――その『敵』が、もう姿を現していることにも気づかずに。

 

 

 

 日が変わり、朝になって、学校が終わって。

 昨日歩き回った新西区から少し離れて、今日は参京区へと足を運んでいた。

 

 何もないように振る舞おうとしてもつい、ちらりと周りを見てしまうのは臆病だろうか。話を聞いていた高校生が訝しげな視線を向けてきたのに気がついて、慌ててどうにか取り繕う。

 

「おーい、聞いてるー? どしたの、なんか変なのでもあった?」

「あ、いえいえいえ! その、あそこの窓が急に光ったから、つい……。すみません、それでその話をどこで聞いたのか覚えてますか?」

「んー……どうだっけな。いつだか、チカとこの辺ぶらついてて……」

 

 今日もいまいち、調査は振るわない。細かなことはどうも、昨日から誰に聞いてもふんわりとした答えばかりだ。

 友達から聞いた気がする、とか、そういったことはかえってきても、具体的に誰かと問えば、最終的には分からないというところへ行き着いてしまう。今回もまた、そんなケースだった。

 

「いやー、ごめんねー? でも応援してるからさ、がんばんなよ」

「は、はい、わざわざありがとうございました……」

 

 また徒労に終わったことに、どっと疲れが湧いてでる。

 1度や2度ならいざしらず、それが何度も繰り返すのはなかなかに辛いものがある。

 

「……だめだめ。まだ頑張らないと……って、あれ?」

 

 ふと、みちばたに小さな集まりが出来ていることに気がついた。

 なにかやっているのかなと、ちらと顔を覗かせるとすぐにおかしな事に気がついた。

 

 人々の真ん中にいるのは、不思議な格好のなにか。それは決して人ではなく、そのくせ使い魔の気配も感じない。

 なにかを謳うそのまわり、人々はそれを友達の話であるように、あるいは笑いながら、あるいは頷きながら聞いている。

 

 よくよく耳を澄ませば、『キリサキさん』の事を言っているのだと気がついた。

 核心だ、とかこは直感する。その()()()に気づかれないよう、群衆の端でそっと手帳へ内容を書き記す。

 

 

 そのままそっと群れを抜け、書きあげた詩のようななにかへ目を向ける。

 はたして、これになんの意味があるのだろう。集中を切った、その隙こそが命取りだった。

 

 リン、という鈴の音。はっと顔をあげれば、そこにあるのは人のような形の()()

 群衆から抜けた先は路地裏だった。そこでまわりでなく、紙へ意識を向けた迂闊に今になって初めて気づく。

 

『名前を、教えて』

「な、名前……?」

 

 急に迫る異常に脳味噌が混乱する。

 名前。名前。まるで『キリサキさん』だ。魔女や使い魔のようなのに、やっていることはまるでヘン。

 キリサキさん。キリサキさん……。

 

 答えずにいるのをぼうっと見ていたそれは、そのうち急におかしくなって、

 

『――じゃあ、あなたも、キリサキさん、ね。キリサキさんキリサキさんキリサ』

「っ――!」

 

 慌ててその場から駆けだした。

 あれはキリサキさん、と壊れたように言っている。きっとなにかが関わっている。

 

 書き取った詩のようなものが、これとなにか関係しているのは明確だ。

 使い魔のようななにか、どちらかといえば魔女のようななにか。

 

 それはものすごいスピードで駆けていたが、先んじて変身して動いたおかげで、ほんの少しばかりの猶予がある。

 詩に路地裏という言葉が含まれていたのを思い出す。きっとあれは、路地裏でしか姿をあらわさない。今まで見ることもなかったのがその証拠だ。

 どうにかして、路地裏から出れば逃げ切れる……。入ってきたのとは逆に走ってしまったから、出口は分からない。ただ、希望自体は見えた気がする。

 

 後ろへ槍を投げても、()()はたやすく避けてしまって速度を鈍らせることにもなりはしない。

 ほの暗い空、表通りの明かりが垣間見える。(3メートル。)

 人が街を行き来するのが見えた。(2メートル。)

 倒れ込むように、光へと力を振り絞る。(1メートル。)

 寸前、道を、剣が、とすりと遮って。(0メートル。)

 

 ぶつり。

 

 

 

 ビルの屋上、フェンスの上へに彼女は立っていた。

 黒いシャツ、手袋。脱ぎ捨てた蛍光色のコートが風に揺られて消えていく。

 

 視線の先には消え行くもや。街の明かり。見えなくなった誰か。

 

 ふらりと降り立つと、その姿は一転してスポーティな格好へと変わっている。

 はあはあと息も苦しげで、ただ、

 

「私は、わた、しは――」

 

 とあえぐばかり。

 

 がり、と壁を掴む。引っ掻くようだったそれが落ち着いて、いつしか彼女の姿も消えて。

 ただ、5本の赤褐色の線のみが残るばかり。

 

 

 ――翌日。4人の少女が神浜から姿を消した。

 

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

 

 ルーチンワークも大事な工程なRTA、はぁじまるよー。

 

 では早速、今日も今日とてお仕事に励みましょう。

 普通プレイや、別チャートならお仕事と言えば、金策や信頼度稼ぎをかねたアルバイトですが、中途半端な敵役となるとそうもいかないのがこのゲームなんですね。世知辛い。

 

 しかも職場の上司は皆年下。いやまあ、みふゆさんをカウントするなら別なんですが、アレはアレで同い年ですからね。年上がいない。

 魔法少女社会に年功序列はない。あるのはリーダーとしての重責ばかりみたいな。こんなのってないよ……。

 

 まあそれはそれ。やり場のない気持ちはいったんどこかにうっちゃって、魔法少女社会の歯車として働くのじゃー。

 

 ……ん? ノックとは。こんな時間に誰か来るとは珍しい、ひょっとするとひょっとしますねクォレハ……。というわけで、はいどうぞー。

 

「失礼します。今からお時間をいただいても大丈夫ですか?」

 

 おっ開いてんじゃーん。開けたんだよなぁ……(様式美)。

 

 もう最近になるといい加減見飽きたきがしないでもないですね、みふゆさん。他に会える魔法少女がロクにいないからね、仕方ないね。

 それでなんのご用……あっ、マギウスの呼び出し。さいですか……。

 

 うーん、これはまた、心当たりしかないですね!

 大して仲がいいわけでもないのにわざわざ呼び出すということはもう、中身は業務連絡か処罰しかないわけなのですが。

 まあ後者に関しては、心当たりが真面目に仕事した結果(ぼっち化)なので大丈夫やろ……(楽観)。というわけで今考えるべきは、どんな仕事が振られるのか。

 

 ……うんまあ、普通ならこんな仰々しいことしないですもんね。呼び出し受けてる時点で大概ヤバい状況か、笛姉妹(マギウスのおもちゃ)と同じ扱いでのイベントでの無茶ぶりと相場が決まっているのです。

 ちなみにめでたくおもちゃの仲間入りだった場合、信頼度上昇が起きるイベントがこれから発生するわけなのでRTAとしてはロスになります。マギウスの信頼度あがってもまず味でしかないのでゆるして……ゆるして……。

 

 具体的にはマギウス、みふゆさん、笛と一緒で起こる水着イベント。アリナが『ウワサ』と自分自身を超融合して起きるクリスマスイベント。ごくごくまれには、本来なら1部ほんへ後に起きるはずの灯花とねむによるクリスマスイベントの前倒し。

 これらは本チャートにおける危険地帯です。差し迫った危険は最初の以外そんなにないんですが、あいつらと関わりが増えるのがもうダメというか。ビジネスライクなお付き合いをこころがけたいところさんなのです。

 

 で、おもちゃルートじゃなかった場合……というかそうでないともうRTAの体裁すら危うくなる……ですが、なにか『ウワサ』に関係するイベントへのお仕事を振られる場合に起こることがあります。この場合のイベントというのは、街を歩いてたら発生する系のミニイベントでなく、がっつりシナリオある系のやつですね。

 例えば『かずみ☆マギカ』のキャラと交流できる『Another Daze』。これは魔女っ子系主人公のかずみが『ウワサ』に干渉されるイベントなので、バッチリ該当してしまいます。

 あとはバレンタインイベントだったり。これは危険度的には『Another Daze』よりかは少し下。

 他には主人公のMSS(魔法少女ストーリー)絡みのものもこのパターンになるんですかね。

 

 でもまあ、あの特大ガバをやらかした以上、まずこれだろうというのはあります。では柊ねむさん、正解の方をどうぞ。

 

「では早速要件に入らせてもらうよ。ホタル、君には『キリサキさんのうわさ』の監視を担当してほしい」

 

 知 っ て た 。

 

 はい。『キリサキさんのうわさ』なので『Rumors in Disguise』確定です。ありがとうございました。

 このイベントは何度かお話しした、『CROSS CONNECTION』の後続イベントで、ざっくり言えば、スズネがモチーフの都市伝説の『ウワサ』が大暴れするお話です。まさかスズネも、自分がわけ分からん怪物の元ネタになるとは思わなかったでしょうね。

 

 で、このイベントなのですが、放置してると退場者が続出しかねない危険極まりないイベントなので、何かしらの手段での干渉はハード以上なら必須といっていいでしょう。

 なので、こうして大義名分をもらえたのはうまあじ。ただしスズネもやってくるのでMSSや命の危険的にはまずあじ。そんなところです。

 

 適当に裏の会話を進めながら解説を続けますと、本イベントは『キリサキさん』の調査のためにスズネや、同じ市(ホオヅキ市)内の魔法少女達が神浜へやってくる! たとえ本来殺し合う仲でも、今は力を合わせて悪い『ウワサ』をやっつけよう! という感じなので、『ウワサ』も当然強力、というわけで即死ギミックを持っています。

 しかもギミックを無視して真っ向から戦えば勝てるのか、といえばこれがまた難しく、最初の犠牲者の時点でどうにか阻止できないか、と試したこともありますがハードでは無理でした。主人公使えるならドッペルぶつけるとか出来るんですが。

 即死ギミックといっても一時的に取り込まれるだけなので、積極干渉できない本チャートでは、いかに犠牲者(最終戦の戦力)を増やしていくか、いつ戦闘に持っていくかのタイミングを計る形になりますね。

 

 今回の不安要素は3つ。

 まずはなんといってもスズネ。変に交友を持ってるので、感づかれた場合戦闘は避けられないことうけあい。事前に調整屋にはきっちり行っておきましょう。

 

 つぎにMSS。前回のMSSの条件のひとつが『CROSS CONNECTION』だったので今回もありそうというか……。ホタルちゃんのやつの発生条件すべてにスズネの関連するイベントの発生とかありそうで……。

 MSSは詰み防止的に、発生条件にイベントがある場合はそれが確実に起きるようになってるので、もしそうだった場合は『MEMORABLE FLOWER』にも備えておかないといけません。

 そもそも今回MSSを発生させなければ3つめも必然キャンセルされるので、本当はそれが理想なんですが。じぶんからMSS発生条件の確認は出来ないからね、仕方ないね。震えて眠れ。

 

 ラスト。このイベント、ホオヅキ市の愉快な仲間達とともに『すずね☆マギカ』のラスボスも出てきます。

 こいつはスズネとツバキに対するクソデカ感情を持っているので、どっちとも交流を持ってるのがバレたら終わりです。ぐっちゃぐっちゃに状況を引っかき回されかねません。

 というかこいつとの交友を持ってる可能性も無きにしも非ずなのが怖い……。魔法少女ファイル改竄が出来る帆奈タイプなので信用できない……。

 

 というわけで結果、最大限関わらないようにしつつ、クリア可能そうな戦力になったところで戦闘へ持って行く、が今回の目標になります。

 みふゆさんがなんか言ってるけど無視だ無視! 早速仕事に入るのじゃー、イクゾー!

 

 

 

 さて、今回の『ウワサ』ですが、こいつは神浜の路地裏ならどこにでもでてくるとかいう、監視の難易度が馬鹿みたいに高い性質を持っています。

 なので、初めに見晴らしのいいスポットを各区ごとにいくつか確保、数分おきに移動するというブラック労働極まりない方法をとっていきます。

 羽根がいればいくつか任せられますが、いざというときの対応力はクソザコナメクジなので、単独か集団かどちらがいいか、というのは微妙なところでしょうか。

 

 『ウワサ』が発生したのはつい最近のようなので、最初の犠牲者になりやすいななか組が動くまで、いくらかの猶予はあります。

 彼女たちは戦力としても申し分ないので、取り込ませておくことで最終戦で頑張ってくれること間違いなし。交流があるから取り込まれたらホタルちゃんのジェムが濁りますが、必要な犠牲です。コラテラルコラテラル。

 

 あと警戒しておくべきは、一般通過モブ子の存在ですね。まず名前は分からないので、万一路地裏に入ろうとしたら速攻で追い返しましょう。さもないとウワサ消滅時にもろとも消えて、みふゆさんの信頼度がだだ下がりします。ついでにホタルちゃんのジェムもボロクソになります。

 

 戦力としては、アザレア組とかも取り込めればうまあじなのですが、実際はそう上手くはいかないかなーというところ。ななか組はノーマルだと確定で取り込まれる都合、ハードでも犠牲になりやすいですが、アザレアはノーマルでは関わりがないのです。残念。

 実際期待しやすいのは『加賀見まさら』や『粟根こころ』、そしてノーマルではキーパーソンの一人となる『江利あいみ』を擁する中央学園勢力。

 あいみはほぼ確実に『ウワサ』の情報を掴むので、生存させればクリアまで短縮、取り込ませれば戦闘までの延期を迫れる調整ポジ。

 まさらは消耗状態とはいえ、スズネを単騎で撤退させられる一般通過クソ強魔法少女。しかもまさらとこころはどっちかが失踪すればもう一方が死に物狂いで探すので、誘導しやすいのもうまあじ。まあバレたら本当に頃されかねませんが。

 なおあいみとも仲がいいので、運次第では最初から絡んでくれることもしばしばです。救済措置か?

 

 そうこうしてるうちにスポットは確保し終えたので、夜明けまで仕事してあとは野宿です。また逆戻りだよ。

 あとは一度調整にいけば、同じ事を繰り返すだけなので、じゃ……流しますね(倍速)。こんなん一週間とか頭おかしなるで。

 

 

 

 ……ストップ! 倍速ストップ! ようやっと動きがありました。

 あれは……かこちゃん! かこちゃんじゃないか!

 会うのは『散花愁章』以来ですね。アザレアイベントからお世話になってるので、実際のところ結構長い付き合いです。みふゆさんの次でしたっけ?

 

 ですが、そんな古い友達? かな? な間柄でも、マギウスの翼でないなら敵対していくのが本チャート。騙して悪いが仕事なんでな。

 とはいえ、だからっていきなり頃すようなことはいたしません。そんなことしたら組長に怒られちゃうだろ!

 

 というわけでさっそく接近。

 かこちゃんオッスオッス。一体全体ここでなにを?

 はぁ、情報収集。『キリサキさん』の。ほぉーん、それで。え、元々は組長が流してた噂だったんですか!? なんだそれは、たまげたなぁ(すっとぼけ)。

 へぇー、それでまた不自然に広がってきたから捜査を……。いやあ、頭が下がりますね。

 

 さて、ここでわざわざ姿をさらしたのには理由があります。

 一つ、脱落者の最終確認。ここで台詞や表情、ジェムに異変があればクロコネで退場者が出てます。まあ、今まで散々確認してきましたが、念には念を、というヤツでした。本命のついでですしね。

 二つ、捜査の進捗状況。初めて何日経つか、どこまで真相に近づいているのか。ここで予想外に進行していた場合、監視網を上手くかいくぐられてることになるので今後の動きに変化が必要になります。ちなみに、かこちゃんと、また同じななか組のあきらは、嘘をつくのがそんな上手くないので、騙そうとしてたら割と分かります。組長と美雨は無理です。神浜ヤクザはそうそう騙せません。今回は初めてすぐのようなので、問題なしですね。

 三つ、協力の申し出。信頼度がある程度あれば捜査に協力が出来ます。一応これを満たすくらいにはあるのを確認済みですので、マギウスの翼とバレたときに騙したな! と信頼度が下がるのでガバリスクの軽減&『ウワサ』に放り込みやすくします。これが本命ですね。

 

 というわけでいけホタルちゃん! 無駄に長い魔法少女歴を活かしてかよわい後輩を誑かすのじゃー!

 あ、ちなみに組長には今絶対近寄ってはいけません。今のホタルちゃんはバチクソ敵なので、出会ったら最後、固有魔法で即バレした後フクロにされます。やっぱりヤクザじゃないか(憤慨)。

 

 では協力関係を取り付け、ついでに他3人の場所も聞いて。

 ここでななか組の場所を知っておくことで、要注意ポイントをマークしておけるんですね。

 

 では去りゆくかこちゃんの背中を見送ったら早速移動。ここで抜け駆けされると面倒なので、少し忙しくなりますね。『瞬間移動』の使いどころさん!? でもこういうときは『空間結合』が欲しくなる。長距離はね……。

 

 さてさて、あとはもう『キリサキさん』に食わせてもいいのですが、念のためもう少し泳がせて、情報を得させます。

 というのも、ハードモードだと『キリサキさんのうわさ』退治に必要な情報を、NPCだけだとたまーに取りこぼした挙げ句イベント失敗するんですよね。

 失敗はイコールでラストバトルの難易度急上昇を意味します。つまり詰み、再送案件です。

 

 というわけで、誰かしらが『ウワサ』の内容を取得してくれるのを待ちましょう。そうすれば救出時に見事推理してくれます。組長もいるし。

 ただし、ホオヅキ組がやってきたら流石に並列処理しきれなくなるので、問答無用で食わせにいきます。あと普通に路地裏に行って食われることもありますが、助けることはしないのであしからず。

 そうなった場合は、後発組にどうにか頑張ってもらう事になりますね。まあ基本はあいみが情報取ってくれるので、攻めるなら待たずに、もう食わせた方がいいんですが……。

 

 というわけでまた倍速。結局このチャート作業ばっかなんやなって。

 

 さて、情報を得させる、といいましたが、具体的にはウワサさんが喋ってる、このウワサの本文を誰かに聞かせるだけでOKです。

 市内に発生するウワサさんを監視しつつ、情報を得たのを確認したら裏路地に追いやって仕留めさせて終わり。

 このウワサを倒すにはその中のなぞなぞじみたギミックに正解する必要があります。インスタントな死印みたいですね。

 

 ということでウワサさんと聞き出したポイントを中心に監視……お、それぞれ場所が変わってる。少しだけ警戒されたかな。

 まあこの段階は特に影響ないのでスルーでいいです。最初に情報を得るのは誰かな?

 

 ……おーっと、またしてもかこちゃん、一番乗り。無事2日目にしてイベントクリアに大きく近づきました。じゃあ……氏のっか。

 こういうときに便利なのが羽根の使う剣。誰かの特定が難しく、遠距離対応燃費良好の優良魔法です。しかも今回は火力もフヨウラ!

 今回は誘導無しで裏路地へ行ってくれたので追いやるようには使いませんでしたが、まだまだ油断はいけません。連絡、逃走、この二つはなんとしても避けないといけないので。

 さて、『キリサキさん』出現、かこちゃんは一手早く動き出しましたが速さは相手が上。表への道を見つけて走る走る走る、さあ逃げ切れるかというところで黒剣を相手のゴール(逃げ場)にシューッ!

 

「――あ」

 

 うーん、超エキサイティン。正直ギリギリだったので肝が冷えましたが、無事逃走阻止できて何よりです。

 結果としてホタルちゃんのジェムがまた濁りましたが、余裕で動けるので問題ありません。では他の3人も仕留めにいきましょう。

 

 ここでかこちゃんを仕留めたことで、『キリサキさん』はカオナシのごとくその姿を使って相手の前へ表れるようになります。

 結果、他3人は驚きで一瞬動きが止まり思考力も落ちるので、今回より楽にコトは運びます。やったね。

 ではさくさくやっていきましょう。次は新西区にいたあきらから。

 

 路地裏へ追いやりながら今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




Archive
○嘘
 嘘も方便。
 日頃から表情変えてるのに、今更困ることもなかった。

○シャツ
 インナー。
 外套、手袋、ブーツも合わせて露出のない魔法少女の屑がいるらしい。
 年齢は触れてはいけない。

○夏目かこ
 いい子だねアンタ! いい子すぎた。
 これが組長だった場合、上から攻撃をふっかけて路地裏行きにするところだった。
 なおバレた場合、逃げられなかった場合のことは考えないものとする。

○正義の主人公
 そんなもの ウチにはないよ
 多分敵キャラだと思うんですけど(名推理)


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