マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート すずね☆マギカチャート(マギウスの翼チャート) 作:鰯のすり身太郎
「……なにこれ、インキュベーター?」
「モ、モキュ~……」
「モキュって……ちゃんと喋りなよ、喋れるんでしょ?」
「キュ、キュゥ~……」
「だ、だめですっ、ホタルさん! 怯えちゃってますよこの子!」
「そうですよ、いくらキュゥべえだからって小さな子なんですから、驚かしたりしちゃいけないです!」
「いやでも、インキュベーターだよ? アレが怯えるなんて……」
「キュゥ~……キュイッ!」
「あ、七瀬さんの後ろに隠れて……」
「……怯えてるね、本当に。どうなってるんだろ……?」
厳かな雰囲気を醸し出す空間。素人が見るだけでも高級であることが窺える調度品の数々、深い赤のカーテン、神秘的に差し込む日の光。
中世の城もかくやというここは、マギウスの翼の誇るホテル・フェントホープが一室、そのなかでもとりわけ上質な、マギウス達が好んで利用する大部屋である。
しかし今ここにマギウスの3人はいない。珍しいことだが、データの採取などで天文台などに出かける事もあるのでそういうこともままあるのだった。
代わりにいるのは4人の魔法少女と、不思議な小動物が一匹。この4人にしても、ホテル・フェントホープであるにもかかわらず羽根が羽織るべきローブを誰も着ていないという、またある意味で異質な集団だった。
その中に混じりながら、七瀬ゆきかは何故こうなったのだったかと思案する。
遡ること数時間。トラブル体質を自覚している彼女だが、今回ばかりはその中でもとびきりかもしれなかった。
初めはある結界での話だった。
学校が終わって帰宅する途中、今日は家でも特に用事が無く、適当に寄り道でもしようかと思いながら歩いていたところ、幸先悪く魔女の使い魔の結界を発見する。
別段その使い魔が強いということもなかったのだけれど、そのことが問題だなあと彼女はなんとなく思っていた。そういうときは決まって、ここからさらなるトラブルに発展するのが経験則的に確実だったからだ。
さらなるトラブルは迷子探しだった。
しかも人間の子供とかでもなく、
……というか本当に子供なのだろうか、とゆきかは思った。パーツは確かにキュゥべえっぽい。白い身体、所々のピンク、大きな耳、くりくりとした赤い瞳。
ついでに一般人には見えないことも確かだった。それは懸命に会話を試みた自分が、周りから訝しげな視線を向けられていたことで分かっている。
……そう。会話できないのである。
結界の中に取り込まれた一般人と一緒にいたそれは、キュゥべえっぽいにも関わらず、『モキュ』と言うのがふさわしいような、なんとも表現しがたい鳴き声を発するのみだったのだ。
キュゥべえですか? といえば「キュキュッ?」。
どうして結界にいたんですか? といえば「モキュゥ?」。
……困った! しかも、助けてしまったからか妙になつかれてしまったのも困った!
普通のに比べてさらに小ぶりな身体と、つぶらな瞳の組み合わせは反則的にかわいらしい。
抱き上げたら喜ぶように身体をばたつかせる。立ち去ろうとすると庇護欲をくすぐられる声で「キュイン……」と鳴く。
これを見捨てられる人がこの世にいるでしょうか!? という感じで。
その後いろいろ会話を試みて数分。
反応から、話せないだけで一応言葉はある程度通じているらしい事が分かる。
さらに数分。
どうやら迷子らしく、会いたい誰かがいるらしい。
「キュキュ! モッキュキュッキュ~ッ!」
「きゃははは! 動いたらくすぐったいですってば!」
だが、そこまでだった。
この形のわりに感情豊かなキュゥべえ(?)と話して、どうにかそこまでは分かっても、しゃべれない以上その人が誰なのかは分からずじまいなのだった。
……と、いうわけで。
こういうときはまず行動に限る。
普通の子供の迷子だったら、対応のプロ、ベテランを名乗れる自信がゆきかにはある。だがキュゥべえは初めてのことだった。
だって腕のいいお医者さんだって、獣医さんじゃないなら犬や猫を診られるわけじゃないのだ。
施設の人に相談しようにも、まず見えない。致命的すぎる。
謎の妄想女子現る、というのが関の山である。自分が病院に行くわけにはいかない。
人間の迷子なら変に連れ回すのはダメなのだけど、今回ばかりは仕方ない。いろんな場所に足を運ぶのが一番だろう。
いろんな場所。あと多分探してるのは魔法少女だから(でないと肝心の探してる相手から見えてない事になる)、魔法少女が集まるところがいい。
であれば。
「あら~。いらっしゃ~い、ゆきかちゃん」
最初に足を運んだのは調整屋。
魔法少女の力を高めてくれるここは、神浜に住む魔法少女ならまず恩恵を受けている。であればきっと、手がかりが……。
「……ゆきかちゃん。その迷子、いないみたいなんだけど~……」
「え? ……えぇ!?」
「悩みがあるんだったら、もっと早く相談してくれてれば……」
「ち、違うんですっ違いますっ!」
ない。というか現状唯一の手がかりがいない。
さっきまで肩にちょこんと乗っていたはずのキュゥべえは、いつの間にか姿を消していた。みたまさんからのかわいそうな子を見る視線が痛い。
「……騒がしいけど何かあったのかしら?」
「あ……やちよさん。待たせちゃってごめんなさい」
「――っ!?」
そして代わりにとんでもない人がいたのだった。
七海やちよといえば、神浜にいれば誰でも知ってるすごい魔法少女。そしてマギウスの翼にとっては『ウワサ』を消して邪魔してくる難敵。
そういうわけで慌てて調整屋を飛び出すと、小さいキュゥべえはその出口でぽつんと自分を待っていた。また使い魔なりに捕まったんじゃないかと思っていたのでほっとした。
であればまた調整屋に戻ろうと。そういうとキュゥべえは、
「キュゥ……」
と嫌そうにするのだった。
「調整屋さんがイヤなんです?」
「キュ……?」
「……じゃあ、七海さんが怖いとか?」
「モキュモキュ!」
当たりっぽかった。適当に言ってたので、まさかのビンゴに内心驚いてしまう。
そうなると困ってしまう。彼女はこれから調整を受けるようだったし、しばらくは調整屋にいるだろう。
どうしたって会いたくないとなると、相当長い間なにもせず待つことになってしまう。さすがにそれはどうなんだろう……と。
そこでゆきかはひらめいた。
マギウスの翼なら魔法少女が結構集まるんじゃないか? と。
しかもそうでなくても、学校でも魔法少女としても大先輩の梓みふゆなら相談に乗ってくれるかもしれない。
「じゃあ……行ってみますか」
「モキュ!」
そういうことになった。
……で。顔を出したわけなのだったが。
「失礼しま……あれ?」
「あ、ちょ、ちょっと……!」
「……えぇっ、月咲さん!? ど、どうしたんですか?」
「あれ、ゆきかちゃん!? ウチはみふゆさんに用があったんだけど……」
「あ、それならわたしも……」
そこにいた……というかドアの前にいたのは以前見たことがあった姿だった。基本的にローブ姿の多いマギウスの翼で、そうでない格好なのは珍しい。
……ゆきかも、以前の戦闘でローブが破れたのでそのままの格好だったが。まあそれはそれ。
そこにいたのは天音月咲だった。ゆきかにとっては学校の先輩にあたる月夜の妹で、以前ちょっとしたことで知り合った仲。ついでにマギウスの翼内での立ち位置は圧倒的に彼女が上だったりする。
そんな彼女がどうして立ち尽くしていたのか。
「それが……なんだか難しい顔でみふゆさんとホタルさんが話してて……」
「梓センパイと……ホタルさんが?」
そういえば前に知り合いだとか言ってたような、と少し考えていると。
「そうだよー、意外と顔が広いホタルさんだ」
「うひゃああああっ!?」
「きゃあああああっ!?」
いきなり声をかけられて、思わず悲鳴を上げてしまった。横からも同じように、どひゃあと悲鳴が上がっている。
ドアは、いつの間にか開いていた。そこから顔を出していたのは朝倉ホタルその人である。
「な、なんで……」
「なんでって……ドア開いたら閉められても気づくでしょ、普通」
「あぁ……なるほど」
すごくなんでもない理由だった。考えてみれば当たり前なのに、悲鳴を上げてしまったのが恥ずかしくなってきた。
「で……みふゆちゃんに用事かな? それなら私は席を外すけど……」
「あ、私は大丈夫です。むしろ人がいてくれた方が助かるというか……」
「ウチも大丈夫です、そんなに大事なことでもないし」
「そう? そう言ってもらえるのは嬉しいんだけど」
「大丈夫ですっ。あ、でも一緒に相談に乗っていただけたら嬉しいかもです……?」
「……そっか。入りなよ、ちょうど話も終わったところでさ」
そういう彼女の姿は、以前あったときとほとんど変わらなかった。
マギウスの翼では、彼女についていろいろな噂が流れている。
羽根なのに魔女になるのを恐れてないとか、魔法少女同士で殺し合いをするのが好きとか、そういう……まあひとつひとつをあげていくとキリが無い。噂は尾ひれがつくものなので、いろんなパターンであふれているのだ。
初めてそれを聞いたときは当然驚いたのだけど、いざ会ってみると特に、なにかで変わってしまったとかそういうことではなさそうで。
結構自分の身を気にしない戦い方をする人なので、そのあたりからなのかなあなどと思ったりするのだった。前一緒に戦ったときも、あとは任せても大丈夫そうだから、という理由で思いっきり魔女に攻撃されたりしていたし。
「……というかさ」
「はい?」
「ゆきかちゃん、いつの間にマギウスの翼に……?」
「はい。……あ! 確かに言ってませんでいた、わたし!」
「さっき驚かれたけど、私も結構驚いたんだよねぇ……しかもローブ着てないし。もしかして侵入者?」
「ち、違います違いますっ! 破れちゃったので修理中というだけで!」
それを聞くと彼女はけらけらと笑う。……やっぱりなにも変わってないように見える。それなら一番いいんだけども。
「……まあ、そのことは少し複雑だけど。ともあれ、相談でしょ? いいよ、どーんとぶつけてもらって。梓センパイがバシっと解決してくれるからね。ね、みふゆちゃん?」
「……あの。ワタシ、なにも分かってないんですが……?」
「そりゃそうなりますよ……」
というわけで。こうして相談として迷子の小さなキュゥべえを見せて。
初めて見るおかしなキュゥべえにみんなが目を丸くしたところで、冒頭に戻るわけだった。
ゆきかにとって意外だったのは、朝倉がキュゥべえを見たとたんにいつも浮かべている笑みを引っ込めた事だった。
意外だったが、いじめそうなのを見て放っておくわけにもいかない。幸いこの場にいる4人のうち、小さなキュゥべえ擁護派は3人。彼女は圧倒的アウェーだ。
そのまま集中砲火を受けて流石に不利を悟ったのか、しぶしぶキュゥべえに向ける訝しげな視線をしまうと、代わりに言葉が飛んできた。声色からもだいぶふてくされていることが窺える。
「……でもさあ。キュゥべえだよ? アレにいい感情持ってる方が珍しいと思うんだけど」
「それはまあ……そうかもしれないですけど」
「わたしもキュゥべえのやり方はどうかと思いますけど……だからっていきなりそんなに疑ってかかったら可哀想ですよっ」
「……むう……」
頬を膨らます朝倉。年長者の威厳はかけらもない。
そんな駄々っ子のことは置いておいて、とみふゆが本題を進行させた。実際、珍しいものをただ見せに来たわけではないのだし。
「こほん。……それで七瀬さん。そのキュゥべえ……? が迷子らしいということなんですよね?」
「そうなんです。どなたか心当たりがないかなと思って」
ふむ、とみふゆが息を吐く。
「でも、マギウスが留守のときでよかったです。灯花たちはその子が大嫌いみたいですからね」
「え? マギウスはその子を知ってるんですか?」
「……私、初耳なんだけど」
「ワタシは初めて見ましたけど、結構噂になっていますよ。あと、キュゥべえ嫌いのホタルさんに言うわけないじゃないですか」
「……嫌いって言ったっけ」
「神浜の皮膜でキュゥべえが追い出された事を聞いたときの顔を見れば、それはもう」
「あー、あの時……。ウチでも分かっちゃったもんね……」
「……」
「まあ、そういうことなんです。でもすぐ逃げられてしまったとかそういう話ばかりだったので……こんなになついているのを見るとは思わなかったですよ」
そう言ってゆきかの肩のキュゥべえを見る。
あごの辺りをなでられてくすぐったそうにしている姿はよく知るキュゥべえというより、猫とかその辺りの動物を思わせた。端的に言えばひどくかわいらしい。
そんな姿についつい目を引かれながら、月咲はひとつ疑問をぶつけた。
「でも、この子が迷子なんてどうして分かるの? しゃべれないのに」
「あ、それは……ええと、会いたい人がいるんですよね?」
「モキュッ!」
「……返事した!」
「なるほど……こちらの返事が分かるみたいですね」
とはいえ、それだけなのだった。
多分魔法少女を探していることは分かるのだが、結局そこからは進まずじまい。
いろいろ質問をぶつけてみても、一向に進展は見られない。
「んー……じゃあ、黒羽根の子達に心当たりがないか聞いてみます?」
「そうですね。あ、でもマギウスには内緒ですよ?」
「分かりました! 月夜ちゃんにも何か知らないかあとで聞いてみます」
「ありがとうございますっ」
一応の進展はあったというべきか。なにもしないよりはマシ、くらいの成果だが、こういうことが解決に繋がることも多いことをゆきかはよく知っていた。
事実目撃談はあるようだし、聞いていけば探してる魔法少女の手がかりに繋がることは十分期待できるだろう。
「……しかしこう……あれだね」
「どうしました?」
「インキュベーターが本物の小動物感出してるとこう……違和感がすごいっていうか……」
「キュゥ~」
「またそんなことを……。でも確かに、なんだか人懐っこいですね」
「そうですね……ほら、こっちにおいで~?」
「キュ? ……キュッ!」
「あら、警戒されちゃった」
「七瀬さんにはなついてる様子なんですけどね……」
「ちょっとショックかも……」
「……」
「……だから言ったでしょ? みたいな顔するのやめてください。というかホタルさんが最初にいじめたからー!」
「あたた、痛い痛い痛い! ごめんって! でも言葉にしたわけではないじゃん!?」
「あはは……。なついてるというか、わたしなら巻き込まれてもかまわないと思ってるだけかもですが……」
結局のところ、『願い』の結果のトラブル体質が引き寄せたのは確実だろうと思われた。
今更後悔しているわけではないが、若気の至りみたいなものなので、思い返すと少し恥ずかしい。
「トラブル体質だもんねー、ゆきかちゃん。なんか私にも引き寄せられてたし」
「……あの、なにかしたんですか……?」
「……まあ、廃ビルで寝てる魔法少女は客観的にはだいぶ……」
「ホタルさん廃ビルで寝泊まりしてたの……?」
「あれは驚きましたよ、ほんと……。しかもそのあと遅刻しちゃうし……」
「……なるほど、大体分かりました。厄介なものなんですね」
頭痛をこらえるように頭を抑えるみふゆ。その目には
実のところ、フェントホープに住ませるようになってから今まで見えてなかった問題児ぶりが見えるようになったのだった。
一度看病してもらったときのように、他人に対してすることは完璧に近い。
しかし自分のことはただただ雑。とにかく雑。しかもかなり危なっかしい。
髪は武器で適当に切りそろえる。食事は滅多にとらない。仕事は休めと言ってもまず休まない。
目を離しているうちに死ぬ、ということがかなりありえそうな姿を見ていると、彼女に引き寄せられたというだけでその体質が厄介なものだと判断できるのだった。
「……え。なにその目」
「自覚がないなら自覚を持ってください」
「みふゆちゃんが冷たい……」
「ウチに言われても……」
「……すみません、わたしもパスでっ……」
「……」
アウェー変わらず。朝倉はひたすら孤独だった。
「……さて、話を元に戻しましょう。……あら?」
気を取り直して、今後のことを話し合おうとしたとき、みふゆの携帯が鳴る。
発信者は灯花。マギウスの一人であり、幼いながらもこの組織の頂点の一人として君臨する強力な魔法少女。
いわく。用事が終わったから今から戻る。あとアリナも一緒。
「……今からここに?」
「はい。……ごめんなさい七瀬さん。すぐその子を連れて出たほうがいいかと……」
「だね、見つかったら大変だよ!」
小さいキュゥべえをこのままここに置いていては、バレたときにどうなるか分からない。
しかもアリナ・グレイも一緒にいては間違いなくろくでもない事になる、というのはこの場の全員の総意だった。彼女のよく言えば破天荒……悪く言えば狂気じみた発想思考は羽根の末端ですら評判だ。
そんな彼女にイレギュラーなキュゥべえを見せるのはどう考えてもまずい。
「はやく逃げて……ああでも間に合うかな!?」
「あ、じゃあ、私が魔法で手っ取り早く逃がそうか。みふゆちゃんにも仕事休めっていわれてるしね。付き添いするよ?」
「それは確実でしょうけど……」
「でしょ? じゃあ行こっかゆきかちゃん! 大丈夫、その子になにかしたりはしないから!」
「あ、ちょっと待ってくだ……すみません、ありがとうございましたっ」
「でもそれは休みではないかと……って、窓から出て行かないでください!」
そういう状況で、逃げの一手に最適なのが朝倉の魔法だった。
長距離は苦手とするにしても、普通に走るよりはずっと早い。窓を開けて飛び降りていく姿は、ひどく慌ただしくて活気に満ちている。
……どこかわざとらしいくらい。それが空元気でなければいいのだが、とみふゆは思う。
なにせ、そうであるなら原因には心当たりがある。天乃スズネのことは、彼女の精神を揺れ動かし続けている。
自分の見ていられない間に『キリサキさん』を失ったことも、ただ『ウワサ』を消し去られた以上のショックを与えたらしい。ねむにはやむなしとの評定をもらいこそしたが、あれから仕事をしたがる量は増えているようだ。
ドッペルの姿を思い出す。あれが魔女に近いものである以上、ポジティブなものを見たものに思わせることはそうそうない。
だが、あんなに痛々しいと思ったものはなかった。心のかけら、積み重なった絶望という魂のよどみ。
……せめて、と思う。
彼女をこっちへ引き込んだのは自分。だからこそ、彼女が苦しんでしまう責任は自分にもある。
馬鹿げている、という言葉をしまい込んだ。魔法少女の解放に向けて動く上で、彼女の苦しみを無くすことなんてできないのに。
だからこそのせめてなのだ。
せめて、その苦しみを少しでもカバーできたらと。
たとえ自己満足にすぎなくとも。ただ放っておくことよりはきっとマシだろうと。そう、信じて。
「……、と。ここまで来れば大丈夫かな? おーい、酔ってない? 大丈夫?」
「……す、すみません……少し今は……」
「キュ、キュゥ~……」
「うーん、駄目そうだね。ごめん、流石に焦りすぎたかな……」
「い、いえ……お気になさらず……」
一方その頃。フェントホープを出てしばらく、周りに人影が無いことを確認すると、朝倉は抱えていたゆきかを床に下ろした。
グロッキーそのものになったその姿を尻目に変身を解くと、それまでの派手な格好から一転したスポーティな服装に身を包む。
神浜でも屈指のお嬢様学校である水名女学院の制服を着たゆきかと並ぶと、不釣り合いさは相当なものになる。ゆきか自身の
「で、でも……ホタルさんは酔わないんです……?」
「え?」
「景色がくるくる変わるものですから……。わたしは途中で目をつぶりましたけど、
ホタルさんは魔法を使う分、ちゃんと見てないといけないじゃないですか」
「んー……まあ、久々にやると結構酔うね」
ただ、と繋げる。手持ち無沙汰気味に指をくるくる回しながら彼女は、
「『キリサキさんのうわさ』の監視の仕事のとき、どうしても『瞬間移動』の連発が必要だったから。ブランクだってイヤでも埋まるっていうか」
「な、なるほど……」
「まあ、久々に使ったときは結構酷かったけどね……」
でも効率を考えると短距離で繋ぐしかないんだ、とため息をつく。
長距離を一回で跳べば景色の切り替わりは最低限になる。結果酔いも起きないのだが、今度は魔力消費が馬鹿にならないらしい。
「あ、でもブランクがあったって事はしばらくは使わなかったんですよね? なにか理由があったり?」
「んー……すごく急ぐときにしか使わないからかなあ。結界に誰か捕まってるとか、そういう状況でもないと……」
「結界ぐらいでしか使わなかったんですか?」
「そりゃあ、白昼堂々と変身するわけ……ああいや、最近はそうでもなかったけど……ひょっとして人目とか考えてないと思われてる私?」
「ま、まさかぁ……。そ、それよりっ。次! 次、どうしましょうっ」
「……そらしたね?」
冷ややかな目を躱しながら、ゆきかは小さなキュゥべえへ、会いたい人はどっちにいそうでしょう? なんて聞いている。
「モッキュ! キュッキュゥ~!」
「なるほど太陽の方……。ここからは遠そうですか?」
「モキュキュッ!」
「分かりました。じゃあ電車で向かいましょうか」
「よく分かるねえ……」
身体をぶんぶんと動かしながら懸命に表現しようとするキュゥべえ。それでも言葉が交わされないのは大きなハンデだろうが、読み取れるのは日頃のトラブル解決の賜物なのだろうか。
そんなことを思いながら、朝倉はポケットをまさぐり、そしてふう、とため息をつく。
「ゆきかちゃん、ストップ」
「? どうしましたか?」
「落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「はい……」
「……お金持ってなかった」
「はい。……はい?」
「キュ!?」
「うん。日頃から使わないからね。置いてきたみたい」
「えー……。そんなことありますか……?」
「あるんだ……。悪いけど貸してもらえるかな……」
「それはいいんですが……」
「……分かってる。だからその目はやめてほしい……。情けない年上だとは思ってるから……」
「キュゥ~……」
無駄に張り切った代償を、信頼の欠如で支払いながら二人とひとつの影は消えていく。日はじきに沈もうとする頃だった。
そして日は地平線へさしかかる。空が暗闇へ歩き出す頃、彼女たちは新西区、名前通り神浜でも最西端の地区へと足を運んでいた。
「モッキュ、キュ!」
「……うーん。やっぱりなにが言いたいのか私にはさっぱりわかんないな……」
「キュゥ?」
「いやいや、わたしも全部分かるわけじゃないですよ? 表情とか耳とかの動きで、なんとなく分かる事があるだけで……」
「でも、なんとなく、でもできるときがあるだけすごいっていうか……あ、こら逃げるな」
ぴょこん、と飛び出していこうとするキュゥべえを、朝倉が手で押し込める。
ギュゥーッ! という悲鳴を上げるが、特に動じる様子もなくゆきかの腕の中へ。そういうことするからじゃないかなぁ。と頭によぎったが、言葉にはしなかった。
「……でも、急に飛び出そうとするなんて。探してる人もこのあたりにいるのかもしれないですねっ」
「普通のインキュベーターも魔法少女の前にふらっと出てくるもんね……。あいつら、近くにいると分かるものだったりするのかな?」
「キュゥ~ッ!!」
「うーん……分かる?」
「いえ……手で押さえられてるので……」
「そっかぁ……っと、ゆきかちゃん!」
「え? ……って、これは魔女の結界? いきなり……」
なんでもない会話を交わしていた。さながらそれは何でもない人々の交わすような風景で。
そんな中で、辺りの景色は急に一変した。
夕暮れに染まる路地は砂っぽい地面へ。コンクリートブロックの壁は奇妙に具象化され、乱立したオブジェ達へ。
こういう奇妙な場所には彼女たちはひどく見覚えがあった。魔女の結界。人を害する魔女が持つ、姿を隠す自分の家である。
「キュゥ! モキュゥゥ!」
「ああもう、逃げるなってば! インキュベーターなんだから結界が危ないって分かるでしょ!」
「い、いえっ! もしかして、会いたい人が近くにいるとかじゃないでしょうかっ!?」
「モッキュ!!」
「そ、そうみたいですっ!」
「……確かに、誰かが戦ってる気配があるね。その子って事はありえるか……」
「じゃあ……」
「うん、行ってあげて。私はついていけなさそうだしね」
「え……?」
「キュ?」
朝倉の格好が外套姿に変わる。
変身。それは戦闘に備えた姿であるが、周りに使い魔の気配はいまだ無い。
だというのに、彼女は今にも戦いが始まるというように周辺を警戒している。
……いや、その形容は正しくない。彼女が警戒しているのは明確に一点。使い魔でも魔女でもない、それでいて確実に存在する気配。
「……あら。誰かと思ったらホタルじゃない。ずいぶん久しぶりな気がするけれど」
「うん。久しぶりだねやちよちゃん。まさかこんなところで会うとは思ってなかった……って事も無いか。新西区はやちよちゃんのテリトリーなわけだし」
「え……七海さん……!?」
その相手は魔法少女。神浜でも有数の実力者たる七海やちよが悠然と姿を現した。
少し意外そうにする彼女に対し、朝倉は別段驚く様子もなく笑みをたたえている。
「で、用件はなにかな。この魔女を倒しに来た、っていうのならまあ、ただ譲るだけなんだけど……」
「……その言い方、お見通しって事ね。ええ、あなたたちが抱えている小さなキュゥべえ。それを渡してもらいたいの」
「理由は?」
「言うまでもないでしょう? 見て分かるほどのイレギュラー。そんなものを放置するくらいなら、処分した方がいいと考えるのは自然だと思うのだけれど」
「え、えぇっ……!?」
だよねー、と呟く朝倉。
参ったな、と言わんばかりに頭をかきながら、その目は油断なく相手の姿を見据えている。
(……と、いうことなので。ゆきかちゃんは頑張ってここから逃げてほしい。時間はしっかり稼ぐので、その間に探してる子のところへたどり着ければ私たちの勝ち、できなければ負け、みたいな?)
(そ、そうなるんですね……。でも大丈夫ですか? 七海さんといえばマギウスの翼でも危険っていわれてるのに……)
(大丈夫、やちよちゃんは殺すとかできないタイプだろうし! そういうわけで、いちにの、さんで走り出してね。きっちり守るからさ)
念話で思考を伝える。どうあれ、これがこの場では最善だ。
やちよが小さなキュゥべえを害そうとしているのは明白だ。警戒までが早かったことを考えれば、そもそも、新西区に来た時点でそうなるかもしれないことを予想していたのかもしれない。
1秒。ゆきかがそっと足に力を込め始める。
2秒。キュゥべえが不安からか、それとも誰かへ会える希望のためか声を上げる。
3秒。状況が動く。
ゆきかがぐるりと、一転して脱兎のごとく走り出せば、その足へ向かってやちよが獲物である槍を投擲する。
しかしそれは、軌道上に差しだされた槍杖によってそらされ、穿つはずだった足でなく、その寸前の地面へと突き刺さることで役目を終える。
「そいつを逃がすつもり? ずいぶんキュゥべえに対して甘い……いえ、警戒心が薄いのね」
「勘違いしてほしくないんだけどさ。わたし、インキュベーターは大っ嫌いだよ。見たらまず殺すくらいにはね」
「だったらどうして!」
問いに対し、朝倉は笑いながらこう答える。
槍杖を突きつけながら、敵意を受け流しながら。
「気晴らしだよ! たまには後輩を助けるでもしないと、いい加減頭がおかしくなりそうなんだ!」
火花が、散った。
二振りの槍がこすれあう。
ただし朝倉の槍杖がただひとつ、穂先となる刃のみを持つのであれば、対するやちよのそれは、戟のごとく刺突以外にも斬撃にも適する形状、穂先のほかに側面にふたつの刃を持っている。
武器としてどちらかの方が優れているということはない。だが、同射程における打ち合いで言えば、破壊力に欠ける朝倉が劣る。
朝倉の武器が対抗すべきはその振りの素早さになる。しかし、やちよはそこにおいても一流だった。
「はぁっ!」
「――っ、と!」
目にもとまらぬような刺突の数々をいなす。まともに攻撃を受けていないにもかかわらず、武器を持つ手には軽くしびれが残っていた。
驚嘆に値する。朝倉が今までみてきた数多くの魔法少女でも、ここまでのものはそういない。
単純なパワー、鍛え上げられた戦闘者としての技量。その双璧によってもたらされる力は、まさに魔法少女としての最高峰のひとつといえる。
そのあり方は、まるで遠い昔の誰かを思わせて。
「――あぁ、もう! いくらなんでもこう、ズルいなぁ!」
「その言葉、そっくり返すわよ――っ!」
だが、しかし事実、戦況は圧倒でなく拮抗だ。
朝倉がやっかみを口から漏らしたように、やちよからしても文句は言いたいような気分だった。
渾身の力を込めた突きは紙一重というべきところで躱される。
薙いでみれば上へと跳ばれ、次の攻撃の起点とされる。
フェイントを織り交ぜてみても、確実に読まれて相手に余裕を与えるのみのため、ただ自身の攻撃の邪魔にしかならない始末。
近接戦ではらちがあかない。やちよはそう判断した。
やちよにとっての勝利は、逃げた魔法少女やキュゥべえを追い、捕まえることだが、対する朝倉にとっての勝利はただ、彼女たちが逃げる時間を稼ぐこと。
現在の拮抗という状況はただ、自身の不利に他ならない。
「怪我をしても文句は言わないでよね……!」
槍を蹴り飛ばし、攻撃とすると同時に後ろへ距離をとる。その背後には、今の今まで武器として振るわれていたものと同じ剛槍がずらりと、空中へいくつも浮かんでいる。
アブソリュート・レイン。これこそまさしく、彼女の切り札のひとつである武装による制圧射撃。
単純ながら、これ以上の効率のいい攻撃もそうそうないだろう。なにせ弾丸ひとつひとつが砲弾なのだ。人間相手故に全力ではないとはいえ、まともに受ければひとたまりも無い。
弾丸が放たれる。逃げ回りながら、近づく凶器を弾く。そらせる軌道はわずか。これでは槍杖は効果が薄い。
手にもつ武器をふたつの登山杖へ。隙間を縫うように、地面を滑らせるように投擲。
やちよの腕が振るわれる。あっけなく撃墜。砲弾の精密さは変わらず。
意識をそらすには至らない。……であれば、
足を止める。追うためにまだまだまばらだった弾丸は、その密度を増した。
手に槍杖を。登山杖によるトンファーはこの場では向かない。
「――」
息を吐く。酸素の薄まった脳が決死で動く。
コンマ秒の後、槍の雨は地に落ちた。地面の砂が舞い、両者の視界を埋め尽くす。
それが晴れれば、後には身体を貫かれた敗者が残るのみ。
……本当に?
やちよの死角、右斜め後ろより銀閃が振るわれる。
なんてことはない。固有魔法、『瞬間移動』。
アブソリュート・レインの軌道はわずかにしかそらせない。だが、実際はそれで十分なのだ。
身体を滑り込ませるだけの隙間があれば、魔法の発動に支障は無い。魔法による奇襲戦術、地力が上回るが故のおごりをついた捨て身の逆転劇!
「――それくらい、読んでるわよ!」
――だが。相手が悪い。
神浜の西の長という看板に偽りなし、7年の決死の戦闘経験。
それほどの傑物に、一時の圧倒故の慢心なぞあるものか。
ましてや魔法の種類すらも以前に割れている。使用しなかったことは忘却からの油断をさそうのでなく、むしろ本命への警戒を強める形となっていた。
力の限りに槍を振るう。槍杖はあっけなく跳ね飛ばされ、地面へ刺さる。
武器をなくして新しいものを生成するのに、はたしてどれほどの時間がかかるだろう? 一呼吸? それとも瞬きするほど?
関係ない。即座に転身し、構える槍の穂先は敵の喉元へ。おかしな動きをしたら最後、戦闘継続は困難なほどの傷は負わせられる。
朝倉は降参、というように両手を挙げている。このまま武器を構えることは不可能だろう。
「――それで。申し開きはあるかしら?」
「というと、なにかな? インキュベーターを逃がしたこと? 戦いに発展させたこと?」
「どっちもよ。久々に姿を見せたと思ったらこうなるなんて、まったく思ってもなかったわ」
「いやいや、それはこっちも……って、刃を近づけないでよ、もう。冗談だって冗談」
追い詰められながら、朝倉は笑いながら軽口を吐いている。
やちよと朝倉の付き合いは決して短くはない。とはいえ、お互い仲がいいのか、といえばそれもまた微妙だろう。更紗帆奈の事件の際の協力者。互いにとって、関係はその一言で言い表される。
とはいえ、消息を絶った相手に対し、なにも思わないほどやちよは冷徹でもない。その相手が変わらずへらへら笑っていると、なんとも言いがたい気持ちは芽生えてくる。
「でもね、やちよちゃん。イレギュラーとはいったけど、処分ていうのは早まりすぎじゃない? 私としては、変に刺激するより監視しておく方が無難かなあって思うんだけど」
「その意見にも一理あるのは認めるわ。でもあなた、さっき気晴らしだとか言ってなかったかしら」
「……そうだね! 私にとって一番大事なのは、後輩が助けたいって思ってたこと。あ、でもさっき言ったのも嘘じゃないよ? 変なコトしようとしたらこう、スパッといこうと思ってたし」
気づかれてないといいんだけどねー、と笑う。
……本当に分からない。ある意味では、彼女は魔法少女としての生き方に適合しているのかもしれない。
やちよにとって、彼女のようなタイプは今までみたことのないタイプだった。
「あぁ、それと……」
「……なにかしら」
「こういうとき、油断はしちゃ駄目だよ? まあ私が言えることではないんだけど、ねっ!」
「っ!?」
言葉に合わせ、地面を朝倉が蹴り上げる。砂に埋もれ、隠れていたなにかが浮き上がる。
そこにあったのは登山杖。はじめの投擲の真の目的は、武器を作ることなく奇襲を行うための仕込みにこそあった。
突き出される槍。しかしそれは喉元でなく、逸れて薄皮を裂くに留まる。
手に持つ杖によるそらし。流れるように行われた胴体への蹴り。結果として攻撃は失敗に終わる。
「――ッ!」
「っ、と」
無論、それだけで終わるほど柔ではない。だが、再度もたらされた拮抗は、片方のみが武器を突きつけるのでなく、互いが急所へと構え合っている。
やちよはまたその喉元へ。対する朝倉は、やちよの胸元のソウルジェムへ杖の先端を。
優位はいうまでもない。魔法少女にとって、命とはつまり、文字通りひとつだけの宝石なのだから。
「――あなた」
「……警告だけど。余計なことに首を突っ込むのはやめておいた方がいいよ。大事な人を苦しませたくないのなら、ね」
「それは、どういう――」
言葉が言い終わる前に、結界が消えていく。
結界の主たる魔女が倒されたのだろう。いつの間にか、時間はずいぶんと経過していたらしい。
合わせて、朝倉もその変身を解く。手に持っていた武器も消え、そのまま身体を離すと一歩、後ろに続くアスファルトの道へと跳んだ。
「……なんちゃって。いや、柄にもなく血が上ったかな?」
「……っ、待ちなさい……!」
「それじゃあ。しばらく会わないことを祈ってるよ」
突き出された腕をかわしながら、姿は影へと消えていった。
日はもう落ちている。照明灯に照らされる暗闇の中、その姿はもう見えない。
沈黙の中でひとつ、ぎり、と歯ぎしりする音がした。
がちゃり、とドアが開く。
スニーカーが絨毯を踏み、かすかに衣擦れが近づいている。
音の主は途中で一度立ち止まると、経路を変える。先客の存在に気づいたからだ。
「……? 珍しいね、まだ残ってたんだ」
「ええ。実のところ、まだ話は終わってませんでしたし」
「ありゃ。だったらとんだ早とちりだったわけだ」
場所はフェントホープの一室。暗がりにふたつ声が響いた。
「そうなりますね。だって、まだあなたの返答を聞いていませんから」
「……返答、返答ねえ。あれ、こういうのって普通、拒否権ないものじゃないの?」
「形式としてちゃんと承諾していただかないと。あぁ、拒否権に関しては黙秘ということで」
「……やっぱり話は終わりだったんじゃないの。驚いて損したな……」
声色は軽く。
結局のところ、こうして二人が話すことになったのは一連の迷子騒動の顛末を気にしたというだけの話。
もともと返答を聞くというのはただの口実、表向きの話にすぎなかった。
それでも、一度問われた以上はきちんと答えるのが正解だ。
下された命令を、反復作業のように口ずさむ。
「『
「ええ。戦力としても申し分ないようでしたし、そこは安心していただいてかまわないですよ」
「ふうん。わたしとしてはなんともって感じだけどさ、正直」
暗闇にふたり以外の音はない。
差し込む月明かり、きしむ椅子、伸ばされた手。
こんなこと、誰もしないくらいでいいのにね、という言葉。
響きも、望みも、ただ闇に溶けて消えていった。
○ ○ ○ ○ ○
もうめちゃくちゃだよ~なRTA、はぁじまるよ-。
前回は『キリサキさんのうわさ』の監視という仕事をほっぽらかして退場したところでした。なにしてんねん。
これの何が駄目かって、以前言ったとおり『Rumors in Disguise』がバチクソに退場者が出かねないイベントということです。
これで退場しかねないメンツはまあ、メインストーリーには大きく関係するキャラクターはそういないとはいえ、退場者は最終戦での戦力減少と敵戦力の増強に直結します。
本チャートは味方の強化等をまともに行えないので、そういったひとつひとつがかなり大きく響いてしまいます。
被害者が全員知り合いだった都合、退場者の有無は神浜魔法少女ファイルをチェックすることで確認できますが……。
……見たくねえなあ。スルーしますか? スルーしましょうよ! ……とも言ってられません。
魔法少女は度胸、なんでもやってみるもんさ。ええいままよ!
五十音順なのでまず名字が
生きてる~っ! 心底安心しました。マツリ達がなんとかしてくれたみたいですね。ハードでも頼りになるなあ……。
本当ならもっと戦力や情報を最後まで調整したかったのですが、なんとかなったみたいで何よりです。綱渡りが多過ぎるってそれ一番言われてるから。
これで安心してプレイを続行できますね。よかったよかった。ついでに『MEMORABLE FLOWER』も起きないと嬉しいんですけどね。
さて、クォクォア……。見知った天井です。フェントホープの自室なので、あのあとみふゆさんにつれてこられたということでしょう。
「失礼しま……ああよかった、気づきましたか……。大丈夫ですか? あれからもう丸一日経とうとする頃なんですが」
みふゆさんオッスオッス。そして妙に日が落ちてきてると思ったらそういう。流石に寝過ぎなんとちゃう?
というのも、これはドッペルの副作用による気絶の期間がそれを使いこなせるかにも影響されるためですね。
普通であれば数時間で気がつきますが、精神力が低かったりで制御不能だったりすると期間も長期化します。
しかしお前……丸一日って相当……。
大体魔法少女歴が年に満たないくらいじゃないとこれほど長期で気絶してたことは今まで無かったのですが。RTA中にドッペルを使うのは完全に諦めるべきでしょうね。
こういう場合、一応MSSなり、みたまさん関連のランダムイベントのひとつの特訓イベントなりで制御可能にすることはできるのですが、今回はキャンセルだ。
ドッペルがなくてもやっていけるって事、見せてやるぜ! そういうわけなのでみふゆさん、仕事をください。
「仕事って……。一日寝ていて、いきなり動こうとするなんて流石に無茶ですよ! 今は大人しく寝ていてください!」
ヤメロォ! 流行らせコラ!
今動かないと、実際捕まってた魔法少女がどうなってるのか分からないんです!
なんか変な仕掛けとかされてるのが今はありえるんですって!
駄目でした(QTE失敗)。ドッペルデバフの残ってる身体ではみふゆさんには勝てなかったよ……。
仕方ないので今日は諦めましょう。こうなったら行動するのは難しいです。抜け出すのも難易度やデメリットに対し、メリットが釣り合ってないですし。今日はもう寝ようぜ(ドルミナー猫並感)。
オッハー! どうあれ素晴らしい目覚めですね。デバフも消えて活動になんの支障も無く。
というわけでタスクをこなしつつ倍速です。普通の仕事するのがすごい久々な気がしますね。平和。
ではこの間にこの先の目標でも。
イベントも遺憾ながらいくつか消化してきましたが、このRTAの本来の目標はメインストーリーの進行、およびワルプルギスの夜の撃破。しばし進行で遅れをとりましたが、いまや巻き返しのときです。
ようやく、開始からじき一年が経とうとしており、メインストーリーがようやく始まろうとしています。長かった……。
そこで問題となるのが、『小さなキュゥべえ』の存在です。メインストーリー開始のためには、こいつを主人公の『環いろは』ちゃんに引き合わせる必要があります。
ただこいつ。出現するようになるのはいいんですが、それなりの確率で魔女や使い魔、ウワサの結界に迷い込むという特性があり、しかも特に戦闘力も無いので普通に乙ります。
そうなると冗談ではなく、マギアレコード完ッ! ということになるので、その前にどうにかして手がかりを掴む必要があるんですね。
あとマギウスの3人に捕まってもアウトなので、バリバリに身内も敵です。ひどい。
出現し始めると、マギウスの翼内でもその噂は聞こえるのですが……ホタルちゃんはハブなので、黒羽根から聞くと言ったことができません。
なので仕事のついで、ひょっこり現れないかと捜索も行っています。ヤツは発見されると逃走を行いますが、『瞬間移動』の前では無力です。
ホタルちゃんはこういうことにはめっぽう強いので、変身時の隙を考えても十分追跡できるでしょう。来やがれツラ見せろ……出てこい、チェーンが待ってるぜ……。
まあ出てこないのでこのまま倍速なんですけどね。コイヨ……コイヨ……(プレデター並感)。
ついでにこの時期新西区へいけば、そのいろはちゃん当人と会えることがありますが、パトロールの当番で向かうことになったとき以外積極的に出張ることはないです。
遭遇すれば『はじまりのいろは』が発生して一章開幕、となりますが、知り合ってると今後、余計な会話が発生したりしますからね。たまたま会えたらラッキー、でもわざわざ時間割くほどでもない、というくらいの優先度に本チャートでは落ち着くのです。タスクをサボることのデメリットもありますしね。
そういうわけで今日も仕事、ガンバルゾー!
たまに休めとみふゆさんから言われてますが、従うメリットは特にないので無視します。うれしはずかしデートイベントなど、ホタルちゃんには100年早い。ただのロスです。
では部屋から出て出勤……ぐえーっ!
みふゆさんに捕まりました。どうせ休めといういつもの説教だと思うので適当に聞き流しましょう。
「ああ、はいもう諦めました……。そこでいくつか連絡があるので、少しついてきてください」
違いました(KONMAI)。
この感じだと、マギウスからの業務連絡だと思うのですが……予想しているのだと嬉しいですね。ではネタばらし、オナシャス!
「ホタルさんにお願いしたいのは、『口寄せ神社のうわさ』の監視です。ただし、ただ見張っていればいいというわけではありません」
っしゃあ! きた、きた、来たなあ!
これこそまさに期待していた言葉ですよ! 真面目に仕事してきた甲斐があったってもんです。
『口寄せ神社のうわさ』はメインストーリー第三章、『神浜うわさファイル』でいろはちゃん達主人公陣営が衝突するウワサです。
メインストーリー第2章から『ウワサ』と彼女たちの戦闘は始まりますが、2章はチュートリアルみたいなもんなのでほっといてもクリアしてくれます。なので3章のこのウワサから干渉しておきたかったのです。
そしてこのウワサ、ねむとみふゆさん謹製のやちよさんを封じるため作られたウワサです。
発生条件にやちよさんにウワサがいくつか消されていることがありますが、今回は問題なかったようです。長引くと2章終了まで作らなかったりしますからね……。
で、そうなるとここの監視には、やちよさんの封印のためにウワサに引き合わせるというのが追加されるわけです。
しかも封印に失敗したとき……といってもチャートの都合、むしろ失敗してもらわないと困るんですが……に戦闘を行うのも予想されます。なので、任されるためにこれまで真面目にお仕事してきた事による信頼が必要だったんですね。
『キリサキさん』で一回失敗してるので、今までの仕事量増加にはその分の埋め合わせもありました。実を結んだようで何よりです。
しかもここ、クリアルートが通常通り進行するといろはちゃんのドッペルと、それを魔女と勘違いしたマミさんとでバトルが発生。しかもそのままドッペルごと始末してしまうことがあります。
そうなったら当然ガメオベラなので、ここの介入は重要なポイントです。羽根である都合、一緒に神社に行くわけにもいきませんしね。
というわけでかしこまり! いやあ、チャート通り進むと安心しますね……。
「あと、新たにふたり、ホタルさんの元に黒羽根をつけたいと思ってます。流石に一人でこれ以上動かすのも問題ですから」
んあ。これはちょっと意外な感じですね。
んー……。仕事進めてて羽根からの信頼度が上がったのかな? メインストーリーは個人の方が動きやすい場面が多いのですが……。まあ仕方ないですね。
適当に雑用を押しつけつつ、後半までに信頼度を下げればいいでしょう。いるならいるなりで便利なところもありますし。
……で。さっき少しイヤな音がしたんですよね……。具体的にはドアの外。トラブルっぽい声が。
ええいままよ。近づいてドアをオープン。おい、さっき俺らが話してるときチラチラ見てただろ。
「うひゃああああっ!?」
「きゃあああああっ!?」
そこにいたのは、ピーヒョロ妹こと天音月咲と……うん、久しぶりですねゆきかさん。
ハァ~……(クソデカため息)。
もう見なくて済むと思ってたんですが、ついにでましたね。だがまあ、それならそれで。
というのも、この時期ならゆきかはただのガバ要員ではなくなるのです。
前述の『小さなキュゥべえ』、こいつは言わずもがななトラブル要因。なにせいるだけでやちよさんやマギウスといった敵をホイホイするわけですから。
つまり、この時期でフェントホープに来てるということは……。
「モキュ?」
「これは……小さな……キュゥべえ? でしょうか」
よーしよしよしよし、今回に限ってはナイスだゆきかァ! というかいつの間に羽根になってたんだゆきかァ!
さっきの下につけるってやつ、まさかこいつじゃないですよねみふゆさん? ね? 大丈夫?
……反応的に違いそうですね。よかったー……。
さて、この時期にこのミニ白タヌキがゆきかに確保されている場合、高確率でメインストーリー1章開幕直前です。
多くの場合、このあとゆきかが新西区へ行き、結界でやちよさんに遭遇するかいろはちゃんに遭遇するかして、モキュを引き渡してくれる役割をしてくれます。
それはいいことだし、ほっといてもいいといえばいいんですが……。
『結界に入る』、『やちよさんと会った場合戦闘になることがある』というのが厄介なポイントです。
つまり、ゆきかによるQBの警護が行われるのですが、ハードなのでたまに事故ります。それでメインストーリーが開幕前に終わってはたまったもんじゃありません。
というわけで、このあとのゆきかについていきます。魔法少女の先輩として一肌脱いでやるか! しょうがねえなあ……。
そうと決まれば善は急げ、イクゾーッ! せっかくなので魔法も使ってガンガン行きましょう。早く着けばその分時間短縮につながりうるのでケチる必要もありませんし。
というわけで到着しました新西区。途中でお金を借りたりしましたがどうでもいいことです。
この駅の前で張り込んでいろはちゃんの到着を待つ、というのもありなのですが、すでに到着して区内を歩き回っている可能性もあるので今回はそうしません。張り込みなら放課後期間ずっといないと駄目ですね。
まあ、心配しなくてもゆきかがいればトラブルは向こうからやってきます。あとすることは、それが本筋から逸れていないよう全力でお祈りするだけです。
うろうろ。うろうろ。
「これは魔女の結界? いきなり……」
ほらね。規定ルートっぽくて一安心です。
今回の魔女の結界は砂場の魔女のもの。地味に物理が効きにくいので、攻撃手段が単純物理攻撃くらいしかない今のメンツだと微妙に相性不利ですが……。
……まあ、そこまで強くなさそうですね。ゆきか一人でも、普通の羽根のチームでも危なげなくいけるレベルっぽいです。
でもって、誰かが先に結界に入ってるみたいです。おそらく件のいろはちゃんと……あとはもしかしたらかえでちゃんあたりの新西区の子もいるかな?
先述の通り、いろはちゃんは現状戦力としてはアレなので、急いで援護しに行きたいのです。ですが。
「……あら。誰かと思ったらホタルじゃない。ずいぶん久しぶりな気がするけれど」
やちよさんオッスオッス。やっぱいるよね。
……さて。この場面、本来であればゆきかを一人にするのはまずいです。
というのも、こいつ単体をいろはちゃんに接触させると、ごくまれにですがいろはちゃんの羽根墜ちとか、ゆきかが
ただ、ゆきかを連れて逃げ切れるほどやちよさんは甘くありません。
ここのやちよさんは白タヌキ絶対殺すウーマンなので、後手に回ると偶発的な被弾がありえます。きっちり遠距離持ってるしね。
同様の理由で置いていくのも無し。マギウスの翼に所属している以上、主人公陣営がホタルちゃんの敵です。つまりハードモードでの強化があっちにも入っています。
育成次第、状況次第では勝ちの目はありますが、補正ありやちよさんにロクに育成してないまま勝てる可能性はまずありません。
なので、取れる手で最善なのはホタルちゃんがやちよさんを引き受けて、奥にいるであろういろはちゃんにモキュを届けてもらうこと。やってやろうじゃねえかこの野郎! 俺に任せて先に行け!
というわけで『魔法少女 七海やちよ』戦となります。本来主人公側のキャラの敵バンクがあるのは、このルートのひとつの醍醐味ですね。
ここでのやちよさんは結構手加減をしてくれてるので、本来のスペックの割には楽な方です。フルスペックだと場合によっては『ウワサ』パワー全開のマミさんすら倒せる化け物ですが、流石に序盤からそんなではやってられないですしね。
ですがホタルちゃん的にも、ちょっと縛りが入ります。羽根としての武装……鎖と剣ですね。これを見せると変なタイミングでマギウスの翼との関係に気づかれてガバりかねないので、極力封印します。
基礎ステの代わりに追加習得魔術に振ってる都合、ちょっと厳しいですが頑張りましょう。この先のメインストーリーで戦闘機会は結構ありえるのでもちろん、事前練習はバッチリだぜ!
やちよさんは固有魔法が他の魔法少女のように使えませんが、その分基礎ステが高く、ある意味ではスタンダードな魔法少女の完成形みたいなタイプです。
武器はホタルちゃんのものよりも大きな槍で、遠距離にはこれを生成して飛ばす事で攻撃してきます。
スズネは通常攻撃の他、バリエが豊富な魔法で詰めてくるタイプでしたが、やちよさんはシンプルにしてくる行動が強いです。被弾したらゴリっと体力もってかれます。
極力攻撃は受け流し、槍の掃射は行ったら自分も被弾する、という距離に保つことを心がけましょう。掃射されるとこっちからの攻撃ができないので、余裕を与えることになり処理が難しくなります。
ってぐえー! 無理矢理距離とられた! しかも既に後ろに槍作ってますね!
『瞬間移動』でこっちも無理矢理詰めてもいいんですが、今回の目標は撃退ではなく時間稼ぎ。見たところこれくらいなら余裕を持って処理できる範囲っぽいので、逃げて時間を稼ぐことにします。手加減してくれてますね。
罠を仕掛けながら、そのままどんどん時間をかせいでいきます。
逃げて逃げて……もういいかな? それではラストに詰めましょう。
さあ食らえ『瞬間移動』!
うーん見事な着地狩り。流石ギリ未成年といわれるだけのことはある、年期の籠もった戦い方ですね。
会話で間を持たせつつ、ラストで不意打ち。うーん完璧。久々に練習通りいって、気持ちがいい! RTAはこうでないと!
ここで不意打ちした理由ですが、ここでの勝敗を勝ちか引き分けにすることでできる宣戦布告をしておくと、後々の口寄せ神社や、みふゆさんとやちよさんが対面したときの会話が若干短縮されるからです。
みふゆさんと信頼度高いなら、ちゃんと活用しないとね。
そんなうちに結界も消えたようなので、こちらもおいとましましょう。では、口寄せ神社で会おう! サラダバー!
……ついでにゆきかにも連絡しておきます。どうなったか気になるので……。
え、途中で使い魔から逃がすために囮になった? それは……どうなんでしょう。無事たどりつけたのか……?
クリアマークは……でてますね。よかったーって思うわけ……。ここまでやったのに退場されちゃたまったもんじゃないですが、結果的には最善だったといえるでしょう。
というわけで帰宅! 軽くみふゆさんと会話したら、とっとと一日終わらせましょう!
オッハー! おうみふゆさん、黒羽根って誰だい! 前についてた二人かな?
「よろしくお願いしま……え、嘘、あなたは……!」
「まさか、あのときの……!?」
……うn?
……とりあえず、今回はここまでで。ご視聴ありがとうございました。
Archive
○小さなキュゥべえ
鳴き声が印象的。モキュ。
本体の戦闘力がない割に、ゲームでは確定攻撃有利で暴れ回る。
○キュゥべえ
インキュベーター。害獣。
性根がどうしようもないほど詐欺師なので、本性を知られると大体嫌われる。
○やちよさん
戦力は折り紙付きの大ベテラン。ギリギリ未成年とか言わない。
ちょっと甘い。