面倒ごとを押し付けないで!   作:小鈴ともえ

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何も気にせず書いていたせいで萃香が『さとり』と呼んでいる場面がいくつかありましたので訂正いたしました。ついでにちょこちょこ書き足したりしてます。わからないと思いますが

あと今回少し書き方を変えてみました。時間のある方はアンケートに答えていただければ幸いです


スバラシイお土産

   ~水橋パルスィ~

 

 

 今日はどうやら地霊殿が休みの日であるらしい。あれ以来この日になれば必ずさとりの屋敷に行くようにしている。たまに遊びに行く日はあるがさとりの休日だけは狙って行っているのだ。私だけでなく勇儀やヤマメたちなんかも。

 さとりの休日はとてもわかりやすい。何せ朝の見回りがお燐ではなく地獄鴉たちだったからだ。旧都の方では月に一度見られる地獄鴉の大量発生を肴に酒を飲んでいる奴らも多いらしい。

 

 そんなことが無くても四六時中飲んでいるような奴らばかりだと思うからただの言い訳なのだろう。言い訳なのわざわざしなくても誰も文句は言わないだろうに。鬼に文句を言えるほど度胸のある妖怪がいないだけかもしれないが。

 

「やあやあパルスィ、今日もこんなところで佇んでいるだけじゃあ寂しいだろう?だから優しいヤマメさんが来てやったよ」

 

「そんなこと言って…たださとりのところに行くまでの時間が暇だから来ただけでしょう?」

 

 都合の良い妖怪だ。このやり取りももう何回目だろうか。五回目か六回目だった気がする。まあ私も話し相手ができる分悪い気はしないんだけど。それにヤマメは話していて面白い子だし。

 

「ははっ、バレてるんじゃあ仕方ないね。ま、そういうわけさ。パルスィもどうせ暇だったんだろう? キスメも連れてきたし()()()()()()()でもしようじゃないか」

 

 がーるずとおくってなんぞ。いやいやもしかしたら私の聞き間違いかもしれない。もしかしたらヤマメは『…があるぞ、遠くに』と言いたかったのかもしれない。それでも遠くに何があるのかはさっぱりなのだが。

 

「え? いったい何があるというのよ。ここからじゃ旧都も見えないわよ」

 

「パルスィは何を言ってるんだい。誰も何かがあるなんて言ってないじゃないか。がーるずとおくだって。ほらほら、女子会みたいな軽いノリのやつよ」

 

 なんだ。女子会の事だったのか。私の耳は間違っていなかったようで安心したが何か重要な事を間違っている気がする。結局はいつも通りに橋の傍で話をするだけというわけだ。

 

「あぁ、そういう事なら構わないわ。それにしてもヤマメもキスメもお昼はどうするつもりでいるのかしら?」

 

私の感覚が正しければもう昼前だと思うのだが二人はどうするつもりでいるのだろうか。

 

「昼飯かい? そんなものお腹に入れちゃったらお菓子が入らなくなるかもしれないじゃないか」

「そうそう。月に一回の楽しみなんだからたくさん食べないと」

 

「貴方たち知らないのね」

 

 このままだとさとりが泣いてしまうかもしれない。いやまああの子に限って絶対に顔には出さないのだろうが内心では泣いていてもおかしくはないという話だ。

 

「地霊殿はそんなに裕福ではないのよ。屋敷の広さに騙されているようだけどあれは貴方たち土蜘蛛や鬼が調子に乗って…というか張り切りすぎてああなっただけでしょう?

 地霊殿の財源は基本的に消費税のみよ。それもかなり税率の低いね。それに加えてあそこはペットや従者もいる。あまり困らせないであげた方がいいわよ」

 

 実はさとりの生活はそこまでいいものではない。地底で一番仕事をしているのに生活はひどいものだ。ひどい物を食べているとかそういう類ではない。生活が仕事量に全く見合っていないのだ。

 聞くところによればさとりの睡眠時間は毎日一刻。起きている間のほとんどは事務仕事をしているらしい。読書や執筆、風呂やご飯などの時間は一刻半に満たないという。

 

 対して私たちの睡眠時間は大体二刻から三刻ほど。仕事の時間は無いと言える。低い立場の私たちが如何に良い身分なのか、それがはっきりとわかる。

 

「そうだったのかい。それは困ったねぇ。…適当に旧都にでも食べに行こうか。ついでにさとりの奴に土産でも持って行ってやろうかね。

 

 それにしてもパルスィは優しいねぇ。特にさとりに対してはキスメもそう思うだろう?」

「うん。パルスィはさとりの事をよく気にかけているよね。そんな優しいところもパルスィの良いところだと思うよ」

 

 なっ、そういう事を平然と言えるヤマメたちが妬ましい。自分たちだって十分さとりを気遣っているだろうに、さもさとりを気遣っているのは私だけだと言わんばかりに他者をさりげなく立てられる心が妬ましいったらありゃしない。

 

「ほらほら! そんなことを言っているのならおいて行くわよ。手土産も買うんでしょう?」

「ちょっと待ちなよ、パルスィ。いくら恥ずかしいからって……おっと危ない」

 

 ちっ、外したか。殺傷力は皆無だが当たれば痛いだろう。外れたけど。

 

「舌打ち聞こえてるよ……っとと、危ないってば。これ以上怒らせても怖いし行くとするかね」

 

 はじめから怒らせなければいいものを。スリルのために人を怒らせるのはやめていただきたい。怒ってばかりいると寿命が縮まるというし。

 まあ数年程度縮まったところで何も変わらないのだが。

 

 

   ~古明地さとり~

 

 

 我ながら上手く焼けたものだ。一口味見をば……うん、かなり美味しいと思われる。一応大勢来ることも考えて置いてあった材料すべてを使ったが多すぎたかもしれない。

 紫さんが持って来た物だろうし全部使っても文句は言われないだろう。少し残して来月分に回しても良かったかもしれないがもう作ってしまったものはどうにもできない。

 

 恐らく皆もうすぐ来るだろう。来るであろう時間を逆算して作ったのだからほぼ確実だ。しかし来る前提でお菓子を作っているというのもよく考えればおかしな話なのだ。洒落とかではなく。そもそも私が休日であるという事は誰にも言っていない。

 そしてあれ以降は休日にお燐もお空も外に出していない。にもかかわらず集まってくるのだ。なんとも不思議で仕方がない。皆が皆特殊な能力を持っているとは思えないし、紫さんに至っては本当に謎である。

 

「さとり様、皆さんがいらっしゃいましたよ」

 

「ありがとう、丁度さっき出来たら運ぶの手伝って頂戴」

 

 私一人では到底運べない。オーブンが無駄に大きいせいで一気に径一尺のチーズケーキが三つも焼けてしまうのだ。材料がたくさんあったせいでまだ二つほど焼いている途中だ。五つも作った私の苦労を誰が分かってくれるだろうか。作っている間は楽しかったから良いのだが。

 

 とにかく私一人で三つ運ぶのは無理だ。精々一つずつしか運べない。だから戒が来てくれて助かった。戒なら私とは違って二つ一気にでも運ぶことができる。

 

「二つも運ばせてしまって申し訳ないわね」

 

 私が力不足なばかりに。普段の生活では本当にお燐やお空、戒に頼りきっている節がある。仕事が忙しいとはいえ、労いもできない主人で本当に申し訳ないのだ。

 

「このくらいならお安い御用ですよ。さとり様にはいつも迷惑をかけてばかりなので、たまには役に立たなければなりませんからね」

 

「私の方こそ貴方たちに迷惑をかけてばかりだと思うわよ。まあ、この話はここでお終いにしましょう。扉は私が開けるわ」

 

 少しの間なら片手で持つこともできる。重いから早く机に置いてしまいたい。

 

「おぉ、漸く来たね。今日のは何だい?」

「今日はチーズケーキという洋菓子です。紫さんにレシピを頂いたので作ってみました」

 

 紫さんも満足そうにケーキを見ている。というかあれれ? もう既にケーキが一部欠けているのだが。いったい誰が食べたと……

 

「こいしっ、勝手に食べちゃ駄目でしょ? きちんと『いただきます』と言ってから食べないと」

「あっお姉ちゃん! 今日はお姉ちゃんに話したいことがあったんだ。このケーキのお礼だよ!」

 

 なんて良い子なんだ……とはいかない。勝手に食べたのは事実だし。でも久しぶりに戻ってきてくれたわけだし怒るに怒れない。

 それにしてもケーキのお礼に地上の土産話か。他の人たちはそんなことをしてくれたことも無かったというのに。こいしの方が一般常識というやつはあるらしい。

 

「なんだ? さとり。こっちを見て……ははーん、さては私たちは手土産も何もないといいたいんだな? そんなときのために持ってきてやったんだ」

 

 そう言って勇儀が取り出したのは純米大吟醸の一升瓶。どうやら彼女の盃で作った物ではないらしい。勇儀だというのに意外だ。

 因みに手土産を持ってくるよう勧めたのはヤマメらしい。旧都から一緒に来たようだ。それにしてもさっきからなんだか可哀そうに思われている気がしてならない。気のせいだろうか。

 

「日本酒ですか。星熊盃を使っても作ることができるでしょうに、買ってきたのには何か理由があるのですか?」

 

「ん? さとりは知らなかったっけ。この盃でランクを上げた酒は少し経つとランクが落ちてくるんだよ。さとりの事だ。すぐには飲まないだろうから買ってきたってわけさ」

 

 よくわかっているようで。酒を貰っても多分私は飲まない。お燐や戒が飲むか、勇儀たちをもてなす時に空けるかだろう。料理酒として使うのには流石に抵抗がある。

 

 

 他にもヤマメからはお酒のツマミになりそうな魚の干物(多分普通にご飯として出される)、キスメからは温泉街名物の温泉卵(多分お空が全部食べる)、パルスィからは「藁人形?」

 

「だってほら、私って丑の刻参りの専門家らしいじゃない? 一つあげるわ」

 

 何時の話だってくらい昔の事を今掘り返すか。冗談のようだから悪い気はしないけれど。

 本当の手土産は新しいペンだった。最近はあまり執筆もできていないからそろそろ再開しようと思う。時間ができたら、だが。

 

 紫さんは本を持ってきてくれた。どうやら借りている本のようなので一月以内に全て読まなければならないらしい。寝る時間を削れば大丈夫そうだ。

 それにしてもどうして今日に限って皆手土産を持って来たのだろうか。勇儀たちは一緒に行動していたようだからわかるとしても紫さんに至っては本当に謎である。(二回目)

 

「さとりも珍しく嬉しそうだな。まあ当たり前か」

 

 物をもらって悪い気はしない。嬉しいというのも当たり前のことだ。急なプレゼントに多少困惑しているのも確かではあるのだが。

 

「こいしの話でも聞きながら食べようじゃないか。酒はないのか? さっきのじゃなくてこのケーキに合うやつな」

「ケーキに合う酒ですか?知りませんね。聞いたことも無いですよ」

 

 そもそもケーキを食べないからそれに合う酒なんて置いてあるわけがないのだ。

 

「そういう事ならこんなのはどうかしら。最近地上で一般的な物になってきた酒よ」

「流石賢者殿だ。頼りになるねぇ」

 

 遠回しに私が頼りにならないと言われているような気もするだろうがそんなことは無いようだ。こういう時に誤解なく言葉の意味を理解できる能力は便利だ。リターンが大きすぎるという欠点を除けば素晴らしい能力である。




次回はこいしちゃんの話から。グダグダ書いていたらいつの間にか三話に分かれてしまいました

どうしてこうなった

アンケートですが「どちらでも良い」とか「作者にお任せ」とかを入れると必然的にその票が多くなるので二択です。次の話を書き始める時点での票数で書き方を決めますので悪しからず

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