面倒ごとを押し付けないで!   作:小鈴ともえ

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ここでようやく主人公組が登場です。いやぁ長かった


熱の冷めぬうちに

   ~伊吹萃香~

 

 

今日が最後の宴会の日だ。見当違いの場所ばかりにケンカを売りに行く人間たちを見ているのは面白い。妖怪の一部も動いているようだ。どうやら一番乗りは森の人形使い。

 

「おかしい。ここだけ異常に妖気が濃いのに誰もいないなんて…まさか紫の仕業………?」

 

『ようやく来たか、森の魔法使い。お前が一番乗りだ。褒美に姿を見せてやろう』

 

二番目以降はどうせ紫が介入してくるんだろうけど初めくらいは私の威厳を見せつけておかないと。目の前の魔法使いはまだまだ若いようだし。

 

「誰?………!その角はまさか鬼…?でもおかしいわ。幻想郷に鬼はいないって紫が言っていたのに。飾りなんかじゃあないわよね」

 

「私の角が飾りだって?馬鹿言っちゃいけないよ。私は正真正銘鬼、山の四天王の伊吹萃香だ。つい最近、私が出てくる前までは鬼は地上にいなかったさ。ただ私は古明地の奴にちょいと怒られてね。流されてるんだよ。あぁ、古明地と言ってもわからないか。地上ではない場所の最高権力者だよ」

 

恐らく紫の方から古明地に私が異変を起こしているという情報が行ってるだろう。そのせいで刑期が延びなければいいが。

そのあたりは読めない。古明地の気分と紫の伝え方次第だろう。比率で言うと1:9ってところ。

 

「古明地って古明地さとり?地底の。…確かに地底には鬼がいるらしいわね」

 

「なんだい、知ってたのかい?それなら話は早い。そう、その古明地の機嫌を損ねることをしてしまってねぇ。今は帰れないのさ。だから少しでも地上を楽しもうと思って宴会をしてもらってたってわけ」

 

地底に帰るまでは最低あと二年必要だ。この異変もその間の暇つぶしに過ぎない。わざわざ付き合ってくれている紫には感謝しないといけない。分かっていて来ているあの亡霊と吸血鬼、料理を作ってくれているメイドにもだが。

 

「まるで貴方が宴会をさせていたかのように語るのね」

 

「その通りだもの。私の能力(ちから)は萃める力に散らす力。抗う事なんてできないさ。あんたが来たのも必然だったってわけさね。そのうちあんたが戦ってきた人間たちもここに来るよ。

それまでの暇つぶしだ。一戦どうだい?」

 

「遠慮しておくわ。鬼に勝てる気なんてしないもの。それに異変解決は人間のすること。私の出る幕なんてないわ」

 

予想通りの反応か。ここは予想を裏切ってほしかったところなんだけど。でも仕方がない。この魔法使いの性格は今まで見てきたから分かっていたのだから。

 

「それこそおかしな話。人間のすることなのにどうしてここまで来た?どうして出会う人間たちと戦った?

 

本当に口だけはよく回る。まるで天狗だね。実力は高いくせに相手に合わせて適度に手を抜く。あんたがあえて人間だけを相手にしていたのはそういう理由からだろう?

強い奴ら相手だと迂闊に手を抜けないからねえ。ま、勝つことに拘りは無い様だけど」

 

「ばれてしまったからには仕方がない。えぇそうよ。私は確かに異変を解決すべく動いていたわ。道中でレミリアや幽々子なんかを相手にしなかったのは貴女が言った通り。パチュリーとは成り行きで戦う事になってしまったけれど。

 

でも異変の主犯が鬼だと言うじゃない。私の魔法は鬼を想定していない。いくら私が本気で人形を操ろうとも貴方の皮膚に傷は付かないでしょう。だから戦わないわ。いくら弾幕の遊びだったとしてもね」

 

「ちぇ、つまらないなぁ。あんたと遊ぶのはなかなか楽しいと思ったんだけど。おやおやもうすぐ来るみたいだ。私はまた姿を隠すけどあんたもこの場にいない方が良いんじゃないかい?確実に犯人だと思われちゃうよ」

 

辺りに広がっている妖霧は全て私自身だ。故に今誰がどこにいるかなど手に取るようにわかる。その上での警告。皆バラバラにこちらに向かっている以上、中心にいるこの魔法使いが犯人だと思われるのは当然だ。しかし四方からいているのでどこへ逃げても誰かとは遭遇してしまう。

 

「仕方ない。紫~この魔法使いを隠してあげな」

 

「妖怪遣いが荒いわねぇ。呼んだだけで出てきてしまうと神出鬼没ではなくなってしまうでしょう?まあどうせあの子たちと一戦するつもりだったから来る予定はあったけれど。

さあアリス、早く私のスキマに入りなさい。出口はマヨヒガにしておくわ」

 

流石紫。用意周到な所は相変わらずか。それにしても紫の戦いねぇ。私と戦うに足る実力があるのかを測るためだろう。どうせ遊びなんだから手を抜くんだろうけど。

 

アリスと呼ばれた魔法使いが紫の出したスキマをくぐってから少し。

 

『お、来たようだね。私は酒でも飲みながら見物しておくとするよ』

 

「まったく相変わらずね。次は貴方なんだから少しは緊張感でも持ってなさい」

 

緊張感なんて持てない。酒でも飲みながら戦う方が私に合っているのだ。

ここに来た人間たちが困惑している。何故なら紫も身を隠しているからだ。あいつだって全然緊張感が無いじゃないか。私に何も言えないと思う。

 

「あれ?もしかしてあんたらが犯人だったの?そう、そうね。怪しいと思っていたのよ、特に魔理沙。宴会の幹事はいつもあんただったでしょう?」

「確かに」「そういわれてみればそんな気もしてきたわ」

 

「ちょ、落ち着けってお前ら。私は妖気なんて出せないって。お、おい、近づいてくるなっての」

 

パルスィがいるときとあまり変わらないような光景だ。あちらの場合は互いに嫉妬させてケンカさせるという方法だが。

猜疑と嫉妬、どちらの方が質が悪いのだろうか。

 

「あらあら、こんな場所でケンカをするなんて愚かな事ですわね。人間はなんて低俗なのかしら」

 

「あぁ?なんだ紫か。さてはお前が犯人だな?お前のせいで私が疑われてるんだよ。迷惑だから退治させてもらうぜ」

 

「うふふ、くろまく~。でも出てきて早速疑われるなんて…泣きそうですわ」

 

犯人かどうかを聞かれたのに黒幕と答えるか。認めているようでその実否定している。だが人間たちにとってはいつもの言葉遊び程度にしかとらえられないのだろう。

ケンカをさせてそこに割って入る。敢えて勝負する口実を作る。嫌らしいやり方だが上手い。

 

 

 

実際に紫が弾幕勝負をしているところは初めて見るが流石はルールを定めただけある(地上では巫女が定めたルールとなっているが)。美しく、そして難しい。

鉄塊をスキマからはなったり式神に特攻させたりするものはあまり美しいとは言えなかったがあれも一つの形ではあるのだろう。勉強になった。

 

 

   ~古明地さとり~

 

 

胃薬が補充されたので私の胃は絶好調だが私の気分はあまり良くない。

理由は勿論萃香の事があるからだ。万が一萃香が力加減を誤って巫女を殺してしまった場合、私は死よりも辛い生き地獄を味わうことになるに違いない。

 

巫女は紫さんが育て上げた傑作であり地上の要である。仮にその巫女が萃香に殺されてしまった時は地上は大混乱に陥ってしまうだろう。そして大本をたどればその原因は私になるのだ。

鬼の彼女ならスペルカードルールを守ってくれることは確実だが偶然の事故は発生し得る。

 

そして萃香が一番しそうなのが力加減の調整ミスなのだ。地底では基本的に殴り合うばかりで弾幕など使っていなかったので、力の強い彼女は殺傷能力のある弾幕を出しかねない。

相手が妖怪ならば話は別だが今回の相手は人間だ。そんなものが当たれば最悪即死である。紫さんが見張ってくれるならば問題ないと思うがどうだろうか。彼女は気まぐれだから読めない。

 

「さとり様~、まだなんですか?」

「えぇ、でももうすぐ焼けるから紅茶を淹れて食堂で待っていて頂戴」

 

こんなことを考えてはいるが今していることはオーブンの前でクッキーの焼けるのを待っているだけである。最近は戒が少し早く仕事をこなせるようになったので月に一回くらいは休日がとれるようになったのだ。今日がその日である。

 

ちなみにお空は本来年中無休なのだが休日だけは付近にいた別の地獄鴉に式神を憑けている。勿論翌日には剥がしているし、毎回異なる鴉を使っている。当然嫌がる鴉には憑けていない。こういう時にはこの能力が非常に便利なのだ。

 

お菓子を作るのはいつも私だが食事を作るのはいつもお燐に任せている。味に疎い私に普通の料理は向いていなかったようだが、きっちり計量して作るお菓子には適性があったらしい。

私としても良い気分転換になるので気に入っている。心の底から美味しいと言って食べてくれる子たちを見ているといつもの疲れも吹き飛ぶ。

 

病は気からとはよく言ったものでこういう時に難しい事を考えていても胃が痛くなることは無い。机に向かいながら同じことを考えれば確実に胃が痛くなるのに。

まったく不思議なものである。身体とは都合の良いものだ。

 

今日のクッキーは少しアレンジがしてある。まだ作るのは二回目だが前回と同じ味というのは避けたかった。アレンジと言ってもココアパウダーを混ぜて味を変えてみたりしただけだが。

それだけでも十分に味は変わるし、それが気に入らなければ前回と同じ味の物も用意してある。

 

戒も含めて家の子たちはいつも知らない物に興味津々だから多分今回も食べてはくれると思う。一口食べて口に合わない様だったら私が食べれば良いだけだ。

本音を知ることのできるこの能力は便利である。

 

先ほどから言い続けているが忌み嫌われるこの能力も便利ではあるのだ。ただその便利さを感じる以上にリターンが酷いだけだ。この能力を嫌っているわけではないがもう少し別の能力の方が楽には生きれたのだろう。こんな地位には絶対いなかっただろうし。

 

因みにオーブンと言っているがこれは正直窯と大して変わらない。構造は少し違うらしいが結局熱源はお燐の出した火である。直接火が当たらないように工夫してあるのだと思う。外の世界には電気とやらで動く火を使わない物まであるらしい。

 

外の世界がよくわからなくなる。役に立たない物を作ったかと思えば想像もできない程便利な物を作ったりもする。人間って何だろうか………とそろそろ良さそうだ。

ちょいと味見を…うん。新しい味の方も悪くないと思う。

 

 

 

「みんなお待たせ。できたから早速食べまs………どうして貴方たちがいるんですか」

 

「すみません、さとり様。あたいのせいで…」

 

どうやらお燐が今日の休みの事を勇儀やらパルスィやらに話したらしい。それでお菓子を食べに来たらしい。暇かよ。……暇だったようだ。

 

「良いのよ、お燐。多めに作っているから十分足りると思うわ」

 

本来なら明日からの仕事中につまんだり、お燐やお空たちのおやつになるように多めに作ったのに。勇儀にパルスィにヤマメにキスメまでいれば絶対に余らない。まあ仕方ないか。

 

「ほら、早く食べましょう。冷める前にね」

 

一月に一度しかないのだしたまにはこうやってゆっくり話すのも悪くない。折角訪ねてきてくれたのだし客に対する礼儀という物も……この四人には不要か。

 

「おっ、これは美味いね。たまには甘いものも悪くないねえ。酒には合いそうにないが」

「うんうん、これは確かに美味しいね。さとりはこんなこともできたんだねぇ」

「本当、美味しいわ。味が二つあるのも飽きが来なさそうでいいわね」

「美味しい…」

 

勇儀の感想だけなら不安だったがその他、特にパルスィからの高評価はかなり信用できる。それにしても作った物を褒めてもらえるのは結構嬉しい。戒たちも心の中では美味しいと言ってくれているし。作った甲斐があったというものだ。

 

今だけは明日からの仕事の事も全て忘れてしまおう。




萃夢想次で終わりです。今回で終わらせようと思っていたのですが、入れたら確実に6000字は超えてしまうので

因みにこの話に限らずメインとなるのは勿論さとり様の日常の方です。主人公ですから。異変はオマケ
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