面倒ごとを押し付けないで!   作:小鈴ともえ

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寒い言葉遊びを書き始めたのがどの話からなのか分からないがふと気になった今日この頃
???「それはそれは残酷な話ですわね」

それよりも最近サブタイトル迷走しすぎでは?


全てが傑作で失敗作

   ~古明地さとり~

 

 

ずっと昔から一緒に生活している我が子同然のお燐の成長を見られるのはとても嬉しい事だ。とはいうものの、あれは完全にやりすぎではないだろうか。

私が弱いからそう思うだけかもしれないが、あれでは相手を殺しに行っているように思われても文句は言えない。

 

「貴方はどう思います? 萃香」

「おろ、いつから気づいていたんだい?」

「戒の戦いを見ていた辺りから、ですかね」

 

不思議な気配が付き纏っていたのには気づいていた。妖力までもが曖昧すぎてそれが萃香である確証はなかったが、どうやら勘で言ったのが当たっていたらしい。

まあ誰にも見られず、心を読ませることもなく誰かをつけるなんて芸当ができるのは、私の知る限りでは萃香か紫さんくらいのものだから実質二択だったわけだ。

 

「なぁんだ、初めからじゃないか。ま、古明地を相手に後をつける真似なんてすれば気づかれるかぁ。で、そもそも古明地は何を聞いてきたんだっけ?」

 

姿を現した萃香はやはりと言うべきか瓢箪を手に持っている。自分の身体だけではなくて衣服や瓢箪までもきっちり再構築するなんて本当に器用だな、と場違いを自覚しながらも思ってしまう。

 

「お燐についてですよ。萃香に今の戦っているお燐はどう映りますか?」

 

強くなったなぁ、という感慨が先走っているようだが、私の聞きたいところがそこではない事は理解しているらしい。

伊達に紫さんと長く付き合っているわけではないようだ。紫さんとの付き合いだけで言えば私よりもはるかに長いし深いだろう。頭の回転は恐らく幻想郷の賢者レベル。逆立ちしても私が勝てるわけはない。

 

「調子は悪くないようだね。むしろ初めよりキレもスピードも上がってる。あれは霊夢……人間たちには厳しい戦いになってるだろうね。

疲れもあるんだろうが、キスメ、ヤマメ、パルスィ、勇儀、戒まででノーミスだったのにギアを上げたお燐の四枚目では既にどちらも被弾してしまっている」

 

ここからでは遠すぎてお燐の心の内を知ることはできない。何を考えたのかは分からないが、確かに三枚目と四枚目では弾の迫力も密度も桁違いになっている。

あれを想起して再現するとなれば私の妖力がもちそうにない。昔三歩必殺でやったように擬きにすれば何とかなるかもしれないが、それでは迫力が全く足りないだろう。

それほどの弾幕。彼女の心を読んで正解の道を知れば避けることは可能かもしれないが、何よりも私の集中が途中で切れてしまう気がする。

 

「とにかく今のお燐の状態じゃあ霊夢たちの方が不味いね。避ける隙間が無いわけではないようだがあれはもはや不可避に近い。現在とその先までの全弾の軌道を分かったうえで避けられるあんたでもない限りは避けきるのは至難の業だ。

それに何も不味いのは霊夢たちだけじゃない。お燐の奴だって同じさ。あの子の限界は知らないが、恐らく紫や私たち四天王くらいの妖力でもなければ五枚目を撃つ頃にゃへばってしまうよ」

 

お燐の潜在的な妖力量は確かに多いが萃香や勇儀、紫さんほどではない。萃香の見立てでは四枚目の途中で妖力がすっからかんになってもおかしくはないみたいだ。

あれほど多くのメイド妖精(ゾンビフェアリー)を指揮するだけでも普通の妖怪ならば困難であるのに、それに加えてあの密度の弾幕だ。明らかなオーバーワーク。脳の処理が追い付かなくなるのも時間の問題だという事だろう。

 

 

それならば五枚目を切らせなければ良いだけだ。

なんとか間に合わせろ。早く、速く、疾く(はやく)飛んでいけ。

 

「うん? お前さん何かしたかい?」

「えぇ。少しばかり助っ人を、ね。それと少し萃香にも協力してもらいましょうか……ああいえ、戦う事ではありませんよ。重要な役ではありますが……えぇ、ありがとうございます」

 

自然な形で今のお燐を止められる可能性があるのはもう()()()しかいない。私の知らないあの子が最後の切り札となる。

私では止められない。勇儀は負けた。萃香は傍観を決め込んでいる。さあはやくいらっしゃい。一番の友人であるならば彼女を救ってあげて頂戴。

 

 

   ~八雲紫~

 

 

霊夢たちは唐突に上がった火車のペースについて行くことすらままならない。殺す気はやはり無いようだが負ける気も無いようだ。このままでは計画が破綻してしまう。

異変解決の失敗は博麗の価値と信頼を大きく下げてしまう直接の要因となる。博麗の巫女が敗北するときも往々にしてあった。大抵の場合はそれが一代の終わりとなってきたが、今代から導入したルールによってそれがほとんどなくなるだろうことは確信できる。

しかしこのルールは『死なないから負けても然したる問題にはならない』という油断をもまた生んでしまう原因となりうることは留意しておくべきだ。

 

敗北は決して罪ではない。負けない人間などいないのだから。しかし異変時の巫女の敗北は大罪だ。誰よりも私が許さないだろう。

私とて何の考えも無しに博麗を神社に放置しているわけではない。神社で形だけの管理をさせ、生きていくのには困らない程度の賽銭と異変解決や妖怪退治後の戴物で生活させる。

 

選定の際に重要なのは巫女としての素質ではなく、博麗としての素質。神の声が聞こえることよりも妖怪を退治できることを。妖怪に好かれても妖怪を好かない者を。何よりも心強き者を。

 

選んだのは私だが

「選ばれたからには負けてもらっては困るわね」

 

「? 何か言いました?」

「いえ、ただの独り言ですわ」

 

資格のない者を選ぶほど私の目は衰えていないだろう。実際にこれまでの活躍ぶりは目を見張るものがあった。才能は申し分なし。怠け癖が酷いのはいただけない所であるが博麗の巫女としては文句のつけようがない。

 

その霊夢が負けることは許されない。一人の人間の少女として、ではなく博麗の巫女として許される事ではないのだ。幻想郷は一人の少女を博麗の巫女という枷にかけることによって成り立っている。全てを受け入れる幻想郷において最も権威を持ち、また同時に最も自由を許されない人間。

それを、その存在を何よりもありがたがって受け入れているのが同じ人間たちだというのだからこれ以上残酷な話もまたとあるまい。

 

 

博麗の巫女は自律人形と同じ。自分を認識した時には既に枷をかけられていて真の自由は永遠に手に入らない。それを周囲の者はあまり気づけない。

生み出した者だけが感じ得る後ろめたさ。生み出された者だけが感じ得る儘ならなさ。

 

アリスはそんな残酷な事をしようとしているのだ。しかし生み出さなければ分からないことがあるのも事実。何度も何度も繰り返してきた私が言っても理解はできないだろう。

 

百聞は一見に如かず

百見は一考に如かず

百考は一行に如かず

百行は一効に如かず

 

 

自分でやってみなければ納得はできない。既に目の前にいる失敗例を失敗例だと思わないから過ちは何処までも途絶えることは無い。

願わくば過ちに気づいていても失敗し続けなければならない私のようにならないことを。

 

 

   ~アリス・マーガトロイド~

 

 

先ほどから紫はずっと何か考え込んでいるが、まあいつもの事だし聞いてもどうせ分からないので無視しておく。

 

それよりも気になっているのが今行われている弾幕勝負だ。余裕とはいかないまでもそれほど危ない様子も無く突破してきた二人をここまで追い詰める者はそうそういないだろう。

ただ参考になるかと問われればそうでもない。密度を少々低くすれば死霊妖精を人形に置き換えて同じような事はできそうだが、それでも脳の容量を超過するだろうことは目に見えている。

 

以前地底に連れて行かれた時にはさとりにしか会わなかったが、今回の異変で多くの妖怪を目の当たりにした。

縦穴の出入りを管理している風だった釣瓶落としと土蜘蛛、何故かは知らないが種族ゆえか橋の傍にいた橋姫、萃香とその友人だという鬼、さとりの代理として地底を任されているらしい狼娘、そして絡んできたのは二回目になるさとりのペットである猫。

全てが想像よりもはるかに強い力を持っていたが、やはりその中で最も異常なのが今戦っているさとりの猫である。

 

鬼よりも鬼畜な前口上と弾幕。妖怪らしい妖怪だとも言える。人を殺めることが大きく制限されている幻想郷において使うのは人喰い妖怪くらいであろう死の宣言。

博麗の巫女に死んでくれという妖怪はなかなかいまい。

 

紫が動く事態になるかもしれないという心配はあったが、何とかここまではきちんと弾幕勝負の形式が守られている。蜘蛛の糸が如き細い隙間に見えるが、抜けられるならば不可避ではない。

もはや彼女の姿は見えない程に高密度だが霊夢や魔理沙はどうやって避けているのだろうか。一度は被弾しているとはいえそちらもそちらで空恐ろしい。

 

 

 

「はっ?」

 

文の声がここにいる全員の心の声を代弁しているだろう。私はさとりではないから本当のところは分からないけれど、少なくとも私はそう思ったし文もそう思ったのだろう。

避ける隙間も見つけられないほどに張り巡らされていた弾幕が突如として掻き消え、同時にあの猫又も消え失せたのだ。

訳が分からない。理解が追い付かない。あまりにも突然の出来事に声も出なかった。

 

残されている妖精や怨霊のおかげで彼女がいた事実を確信することはできる。

それらも地霊殿のある方向に飛んで行ってしまったが。

 

紫なら何か分かるかと紫の方を見てみると何やらブツブツ呟いている。…………よく聞き取れないが、さとりが何たらと言っているようだ。さとりにはそんな突飛なことができるのだろうか。心を読んで嫌がらせをする妖怪だと思っていたのだが。

 

『あら、よくいらっしゃいました。貴方たちが地上から来たという人間ね? 呼ばれたから出てきたけど……ここはこんなにも温かったかしら』

『はぁ~……で、猫が消えたと思ったらあんたは誰?』

『猫……お燐の事ね。私は灼熱地獄跡の温度管理をしている空』

 

弾の消えた跡から現れたのはおよそ妖怪とは思えぬほどの神々しさに加えて異常な禍々しさも持ち合わせている女性。右腕の途中からは人工物のような筒がついており、右足にも何やら重そうなものを付けている。霊夢たちと比較する限り身長は紫よりも高そうだ。

 

「あれは? 紫なら何か知っているのではないの?」

「あれは地獄鴉ですね。妖怪の山では最近ちょっとした話題にもなっていますよ。山の神が絡んでいるそうなので」

『それ、どういう事? 天狗も河童も知っていることがあるんなら吐きなさい。こんなところまで連れてきて……今なら八割殺しで許してあげるわ』

 

あらら。ご愁傷様ね。人間を利用して地底に特攻させたんだから罰は当たって当然だ。流石に八割はやりすぎだと思うが三割から五割くらいならば妥当なのではないだろうか。

 

『山の神? うーん、それは知らないけどやっぱり私は地上でも有名なのね。私の力は究極の神の力。全てを溶かし尽くす太陽の力。もう貴方たちはここから逃げられない。

そして貴方たちを灼熱地獄跡の燃料に変えたら次は地上ね。美しい灼熱の世界に変えてあげるわ』

「その鴉が言ったことが全てですね。重要な所を忘れていたようですがまあいいでしょう」

 

これも恐らくはさとりのペットの一匹なのだろう。山の神というのは恐らく神奈子たちの事。一介の妖怪から神々しさを感じたのは神を宿したせいだったか。

 

『何も良くないだろ。地上を灼熱地獄に変えられたら住む場所がなくなるぜ。お前たちも』

 

これは神奈子たちの過失ではないだろうか。力を手に入れた者が増長する事など火を見るよりも明らかだろうに。ここで止めなければ地上が文字通り地獄に変わってしまう。

それでもどうにかなると踏んだからこそ神の力を授けたんだろうが、私たちのような者からすれば命がいくつあっても足りない程の賭けにも思える。

寿命が縮まる思い……寿命などないようなものだが心臓に悪いのは事実だ。

 

『で……あぁそうだ、間欠泉を止めてくれ。怨霊やらが出てきているらしいからな』

『怨霊はお燐の管轄。そして残念ながら間欠泉はもう止まらないわ。私のこの力が無くならない限りは。貴方たちもこの核融合の力でフュージョンしてみない?』




残酷なのは内容の方でした

次回は五面最後の部分の補足をして六面の予定です

これでようやく5/7面終了
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